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【2】勇者なんて必要なかった

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 勇者パーティの四人は平原で魔王軍の幹部と戦っていた。

「はっはっは! 弱い弱い! 勇者と聞いてどんなものかと思ったが、これなら魔王様が出るまでもないな!」

 予想外に弱い勇者達を嗤ったのは、鳥人グリューだ。
 彼は人間が魔王討伐のために勇者パーティを派遣したと聞いて、単独で偵察しにきたのだ。
 せっかくだから実力も確かめておこうと思って、少し攻撃してみた結果がこれだ。

「くそっ! なんて強さだ!」

 勇者ルークはグリューを見て歯噛みした。
 空を飛び回ってのヒットアンドアウェイが鳥人本来の戦い方だが、グリューは地面に立ったままだ。
 つまり明らかに全力を出していない。
 なのにルーク達四人で挑んでも勝負になっていなかった。

「ルーク! もう一度仕掛けるぞ! 息を合わせるんだ!」

 女戦士のアルマは剣を構えて再び攻撃しようとした。
 全力で攻めれば勝てる。
 彼女にはまだそんな甘えが残っていた。

「私達も一緒に!」

「はいっ!」

 魔法使いのリリと僧侶のロロナも援護しようと、それぞれの武器を構えた。
 その様子を見たグリューは鼻で嗤った。

「ふん、雑魚が少し増えたところで……ん?」

 ここは平原だ。
 障害物がないので、地平線までよく見える。
 人間よりも視力が高い鳥人であるグリューは、一人の人間がこちらに向かって歩いてくるのを見つけた。
 ルーク達もつられて同じ方向を見て、同じように気がついた。

 そう、つまり”俺”が歩いてくるのを。

「あいつ……。こっちに気付いてないのか?!」

「私達の戦いに巻き込まれたら、普通の人間なんて即死よ!」

「こんなときに!」

 馬鹿な素人が戦場に紛れ込んだと思ったルーク達。
 だがグリューだけは違っていた。

(不自然だ。進む方向に全く迷いがない。あの人間……。まさか俺を試しているのか?)

 たった今まで勇者ルーク達の実力を試すために手加減していたグリューだからわかった。
 
(あれはこちらに気がついていないのではない。あえて無防備にしてこちらの反応を試しているだけだ)

 グリューは先手を打って攻撃するか迷った。

(無防備で攻撃してこない……。まさかカウンターを狙っているのか? いや、しかし……!)

 攻撃を躊躇うグリュー。
 そしてついに”俺“は普通に会話ができる距離まで近づいた。

「なんでこっちに来たんですか?!」

 僧侶ロロナは信じられないと言った目で俺を見た。
 
「なんでって、そいつを見つけたからに決まっているだろう?」

 俺は躊躇うことなく鳥人グリューを指差した。
 別に嘘は言っていない。
 鳥人を見るのは初めてだったから、強いのかどうか確かめたかっただけだ。

「だったらすぐに逃げろ! ここは危ない!」

「そうよ! 死にたくなかったら今すぐ逃げて!」

「この魔族の強さは尋常じゃない! 殺されますよ?!」

 弱い犬ほどよく吠える。
 俺は明らかに劣勢だった勇者達を無視して、改めて鳥人グリューを指差した。

「お前、強いんだろ? 相手になってやるから全力を見せてみろ」

 ……強かったら最下級以外の魔法を使ってやるよ。
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