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春より参られし桜華様!

第59話 おねしょた夫婦は狸は食わず

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   無事に旅行先の草津から帰宅したギールたちは、家の玄関を開けて早々に、"漆黒の長髪"けも耳美女の出迎えを受けていた。

その美女の名は、"リーべ・フォルト"。

一見、ギールのお姉さんではないかと、つい見間違えてしまう程の美貌びぼうと若さを持ち、更には姉御系のオーラを漂わせていた。

しかし実際は、ギールのお姉さんではなく実の母親であり、"今は"三人の子供を持つ正真正銘の人妻である。


リーべ「お帰りなさい我が子供達よ~♪」

ギール「た、ただいま母さん。」

ディノ「ただいま戻りました。」

三人の帰宅に一安心のリーベは、ギールの背中でおやすみ中のシャルを見るなり、"ニヤニヤ"としながらシャルの頭を撫で始めた。

リーべ「おやおや♪シャルちゃんったら、ギールの背中でお休み中だなんて、結構ギールと打ち解け合えたみたいだね~♪」

ギール「っ//う、打ち解けてねぇよ。こ、これは、し、仕方なくだよ。」

ディノ「あぅ、に、兄さん…。」

リーベ「ぷっ、あははっ、そうかそうか。まあ、その様子だと結構楽しめた様だな♪あっ、そうそう、今ちょうど、お父さんが帰って来ている所よ?」

ギール「えっ!?と、父さんが!?」

リーベ「あぁ♪今日のお昼辺りに"界人"と一緒に帰って来てな。今さっきリビングでイチャつき始めた所だ。」

ギール「なっ、か、界人さんが!?」

リーべ「ふふっ、界人から聞いたぞ?ギールお前、大人しく界人にモフられに行ったそうじゃないか?」

ギール「なっ///そ、そそ、それは違うよ!?お、俺は、ただ挨拶に行ったらモフられただけで……。」

リーベ「へぇ~、挨拶をね~。」

ディノ「に、兄さん……。(そ、そんな……、ま、まさかあれは、界人さんの趣味じゃなくて、兄さんの趣味だったの!?)」

何とも分かりやすいギールの動揺に、母親のリーベは笑みを浮かべながら疑いの視線を向けた。

更にディノは、自分の趣味を界人さんの趣味であるかの様に偽ったギールに対して、何とも言えない軽蔑の視線を向けていた。

ギール「だ、だから、本当に挨拶だけなんだって!?あ、あと、ディノもそんな目で俺を見るな!?」

ディノ「ジーー。」

リーベ「ふーん、挨拶だけなら…、何でわざわざモフられたりしたのかな?」

ギール「そ、それは……、界人さんにお願いされたからに決まってるだろ?」

リーベ「へ~、お願いをね~。と言う事は、つまり……、ギールは抵抗する事なく、界人の趣味に付き合った訳だ。」

ギール「し、仕方なくだよ。そ、それに、界人さんのモフりのお願いは断れないし……。」

リーベ「ふ~ん、断れないか~。それにしても、自分の本性を界人の趣味になすり付けた様な言い訳だね?」

ディノ「うんうん。」

ギール「うぐっ……、うぅ、は、はい…。か、界人さんから"モフ"らせて欲しいとお願いをされた時…、物凄くモフって欲しいと思いました……。」

双方からの圧力に屈したギールは、当時の胸の内を認めてしまった。

例え、自分の趣味でモフられた訳じゃ無いとは言え、本能で受け入れてしまった事は事実であった。

リーベ「あははっ、無様に認めたね~?そもそも、界人のモフりを味わった事があるギールが、界人からの誘いを断れるはずがないからな~。」

ギール「うぐぐっ。」

ディノ「に、兄さん?恥ずかしい事を誤魔化すために、界人さんを盾にするのは良くないですよ?」

ギール「うぐっ、ディ、ディノ…。こ、こんなみじめな俺を見ないでくれ……。」

家に上がる前から痛烈な恥辱を受けたギールは、少し肩を落としながら"しょぼ"くれた。


リーベ「あっ、そうだ。話は変わるけど、確かディノくんとシャルちゃんは、私の旦那に会うの初めてだよね?」

ディノ「っ、あ、は、はい!うぅ、緊張します。」

リーベ「ふふっ、心配しなくても大丈夫だよ♪シャルちゃんとディノくんの事は、前以て話をしているからね♪」

ディノ「あぅ、そ、それでも緊張はしますよ……。」 

前以て話をしてくれているとは言え、実際に緊張が取れないディノは、初めて会う"お父さん"に対して、既に会う前から"ソワソワ"し始めていた。

これに対してギールは、名誉挽回のためにディノを安心させようとした。

ギール「だ、大丈夫だよディノ?うちの父さんはそんなに怖い人じゃないよ?」

ディノ「ほ、本当ですか?」

ギール「あぁ、本当だよ♪むしろ、母さんより親しみやす……っ!?」

ディノを安心させるべく、母親のリーベと比較しようとしたギールであったが、これをよろしいと思わないリーベに肩を掴まれてしまう。

リーベ「ギ~ル~?私と比べて何だって??」

ギール「か、母さんって、いたたっ!?」

ディノ「はわわ!?お、お母様!?お、お止め下さい!?」


その後、リーベにお灸を据えられたギールは、ある意味緊張がほぐれたディノと共に、ようやく家に上がるのであった。


しかし、ギールとディノが家に上がった瞬間。

何かしらの匂いを察知したリーベが、思わずギールを呼び止めた。

リーベ「ん?クンクン…、ねぇ、ギール?もしかして何だけど、お土産に"生きたけもの"を買(狩)ったりしてないわよね?」

ギール「えっ、"生きた獣"?いやいや、そんなの買って来る訳ないだろ?向こうで買って来たのは普通にお菓子とかだよ?」

リーべ「うーん、それにしても変ね。クンクン。」

何とも美味しそうな匂いにリーべは、ギール周辺を嗅ぎ始める。

ギール「っ、お、おい、やめろって!?いくら匂いを嗅いだ所で、"生きたけもの"が出て来る訳ないだろ!?てか、旅行先で買って来る様なものじゃないよな!?」

リーベ「クンクン、このカバンじゃないわね……。」

ギール「お、おい、話を聞けって!?」

ギールの静止を無視して、カバンの匂いを嗅いでいるリーベに対して、ここでディノが証人としてリーベに話し掛ける。

ディノ「あ、あの~、お母様?疑う気持ちは分かりますが……、私たちは、その様な生き物を買った覚えはありませんよ?おそらくですが、"生きた獣"の匂いがするのは、宿泊先の妖楼郭に数多くの獣人系の方々が居たからだと思いますよ?」

ギール「っ、そ、そうだよ母さん!?も、もし仮に匂いがするのなら、それはきっと、昨日シャルと一緒にモフった豆狸くんの匂いだよ!?」

リーべ「いいえ……、この匂いは、触れ合い程度で着いたレベルじゃないわ…クンクン、えぇ、これは間違いなく持ち込んでいるわよ。」

実際にリーベの嗅覚は、ギールの嗅覚よりも鮮明であった。

そのためリーベは、匂いを嗅ぎ続けるに連れて、次第にギールの肩に掛けている大きなボストンバッグに鼻を近づけた。

リーベ「クンクン…。っ、間違いないわ…。このバッグの中から匂うわ。」

どうやら匂いの元は、ギールの肩に掛けているボストンバックの中から漂っている様であった。

ギール「えっ、バッグから?…クンク、うーん、匂いはしないけどな?」

母の指摘に、思わずボストンバッグに鼻を近づけ、匂いを嗅いで見るギールであったが、不思議な事に"生きた獣"の匂いは全くしなかった。


リーべ「うーん、それなら、ちょっと開けて見せてもらえるかしら?」

ギール「えっ、ま、まあ、いいけど…、よっと。」

母の指示に促されるまま、ギールはボストンバッグを下ろし、そのままファスナーを開けて見た。

するとそこには、何とも可愛らしい豆狸がくるまっていた。

そう、その豆狸とは、化堂里屋で働いていた"豆太"であった。

ギール「えっ!?ま、豆太!?」

ディノ「えっ!?ど、どど、どうしてこんな所に!?」

予想外の展開に二人は驚愕した。

バックの中には臭い消しのためか、無臭の芳香剤が五つほど詰められていた。

リーべ「ねえ、ギール?この小さい子供は何かしら?」

何とも人拐いでもしたかの様な光景に、警界官でもあるリーべは、漆黒の長髪を逆立てながら大噴火前のきざしを見せていた。

これに対して全く身に覚えのないギールとディノは、慌てた様子できびしい誤解を解こうとした。

ギール「ち、違うんだ母さん!?こ、この子はその~、ば、化堂里屋って言うお店で働いている豆狸なんだけど~。」

リーべ「ふぅーん。鬼畜ね…。」

軽蔑の瞳に続いて、指の関節をボキボキと鳴らすリーべは、母親として、また警界官の一人として、非道な行いに手を染めた息子に対して、容赦のない制裁を執行しようとしていた。

ギール「まーっ!?待て待て!?本当に身に覚えがないんだって、その、何だ…、信じてくれないと思うけど、俺も今気づいたんだよ!?」

ディノ「そ、そうですよお母様!?じ、実は私も、今気づいたのですから!?」

リーべ「…本当に?」

瞳を赤く光らせるリーベの前で、二人は必死に頷いた。

するとリーベは、赤く光らせた瞳を閉じると、普段の黒い瞳に戻した。

リーべ「…ふぅ、それならこの子には、ちょっと事情を聞いて見ないとダメね。取り敢えず、この子が目を覚ますまで、シャルちゃんと一緒に寝かせて上げなさい。」

ディノ「わ、分かりました!それなら私が、お二人を部屋までお連れします!に、兄さんシャル様を…。」

ギール「あ、あぁ、頼む。」

お休み中のシャルと豆太を両脇に抱えたディノは、"シャルと共同で使っている部屋"へと向かった。

一方のギールはと言うと、母親のリーベに連れられ、一足先に父親と界人が居るリビングへと向かった。


だかしかし……。

現在のリビングには、いい歳をした二人の大人が、現在進行形でイチャついていると言う、何とも"カオスな展開"を繰り広げていた。

そのため、ギールがリビングに近づくにつれて、二人の生々しいやり取りが、次第に大きく聞こえ始める。

ショタ声「わふっ!?だ、だめだよ界人…、きゃふん!?こ、こら!?尻尾はひゃめろぉ~♪」


何とも弱々しい声を響かせる父親の声に、ギールは慌ててリビングの扉を開けた。

ギール「っ、父さん!一体どうした…の…。」

扉を開けた先には、思わず開けた扉を閉めてしまいそうな光景が広がっていた。

見ためは、小学生くらいだろうか。

純粋な"けも耳ショタ"こと、ギールの父親である"ケトー・フォルト"が、両津界人の膝上ひざうえに乗せられながらモフられていた。

更に、ケトーが着ている白いワイシャツのボタンが、界人の手によって全て外されており、何とも犯罪チックな光景が広がっていた。

ギール「な、ななっ、何をしているんですか!?」

ケトー「わふっ!?ぎ、ぎぎ、ギール///」

界人「やあ、ギールくん。二日ぶりかな?」

息子に"あられもない"姿を見られて恥ずかしがるケトーに対して、ギールがリビングに入って来ても構わずモフり続けている界人は、満面な笑みを浮かべながらギールに挨拶を交わした。

リーべ「おやおや?目を離した隙に、結構可愛がられているじゃないか?」

ケトー「ふあっ、や、やめぇ…。ま、また…、リーベとギールの前で…、こんなぁ~。」

界人「はぁはぁ、やっぱりケトーの毛並みは最高だ…。すぅはぁ~、うぅ~ん、癒されるな~。」

ギール「うぅ…。」

自分がモフられるならまだしも、いつも以上に激しくモフられている父親の姿は、ギールに取って衝撃的な光景であった。

仮に、ギールの目に映る衝撃的な光景を例えるなら…。

一種の寝取られ展開だろうか…。

もっと詳細に言えば…。

家に帰宅して早々、リビングのソファーの上で、"大好きな母親"と"知り合いの叔父さん"が、仲良さそうにイチャついてる瞬間をの当たりにしてしまった……、くらいの衝撃であろうか。

ここで長話。

本来なら修羅場になり兼ねない光景ではあるが、以外にもフォルト家に取っては、ごくごく当たり前な光景であった。

だがしかし、今や思春期を迎えているギールに取って、情けなく"モフ"られいる父親の姿は、見ているだけでも恥ずかしいものである。

更には、気持ち良さそうにしている父親の表情を見ていると、何故か自分も"モフ"られたいと言う、複雑な感情にられてしまうため…、ギールとしても、両親の醜態をあまり見たくはなかった。

特に、母親のリーベに至っては、"直人の母親"にモフり倒されるなり、犬のように尻尾を振っては服従してしまう一面があった。

ちなみに、"直人の母親"も警界官であり、夫の界人からリーベを引き抜くと、たった一夜にしてリーベを飼い慣らしてしまい、今では相棒兼ご主人様である。

そのため、フォルト家と両津家の間には、かなり親密な関係が築き上げられていた。

しかし、両家の息子であるギールと直人の接点は少なく、あくまでも親同士の馴れ合いに過ぎなかった。


それゆえに、例えギールに取って目に余る行為だったとしても、ケトーとリーベに取っては、"相棒"とコミニュケーションを取る上で大切な事であった。

そもそも、好きな主人に対して"揉みくちゃにされたい"、あるいは"揉みくちゃにしたい"と言う願望は、このフォルト家だけに限らず…、全狼族としてのさがでもある。

また一部では、愛する人が目の前で"揉みくちゃにされているにも関わらず、興奮のあまり魅 入ってしまう者もいる訳で……。

目の前で"揉みくちゃにされている"ケトーを助けようとしないリーベは、舌なめずりをしながら参戦のタイミングを見計らっていた。

ここで昔話。

ギールの父親である"ケトー"の身長は、145センチ程の小柄な体型であり、更には小学生並の童顔が特徴である。

これに対して、身長180センチを余裕で超え、更にはスタイル抜群と言う"リーべ"と比べてしまうと、"ケトー"は弟どころか、"リーベ(嫁)とギール(息子)"の間に生まれた子供の様に見えてしまうのが現状である。

そのためケトーは、高身長への憧れを持ち続け三十代後半になっても、毎日の牛乳摂取をおこたってはいない。

しかし、ケトーの成長期は、かなり早い段階で完全に止まっているため、今更牛乳を飲み続けていても、ショタ要素を強くするだけであった。


そしてケトーとリーべの関係は、家が隣同士で幼馴染と言う何とも無難な関係であり、意外にもケトーの方が二歳くらい歳上でもあった。

それにも関わらず、成長スピードの方は、鈍足なケトーと比べて、飛躍的な成長を遂げたリーベは、あっという間に立派な姉御体型に育ってしまった。

これに対して当時のケトーは、自分の成長期をリーべに吸い取られてしまったと、思わず疑ってしまう程であった。

こうなってしまうと…、当然、歳上のケトーが歳下のリーべにもてあそばれる様になり、無意識に健全な"おねしょた"展開を築き始めて行った。


しかし、そんな健全な"おねしょた"展開は、永遠に続く事はなかった。

月日が流れるに連れて、次第にリーべが"グレ"始めると共に、里の中でも類を見ない程の問題児へと変わってしまった。

更に、今まで健全であった"おねしょた"展開も崩壊し、不健全……いや、本来あるべき"おねショタ"展開へと変わり果ててしまったのであった。


どうして、健全な"おねしょた"展開が崩壊したのか。

少し詳細を見てみよう。

見た目は、幼く弱々しい容姿をしているケトーであるが、実は武術の才能があり、もっと身長さえあれば里の中でも、一、二を争う逸材であったかもしれないと言われていた。

更に問題児のリーべとは、幼少時代からの付き合いでもあり、ある程度の動きも見抜いていた。

そのため、リーベが里で暴れたり、白狼族の里へおもむいて喧嘩しようとした時には、いつも名指しで駆り出されており、問題児のリーベをたった一人で押さえ込んでいた。

しかし、押さえ込む時の成功率は、全勝十割とは行かないが、それでも七割程の成功率を収めていた。

当時の黒狼族には、ケトー以外でリーべを止められる者が居なかったため、その分の里からの信頼は凄く厚いものであった。


だがしかし。

この成功率の七割とは表だけの勝率…。

果たして裏の方はどうであろうか…。

幼い姿のケトーに取って、何よりの弱点が淫行であった。

本来の"おねショタ"展開なら、間違いなくショタの方が、一方的に勝つのが鉄板であるが、現実はむごい事に悲惨な物であった。

何故なら、日中の勝負でケトーか勝ったとしても、必ずその日の夜に、リーべが夜這いを仕掛けて来るのである。

しかも、一度リーベに狙われてしまったら、もはや逃げる事は不可能……。

何処かに隠れたとしても……、家を飛び出して逃げたとしても…、当時武術以外のステータスで圧倒的に負けていたケトーは、必ず夜の獣と化したリーベに捕まってしまうのであった。

下手な抵抗を見せれば、リーべは容赦なくケトーを性的に食い尽くし、気絶するまで"わからせ"ていた。

そのためケトーは、勝負に勝ったその日の夜だけは、必ず自室で大人しくしていたそうな…。

ちなみに、大人しくしている時の夜這いは、抵抗する時よりも優しく、実に"おねショタ"らしい行為に続いて、言葉責めによる"わからせ"プレイまでしていたと言う。

また、リーベが夜這いに来ない時には、色々な意味で心配したケトーが、リーベの家におもむいたりしていた。

そして、あられも無い姿で寝ているリーべに興奮したケトーが、本能のままに襲ってしまう事も"しばしば"あったが、結局返り討ちになってしまうのは言うまでもない。

何とも淫行だらけの日常ではあるが、ほのぼのとした一面もあり、中でも双方の内、誰かが風邪で寝込んでしまった時には、お互いに看病をし合っていたそうな。



一方で、逆に日中の勝負で負けてしまった場合は、そのままリーべに連行され、人気ひとけの無い所で一回搾られては、また誰かと喧嘩をし、またケトーを性的に搾っては、また喧嘩をすると言う、魔の無限ループを繰り返していた。


そのため、ほぼ毎日の様に体を重ね合っている二人は、白狼族を含む里中からドン引かれていた。

それでも、リーベの危険日を含めた前後三日間は、何があっても休戦であったそうだ。

これにより、ケトーとリーベの二人は、次第に"里一番のバカップル"であると言われる様になって行くのであった。


そして現在…。

"里一番のバカップル"と言われたケトーは、両津界人と言うご主人様にモフられながら、快感による興奮を堪能していた。

ケトー「はぁはぁ、も、もう…いいだろ?はぁはぁ、許してよ…界人…。」

界人「っ、そ、そんな顔をされたらで言われたら、止め様にも止められないだろが~♪はぁはぁ、ケトーは俺の癒しだよ~。はむはむ、」

ケトー「ふぁ~あぅ~。み、耳をあまがみするにゃ~。」

界人「おいおい、"にゃ~"だと猫だぞ?犬なら"わふぅ~"だろ?」

良い歳したおっさんが、歳の近い美少年をからかうかの様に、弱点である尻尾を攻め始めた。

ケトー「わふぅ…。こ、これでいいだろ……。」

界人「あははっ、そんな弱々しい姿で言われてもな~♪」

ケトー「ふぁ~、んんっ♪」

逆らえない激しい攻めに反応し、徐々に涙目になって行くケトーの姿は、更に界人の変態心に火をつけてしまう。

何とも羨ましい光景に、我を忘れそうになるギールは、理性がたもっている内にリビングから去ろうとする。

ギール「ごくり、え、えっと、そろそろ俺、部屋に戻ろうと思うので、あ、後は、ご、ごゆっくり~。」

リーベ「あっ、ちょっと待てギール。」

ギール「っ、な、何かな?」

リーベ「部屋に戻るついでに、シャルちゃんと狸くんの様子を見てやってくれないか?」

ギール「あ、あぁ、別に構わないけど…。」

リーベからの頼み事を聞いたギールは、早々にリビングから脱出すると、そっと胸を撫で下ろした。

ギール「はぁ…、相変わらず酷い光景だったな。」

ディノ「あ、兄さん。もう、お父様と界人さんの挨拶を済ませたのですか?」

ギール「っ!?ディ、ディノ!?あ、あぁ、済ませたは、済ませたけど~、い、今は入らない方がいいかな~。」

ちょうど、階段から降りて来たディノに対して、少し取り乱しているギールは、リビングへと繋がる扉を背にして、あの卑猥な光景を見せないようにした。

ディノ「ふぇ、どうしてですか?……っ!も、もしかして、怒っていましたか!?」

ギール「あ、いや、怒ってはないけど…、うぅ…、と、とにかく、今は挨拶なんかよりも、荷物の後片付けが優先だよ?」

ディノ「えっ、は、はい、分かりました。」

怪しくも何かを隠そうとしているギールの仕草を察したディノは、大人しく廊下に置かれた荷物をギールと分担するなり、個々の部屋へと向かった。


一方その頃、リビングに取り残されたケトーは、頃合を見計らっていたリーべの参戦も重なり、終わりの見えない快楽漬けに合うのであった。



それから数分後。

自室である程度、荷解にほどきを済ませたギールは、早々に豆太の様子を伺うため、シャルとディノが使っている部屋へと訪れていた。


ギール「うーん、それにしても、どうして豆太は、バッグの中に忍び込んでいたんだろうな…。」

ディノ「うーん、もしかしたら、化堂里ばけとおり屋の店主さんの勧めで修行に出されたのでは?」

ギール「修行か…。うーん、可能性は無くはないなけど……。うぅ、それにしても、シャルと豆太は仲良さそうに寝ているな。」

ギールの目の前には、ベッドの上でスヤスヤと眠りながら互いに抱き合っているシャルと豆太がいた。

ディノ「ふふっ、まだ気づいていないとは言え、シャル様に取っては、棚から"ぼたもち"見たいな展開ですよね。」

ギール「まあ、そうだろうな。なんせ豆太は、あれ程シャルが求めても動じなかった子だからな。」

ディノ「あはは、もしここで、シャル様が目を覚ましたら…、一体どんな反応をしますかね♪」

ギール「そりゃあ、驚いた数秒後にはモフり倒すだろうな。」

ディノ「で、ですよね~。」

シャル「すぴぃ~、はむはむ。」

豆太「んんっ……、すぅすぅ~。」

ギール「っ、ごくり……、(か、可愛い……。)」

ディノ「な、何とも言えないほのぼのしい光景ですね~。」

ギール「あ、あぁ、そうだな……。」

リビングで行われている卑猥な光景と比べて、今のシャルと豆太の光景は、物凄く心休まる感じるであった。

ギール「ふぅ、それより…、理由は何であれ、豆太が"うち"に来ようとしたのは、あの芳香剤の量を見て何となく察しはつくけど…、そもそも、どうして"うち"を選んだのか分からないな。」


ディノ「た、確かに…、あの芳香剤は、間違いなく兄さんの鼻を誤魔化すために入れた物でしょう……。っ、も、もしかしたら、界人さんが家に来てるのと、何か関係があるのではないでしょうか?」

ギール「えっ?ま、まさか~、たまたまじゃないか?」

ディノ「い、いえ、今回宿泊した妖楼郭の一件と言い、化堂里屋の店主さんに"若"と呼ばれていた直人さんと言い……。」

ディノ「おそらく、化堂里屋の店主さんと界人さんは繋がっていて……、シャル様と豆太くんの関係を知った界人さんが、豆太くんをフォルト家に導いて、そのまま春桜学園に編入させようとしているのではないでしょうか?」

ギール「っ、な、何か、すげぇ有り得そうな話だな……。」

ディノ「で、ですよね!ですよね!」

何とも説得力のあるディノの推理に、ギールは反論をする余地もなかった。

しかし、仮に推理が当たっていたとして、ギールには不安な要素が一つだけあった。

ギール「うーん、仮に豆太が学園に編入したとして、この世界の授業について来れるのかな?」

ディノ「っ、た、確かに、向こうの世界では、勉学的な知識より、社会的な知識に特化しているようにも見えましたからね。それに、この世界の勉学は、兄さんでも根を上げてしまう程ですもんね……。」

ギール「うっ、お、おいディノ…、一言余計だぞ。」

無意識とは言え、自分より頭の良いディノに痛い所を突かれたギールは、苦笑いをしながらディノにツッコンだ。

ディノ「っ、ご、ごめんなさい兄さん!?えっ、えっと、その~、べ、別に行為で言った訳じゃなくて……。」

ギール「お、落ち着けディノ!?また、余計な事を言おうとしているぞ!?」

ディノ「~っ、ご、ごめんなさい!?」

真面目過ぎる故に、パニックを起こすと要らぬ事を喋ってしまうディノに対して、現状被害者になり兼ねないギールは、慌てて止めに入った。


ギール「ふぅ…、まあ、何はともあれ、事情を知るためにも、一刻も早く豆太には起きて欲しいな。」
 
ディノ「で、ですが、気持ち良さそうに寝ている豆太くんを無理やり起こすのは、流石に可哀想ですよ?」

ギール「あはは、分かってるよ。でも、このまま起きてくれなかったら、母さんが性的に手を出すかもしれないからな。」

ディノ「ま、まさか~、豆太くんは見たところ子供ですよ?お母様に限って、流石に子供は襲わないかと…。」

ギール「まあ、それは直ぐに分かるとは思うよ……。」

未だにリーベの本性と、"幼い少年姿のケトー"を見ていないディノは、悠長にフラグを立てていた。

ギールとしても、今リビングで起きている現状をディノに伝えたい所だが、恥ずかしくて言えたものじゃなかった。

それから十分後。

ギールとディノが、他愛のない話をしている中、シャルと抱き合いながら寝ていた豆太が目を覚ました。

豆太「んんっ…、はへ、ここは?」

ディノ「あ、兄さん兄さん!起きましたよ!」

ギール「ん、おぉ、起きたか。おはよう豆太。」

豆太「はれ…、ギールひゃん?んっ……うぅん?…ふぇ!?シャ、シャルさん!?」

かなり寝ぼけていた様子の豆太は、ギールの顔を見ても薄い反応を見せていたが、隣で寝ているシャルに気づくなり、突然大きな声を上げた。

シャル「ぬわっ!?な、なな、何なのだ急に!?一体何が起きたのだ…って、ん?お、お主は…、っ、も、もしかして、ま、豆太なのか!?」

豆太「は、はわわ!?ご、ごご、ごめんなさい///」

豆太の大声で起こされたシャルは、この場に居るはずもない豆太の姿を見るなり驚愕した。

対して豆太は、顔を真っ赤にさせながら、ベッドの上で土下座を始めていた。

ディノ「ま、豆太くん!?」

ギール「な、何をしているんだよ!?」

シャル「っ、ど、どうして豆太が謝るのだ!?」

豆太「うぅ、だ、だって…、ぼ、僕は、大きな声でシャルさんを起こしただけじゃ飽き足らず……、無礼にもシャルさんの隣で寝ていましたから…///」

シャル「っ、な、なんじゃ、その程度の事で謝っていたのか?」
 
豆太「あぅ…、ほ、他にも…、ギールさんのバッグに忍び込んで、黙って付いて来ました……。」

"モジモジ"しながら謝る豆太の姿に、シャルは"にっこり"と笑みを浮かべた。

シャル「ほぅ~、そうであるか~♪黙って付いて来てしまったのか~♪うむうむ、そこまでして余に会いたかったとは、いやつよの~♪」

豆太「ふぇ、あ、いえ、そ、それは……。」

シャル「ふっふっ、皆まで言うな♪今日から豆太は、余の"弟"して可愛がってやるのだ~♪」

豆太「ふぇ~!?」

豆太の健気な行動に、勝手な解釈をして心を打たれたシャルは、"もふもふ"の豆太に飛びついた。

幼女にモフられるケモ耳ショタ……。

意外と悪くない光景に、ギールとディノは思わず目を奪われた。

ギール「……ごくり。(な、何だ……、この可愛い生き物は……。)」

ディノ「……ジーー。(こ、これがとうといと言うやつですか!?)」

シャル「ほれほれ~♪ここか?ここがええのか~♪」

豆太「ふぁ~、ひ、ひもひぃ~♪」

シャル「ぐへへ……、ん、むぅ?それよりこの部屋……、何だか見覚えがあるな~?もしかしてここは、余とディノの部屋か?」

ギール「っ、今更いまさら気づいたのかよ……。全く、シャルが熟睡している間に、俺とディノで運んだんだよ?」

シャル「っ、そ、そうなのか?ふむぅ、それはすまぬ事をしたのだ。」

ギール「っ、お、おう。(や、やけに素直だな。もしかして、豆太の影響か?)」

いつもなら突っかかって来るはずのシャルが、珍しく素直に謝った事に、思わずギールは驚いた。

するとシャルは、豆太をモフるのを一旦止めると、とある本題を切り出し始めた。

シャル「こほん、さて豆太よ?どうしてバッグの中に紛れてまで付いて来たのだ?」

豆太「ふぇ…、っ、は、はい!?えっ、えっと、実はその~……、織奉しきぶ様のご指示で、現世うつしよの世界を見て学んで来る様にと言われまして…、まずはギールさんの家にうかがえと…。」

ギール「っ、そ、それなら、狭苦しいバッグの中に紛れてなくても…。」

豆太「ご、ごめんなさい…。あ、"あの"様なお別れ方をした手前……。やっぱり、一緒に付いて行きますと言うのは、流石に恥ずかしくて…。」

ギール「…た、確かに、"あの"別れ方をしたら気まずいよな。」

豆太「は、はい……。そ、それで、ご無礼と承知ながらも、白備様に頼んでバッグの中に入れてもらったのです。」

シャル「ふむふむ、なるほどな。と言う事は、この家に豆太が住む事は決定してる訳だな。」

豆太「えっと、そ、それが…、宿泊等の事については、何も聞かされていなくてですね…。」

シャル「むっ?織奉とやらが、この家に伺えと申したのなら、ここに住むと言う事ではないのか?」

豆太「え、えっと、一応、織奉様からは、それなりの手配はして置くと言っていましたので……。」

シャル「むう、ここまで来たのなら、余の弟として来て欲しいのだが……。」

ギール「うーん、豆太の話を聞く限り…、完全に宿泊先は"うち"だと思うけどな~。」

ディノ「や、やっぱり、化堂里屋の店主さんと界人さんは繋がって……。」

豆太の宿泊先でギールたちが悩んでいる中、するとそこへ、愛する夫をモフり倒したリーべが、ノックもしないで部屋に入って来た。

リーべ「ギール入るよ?」

ギール「っ、はぁ、部屋に入ってから言う台詞じゃないよ母さん。」

リーベ「細かい事は別に構わないだろ?それより豆太くんの事なんだけど、しばらく"うち"でホームステイする事になったから。」

ギール「ホ、ホームステイ…。っ、も、もしかしてその話、界人さんから!?」

リーべ「ん、あぁ、そうだけど、よく分かったな?」

ギール「っ、あ、いや、勘…かな?(ま、まじかよ…、もしかして、ディノの推理が当たっているのか!?)」

ディノの推理通り、界人と織奉が繋がっている事を証明するかの様な展開に、ギールはこの後の展開も含めてディノの推理に驚いた。

ディノ「あ、あの、お母様?もしかして、春桜学園に編入する話もあったりして…。」

リーべ「…ぷっ、あはは、何だそこまでお見通しだったのか~♪そうだよ、豆太くんは明後日から春桜学園に通う事になってるよ。」

ディノ「な、なるほど……。(ま、まさか、私の推測が当たってしまうとは……、そ、それより、界人さんの権利と言うか、人脈が広過ぎるあまり、逆に怖く感じてしまいます……。)」

ギール「……。(す、凄い…。ディノの推理が全部当たったよ。)」

ホームステイに続いて、春桜学園の編入の件も当てたディノに対して、ギールは知的なディノの才能に深く感銘を受けるのであった。


一方で、豆太のホームステイ先と学舎まなびやが、トントン拍子に決まって行く中で、至れり尽くせり状態の豆太は、思わずベッドから降りるなり、リーべに頭を下げた。


豆太「あ、あの、色々とありがとうございます。えっと、その…、ぼ、僕は、豆狸の豆太と言います!ふつつか者ですが、よ、よろしくお願い…うわっ!?」

シャル「っ、なっ!?」

ディノ「ふえ!?」

ギール「か、母さん!?何やってんだよ!?」

リーベ「~っ!か、可愛い~♪」

豆太「んんっ~!?」

愛する夫より、少し幼い豆太を見てしまったリーベは、餓えた狼の如く幼い豆太に飛び掛かるなり、実の我が子の様に抱き締め始めた。

これに対して、女性への耐性が皆無に近い豆太は、刺激が強過ぎる姉御ボディの感触に、思わず声を出しながら困惑していた。

豆太「はわわ!?」

リーべ「はぁはぁ、眠っていた豆太くんも可愛いかったけど…、起きた豆太くんも実に可愛いな~♪はぁはぁ、しかも、シャルちゃんとディノくんを並べたら…、更に可愛いかも…じゅる。」

豆太「~っ!!?」

純粋なショタ童貞である豆太に取っては、高確率でトラウマになってしまう程の抱擁ほうように、ビクビクと震えていた。

これに対して、ショタロリ好きのリーべは、今からでも、豆太、シャル、ディノの三人を並べて摘み食いをしようかと思っていた。

そのため、リーベの息使いは非常に荒く、綺麗な黒い瞳には、淫靡いんびなハートマークが浮かび上がっていた。

リーベ「はぁはぁ……、一つ豆太くんに聞くけど……、豆太くんは童貞かい?」

豆太「はぅ///」

大人の女性に初めて迫られている豆太は、今までに感じた事の無い感情に陥っていた。

次第にモゾモゾとし始める下半身に続いて、バクバクと鳴り止まない心臓の鼓動。

豆太の理性もオーバーヒート寸前であった。

正直、早く対策を取らないと、冗談抜きで豆太を主食に、シャルとディノが性的に食べられてしまう可能性があった。

そのためギールは、三人の純潔を守るため、意を決して母親の尻尾に手を伸ばした。

ギール「か、母さん!ストープっ!?」

リーベ「きゃふっ!?ぎ、ギール!?」

本来、狼族に取って子供が親の尻尾を掴む事は、親の頬にビンタをするのと同じであった。

ギール「はぁはぁ、今日来たばっかりの豆太に何しようとしているんだよ!?仮にも界人さんの推薦の子だぞ!?」

リーベ「っ!?あ、あぁ、そ、そうだったな……。すまない豆太くん……、あまりにも可愛いものだから、つい本能を暴走させてしまった。」

意を決したギールの行動で、何とか理性を取り戻したリーベは、大人しく抱き締めていた豆太を降ろした。

だがしかし……。

豆太「はぅ~。」

リーべ「っ…ごくり、や、やっぱり、今夜のおかずは、狸鍋かな…じゅる。」

ギール「っ、母さん!」

豆太の細かい仕草に心を射抜かれ、再び理性を失いかけているリーベに対して、ギールは無意識に一喝した。

※ちなみに狸鍋とは、豆太と一緒にお風呂へ入り、そのまま性的に食べる事である。

小生意気にも、立て続けにギールから注意を受けたリーべは、少し不機嫌そうに返事を返した。

リーべ「もう~、ギールはうるさいな~?ちょっと、触れ合うくらいは良いだろ~?それともギールは、私の趣味にケチでもつける気か?」

ギール「か、仮にも母さんは警界官だろ!?何しれっと法に触れようとしてるんだよ!?」

リーべ「今日は非番だから良いだろ?」

ギール「良い訳ないだろ!?少しは"歳"を考えろよ!?」

リーベ「っ…ほぅ~、少しは一丁前になったと思えば……、少し図に乗り過ぎている様だな……。」

ギール「っ!?」

余計な一言を言い放ち、リーベの逆鱗に触れてしまったギールは、一瞬"やばい"と感じてその場から逃げようとするも、呆気なくリーベに捕まり、そのままコブラツイストを掛けられてしまった。

ギール「あだだ!?ギブギブっ!?」

リーベ「歳がなんだって~?」

ギール「な、何でもない!?ごめんって!」

リーベ「あぁん?本当に反省してるか?」

ギール「は、反省……うごご!?し、してます!してますから!お、折れる~!」

リーベ「ならいいわ。」

圧倒的な力の前に屈したギールは、その場に情けなく倒れ込んだ。

ディノ「はわわ!?に、兄さん!?」

豆太「す、凄い……。」

シャル「むぅ、今のはギールが悪いのだ。」

リーベ「ふぅ、それじゃあ、私はリビングに戻るから、後は自由に楽しんでいなさい♪」

口の悪い息子を懲らしめたリーべは、気分良さげに部屋から去って行った。


その頃。

愛するリーべに上半身を舐め上げられ、更には界人に散々もふられ続けたケトーは、快楽漬けによる疲労で"ぐったり"としていた。

ケトー「はぁはぁ…。」

界人「いや~、まさかリーべも参戦して来るとは思わなかったな~♪俺が居るってのに、お構いなしにケトーを責めまくってな~。」

ケトー「うぅ、酷いよ…、二人して…。」

界人「あはは、安易に可愛い仕草を見せるケトーが悪いよ♪」

ケトー「あぅ、か、可愛いって…言うなよ。ぼ、僕だって…、本気を出せば、界人みたいに大きくなれるんだぞ?」

界人「あはは、全魔力を使って二分程度しか大きくなれない低燃費がよく言うよ~♪しかも、"僕"ってなんだよ~♪やっぱり、可愛いじゃないか~♪」

ケトー「うぅ、うるひゃい……。」

界人に可愛い醜態を晒してもなお、依然として自らを"かっこよく"見せようとするケトーの威勢は、ただ可愛さを増長させるだけで、皮肉にも逆効果であった。

界人「あはは、ごめんよ。それよりケトー?今回は、急なお願いを聞き入れてくれてありがとうな?」

ケトー「っ、べ、別に、このくらい何ともないよ。」

界人「ははっ、そうかそうか…。あっ、そうだ。この件のお礼をしないといけないな~。今ならリーべもいない分けだし…。」

ケトー「っ、ば、ばかっ!?ちょ、調子に乗るなよ!?い、いくら界人でもそれだけは…。」

界人「ふふっ、やっぱり……、リーべに見られながらの方がいいのか?」

ケトー「そ、そう言う訳じゃないよ!?」

界人「ふーん、そうなのか?確かギールくんは、リーベに似て肉食系だと聞いているけど、それに比べて父親のケトーは草食だな?」

ケトー「うっ、うるさいな!?き、気にしている事を言うなよ……。」

界人「あはは、ごめんごめん。あと、今の話は冗談だ。流石に全裸にさせるのはライン超だもんな。」

ケトー「ふぇ…。」

嫌と言いながらも、内心ケトーは少し期待してたのだろうか……。

やらないと分かった瞬間、ケトーは露骨に物欲しそうな表情をしながら、界人を見つめ始めた。

界人「さてと、用も済んだ事だし俺は帰るよ。後はリーべに構ってもらうと良いさ。」

ケトー「っ、も、もう行ってしまうのか…。」

界人「まあな、草津事件の報告書を全部整理して、取りまとめないとだからな……。」

ケトー「そ、そうか……、うぅ、な、なら俺も手伝うからもう少しだけ…。」

界人「あはは、大丈夫だよ。それよりケトーは、"異界支部"の出張明けで疲れているだろ?たまにはゆっくり休んで、家族のために過ごしてやれよ。」

ケトー「わふぅ、わ、分かったよ……んんっ…。」

界人「よしよし、それじゃあ、またな。」

愛するケトーの頭を撫でた界人は、意気揚々とリビングから去ろうとすると、そこへ丁度良くリーべが戻って来た。

リーべ「ん?おぉ、何だ界人?もう帰るのか?」

界人「あぁ、草津事件の取りまとめがあるからな。」

リーべ「そ、そうか……、ふっ、また来てくれよな♪」

界人「おぉ、また寄らせてもらうよ♪」

重要な要件を聞き入れてもらい、更には可愛い愛犬のケトーをモフりまくった界人は、気分良くとフォルト家を後にするのであった。



それから三十分後。

シャルとディノの部屋で、楽しく遊んでいたシャルたちは、ようやくギールの父親であるケトーと面会をするため、事後処理を終えたリビングへと訪れていた。

まず、ギールの父親であるケトーが、高身長であると思い込んでいたシャルとディノは、想像以上に小さい姿のケトーに驚いていた。

そのためシャルは、思わず心の声を漏らした。

シャル「思っていたより小さいのだ…。」

ディノ「っ!?シャ、シャル様失礼ですよ!?」

ケトー「あぅ……。」

リーベ「…ふふっ♪」

挨拶の第一声で、率直に気にしている事を突っ込まれ、思わずへこんでしまったケトーに対して、嫁のリーベは楽しそうに微笑んでいた。

ディノ「も、申し訳ありません。しゃ、シャル様、ご挨拶を……。」

シャル「う、うむ。こ、こほん、先程は失礼をしたのだ。よ、余は先月から世話になっている、魔王シャル・イヴェルアである。これからも、よろしくお願いするのだ。」

ディノ「わ、私は、シャル様にお仕えしております。スライムのディノと申します。シャル様と同様、これからもよろしくお願いします。」

ケトーとの対面で緊張しているのか、それとも動揺しているのだろうか……。

真面目なディノはともかく、お転婆なシャルに至っては、普段の陽気な態度とは裏腹に、珍しく挨拶がぎこちなかった。

豆太「は、初めまして、ぼ、僕は豆狸の豆太と言います。今日からお世話になります!」

ケトー「う、うん、こちらこそよろしくね。一応、三人の話はリーべと界人から聞いてるよ。これからも、ギールと仲良くしてくれると嬉しいな~。」

三人の自己紹介に、平然と答えるケトーであるが、精神的な面においては、依然とへこんでいた。

するとそこへ、更に追い討ちを掛けるかの様に、今度は愛するリーべからとんでもないお願いを持ち掛けられる。

リーべ「ふふっ♪ねぇ、あなた?今晩の"おかず"として、ディノくんと豆太くんを食べてもいいかしら?」

ケトー「っ、なっ!?だ、だめに決まってるだろ!?義理でも息子たちだぞ!?」

リーべ「だからこそよ~♪」

ギール「…っ、はぁ。(やっぱり、交渉してるよ…。)」

リーベとしては、義理ならセーフだと思っているのだろうか。少し前にギールから止められたショタ食いをケトーの認可の元で強行しようとしていた。

ケトー「うぅ、俺のじゃ、物足りないのか?」

リーベ「はうっ!?くっ、そんな顔されたら……、我慢できないじゃない…ケト~♪」

ケトー「んんっ~、ふあっ♪ちゅっ…んんっ~♪」

突然始まった夫婦の営みに、ギールを除く三人のショタロリたちか硬直する中、呆れて物が言えないギールは、硬直した三人を回収するなり、早々にリビングを去るのであった。

こうして、唐突ながらフォルト家にやって来た豆太は、晴れてフォルト家の一員として迎え入れられたのであった。
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