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春より参られし桜華様!

第23話 女子テロと囚われの主

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  午前中の授業が始まり、何とか二年二組の"駄犬"を追い出せた桃馬であったが…、クラスメイトの"駄犬"については、どうする事もできなかった。

幸い、授業中だけは節度を持って大人しくしていたが……、実際に休み時間になると、素早く桃馬に抱きつくなり過剰なスキンシップを働いていた。

大胆な頬ずりに加え、桃馬の体を触ったり……、そして"なでなで"を要求したりと……。

いつも強引なジェルドにしては珍しい、かなり"やんわり"とした激しいスキンシップを繰り返していた。

また、三限の休憩時間には、ギールまでも参戦し、桃馬を主軸に三つ巴の展開になっていた。

そのため、とうとう公開プレイ(貫通式)が近いと悟った同級生たちは、二年一組の教室から廊下まで大騒ぎとなった。



もしあの忌々しい号外さえなければ、恐らくここまで騒がしくなる事はなかったであろう。

そのため、"長岡小頼"を主軸に手を結んだ新聞部と広報部の影響力は、改めて見ると凄まじい物であった。


その後、授業よりも"身体的防衛本能"で気疲れをしてしまった桃馬は、いち早くこの空間から逃げ出そうと……、四限終了のチャイムと同時に、弁当を持って二学年棟の裏に逃げ込もうとした。


しかし桃馬は、致命的なミスを犯した。

あろう事か、カバンのチャックを開け忘れていたのだ。

そのため、四限終了のチャイムがなり始めて早々、出鼻を挫いてしまった桃馬は、五秒近く足止めを食らってしまった。

普通の人間相手なら、どうと言う事も無いタイムロスではあるが……、相手が白狼族のジェルドとなれば話は別である。

それでも桃馬は、小さな希望に賭けつつ弁当を持って走り出すも、呆気なくジェルドに首根っこを掴まれ、ズリズリと教室に連れ戻されてしまった。

桃馬「うくっ、何のつもりだジェルド。」

ジェルド「まあまあ、そう逃げようとするなよ♪今日はここで食おうぜ♪」

桃馬「嫌って言えば……どうする?」

ジェルド「ふっ、それなら力ずくでも付き合ってもらうまでだよ。それに…、ギールが物凄い勢いで迫って来ている様だし、例えここから逃げれてもギールに捕まって犯されるだけだよ?」

桃馬「な、何で分かるんだよ。」

ジェルド「ふっ、俺の聴力を舐めるなよ?あの"駄犬"の足音くらい、簡単に聞き分けられるからな。」

桃馬「あ、相変わらず手の込んだ嘘だな……。本当は、俺の逃走意欲を奪って留めようとする魂胆こんたんなんだろ?」

ジェルド「ふっ、今に分かるさ。」

正直、今更ジェルドの魂胆こんたんを見破ったとしても、背後からジェルドに強く抱き締められては、そもそも逃げようがなかった。

しかし万が一、ジェルドの言う事が本当であるなら、ある意味これは、現状を打開するための希望でもあった。


こちらにギールが来ると言う事は、十中八九シャルとディノも一緒である。

破天荒で自由気ままなシャルが来てくれれば、この変態染みた空間を引っ掻き回して、逃げるチャンスを作ってくれる可能性は十分にあった。

憲明「まあまあ、桃馬もそう嫌がるなよ?今から"好き放題"の権利が執行される訳じゃないんだから、抱き締められるくらい良いだろ?」

ジェルド「そうそう♪はぁはぁ、」

桃馬「そ、そんなの信用できるか!?ひっぅっ!?こ、ここ、こら!?み、耳元で"はぁはぁ"するな!?」

ジェルド「わふぅ~♪はぁはぁ、あの桃馬を追い詰めているこの感じ……はぁはぁ、たまらない…、はぁはぁ。」

自分の身体からだを守ろうとする桃馬の抵抗は、逆に"変態駄犬モード"に陥ったジェルドの本能を刺激してしまった。

今にも暴走しそうなジェルドの様子に、周囲の同級生たちが固唾を飲みながら見守っている中…、ジェルドにホールドされている桃馬は、ひたすら焦っていた。

このまま行けば…、ほぼ間違いなく理性を暴走させたジェルドに押し倒され…、そのままイキリ立った肉棒をねじ込まれながら犯されるであろう……。

周囲の視線とジェルドからのプレッシャーが、"ビシビシ"と感じる中、するとそこへ、待ちに待った救世主の声が廊下の方から聞こえ始める。

シャル「ぬわぁ~、離すのだ~!?桃馬の所に行くだけで、何を焦っているのだ~!?」

ギール「あー、うるさいシャル!今日に限って四限目は移動教室だし、この隙にジェルドの奴が抜け駆けするかもしれないだろ!?」

二年二組の四限目が、今日に限って移動教室であった事に焦りを感じていたギールは、四限目が終わるや否や、無意識にシャルとディノを両脇に抱えるなり、移動教室から爆走していた。

シャル「そ、それなら余とディノを置いて、先に一人で行けば良かったではないか~!?」

ディノ「うぅ~、凄く揺れる~。」

ギール「っ!(た、確かに……。)」

シャルの最もな指摘に、頭の中が桃馬の事で一杯になっていたギールは、"はっ"と我に返るなり走る速度を緩め始めた。

シャル「はぁ、全く…、桃馬にうつつを抜かすのも良いが、余とディノを巻き込まないで欲しいのだ。」

ギール「っ、わ、わりぃ……。」

シャルの冷静な指摘に、完全に非があるギールは、反論するどころか謝る事しかできなかった。

シャル「ふむぅ。それにしても…、桃馬一人のためにここまで熱くなるとは…、もはや変態の域なのだ。」

ギール「なっ!?へ、変態だと!?」

シャル「うむ。ギールには悪いが、ここまで見捨てられる要素が揃っているというのに、どうして桃馬に見捨てられないのか不思議なのだ……。」

ギール「っ、そ、そりゃあ、何だかんだ言って、俺が桃馬に愛されているって事だろ?」

シャル「うーん、"嫌よ嫌よも好きのうち"と言うやつか…。ちなみにギールは、桃馬の事をどう思っているのだ?」

ギール「っ、そ、そりゃあ、忠犬として好きに決まってるだろ?」

シャル「…ほほぅ~、ここまで来て"忠犬"と言い切るのか……。」

ギール「は、はぁ?そ、それはどういう意味だよ?」

シャル「ふっ、今のギールは"忠犬"と言うより、飼い主を犯そうとする"淫犬"なのだ。」

ギール「い、"淫犬"だと!?」

シャル「ふっ、はいはい、くだらない話はここまでなのだ。それよりギールよ?せっかくここまで来たのだ。責任を持って余とディノを教室に運ぶのだ。」

ギール「っ、い、嫌と言えば……。」

シャル「うーん、そうだな~。その時は、ギールの日常生活をうたいながら教室に戻るまでだぞ?」

ギール「っ!?き、汚ぇ…。」

シャル「別に汚くはないぞ?そもそも、責任も取れない"淫犬"が、堂々と桃馬の"忠犬"を名乗るとは、実に片腹痛いと思うぞ?」

ギール「うぐっ!?」

シャルとの舌戦において、渾身の指摘を受けたギールは、とうとう何も言い返せなくなった。

シャル「ほれほれ?こんな所で突っ立ていたら、先にジェルドが桃馬を食われてしまうぞ?」

ギール「っ、わ、分かってるよ!」

その後、二年二組にいち早くたどり着いた三人は、カバンから弁当を出すなり、混雑している隣のクラスへと向かった。


ギール「ちょっと、わりぃ、通してくれ、お、お~い、桃馬いるか~?」

桃馬「っ、ぎ、ギール……。」

ギールの登場により、今か今かと本懐を遂げるかもしれない瞬間を見守っていた同級生たちが、より一層騒ぎ始める中、桃馬を主軸にした三つ巴が完成した。

また、二年一組に入って来たギールの様子は、意外にもよこしまなオーラをただよわせておらず、珍しく落ち着いた様子を見せていた。

シャル「こ、これは凄い人だかりなのだ……。」

ディノ「え、えぇ…、ま、まだこんなに人が集まるなんて…、い、今まで"兄さんたち"は、どれだけ注目の的にされていたのか分かりますね……。」

午前中から続く"ギールたちの注目度に、思わず驚いてしまったシャルとディノは、次第に加熱していく現状に引き始める。


ジェルド「ふっ、ようやくギールたちも来たな♪」

憲明「うんうん、移動教室の割には早かったけど、爆走でもしてたのか?」

ギール「っ、あ、いや…、それは……。」

シャル「うむ、四限目の授業が終わるなり、すぐに余とディノを抱えて大爆走をしていたのだ。」

ギール「っ、よ、余計な事を言うな!?」

憲明「あはは、その様子だとシャルかディノに諭されたな?」

ギール「っ、ちゃ、茶化すなよ。そ、それより、桃馬の顔色が悪いみたいだけど、どうしたんだ?」

ジェルド「ふっ、昨日の事で緊張してるんだよ♪」

桃馬「なっ、だ、誰が緊張してるかよ!」

ジェルド「そう目くじらを立てるなよ~?ほらほら、俺の"ふわふわ"な尻尾を触っていいからよ♪」

完全に主導権を握っているジェルドは、桃馬に対して挑発でもするかの様に、大切な尻尾を差し出し"パタパタ"と振り始めた。

ギール「なっ!?こ、こらジェルド!?抜け駆けは卑怯だぞ!」

どさくさに紛れて桃馬を誘惑しようとするジェルドに対して、負けじと対抗意識を燃やしたギールは、颯爽に桃馬に駆け寄るなり自慢の尻尾を差し出した。

桃馬「っ、こ、こら、や、やめろ駄犬ども!?」

口では拒絶している桃馬ではあるが…、一方の体は、無意識に二つの尻尾を抱き締めていた。

憲明「お、おい桃馬?言動が全く噛み合っていないぞ?」

桃馬「っ、く、くぅ……。」

シャル「こ、こら、桃馬!余のお気に入りの尻尾に触れるでないのだ!?」

桃馬「っ、そ、それなら、尻尾の付け根が空いてるぞ?ち、ちなみに尻尾の付け根は…、ギールの弱点だからな……。」

シャル「それは既に分かっているのだ!」

ギール「はぁはぁ、シャ、シャル……はぁはぁ、今は我慢してくれ……んっ♪か、帰ったら好きなだけ触らせてやるから…、わふぅ。」

シャル「うっ、うぅ…。い、今のギールは、何だか気持ちが悪いのだ。」

ギール「んんっ♪はぁはぁ、す、好きに言ってろ……ぼけなすが……。」 

シャル「っ、ふがぁ~!ふしだらに蕩《とろ》けよってからに~!帰ったら覚えているのだ"お兄ちゃん"!はぐっはぐっ!」

蕩けながら罵倒して来たギールに怒ったシャルは、珍しくギールに飛びつこうとせず、自分の弁当を取り出すなりやけ食いを始めた。

ディノ「シャ、シャル様、急いで食べては喉を詰まらせますよ?」

シャル「分かっておるのだ!はむはむ!」

シャルの豪快な食べっぷりを見ていた桜華は、微笑みながら何かを上げたそうに話しかけた。

桜華「シャルちゃん♪よかったら、私が作った卵焼きでも食べますか?」

シャル「っ、おぉ~!食べるのだ~♪」

桜華「どうぞ♪」

やけ食いの姿に愛くるしさを感じた桜華は、まるで母親の様にシャルを甘やかし始めた。

気がつけば、何とも理想的な空間が作り上げられている中、ここで憲明が、この場に小頼が居なくなっている事に気づいた。

憲明「ん?あれ、小頼はどこ行った?」

先程から何も話さない小頼であったが、ふと憲明が辺りを見渡した時、さっきまで隣に居たはずの小頼が消えていた。

憲明は、不思議に思いながらも、更に辺りを見渡していると、廊下から均等な並びで桃馬たちを見ていた同級生たちが、二組側の方へごった返している事に気づいた。


小頼「さぁさぁ、話題の"駄犬とご主人様"はこちらだよ~♪」

映果「さぁさぁ、"小頼商会"特産物、秘蔵写真コレクションの大安売りだよ~♪」

なんと小頼は、二年五組の亀田映果と共に学園闇市の一つ、"小頼商会"が開いていた。

小頼商会のブースは、二年一組と二年二組の廊下の間で開かれており、三つ巴のイチャつきを目当てに詰めかけた同級生たちを狙っていた。

女子生徒「はぁはぁ、ずぶ濡れのジェルド様とギール様……はぁはぁ……。」

女子生徒「あぁ~ん♪桃馬にリードを付けられて喜んでる二人……最高~♪はぁはぁ。」

小頼商会が提供している品は数多く。

隠し撮りの写真集、同人誌など。主に出品しているレパートリーは少ないが、写真集と同人誌の作品だけでも軽く五百作品は越えている。

更に小頼商会は、元締めである"長岡小頼'を筆頭に、多くの生徒から支持されており、号外の一件に関わった広報部と新聞部を始め、数多くの文化部と結託している。

そのため小頼商会は、学園の巨大派閥の一つとして君臨している。


小頼「にしし、本日の目玉は、昨日撮ったばかりの"桃馬に甘えるジェルドとギール"の写真だよ~!さぁ、買った買った~♪」

こういった商才に長けている小頼は、盛り上がった熱を更に掻き立てようと、ここで早くも目玉商品をチラつかせた。

※ちなみに小頼商会は、肖像権の侵害をしまくっています。皆さんは盗撮はもちろん、それを売ったりしては行けません。

盗撮だめ、絶対!
そして売っちゃだめ!



一方その頃。

武闘派の生徒が多い二年三組では、一組と二組の間で起きている耳障りな騒動に一部呆れていた。

奏太「はぁ、ったく、騒がしいな。」

直人「うーん、どうせ小頼の奴が店でも出したんじゃないのか?現に今朝けさの号外配りの時に、小頼の口から店を出店する様な事を"ほのめかして"いたらしいからな。」

奏太「不思議に思うんだけど、何で先生たちは止めないんだ?」

直人「うーん、これも文化の一つだからじゃないか?」

奏太「た、確かに文化って言えば文化だけど、流石に盗撮写真の密売は犯罪だろ……。」

直人「ま、まあ、一応小頼からも、ネットへの拡散禁止、転売禁止、学園外での販売を禁止にしてるからな。ギリギリ黙認されているんだろうよ。」

奏太「…ギリギリどころか、殆どアウトな気がするけどな。っ、にしても、この女子の奇声ってのは、俺たち男子に取っては公害レベルだよな。」

直人「ま、まあ、それは仕方ないさ。そもそも女子の声は、男子の低い声よりも高いから耳に響くのも"当ぜんっ!?」

再び耳を塞ぎたくなる様な奇声に、直人と奏太は思わず耳を塞いだ。

奏太「うぅ、耳がおかしくなりそうだ……。」

直人「そ、そうだな…。うぅ、至近距離で聞いたら聴覚障害を起こすかもな……。ん、お、おい奏太?さっきから"半兵衛"が、目を閉じたまま動かないんだけど、まさか気絶してないよな?」

奏太「えっ?あっ、お、おい"半兵衛"!?しっかりしろ!?」

二人の視線の前には、 童顔の黒髪短髪美少年が、目を閉じながら"ぐったり"としていた。

これに対して奏太は、慌てて"半兵衛"と呼ばれる美少年の肩を揺らしては、頬をペチペチと叩いた。

※二人が"半兵衛"とは、黒髪短髪美少年のあだ名であり、本名は三条晴斗さんじょうはるとと言う。

学年首席の秀才だが体が弱いため、故人の"竹中半兵衛"から名を取って、まわりからは"半兵衛"と言われている。

ちなみに、二年一組担任、三条美香先生の息子である。

晴斗「かふっ、あ、あれ……俺……寝てた?」

奏太「い、いや、寝ていると言うよりは、普通に気絶してたぞ?」

晴斗「えっ、そ、そうなのか?」

直人「ま、まあ、いつ"半兵衛"が気絶していたのかは分からないけど、現状を見るからして、女子の奇声で気絶した可能性は大だよ?」

晴斗「そ、そうか……。はぁ、とうとう俺は、女子の奇声でも気絶する様になっちゃったか。…そ、それより二人とも?この耳に響く様な騒音は、一体何が起きてるんだ?」

直人「あぁ、この騒音の原因は、小頼の奴が店を出したんだよ。」

晴斗「っ、そ、そうか。それなら納得だね。そうか、今日店を開いたのか……。」

例え学年首席の晴斗であっても、この騒音の元凶が小頼商会による物となっては、素直に納得する他なかった。

直人「ふぅ、さてと……、桃馬とジェルドの様子を見に行ったリールも帰って来ないし、心配だから少し見に行って来るよ。」

奏太「お、おう、いってらっしゃい。わ、悪いが、俺は待ってるよ。」

晴斗「うーん、直人が行くなら俺も行こうかな?」

奏太「えっ、ま、まじかよ!?」

直人「い、いやいや、晴斗は行かない方がいいだろ!?あ、あんな騒音の中心部に入ったら、気絶どころの騒ぎじゃ済まないと思うぞ!?」

晴斗「ううん、良いんだ。ちょうど俺も小頼に頼まれてる事があるからね…。それに、耳栓さえしていれば問題はないよ。」

カバンから耳栓を取り出した晴斗は、直ぐ耳の穴に耳栓を深々と装着した。

直人「そうか、無理はするなよ?」

晴斗「……?」

直人の声が聞こえないのか、晴斗は小首を傾げた。

どうやら晴斗が装着した耳栓は、一切の音を遮断するくらいの代物らしいが……、その状態からどうやって小頼と会話をするのか気になるところである。

こうして二人は、ごった返した現場へと向かった。


一方、その頃。

理想的な賑わいを見せていた桃馬たちであったが、とうとう淫らな展開に陥っていた。

首輪とリードを着けられたギールは、犬としての喜びに浸り……。

一方ジェルドに至っては、上半身の制服を脱ぎ始めるや否や、駄犬モード全開で桃馬に飛び掛っていた。

桃馬「この、ばか犬!まじでやめろ!?」

ジェルド「はぁはぁ、いいじゃないか桃馬!もうこの際だ…、みんなに俺たちの仲を…、はぁはぁ、みせつけてやろうじゃないか!」

本格的なBL展開に、廊下から様子を伺っていた女子生徒たちは、鼻血を出しながら倒れたり、眼福のあまり失神してしまう者が続出していた。

まさに、女子生徒に対しての女子テロの始まりである。

リフィル「昨日みたいに……、首筋とか舐めないかしら。」 

リール「っ、く、首筋を舐める!?そ、そんな破廉恥な事をしていたのですか!?」

リフィル「えぇ、それは凄かったわよ♪正直あの時、追い詰められていた桃馬が、盛ったジェルドとギールに折れていたら……、間違いなく上から下まで、開発されていたかもね♪」

リール「う、上から…し、下まで開発……はわわ!?な、ななっ、なんて破廉恥な!?」

リフィル「ふふっ♪(やっぱりリールちゃんは、純粋で可愛いわね~♪そんな可愛い子には…、直人に対して抱いている、その"純粋な想い"について詳しく教えてあげちゃおうかな~♪)」

何とも純粋過ぎるリールの反応に、思わず心を奪われてしまったリフィルは、もどかしい二人の恋路にメスを入れようとする。

しかしそこへ、何とも間が悪い事に、リールの事を心配した直人が現れてしまう。

直人「あっ、いたいた。こら、リール?こんな所に居たら頭がおかしくなるぞ?」

リール「ふぇ、あ、う、うん…、で、でも……チラッ…。」

心配していた直人からの注意も虚しく、自然とリールの視線は、淫らに取っ組み合っている桃馬とジェルドの方に向けられた。


直人「ん、どうしたリール…、って、な、何だよこの地獄絵図は……。」

リフィル「ふふっ、直人も少し見て行ったらどう?」

直人「はぁっ!?だ、誰が見るかよ!?こ、こんな酷い光景を見たら目が腐るっての!?」

リフィル「ふーん、そう言いながらも、桃馬に気を使って差し入れまでしたんでしょ?今更恥ずかしがる事はないじゃない?」

直人「っ、た、確かにしたけどよ…。現にぶちギレられたし……、そ、そもそも、親族の醜態を見るのは精神的にきついよ。」

リフィル「ふふっ、相変わらず直人は硬いわね~♪そもそも直人は、ジェルドのイキリ立った肉棒で、桃馬が喘ぐ所を見たくないの?」

直人「だ、だから、目が腐るから見ないって言ってるだろ!?て、てかイキリ立った肉棒って…、そんな卑猥なセリフを"高貴なエルフ様"が言って良いのかよ。」

リフィル「う~ん、そうね~。故郷でこんな事を言ったら間違いなく怒られるとは思うけど…、現にここは、故郷でも無ければ、堅苦しい仕来りも無い世界だからね~♪」

直人「はぁ…、入学したての頃は、気品のある凛々しいお嬢様だっと思っていたのに…、僅か一年で自由奔放なお転婆娘の完成だもんな。」

リフィル「ふふっ、私も日々成長しているのですよ。」

直人「…成長か。まあ確かに、"嘘偽りの殻"を破って本当の自分を見つけ出したリフィルは、本当に凄いと思うよ。」

リフィル「ふふっ、そうでしょう、そうでしょう~♪二ヶ月前にも同じ様な話をしたと思うけど~、もう"退化"って言えないでしょ~♪」

直人「そ、そうだな……。正直、リフィルの過去を知ったら、もう"退化"って言えないさ。」

リフィル「ふふっ、もう少し直人と仲良くなってたら、憲明じゃなくて直人を彼氏にしてたかもね~♪」

直人「ふっ、ばーか、俺じゃあリフィルの彼氏は務まらねぇよ。それより、自由奔放し過ぎて堕落するなよ?」

リフィル「っ、ふふっ、言ってくれるわね~。もちろん、堕落しない様に気をつけるわ♪」

直人「ふっ…、さてとリール?目が腐る前に早く教室に戻るぞ?」 

リール「ふぇっ!?う、うん、分かったよ。」

興味深い地獄絵図に魅入っていたリールは、直人の呼び掛けに驚くなり、そのまま直人と一緒に教室へと戻って行った。

ここで長話。

一学年の頃、リフィルと同じクラスであった直人は、リフィルの生い立ちについて良く理解していた。

学園に入学したてのリフィルは、凛々しくて気品のある高嶺の花であり、如何にもクール系美女のオーラを漂わせていた。

しかしそれは、厳しい仕来しきたりとしつけによって作られた偽りの姿であり、本来あるべきリフィルの姿ではなかった。

物心がついてから、決して"己の意思"が尊重されない環境で育ったリフィルは、自ら嘘偽うそいつわりの仮面をかぶり、自由のかない窮屈きゅうくつな日々を過ごしていた。

自分の意思が尊重されない生活。

例え、良い家柄に生まれたとしても、そこに意思が尊重されなければ、生きた屍と同じである。

故にリフィルもまた、生きた屍を経験した一人であった。

しかし、そんなリフィルの暗い人生は、春桜学園への留学を機に一変する事になった。

"己の意思"が尊重された"世界"で、自分の意思をしめそうとするリフィルは、少しずつ偽りの仮面を剥がそうとしていた。

しかし当時のリフィルは、"普通の会話"というものを全く理解しておらず、今では達者な"コミニュケーション能力"すら皆無に等しかった。

話に混ざりたくても何を話せば良いのか全く分からず、ひたすら一人で悩み込んでしまう日々……。

せっかく声を掛けてくれた相手に対しても、つい素っ気ない態度で冷たく足らってしまう事も少なくはなかった。

そのため周囲からは、良くも悪くも"冷淡な美女"と言うイメージが定着してしまい、"氷のはな"と言う"二つ名"まで作られた……。


その後、リフィルの周りには、"氷の華"と呼ばれるリフィルに冷たく足らわれたいと願う変態が急増し、昼休みと放課後を中心に声を掛けられるようになって行った。

ちなみにその変態の中には、後の大親友となる"長岡小頼"も含まれており、数ある変態の中でも、一番リフィルに寄り添っていた。

この小頼との出会いは、当時のリフィルに取って"大きな分岐点"となっており、次第に打ち解け始めたリフィルは、小頼の事をコミニュケーションの師匠として尊敬するようになった。


その結果。入学から三ヶ月後……。

小頼のコミニュケーション能力に毒されてしまったリフィルは、既に"氷の華"と呼ばれていた面影はなくなっていた。

※ちなみに、リフィルとクラスメイトであった直人はと言うと、小学時代からの友人である小頼に脅され、普通に巻き込まれていた。


この時点のリフィルは、まだおしとやかな一面が残っていたのだが……、とある秋の日に、今の自分を確立させるための"大きな分岐点"に差し掛かった。


当時素行が悪かったギール率いる不良に絡まれたリフィルは、たまたま通り掛かった桃馬と憲明に助け出された。

その後、憲明と付き合う様になってからは、更に自分自身の意思をさらけ出す様になり、とうとう"お淑やか"属性を捨て去り、お転婆娘へと進化してしまったのである。

そして話は戻し

直人「……はぁ、桃馬には気の毒だけど、あそこまで男に迫られたら終わりだな」

リール「あ、あの三人、これからどうするのかな?」

直人「……まあ、このまま行けばジェルドの方が先に暴発して、桃馬を食っちまうかもな。」

リール「た、助けなくていいのかな?」

直人「いいんだよ、下手に助けたらこっちが襲われるからな。それにこれは、二人の想いを弄んで来た桃馬が悪い。」

発情したジェルドに迫られ、絶体絶命のピンチを迎えた桃馬。

従兄弟の直人からも切り捨てられ本格的に後がない状況。

はてさて、桃馬の命運は如何に……。

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フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

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