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番外編
番外編)他国からの来訪者(リンク小説)
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*第二王子と妃の夫婦事情
※この話は王太子と月の娘の結婚事情とリンクしています。
アリアはザンに呼ばれて指定された場所へと急いでいた。両脇にはシャラとラティスが大量の箱を抱えてついてきていた。
部屋に入ると、オレンジの髪の毛を束ねた青年がザンの向かい側に座っていた。そのソファーの後ろには銀髪のメイドが直立不動で立っている。誰かなんて聞くまでもなくすぐに解った。もう何度かあっている人達だったから。
「ザン、一体どうしたの……あ、スピカ様?」
「久しぶりだね、アリア」
「どうしてここに?」
「久々に遊びに来ただけだ☆ そのついでにアリアにお願いがあって呼んでもらった♪」
「明るく言うな! そもそもお前は王太子だ、お忍びで簡単に来れる立場じゃない!」
「ザン兄、そう堅苦しいこと言わないでくれよ。護衛にはアメジスがいるし、俺も本当に体調がいいから大丈夫だし」
「いや、体調が悪くても来るだろうが、お前は…‥」
ぎゃあぎゃあとザンが𠮟っている様子を見たラティスは目を丸くしていた。それを見ていたアリアはそうなるわよねと頷いている。当のスピカ様は耳に指をつっこんで耳栓替わりにしているけれど……。ザンは家族にすら本性を晒さない。彼の口の悪さを知っているのはアリアとラティス、そしてシャラとごくわずかの部下のみ。(最近は家族も気付いている節があるけれど、それはいわないほうがいいわよね。)
(ザンが他人に素を晒して怒るのも久しぶりに見たわ……)
スピカ様がこうやって怒られているのを見たのは一度や二度じゃない。それぐらいザンとスピカ様には長い付き合いがあるので、アリアが止めなくても全く問題はない。
シャラに箱を置くように指示をした後、アリアはザンの隣へと座った。ザンががみがみと怒っている相手はかのツニャル大国の王太子であるスピカ。つまり、次期国王であり、我が国にいる皇太子と同列の立場にあたる。対極の位置にある国なだけに仲が悪いと思われがちだが、国柄が違うだけで、皇族、王族としては仲が悪いわけではないそうだ。
それどころか、スピカ様とザンと歳が近いこともあり、会議やイベントで会うたびに交友を深めていたという。スピカの方が年下ということで、ザンを兄呼ばわりしていて、その流れでアリアも知り合っていた。
「でも、なんだかいつも以上に元気そうに見えるわ」
「そうなんだよ」
聞いてくれる?とばかりに話しだしたスピカの話に、アリアとザンは目を丸くしていた。
「はぁ? お前の病気を治しただと?」
「でも、医学の国であるモーント国ならそんなにおかしいことではないわ」
「どうしてだ?」
アリアの言葉にザンが反応する。スピカも気になるとばかりに頷いていた。オレンジ色のしっぽが揺れて可愛いとおもいながらも、アリアは皇妃から聞いていたことを口にした。
「モーント国って、海の女神であるセイレーン様の加護がある国らしいのよ」
「なるほど、聖女の子孫の可能性があるわけか」
「そういうことね」
「ああ、だから…‥異世界の知識も持っていたのか。納得いった」
スピカ様がそう呟いたのを聞いたアリアはどういうことかと聞く。すると、彼女はどういうわけかアンドロイドだと知っても全く驚かなかったと。ツニャル国ではアンドロイドは珍しくないが、それが異世界からの知識だということを知る者は少ない。だが、彼女はアンドロイドの弱点を解っていたかのようにアメジスと戦っていたと言うのだ。
話を終えた後、スピカ様はこっちに視線をよこした。……彼も王族として聖女召喚についての知識はある。だからこそ、アリアと会いたいとザンに頼み込んだのだろう。
「アリアはどう考える?」
「ん…‥それだけじゃわからないかな。聖女の可能性もあれば、転生者の可能性もあるし」
「転生者って何だよ?」
「異世界で生涯を終えた人がこちらの世界に生まれ変わる際に記憶をもって生まれてきた場合は転生者と言えるかな。聖女の子孫というだけなら知識はどこかで学んでいるはずよ」
「なるほどな。アンドロイドの仕組みを学んでないのに知っているということはその異世界にいた可能性もあると」
「そうね」
「あ、なるほど……そういうことか。それで父上はーーあ、ごめん。こっちでの話だった」
考え込んでいたスピカはアリアやザンの視線に気づいたのか慌てて首を横に振った。思い当たることはあるものの、言う気はなさそうだ。そんなスピカの様子にあきれながらも、ザンは紅茶を飲んでいる。
「で、アリアを呼んだ用件はこれだけか?」
「まさかまさか。あのさ、アリアはレディランジェリーショップのオーナーだろう?」
「え、あ。うん……そうだけれど」
いきなり目を輝かせたスピカ様は両手を拝むように合わせて頭を下げてきた。
「お願いだ。俺にランジェリーを売ってくれ!!」
一瞬にしてその場の空気が冷えたのは気のせいだろうか。ザンがカップをこぼし、シャラやラティスが固まっている。もちろん、アリアも凍りついたように固まった。空気が凍ったことに気付いたスピカは首を傾げていたが、自分が言ったことの意味に気付いたのか、慌てだした。
「違う、違うぅううううう、俺が着るんじゃねぇ!!」
「で、でも……ランジェリーは女性用よ。まぁ、スピカだったら頑張れば似合うかもだけれど」
「マスター、変態、不埒、不潔でございます。ついに変態に成り下がりましたか」
アリアがいらんことで悩んでいると、アメジスが冷たい目でスピカ様を見ていた。
(アンドロイドって聞いたけれど……こんな冷たい目もできたのね)
スピカ様の方をみると驚きで目を丸くしていた。アメジスに対してしどろもどろになっている様子もまた珍しい。ザンはというとようやく立ち直ったのか、ラティスに割れたカップを片付けさせていた。
「お前、そんなこと言えたのかよ!? ちょ、その視線ヤメロ!」
「……変態でなければ、何らかの理由があって女装を? まさか、性転換でもなさろうと」
「そんなわけあるか! 違うっつーの!」
やり取りにつかれたのか、スピカ様はアメジスに一蹴食らわせている。あなた、王太子よね?と突っ込みたかったが、敢えてスルーしておいた。正面からみてしまったザンも遠い目になっているようだけれどね。
「で、どういうことなの?」
「あーさっき言ったモーントの末姫……ディアっていうんだけれど、彼女を迎え入れるために用意したいんだよ」
「マスター、言い方が紛らわしいです」
「いやいや、お前らがおかしいからな?第一、俺がなんで着なきゃならないんだって話だ」
「まぁ、そうよね。でも、それなら話は早いわ。シャラ、箱を机の上に」
「はい、かしこまりました」
アリアはシャラに命じて、机の上に様々なランジェリーを広げた。
本当はツニャル国との取引の一つとして紹介するつもりで持ってきていたのだが、まさかここで役に立つとは思わなかったとはアリア談。
そして、商品を見る流れでアリアとザンがネリア(猫に似た魔獣)も食わぬ痴話喧嘩をしたことはともかくも、スピカ様は満足されたようだ。
「いやー、助かった」
「それは良かったわ。…こちらの方をツニャル国に流通させることの検討もぜひ」
「あー、そうくるか。んー、議題には一応あげておくが、成果は期待しないでくれ」
「でも、王妃様のメイドがお忍びで来ているのよね、お店の方に」
「‥‥‥‥ああ、それなら話は早そうだな」
アリアの店の方は評判も上々で、他国から客がくるほど。皇族や王族からの注文がちらほら届いているのは、皇妃や皇太子妃が広めてくださったお陰もある。そして、スピカ様もその事実に気付いたのか、アリアを胡乱な目で眺めていた。
「……アリアが来てから、女性陣の流行がかなり盛り上がっている気がしてならない」
「気のせいじゃない。この国じゃ、アリアが流行らせたいものを紹介すると、それが最先端だと紹介されるほどだ。まぁ、流通がかなり良くなっているからそれを止めるつもりもないが」
ザンの説明でスピカはうわぁとアリアを恐れるようなしぐさをして見せる。アリアとしては不本意としかいいようがない。
「私は自分が使えるように色々と変えているだけなのに」
「それで、ランジェリー、水着、ティーセット、化粧用品、シャンプーと数えきれない商品の価値が一気に高まっているってどういうことだよ!? おかげでこっちも輸入や輸出にかなり頭を悩ませているんだぞ」
「私の世界じゃそれほど高級品じゃないわよ。まだまだ品質も悪いしね」
「「どこが!?」」
アリアとしてはかなり納得いかないが、ザンやスピカ様から見ればもう十分すぎるほどだという。
「プラスチック…だっけ?それも、ものすごい発明品だよ?俺の国でも異世界の知識をもとに改良に改良してようやく出来上がったのに、アリアはあっという間に作ったんだぜ。それもこの国のものだけで!しかも、あんたは他にもわんさかと開発してるっていうじゃないか」
恐ろしすぎる!とスピカ様が叫びまくっている。ちょっとうるさいので黙らせる魔法をかけよう。
「スピカ様。今なら、新しく開発しているシャンプーとリンスのサンプルをセットでさしあげますよ。プラムの香りがするので女の子好みだと思います」
「アリア様、今後もどうぞ取引を続けていただけるようお願い申し上げます。あ、もちろん、いただきますとも」
「俺も大概だが、お前も大概だ」
「失敬な。俺はザン兄みたいに素を隠してるわけじゃない。適材適所で口調を変えているだけだ」
ザンが呆れて指摘するが、しれっとシャンプーとリンスを受け取っているスピカ様は開き直っているご様子。うん、仲がいいよね……。
「でもやっぱり男よねぇ。ザンもスピカ様もランジェリーの好みが似ていたもの」
「………」「アリア、それ以上言うな」
「うわー俺、ザン兄みたいにむっつりスケベにはなりたくないや。でも、紐パンが正義なのは認める」
「よし、今度そのモーント国の姫を連れてこい。俺とアリアでお前のエロ度を確認してやる」
「だが、断る!」
紅茶を一気に飲み干して立ち上がるスピカ様はベランダの方へと向かった。買った商品は全てアメジスが運ぶらしい。この世界は魔法もあるから、その魔法と精密機械の融合によってかなり精密精巧なアンドロイドができるのよね。そして、その技法を極めた最高峰に立っているのがツニャル大国であり、王太子であるスピカ様。
そう考えるとスピカ様は凄い人なんだけれど、ザンに怒られている様子を見るとまだまだ20歳なんだなって実感する。
「じゃ、ザン兄、アリア、また来るからな~」
「だから、お忍びはやめろと何度言ったらわかるんだ、お前は!」
「あはは、たまには息抜きしたいからね」
転移装置を起動させてその中に入ったスピカとアメジスは手を振った後消えていった。
「本当にあっという間だったわね」
「ったく……毎度毎度あいつは自分の立場を解っているのか」
「でも、息抜きが必要っていうのは解るなぁ」
はぁとため息をついていると、ザンがそっぽを向きながらもぼそっと呟いたのが聞こえた。
「もう少し我慢しろ。後少ししたら時間を作れるからそれまで待て」
「はぁい」
しょうがないなという体で、ザンに抱きついたアリア。そんな2人をみたラティスとシャラは素早く顔を見合わせて、さっと消えた。
できる部下を持ったと思いながら、ザンはアリアの顎を掴み、顔を近づけようとする。アリアが、ザンのどこかにあるかわからないスイッチを押してしまったと気付くも時は遅し。
「やぁあああああああ、今日は紐パンじゃないぃいい!」
扉の向こう側でシャラがそういう問題じゃないですと小さく突っ込んだのはお約束ということで。
※この話は王太子と月の娘の結婚事情とリンクしています。
アリアはザンに呼ばれて指定された場所へと急いでいた。両脇にはシャラとラティスが大量の箱を抱えてついてきていた。
部屋に入ると、オレンジの髪の毛を束ねた青年がザンの向かい側に座っていた。そのソファーの後ろには銀髪のメイドが直立不動で立っている。誰かなんて聞くまでもなくすぐに解った。もう何度かあっている人達だったから。
「ザン、一体どうしたの……あ、スピカ様?」
「久しぶりだね、アリア」
「どうしてここに?」
「久々に遊びに来ただけだ☆ そのついでにアリアにお願いがあって呼んでもらった♪」
「明るく言うな! そもそもお前は王太子だ、お忍びで簡単に来れる立場じゃない!」
「ザン兄、そう堅苦しいこと言わないでくれよ。護衛にはアメジスがいるし、俺も本当に体調がいいから大丈夫だし」
「いや、体調が悪くても来るだろうが、お前は…‥」
ぎゃあぎゃあとザンが𠮟っている様子を見たラティスは目を丸くしていた。それを見ていたアリアはそうなるわよねと頷いている。当のスピカ様は耳に指をつっこんで耳栓替わりにしているけれど……。ザンは家族にすら本性を晒さない。彼の口の悪さを知っているのはアリアとラティス、そしてシャラとごくわずかの部下のみ。(最近は家族も気付いている節があるけれど、それはいわないほうがいいわよね。)
(ザンが他人に素を晒して怒るのも久しぶりに見たわ……)
スピカ様がこうやって怒られているのを見たのは一度や二度じゃない。それぐらいザンとスピカ様には長い付き合いがあるので、アリアが止めなくても全く問題はない。
シャラに箱を置くように指示をした後、アリアはザンの隣へと座った。ザンががみがみと怒っている相手はかのツニャル大国の王太子であるスピカ。つまり、次期国王であり、我が国にいる皇太子と同列の立場にあたる。対極の位置にある国なだけに仲が悪いと思われがちだが、国柄が違うだけで、皇族、王族としては仲が悪いわけではないそうだ。
それどころか、スピカ様とザンと歳が近いこともあり、会議やイベントで会うたびに交友を深めていたという。スピカの方が年下ということで、ザンを兄呼ばわりしていて、その流れでアリアも知り合っていた。
「でも、なんだかいつも以上に元気そうに見えるわ」
「そうなんだよ」
聞いてくれる?とばかりに話しだしたスピカの話に、アリアとザンは目を丸くしていた。
「はぁ? お前の病気を治しただと?」
「でも、医学の国であるモーント国ならそんなにおかしいことではないわ」
「どうしてだ?」
アリアの言葉にザンが反応する。スピカも気になるとばかりに頷いていた。オレンジ色のしっぽが揺れて可愛いとおもいながらも、アリアは皇妃から聞いていたことを口にした。
「モーント国って、海の女神であるセイレーン様の加護がある国らしいのよ」
「なるほど、聖女の子孫の可能性があるわけか」
「そういうことね」
「ああ、だから…‥異世界の知識も持っていたのか。納得いった」
スピカ様がそう呟いたのを聞いたアリアはどういうことかと聞く。すると、彼女はどういうわけかアンドロイドだと知っても全く驚かなかったと。ツニャル国ではアンドロイドは珍しくないが、それが異世界からの知識だということを知る者は少ない。だが、彼女はアンドロイドの弱点を解っていたかのようにアメジスと戦っていたと言うのだ。
話を終えた後、スピカ様はこっちに視線をよこした。……彼も王族として聖女召喚についての知識はある。だからこそ、アリアと会いたいとザンに頼み込んだのだろう。
「アリアはどう考える?」
「ん…‥それだけじゃわからないかな。聖女の可能性もあれば、転生者の可能性もあるし」
「転生者って何だよ?」
「異世界で生涯を終えた人がこちらの世界に生まれ変わる際に記憶をもって生まれてきた場合は転生者と言えるかな。聖女の子孫というだけなら知識はどこかで学んでいるはずよ」
「なるほどな。アンドロイドの仕組みを学んでないのに知っているということはその異世界にいた可能性もあると」
「そうね」
「あ、なるほど……そういうことか。それで父上はーーあ、ごめん。こっちでの話だった」
考え込んでいたスピカはアリアやザンの視線に気づいたのか慌てて首を横に振った。思い当たることはあるものの、言う気はなさそうだ。そんなスピカの様子にあきれながらも、ザンは紅茶を飲んでいる。
「で、アリアを呼んだ用件はこれだけか?」
「まさかまさか。あのさ、アリアはレディランジェリーショップのオーナーだろう?」
「え、あ。うん……そうだけれど」
いきなり目を輝かせたスピカ様は両手を拝むように合わせて頭を下げてきた。
「お願いだ。俺にランジェリーを売ってくれ!!」
一瞬にしてその場の空気が冷えたのは気のせいだろうか。ザンがカップをこぼし、シャラやラティスが固まっている。もちろん、アリアも凍りついたように固まった。空気が凍ったことに気付いたスピカは首を傾げていたが、自分が言ったことの意味に気付いたのか、慌てだした。
「違う、違うぅううううう、俺が着るんじゃねぇ!!」
「で、でも……ランジェリーは女性用よ。まぁ、スピカだったら頑張れば似合うかもだけれど」
「マスター、変態、不埒、不潔でございます。ついに変態に成り下がりましたか」
アリアがいらんことで悩んでいると、アメジスが冷たい目でスピカ様を見ていた。
(アンドロイドって聞いたけれど……こんな冷たい目もできたのね)
スピカ様の方をみると驚きで目を丸くしていた。アメジスに対してしどろもどろになっている様子もまた珍しい。ザンはというとようやく立ち直ったのか、ラティスに割れたカップを片付けさせていた。
「お前、そんなこと言えたのかよ!? ちょ、その視線ヤメロ!」
「……変態でなければ、何らかの理由があって女装を? まさか、性転換でもなさろうと」
「そんなわけあるか! 違うっつーの!」
やり取りにつかれたのか、スピカ様はアメジスに一蹴食らわせている。あなた、王太子よね?と突っ込みたかったが、敢えてスルーしておいた。正面からみてしまったザンも遠い目になっているようだけれどね。
「で、どういうことなの?」
「あーさっき言ったモーントの末姫……ディアっていうんだけれど、彼女を迎え入れるために用意したいんだよ」
「マスター、言い方が紛らわしいです」
「いやいや、お前らがおかしいからな?第一、俺がなんで着なきゃならないんだって話だ」
「まぁ、そうよね。でも、それなら話は早いわ。シャラ、箱を机の上に」
「はい、かしこまりました」
アリアはシャラに命じて、机の上に様々なランジェリーを広げた。
本当はツニャル国との取引の一つとして紹介するつもりで持ってきていたのだが、まさかここで役に立つとは思わなかったとはアリア談。
そして、商品を見る流れでアリアとザンがネリア(猫に似た魔獣)も食わぬ痴話喧嘩をしたことはともかくも、スピカ様は満足されたようだ。
「いやー、助かった」
「それは良かったわ。…こちらの方をツニャル国に流通させることの検討もぜひ」
「あー、そうくるか。んー、議題には一応あげておくが、成果は期待しないでくれ」
「でも、王妃様のメイドがお忍びで来ているのよね、お店の方に」
「‥‥‥‥ああ、それなら話は早そうだな」
アリアの店の方は評判も上々で、他国から客がくるほど。皇族や王族からの注文がちらほら届いているのは、皇妃や皇太子妃が広めてくださったお陰もある。そして、スピカ様もその事実に気付いたのか、アリアを胡乱な目で眺めていた。
「……アリアが来てから、女性陣の流行がかなり盛り上がっている気がしてならない」
「気のせいじゃない。この国じゃ、アリアが流行らせたいものを紹介すると、それが最先端だと紹介されるほどだ。まぁ、流通がかなり良くなっているからそれを止めるつもりもないが」
ザンの説明でスピカはうわぁとアリアを恐れるようなしぐさをして見せる。アリアとしては不本意としかいいようがない。
「私は自分が使えるように色々と変えているだけなのに」
「それで、ランジェリー、水着、ティーセット、化粧用品、シャンプーと数えきれない商品の価値が一気に高まっているってどういうことだよ!? おかげでこっちも輸入や輸出にかなり頭を悩ませているんだぞ」
「私の世界じゃそれほど高級品じゃないわよ。まだまだ品質も悪いしね」
「「どこが!?」」
アリアとしてはかなり納得いかないが、ザンやスピカ様から見ればもう十分すぎるほどだという。
「プラスチック…だっけ?それも、ものすごい発明品だよ?俺の国でも異世界の知識をもとに改良に改良してようやく出来上がったのに、アリアはあっという間に作ったんだぜ。それもこの国のものだけで!しかも、あんたは他にもわんさかと開発してるっていうじゃないか」
恐ろしすぎる!とスピカ様が叫びまくっている。ちょっとうるさいので黙らせる魔法をかけよう。
「スピカ様。今なら、新しく開発しているシャンプーとリンスのサンプルをセットでさしあげますよ。プラムの香りがするので女の子好みだと思います」
「アリア様、今後もどうぞ取引を続けていただけるようお願い申し上げます。あ、もちろん、いただきますとも」
「俺も大概だが、お前も大概だ」
「失敬な。俺はザン兄みたいに素を隠してるわけじゃない。適材適所で口調を変えているだけだ」
ザンが呆れて指摘するが、しれっとシャンプーとリンスを受け取っているスピカ様は開き直っているご様子。うん、仲がいいよね……。
「でもやっぱり男よねぇ。ザンもスピカ様もランジェリーの好みが似ていたもの」
「………」「アリア、それ以上言うな」
「うわー俺、ザン兄みたいにむっつりスケベにはなりたくないや。でも、紐パンが正義なのは認める」
「よし、今度そのモーント国の姫を連れてこい。俺とアリアでお前のエロ度を確認してやる」
「だが、断る!」
紅茶を一気に飲み干して立ち上がるスピカ様はベランダの方へと向かった。買った商品は全てアメジスが運ぶらしい。この世界は魔法もあるから、その魔法と精密機械の融合によってかなり精密精巧なアンドロイドができるのよね。そして、その技法を極めた最高峰に立っているのがツニャル大国であり、王太子であるスピカ様。
そう考えるとスピカ様は凄い人なんだけれど、ザンに怒られている様子を見るとまだまだ20歳なんだなって実感する。
「じゃ、ザン兄、アリア、また来るからな~」
「だから、お忍びはやめろと何度言ったらわかるんだ、お前は!」
「あはは、たまには息抜きしたいからね」
転移装置を起動させてその中に入ったスピカとアメジスは手を振った後消えていった。
「本当にあっという間だったわね」
「ったく……毎度毎度あいつは自分の立場を解っているのか」
「でも、息抜きが必要っていうのは解るなぁ」
はぁとため息をついていると、ザンがそっぽを向きながらもぼそっと呟いたのが聞こえた。
「もう少し我慢しろ。後少ししたら時間を作れるからそれまで待て」
「はぁい」
しょうがないなという体で、ザンに抱きついたアリア。そんな2人をみたラティスとシャラは素早く顔を見合わせて、さっと消えた。
できる部下を持ったと思いながら、ザンはアリアの顎を掴み、顔を近づけようとする。アリアが、ザンのどこかにあるかわからないスイッチを押してしまったと気付くも時は遅し。
「やぁあああああああ、今日は紐パンじゃないぃいい!」
扉の向こう側でシャラがそういう問題じゃないですと小さく突っ込んだのはお約束ということで。
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