企画小説(コラボ編)

巴月のん

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バレンタインデー(2017Ver)

男どものバレンタインデー後日談(2)〔八尋とココア編〕

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返事がない、ただの屍のようだ。


どこぞの総長は屍となり、倒れたまま起き上がれず横になっていた。その屍から思わず目をそらした隆久や虎矢の前で、志帆がすっきりしたとばかりに笑顔満面でカウンター席に座って注文していた。そんな彼の前に、あきれ顔でマスターが珈琲を志帆の前においた。

「相変わらずだな、お前は」
「久々にいい運動したぜ。ったく、八尋クンは油断も隙も無いな。」

ため息をついた志帆に思いだしたように虎矢が質問した。

「志帆さん、なんか、いとことか言っていましたけど、どういうことですか?」
「ああ、八尋クンさ、キスの後に香帆と鬼ごっこしたみたいで。香帆がいとこの嵐の職場に駆け込んだもんだから、嵐があの八尋クンと香帆の挟み撃ちになって巻き込まれたんだと。」

話を聞くだけでも唖然としてしまう。隆久はカウンターで宿題をしながらも、時折会話に混じっていた。

「うわぁ・・・彼女を追いかけたって・・・今までの龍野先輩ならありえない。」
「去る者追わず、来るもの拒ますってのがモットーだったしねー。」
「それだけ香帆さんという方に本気だと・・・ま、まぁ、そうでなきゃあの髪を茶髪にしませんよね。そのいとこさんとやらに同情しますよ。」
「あ、思いだした・・・龍野君に渡してほしいって嵐から言われたものが・・・確か・・・あった。」

思いだしたように、志帆がポケットから封筒を取り出す。よろめきながら八尋がそれを受け取って志帆の隣に座る。封筒の厚みに疑問を感じ、振り落すようにカウンターの机にばらまくとそこには・・・・

「おお・・・過去の女歴がよく解る写真だな?おぃ?」
「うわー、すごい綺麗に写っているね。おお、お前のどピンクの頭からお尻までバッチリ写ってる・・・知り合いの裸を、しかもなんだって目の前にいるバカのを見なきゃならんの?」
「隆は黙れ!し、志帆さん、な、な、なんで、こんな、写真がっ?」
「龍野先輩、なんか手紙みたいなものが・・・・。」
「ふぁっ、手紙、手紙があるのー?」

志帆のあきれ顔、ワクテカと楽しそうな虎矢、唖然としつつも混乱している八尋、冷静につっこむ隆久。
とにかく、それぞれが異なる表情を見せていたが、一番修羅場だったのが八尋なのはいうまでもなく。
八尋は震える手で、おそるおそるとばかりに手紙を開いた。読み終えたとたん、八尋は崩れ落ちて再び屍と化した。
八尋の様子に驚きながらも、志帆は手紙を拾って目にした。気になるのか、虎矢や隆久も興味津々で内容を知りたがっていた。その2人の要望に応える形で、志帆は手紙を読み上げた。

「・・・龍野先輩の|魂魄(こんぱく)が抜けていますね。」
「ね、なんて書いてあったのー?」
「・・・・・読むぞ。
『鬼人族総長にして初恋をこじらせた女狂いの称号を持つ龍野八尋さんへ。
バレンタインデーの時には、俺を巻き込んでくれてどうもありがとう。(もちろん、皮肉だよ。)
お蔭で、俺の大事な人に誤解されて大変だった。幸いにして彼女への誤解は解けたけれど、巻き込んでくれたことについては文句を言わなきゃ気が済まない|質(タチ)でね。
今回は初対面だし、香帆にも非があるから警告だけにしておく。
でも、もし、あんたがこれから俺に対してくだらない嫉妬をみせた時には、この写真とあんたのセークスの映像データすべてが香帆の手に渡ると思え。
俺は、砂野とかいうバカみたいに甘くないし、あんたの元彼女や元女みたいにやられるほど弱くはない。何より、やられたら倍返し、相手の鼻が折れるまで叩き潰すっていうのが俺の信条かつ礼儀だと思っているんで。
ま、全国模試の上位3位に入るほどの頭脳の良さなら、俺の言いたいことを解ってくれると信じてるよ?
香帆のためにもあんたと敵対する日が来ないことを願っている。
痴話喧嘩に巻き込まれた不運なるゲーム店員 佐野 嵐』
以上だな。二枚目は・・・ああ、八尋クンのプロフィールがぎっしり書かれてる・・・嫌がらせだな、完全に。しっかし・・・これだけの写真を集めるとは、相変わらず凄い腕前だぜ。」

志帆が手紙を読み終えたのと同時に、復活してきた八尋が恐る恐るというように嵐について質問した。

「あの、志帆さん・・・この嵐?っていう人は・・・一体何者なのー?ただのゲームの店員さんがこんなことできないと思うんだけど。見てよ、この50枚はありそうな写真の束!」
「・・・お前ら、CMにも出てくる佐野カンパニーっていう会社について聞いたことある?」
「ああ、超有名な大企業ですよね。セキュリティ会社とか出版社とかとにかく幅広くいろんなことやっている会社だったような。」
「それなら話が早い。嵐はその佐野カンパニー本社社長の息子だ。つまりは大企業の御曹司だな。」
「ぐはっ!!!???」

聞いていた八尋をはじめ、面々が驚きを見せた中、志帆は思いだしたように、嵐についての情報を付けたした。

「ちなみに、嵐の趣味はゲームと人間観察。特技は情報集めだ。」

しかし、志帆の言葉に突っ込む余裕がなかったのだろう、虎矢はそこにではなく、特技という部分に反応した。虎矢も情報を扱う身だから、嵐の腕が半端なく高いことぐらいは解る。

「・・・これ、特技っていうレベルを超えているよ、完全にプロじゃないかってレベルだし。だって、この写真の角度からして、完全に監視カメラ。でも、この鮮明な色からして、恐らくハッキングしているんじゃないかな。」
「ああ、嵐はハッキングもできるからな。」
「スゴイとしか言葉がでませんよ。」
「うっわ・・・・御曹司でもなんていうか・・・曲者だけれど社会に溶け込める人ってなかなかいないんだけどな・・・ゲーム屋の店員やってるってことからしてもお金持ちを鼻にかけてなさそうだし。」
「・・・とんでもない人ですよね。こんな人がいとこで、志帆さんのような有名人がお兄さん・・・龍野先輩、悪いこと言わないから、香帆さんをそれこそ大事にした方がいいですよ。」
「隆久、俺は充分に香帆を愛でてそれこそ綿で包みこむように大事にしているつもりだよっ?!セークスだって、基本香帆の都合優先だしっ!未だに俺が女狂いみたいなカンジの誤解を招くような言い方、止めてくれるー?ほっんとうに、今は香帆以外いないし、香帆に強要もしてないっ。毎晩ひとり寂しく香帆の写真で抜いてる俺は超いい子なの!!」

ロボットの様にギギギっと首をまわしながら八尋は隆久を睨みつけた。しかし、当の隆久はため息をついたまま、哀れみを込めた目で八尋を見つめている。

「自慰については聞きたくありません。・・・先輩って、ホワイトデーも苦労しそうな気がします。」
「しっつれいな・・・そうだ、志帆さんいるんだし、情報集めようっと。」

ブーブーと文句を言っている八尋は、とりあえずとばかりに写真と手紙を鞄の中に入れた。その代りノートを取り出して、嬉々とした顔で志帆の前に座った。(ちなみにノートには香帆観察ノートとかかれている。)
パスタを食べてすっかりくつろいでいた志帆は話の流れを聞いていたのだろう、呆れた顔で八尋に対して口を開いている。

「俺がそう簡単に情報を言うと思うのか・・・・」
「ふふふ、志帆さん・・・・これと交換ならどうですっ?!」

そういいながら、八尋はスマホを操作し、ドヤ顔で志帆に画面を見せた。それを眺めていた志帆は数秒固まった後、自分のスマホをゆっくりと取り出して震え声で呟いた。

「くっ・・・・やるな、八尋クン・・・・いつのまにそんな香帆の写真を・・・・さぁ、それをこっちに寄越せ。それに、これだけじゃ情報はちょっとなぁ・・・」
「香帆は美人さんで可愛いですからねー。センサーが働いて当然ですぜ・・・クククッ、さすがにあがらえないようで。ならば、こちらもどうです?」
「むぅ・・・お主も悪よのう。」
「いやいや、お代官様には敵いませぬ。」
「はっはっはっ・・・・!!」

テレビの見過ぎじゃないかっていうぐらいノリノリな2人を見た隆久と虎矢、ついでにマスター(ヒドイ!!)は呆れながらも、写真という発言から、恐らく香帆の写真についてだろうと推察し、呆れ果てていた。この二人の共通点といえばそれぐらいだろうし。
しばらくして、ひそひそ声を止めたことからやり取りが終わったのだろう、八尋も志帆も握手をしていてお互いにやりきった!とばかりに清々しい笑顔になっていた。

「助かりました、志帆さん。」
「いやー、さすがだ。お前がここまでできる男だとはな。今後も是非よろしく頼む。」
「もちろんです。そのかわりといっては・・・・。」
「む、それはもちろんだが、内容次第だ・・・わかるよね、八尋クン?」
「もちろんです、もちろんですとも!」

・・・・他の面々はこの数分ですっかり八尋と志帆をスルーするスキルを覚えた。

「あの2人、なんだかんだいってノリノリだよな。」
「マスター、断言してもいいよ。写真の件がバレた時には絶対香帆ちゃんからの説教が待ち受けているとね。」

隆久も虎矢の言葉にそうだろうなとは思ったが敢えて口に出さなかった。その代り、立ち上がって帰ろうと準備をしだした。すでに窓は真っ黒で、もうすでに夜も遅いということがわかる。

「虎矢先輩も大変ですねえ。じゃ、俺は帰ります。マスター、ありがとうございました。」
「おう、今度は彼女連れでどうだ?」
「いやー俺、彼女どころか、周りにも一切言っていないんでぇ・・・多分難しいですね。」
「ああ、そういえば好きな子がいるから、その子と同じ高校にいけるよう頑張りたいとか言って、不良やめたんだっけね。」
「一言一句覚えているとは・・・・相変わらず、半端ない記憶力ですね・・・虎矢先輩。」
「まーね♪それぐらいしかあいつに勝てる能力ないし。」
「ま、あの総長のお守りも大変でしょうが、頑張ってください。では。」
「はは、本当に中学校の時の反抗期時代からすっかり抜け出したな。あの頃は凄かったのに。」
「恥ずかしい過去は忘れてくださいってば。あの龍野先輩と違って本当に黒歴史だったなって反省してるんですから。じゃあっ!」
「いやいや、俺だって反省してるんだからねー!?」

最後の最後で八尋の何かがが聞こえたが全員スルーして別れの挨拶を終えた隆久はブロッサムから出ていった。


「ちょ、俺の尊厳はどこへ行ったのー?!!」



(そんなの元からないと思うの。By 作者)



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