正解は胸の中に

生徒

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ハッピーバースデー

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僕は今日、江桐えぎりたちと一緒に買い物に来ていた。それでこれの元々の理由は江桐の誕生日を祝おうという名目を遊びに行くと言って彼女を呼んだのだ。

 そして僕は彼女たちの勘違いによって、生死の境を垣間見るほどに痛めつけられた。流石に生死の境は言い過ぎかもしれないが、痛めつけられたのは事実だ。

 されたことと言えば僕が江桐の買い物が終わるのを待っていたら後ろからタオルで目を隠された挙句、手をガッチリと押さえつけられ「無駄な抵抗はしないでね」だ。こんな話があるものか。お前らは犯罪組織かなのかよってはなしだ。

 そして、やっと解放してもらえたと思えばめっちゃ殺気立ってる女性2人。あの時は僕、死を確信しちゃったね。そして、怒られた理由というのが「江桐の誕生日のこと知らなかったでしょ?」との事だ。知ってるっつーの。全部お前らの勘違いだ。

 「ね、ねえ、山田くん。ご、ごめんね。ただの勘違いだったのだからさ許してほしいな」 

 いつもの感じと全然違うな。もしかして、顔はとても似てるけど人格が変わってしまったのではないか? と思うくらい大人しくなった菊池。

 ここまでくると逆に不気味だな。と思ってしまうくらいだ。そして椎葉はいつものように謝ってくれたのだが、やっぱり違和感がすごいな。

 「山田くんごめんね。私たちがちゃんと伝えてたらこんなことにならなかったんだけど」

 本当にそうだな。菊池達がちゃんと僕にその日江桐が誕生日だよって説明さえしてくれれば、あいつらが勘違いすることは無かったんだしな。

一応僕は怒ってないのだが、起こっている雰囲気を出すために僕はずっと黙って彼女たちを見つめていた。
 

 私は、江桐 唯華。今は菊池と椎葉が居なくなったから、山田くんと一緒に買い物をしてる。それで今、さっき山田くんに似合ってるって言ってくれた服を持ってレジに並んでいるところ。

 そして、私がレジから戻ってきた時になぜか山田くんの姿が無くなっていた。あれ? トイレいっちゃったのかな。ちょっとだけここで待ってようかな。

 私はそう思ってこのangel worksという店の前にある椅子に腰をかけて数分待った。でも、一向に彼は帰ってこなかった。それでも私は帰ってくることを信じて更に数分待っていた。

 「──来ない。なんで、戻ってこないの?」

 私はなぜか椅子に腰をかけて独り言をブツブツとひとりで呟いていた。何してるんだろう。私は。

 そして私は急遽きゅうきょ彼を探しに行く事に決めたそれはここで迷っているかもしれないと思ったからだ。私は一応同じ階層の所を片っ端から探していくことにした。私はまず手始めにあの菊池と椎葉がいるであろう店へ走っていった。

 正直、デパートでヒールを履いて走っていたらそりゃあもう滑稽な姿だったと思う。そんなのだって私、メイクも汗とか涙で落ちてたんだよ? その時の私は焦ってメールが受信したことすらも分かっていなかった。

 私はそうして、彼女たちの御用達の店に着いて適当に店内を見渡した。そこまで大きな店でもないから私は適当に見回していないと分かるとすぐに私は店を出てまた最初にいた場所に戻った。

 それは、もしかすると彼、山田くんがいると思ったからだ。私はそうしてangel worksに戻った。でもそこには彼の姿は無かった。そして私はまた違う場所へと探し始めた。彼をいや、みんなを探すために。

 でも、その時の私には携帯というものの存在を忘れていた。焦って、早く見つけないとと焦って。


僕達は江桐にメールを送ってから十分程が経とうとしていた。彼女がくる音沙汰も無く無為に時間が過ぎていった。折角のカラオケだというのにみんなの表情は時間が経つにつれて、暗くなっていた。
 
「おり、電話出てくれた?」
 「 いや、全く出てくれない。一体どこで油売ってんのかな」
 「さあね、でもゆーちゃんがこんな事しなかったらこうはならなかったと思うよ」
 「私が悪いの? これ考えたのは私だけど、おりも結果的には賛成したじゃんか」

 最悪だ。もう、こんな状況でちゃんと話すことも出来ないし、どっちもどっちで二人の悪い所の言い合いだ。こんなので江桐が来てくれるとは思えないんだけどな。

 電話に気づいてないならマナーモードにしててメールだってわかんないだろうし。僕はそう思い立ち上がってドアノブに手をかけた。

 「山田くん。どうしたの? トイレ?」
 「ち、違う。探しに行く」

 僕はそう言って、カラオケの部屋を出ていって江桐を探しに行った。一応僕は椎葉のメールアドレスはあるから、見つかったら連絡をすることにしよう。

 僕は自分の分のカラオケ代だけを払ってこの店から出た。僕の居た階は江桐と一緒にいた2Fでは無く4Fにいた。とすると、多分2Fをあいつは探しているのかな。 

 僕はそう思いエレベーターを使って2Fまで降りていった。僕が出た場所は彼女と一緒に行った店のすぐ近くだった。一応いないとは思うけど、この店に入ってみるか。

 やっぱりレディースばっかりだな。僕は女性客の変な視線を感じながら僕は店内を探したのだが彼女は居なかった。ここにいないならどこにいるんだ。

 僕はここのデパートを全然知らない。正直、この大きさのデパートで彼女1人を探すのは難しいってものじゃない。こんなのは川に落ちたコンタクトレンズを探すようなものだ。
 僕はダメもとながら一階から全ての店を見て回った。


 私は彼を探し始めてもう数十分たった頃だろうか。一応2階の店は周り終わったのだけど、流石に一フロアが広すぎて私は体力の限界で一階のフードコートで休んでいた。

 「痛っ。最悪右足靴ズレしてるし。どうしよ、今日カバンの中に絆創膏余ってないし。どうしよ。このままじゃ探すも何もまともに歩けないし」 

 私はまた、長々と独り言を呟いていた。私はふとカバンの中の携帯が着信をしている事に気がついた。


 なんか不在着信が来てるし。椎葉から二十分前に連絡来てるし。それともうちょっと前に菊池から、

『唯華以外みんな4Fのカラオケの206室にいるから早く来てね』

なっ。私は言葉が出なかった。最悪だ。いつもはしてないはずのマナーモードがついていて、私はそれにも気づいていなかったことにやっと気がついた。

 「どうしようか。今からいこうにも思ってたより靴ズレ酷いし」

 私は靴を脱いで傷を確認すると足が真っ赤に腫れ上がって、血も出ていた。薬局もあるけどここからじゃ10分はかかるし。一応メールして椎葉たちに来てもらわないと。
 

僕は一階で彼女を探していた。彼女の姿は一階の本屋、ベーカリーなどにはいなかった。後は総合食料品売り場とフードコートだけどいるとすればフードコートのはず。

 僕はそう思いフードコートに足を運ぶと予想以上に広かった。大体フードコートだけで500㎡程の大きさがあった。にしても広いなあ探しきれるかな。いたとしても見逃しそうだ。

 僕はそう思いながらも端から順に探していると僕は江桐の姿を見つけ出した。

 「え、江桐」

 僕がそういうと彼女は後ろを向いて彼女は僕に対して抱きついてきた。椅子に座ったまんまで。


 「それと、は、は、ハッピーバースデー」
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