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シーズンⅠ-16 準備
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有佳を送り出した後でこのあとどうしようかと耕三さんに聞いてみた。
「あなた、お疲れ様でした。朝美ちゃんが戻って来たら晩御飯だけどファミレスでいい?」
「お疲れ様でした。うん久しぶりだからしっかり食べて、そのあとカラオケってコースはどお? 朝美の歌もしばらく聞いてないし、レッスンの成果も見てみたいんだけど」
「あの娘《こ》たち喜ぶわ、そしましょう」
ファミレスでの晩御飯と宮藤家恒例の二時間カラオケも終わって、涼子と朝美も既に部屋に戻っていた、始めて半年くらいだが元々歌の上手かった朝美のレベルはひいき目に見てもプロ並みだと家族一同あっけにとられてカラオケ屋を後にした。
最後にお風呂から上がってきた君子がリビングに入ると耕三さんはいつもの芋焼酎を飲んでいたが、テレビは付けていなくて何か深刻な考え事してるみたいに固まっていた。
「どうしたの・・・有佳さんのこと?」
「いや、それもあるけど中野塔子のことなんだけど。有佳さんは知らないって言っていたけど、知ってたんじゃないかなと思ってさ」
「なんで。もし、かぶっていたとしても有佳さんが中学一年の時の高校三年でしょ、知らなくても不思議じゃないと思うけど」
「うぅーん、かなり複雑なんだけど。中野塔子の父親はまだ若いが北部銀行の取締役なんだ」
「・・・・・・」
「涼子の通っている女学院は北部学園が運営してて女学院の他に大学と短大、付属高校、幼稚園も経営してる、しかも銀行や鉄道、不動産、新聞社などの北部グループの宗家が北部学園なんだ。北部家は四百年以上前の戦いの時から宗家として認められてる、その時に反逆者とされた一族の生き残りが中野家なんだ。別に反逆なんかしてないんだ、時の天下人に真っ向からぶつかった勇気ある一族だったと僕は思う」
「すごい、この街の人はみんな知ってるお話しなの?」
「ここで仕事する以上は、みんな知っている。中野家は代々に亘って尊重されているし一目置かれている、中野家の今の当主が中野壮一、中野塔子はその一人娘なんだ。中野家は北部の下についてからは家臣団で最大規模を誇っていた。この中野一族の絆は今もって断ち切れていない、当主がすべてを束ねていると言われている。中野塔子はこういう話は一切しないんで実は僕もよくは知らない」
「そんなすごいお嬢さんが、耕三さんのお店にいるのってなんか不思議な感じだわね」
耕三さんが深刻な顔をして固まっていたのは、中野塔子さんという人が原因だとやっと君子にも理解できた。
「北部銀行の次期頭取と目される浅野専務の娘が証券界最大の野山証券北部支店に勤めたので、みつつ証券の本社が誘いを掛けて中野取締役のお嬢さんを入社させたんだ。中野取締役の意向を知っていたからね」
君子には何が何やらさっぱり分からない話になってきた。
銀行の頭取って雲の上の人と言うくらいしか君子には考えられない。
次期頭取候補の人の娘の話って、なんで頭取になるために子供の話が出てくるのって感じで理解できない。
「耕三さんの世界って、なんて言ったかしら・・・そう、魑魅魍魎の世界。大丈夫なの? 躰壊さないで下さいね」
「うん、ありがとうね、僕は大丈夫だよ。うちの支店の代々の支店長の仕事のお陰で僕はそれを引き継いでいるだけだから。そんな大したことやってないし。でもこれから困ったことになるかも知れない」
「なにかあったの?」
「いや、ただね。中野壮一氏が代々の当主と違って北部宗家への恨みを強く持っているらしいんだ。北部宗家はそのことを知っている。だから工藤先生から有佳さんも聞かされれているとしても僕は不思議に思わない。今日はあえて名前を出してみたんだけど、反応の薄さに引っかかるんだ。気のせいとは思えない。だから考えていたんだ」
耕三さんが言うには、北部宗家が経営しているのは北部学園だけなので、そこに勤務する教員や職員には中野壮一氏の恨みの強さは知らされているので工藤先生はもちろん知っているはずと言うことだった。
みつつ証券は北部グループすべてと取引していて、北部グループは大きいので担当は耕三さんの支店ではなく、東北最大都市の刻文市にある刻文支店かみつつの本社と北部グループは直に繋がっているそうだ。
ただし北部支店長である耕三さんの日頃の北部グループへの情報収集の仕方次第でシェア争いの構図が変わることも普通にあるそうだ。
「もし有佳さんが知っていたとしたらなんで隠したのかしら」
「そこが不思議なんだ、さっき考えていたんだけど、中野塔子が一人娘だってのに関係があるのかも知れない。北部学園の人間は、塔子さんへの接触が禁じられているのかも知れない。敵対している北部学園からの接触が分かれば中野壮一氏を刺激することになるからね」
「耕三さん大丈夫なの、そんな危ない人を部下に持って。なんだか心配になってきたわ」
「あはっ笑える、中野塔子は危険じゃないって。むしろ中野壮一氏を唯一なだめることができる人物かも知れないと思ってる。分かるんだ、娘の前では普通のお父さんだってことが、なんとなくだけどね。分かんないのは中野塔子本人のほう。中野塔子は隙を見せることがない、何を考えているのかよく分からない面もある、お客さま対応はきちんとできているが明るい感じではない。着任してもう半年になるけど中野塔子が感情的になったのを見たことがない。そう、表情が薄いと言うかほとんど無いに等しい。キーマンには違いないと思ってるんだけど」
耕三さんは、最後に、僕の代ではどうと言うことは起きないと思うけど、次かまたはその次の代の北部支店長と刻文支店長は大変だろうな、と独り言のように呟いた。
****
寝床に付いた君子は、今日のことを何度も思い出していた。
よくお盆の上にあったグラスを落とさなかったと思う。
いまも有佳が押さえつけてきた左手の感触が口元にある、柔らかい小さな手のひらだった。
有佳の右手はそれ自体が生き物としか思えない。
君子はジーンズを引っ張られたと思ったけど実際はジーンズとショーツを同時に引っ張られたのかも知れない。
あまりの早さに気がついた時には侵入を許していた。
君子は両足を閉じずに逆に少し開いて腰を少しだけ下げて受け入れていた。
反射的にそうしたのではない。
意図的に有佳の右手に協力していた。
そんな自分が浅ましい。
****
次の日は日曜日、特に何もない時は皆揃って朝ご飯を食べる。
朝ご飯を頂きながら君子は夜中の間にまとめていた考えをなるべく自然になるよう口に出した。
「昨日の有佳さん頑張り屋さんだったわね。びっくりしちゃった」
「君子もそう思った?まだ十九歳でしょ、お金にあれだけ真摯に向き合う女性をたぶん見たこと無い」
耕三さんでもそう思うってことは、なにか有佳にはお金に関して計画があるんだろうと思う。
「四歳か五歳しか離れていない涼子さんも見学したかったって言ってるけど」
「また来てもらえばいいことだから。その時にね涼子さん」
涼子が自分を第三者で表現する時は大丈夫な時と要注意な時がある、いまのは要注意の方だ。
こうでも言わないとずっと根に持たれる。
「お母さんも有佳さん見てていい刺激をもらったわ。お母さんも自分磨きしようと思う。株とかは無理、アスレチッククラブに入会しようと思う」
家族三人から一斉に、おぉーって低い声で賛同がきた。
「体型維持と健康管理にはいいんじゃない。水泳とかもやれるとこ探せばぁ」
耕三さんが最初に言ってくれた。
子供達も綺麗なお母さんのままでいるにはそこは大事、とか言ってきた。
「ありがとう。言ったからにはしっかり続けるつもり」
****
君子は、プールも付いていてジャグジーやロッカールーム等の館内設備やセキュリティがしっかりしている北部市内では最高レベルのアスレチッククラブの月額会員になった。
耕三さんが調べたところ、北部市内のアスレチッククラブは高齢者利用と健康ブームでどこも盛況で会員数が多い。
決めた所は月額費用が高いが、土日でも会員の家族が割引で利用できるので耕三さんとも行けるしゆったり過ごせる。
君子がアスレチッククラブ通いを決断したのは、有佳が冷たく言い放った「おばさん次第だけど」というのが気になって頭から離れないでいたからだった。
有佳は自分の時間を自由に使えるが君子はそうはいかない。
有佳が投げつけた言葉の真意は自分とそうした時間を過ごせるかどうかは君子がどうやって時間を作り出せるかに掛っているんだけど、できるの?ってことだと理解した。
有佳と会うだけなら両方の家族も承知しているので可能だが、頻繁に会ったり泊りがけで旅行に行ったりするほどの関係と言うのもおかしい気がする。
秘密の時間を作り出す必要がある。
この答えがアスレチッククラブだった。
君子は深夜勤の時は夕ご飯を娘たちと食べてから出勤しているが、アスレチッククラブに入ってからは時々、準夜勤と同じ時間に家を出てクラブで汗を流してから深夜勤へ向かうことにすればいい。
十六時に勤務が始まる準夜勤の時の作り置きメニューはばっちりだ、カレーと中華丼から始まってシチュー、おでん、肉じゃが、ロールキャベツにグラタン、ミートソースそしてお刺身と炒飯、うどん。
深夜勤は二十時から始まる。
君子が有佳と秘密で会う時を深夜勤の日にすれば時間の捻出が可能になる、十五時ぐらいに家を出れば余裕で四時間近くを有佳に捧げることができる。
小学五年生の朝美は十四時二十分か十五時二十分に授業が終わる、ボイトレが入ってる水曜日が準夜勤の時はすれ違いで会えないが、朝美はその点しっかりとしていて大丈夫だ。
おばあちゃん家に寄って犬と遊んでるので放課後児童クラブには行っていない。
手が掛からないほんとうに出来た娘だし最近また綺麗になっている。
君子は有佳と一晩中居られる秘策を思いついていた。
自宅のダイニングキッチンに貼る方の勤務表にだけ一日分の偽の深夜勤を追加するというものだったが、それはまだ確信を持てずにいる。
あれだけ有佳に対するリスク回避に頭を悩ませていたはずなのに、たった一度の一方的な凌辱でこうも変わってしまう自分が君子は嫌だった。
有佳に責められたことが忘れられない。
長い間、思い描いている服従ができる相手にやっと巡り合った。
この先どうなるかは分からないが、準備はできた。
「あなた、お疲れ様でした。朝美ちゃんが戻って来たら晩御飯だけどファミレスでいい?」
「お疲れ様でした。うん久しぶりだからしっかり食べて、そのあとカラオケってコースはどお? 朝美の歌もしばらく聞いてないし、レッスンの成果も見てみたいんだけど」
「あの娘《こ》たち喜ぶわ、そしましょう」
ファミレスでの晩御飯と宮藤家恒例の二時間カラオケも終わって、涼子と朝美も既に部屋に戻っていた、始めて半年くらいだが元々歌の上手かった朝美のレベルはひいき目に見てもプロ並みだと家族一同あっけにとられてカラオケ屋を後にした。
最後にお風呂から上がってきた君子がリビングに入ると耕三さんはいつもの芋焼酎を飲んでいたが、テレビは付けていなくて何か深刻な考え事してるみたいに固まっていた。
「どうしたの・・・有佳さんのこと?」
「いや、それもあるけど中野塔子のことなんだけど。有佳さんは知らないって言っていたけど、知ってたんじゃないかなと思ってさ」
「なんで。もし、かぶっていたとしても有佳さんが中学一年の時の高校三年でしょ、知らなくても不思議じゃないと思うけど」
「うぅーん、かなり複雑なんだけど。中野塔子の父親はまだ若いが北部銀行の取締役なんだ」
「・・・・・・」
「涼子の通っている女学院は北部学園が運営してて女学院の他に大学と短大、付属高校、幼稚園も経営してる、しかも銀行や鉄道、不動産、新聞社などの北部グループの宗家が北部学園なんだ。北部家は四百年以上前の戦いの時から宗家として認められてる、その時に反逆者とされた一族の生き残りが中野家なんだ。別に反逆なんかしてないんだ、時の天下人に真っ向からぶつかった勇気ある一族だったと僕は思う」
「すごい、この街の人はみんな知ってるお話しなの?」
「ここで仕事する以上は、みんな知っている。中野家は代々に亘って尊重されているし一目置かれている、中野家の今の当主が中野壮一、中野塔子はその一人娘なんだ。中野家は北部の下についてからは家臣団で最大規模を誇っていた。この中野一族の絆は今もって断ち切れていない、当主がすべてを束ねていると言われている。中野塔子はこういう話は一切しないんで実は僕もよくは知らない」
「そんなすごいお嬢さんが、耕三さんのお店にいるのってなんか不思議な感じだわね」
耕三さんが深刻な顔をして固まっていたのは、中野塔子さんという人が原因だとやっと君子にも理解できた。
「北部銀行の次期頭取と目される浅野専務の娘が証券界最大の野山証券北部支店に勤めたので、みつつ証券の本社が誘いを掛けて中野取締役のお嬢さんを入社させたんだ。中野取締役の意向を知っていたからね」
君子には何が何やらさっぱり分からない話になってきた。
銀行の頭取って雲の上の人と言うくらいしか君子には考えられない。
次期頭取候補の人の娘の話って、なんで頭取になるために子供の話が出てくるのって感じで理解できない。
「耕三さんの世界って、なんて言ったかしら・・・そう、魑魅魍魎の世界。大丈夫なの? 躰壊さないで下さいね」
「うん、ありがとうね、僕は大丈夫だよ。うちの支店の代々の支店長の仕事のお陰で僕はそれを引き継いでいるだけだから。そんな大したことやってないし。でもこれから困ったことになるかも知れない」
「なにかあったの?」
「いや、ただね。中野壮一氏が代々の当主と違って北部宗家への恨みを強く持っているらしいんだ。北部宗家はそのことを知っている。だから工藤先生から有佳さんも聞かされれているとしても僕は不思議に思わない。今日はあえて名前を出してみたんだけど、反応の薄さに引っかかるんだ。気のせいとは思えない。だから考えていたんだ」
耕三さんが言うには、北部宗家が経営しているのは北部学園だけなので、そこに勤務する教員や職員には中野壮一氏の恨みの強さは知らされているので工藤先生はもちろん知っているはずと言うことだった。
みつつ証券は北部グループすべてと取引していて、北部グループは大きいので担当は耕三さんの支店ではなく、東北最大都市の刻文市にある刻文支店かみつつの本社と北部グループは直に繋がっているそうだ。
ただし北部支店長である耕三さんの日頃の北部グループへの情報収集の仕方次第でシェア争いの構図が変わることも普通にあるそうだ。
「もし有佳さんが知っていたとしたらなんで隠したのかしら」
「そこが不思議なんだ、さっき考えていたんだけど、中野塔子が一人娘だってのに関係があるのかも知れない。北部学園の人間は、塔子さんへの接触が禁じられているのかも知れない。敵対している北部学園からの接触が分かれば中野壮一氏を刺激することになるからね」
「耕三さん大丈夫なの、そんな危ない人を部下に持って。なんだか心配になってきたわ」
「あはっ笑える、中野塔子は危険じゃないって。むしろ中野壮一氏を唯一なだめることができる人物かも知れないと思ってる。分かるんだ、娘の前では普通のお父さんだってことが、なんとなくだけどね。分かんないのは中野塔子本人のほう。中野塔子は隙を見せることがない、何を考えているのかよく分からない面もある、お客さま対応はきちんとできているが明るい感じではない。着任してもう半年になるけど中野塔子が感情的になったのを見たことがない。そう、表情が薄いと言うかほとんど無いに等しい。キーマンには違いないと思ってるんだけど」
耕三さんは、最後に、僕の代ではどうと言うことは起きないと思うけど、次かまたはその次の代の北部支店長と刻文支店長は大変だろうな、と独り言のように呟いた。
****
寝床に付いた君子は、今日のことを何度も思い出していた。
よくお盆の上にあったグラスを落とさなかったと思う。
いまも有佳が押さえつけてきた左手の感触が口元にある、柔らかい小さな手のひらだった。
有佳の右手はそれ自体が生き物としか思えない。
君子はジーンズを引っ張られたと思ったけど実際はジーンズとショーツを同時に引っ張られたのかも知れない。
あまりの早さに気がついた時には侵入を許していた。
君子は両足を閉じずに逆に少し開いて腰を少しだけ下げて受け入れていた。
反射的にそうしたのではない。
意図的に有佳の右手に協力していた。
そんな自分が浅ましい。
****
次の日は日曜日、特に何もない時は皆揃って朝ご飯を食べる。
朝ご飯を頂きながら君子は夜中の間にまとめていた考えをなるべく自然になるよう口に出した。
「昨日の有佳さん頑張り屋さんだったわね。びっくりしちゃった」
「君子もそう思った?まだ十九歳でしょ、お金にあれだけ真摯に向き合う女性をたぶん見たこと無い」
耕三さんでもそう思うってことは、なにか有佳にはお金に関して計画があるんだろうと思う。
「四歳か五歳しか離れていない涼子さんも見学したかったって言ってるけど」
「また来てもらえばいいことだから。その時にね涼子さん」
涼子が自分を第三者で表現する時は大丈夫な時と要注意な時がある、いまのは要注意の方だ。
こうでも言わないとずっと根に持たれる。
「お母さんも有佳さん見てていい刺激をもらったわ。お母さんも自分磨きしようと思う。株とかは無理、アスレチッククラブに入会しようと思う」
家族三人から一斉に、おぉーって低い声で賛同がきた。
「体型維持と健康管理にはいいんじゃない。水泳とかもやれるとこ探せばぁ」
耕三さんが最初に言ってくれた。
子供達も綺麗なお母さんのままでいるにはそこは大事、とか言ってきた。
「ありがとう。言ったからにはしっかり続けるつもり」
****
君子は、プールも付いていてジャグジーやロッカールーム等の館内設備やセキュリティがしっかりしている北部市内では最高レベルのアスレチッククラブの月額会員になった。
耕三さんが調べたところ、北部市内のアスレチッククラブは高齢者利用と健康ブームでどこも盛況で会員数が多い。
決めた所は月額費用が高いが、土日でも会員の家族が割引で利用できるので耕三さんとも行けるしゆったり過ごせる。
君子がアスレチッククラブ通いを決断したのは、有佳が冷たく言い放った「おばさん次第だけど」というのが気になって頭から離れないでいたからだった。
有佳は自分の時間を自由に使えるが君子はそうはいかない。
有佳が投げつけた言葉の真意は自分とそうした時間を過ごせるかどうかは君子がどうやって時間を作り出せるかに掛っているんだけど、できるの?ってことだと理解した。
有佳と会うだけなら両方の家族も承知しているので可能だが、頻繁に会ったり泊りがけで旅行に行ったりするほどの関係と言うのもおかしい気がする。
秘密の時間を作り出す必要がある。
この答えがアスレチッククラブだった。
君子は深夜勤の時は夕ご飯を娘たちと食べてから出勤しているが、アスレチッククラブに入ってからは時々、準夜勤と同じ時間に家を出てクラブで汗を流してから深夜勤へ向かうことにすればいい。
十六時に勤務が始まる準夜勤の時の作り置きメニューはばっちりだ、カレーと中華丼から始まってシチュー、おでん、肉じゃが、ロールキャベツにグラタン、ミートソースそしてお刺身と炒飯、うどん。
深夜勤は二十時から始まる。
君子が有佳と秘密で会う時を深夜勤の日にすれば時間の捻出が可能になる、十五時ぐらいに家を出れば余裕で四時間近くを有佳に捧げることができる。
小学五年生の朝美は十四時二十分か十五時二十分に授業が終わる、ボイトレが入ってる水曜日が準夜勤の時はすれ違いで会えないが、朝美はその点しっかりとしていて大丈夫だ。
おばあちゃん家に寄って犬と遊んでるので放課後児童クラブには行っていない。
手が掛からないほんとうに出来た娘だし最近また綺麗になっている。
君子は有佳と一晩中居られる秘策を思いついていた。
自宅のダイニングキッチンに貼る方の勤務表にだけ一日分の偽の深夜勤を追加するというものだったが、それはまだ確信を持てずにいる。
あれだけ有佳に対するリスク回避に頭を悩ませていたはずなのに、たった一度の一方的な凌辱でこうも変わってしまう自分が君子は嫌だった。
有佳に責められたことが忘れられない。
長い間、思い描いている服従ができる相手にやっと巡り合った。
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