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第5章 秘密

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 加奈は後ろ手に拘束され部屋の隅に置かれた、藤崎智子は何事もなかったかのように母親と向き合う、二人とも全裸だ。
 加奈が藤崎智子に引きずられるようにして部屋に連れ込まれた時に最初に見せた真美子の表情は絶望だった、娘に痴態を見られることが耐えられないのだ、それでも自分の気持ちとは別に観念したかのように藤崎智子を見つめていく、応えるように「いっぱい愛してあげる」の一言を口にした藤崎智子の愛撫が加奈の目の前で始まる。
 優しい藤崎智子の舌使いにやがて真美子の顔はだらしなくなり、二人の躰がしっかりと抱き合い、藤崎智子が真美子の下半身に指を使い始めると上を見上げた真美子が藤崎智子にしがみついていく、そして、真美子の両脚が藤崎智子の腰に巻きついた時、横を向いた真美子が娘の加奈に向けた目が物語っていたのは勝ち誇った者のそれであった。
 その日を境に、藤崎智子は必ず加奈を拘束して同席させるようになったが加奈に手を出すことはしない、真美子が娘には手を出さないでと懇願することもない、ただ放置されるだけで二人の行為を見せつけられる。
 加奈が母親の勝ち誇った目の意味を理解したのは中学に入ってからだ、自分を捨てた男へ「こんなにも私は愛されていて幸せなのよ」と言っている、娘を媒体に元夫を見つめている、娘への関心は微塵もない。
 加奈が援助交際を始めなんとか高校に入学した頃に変化が起きた。
 藤崎智子が安アパートに来る回数が極端に減ったのだ。
 ある日、加奈のすぐ脇で二人が声を押し殺して愛し合っている時に聞いた会話で加奈は理解した、「声出したいだろうけど我慢してね」「ええ大丈夫、いつも出してるから」「真美子のすすり泣きが好きなの」「だって」「だって?」「智子さんがそうさせるから」「あぁ、あれね」「イジワル」「またやってあげる」。
 二人は声を気にしなくていいい別の場所で愛し合っていたのだ、加奈の中で何かが変わった、今まで一度も口にしたことがない言葉を藤崎智子に告げる、「自分にもして欲しい」と初めてお願いしたのだ。
 藤崎智子は冷たく笑うだけで放置状態を変えることはしなかった、最初、驚いた顔を見せていた真美子は藤崎智子が娘のお願いを無視したことが嬉しそうだ、加奈を軽蔑するような表情まで浮かべている、真美子の様子を見て藤崎智子が「私たちのを見るのが嫌だってあれだけ言ってたくせに、自分からお願いしてくるなんて加奈は嘘つきね」と言ってくる。
 初めての告白を無視された加奈はそれまで見せたことのない顔に、屈辱で歪んだ顔になる、「そのお顔はどうしたの、本当は興奮してるんでしょう」「し、してません」「メスのいやらしい顔になってる」「・・・」「裸にされて母親の目の前で私に愛されたいなんて」「そ、それは」「自分にもして欲しいってたったいま言ったでしょ、加奈みたいな変態は初めてよ」「あ、あぁ」「ふふ、真美子さんよりマゾ性が強いのね、いい顔してる」と告げられ加奈の躰に震えが走る。

 翌日、加奈は藤崎智子に会いに勤め先に行っている、「二人はアパートでは出来ないようなことを何かやっている、二人だけで楽しんでいる、さんざん自分を傍に置いてほったらかしにして私のことがそんなに嫌いなんですか」、加奈がそう文句を言ったあとで藤崎智子が返した言葉は「ええ、私は美しい人も自分の力を信じて生き抜く人も苦手、好きになれない。心の奥底に悲しみを抱いている人を好きになる、ごめんなさい」「今の私は傷ついて悩んでいます、悲しいです。だからこうして恥ずかしいのに会いに来たんです」「分かってる、来てくれたことは嬉しい。でもね、考えてみて、私があなたを抱いたことを知ればお母さんはどうなると思う、言ってみて」「たぶん、壊れる」「その通りよ、分かってるなら無茶いわないで、このまま帰りなさい」
 帰り道で加奈は泣いた、あの優しさが手に入らない、あの冷たさも手に入らない。
 
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