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12 ドタバタの健康診断②
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「えっ? はっ? な、な、なにがですか?」
「身ごもっている」というワードに飛び上がりそうになるほど驚いてしまい、まともな返事ができない。もしかして「竜王の卵」のことがバレた? やっぱりこの国のお医者様なら、黙っていてもわかってしまうの?
「あ、え、えっと、妊娠は……」
私がなんと言っていいかわからず、パクパクと口を動かしていると、リディアさんがコホンと咳払いをした。
「リコ、これは健康診断でよく聞かれることですから。お医者様、リコはここに来て日が浅く、緊張しています。それに男性のいる場所ではちょっと……」
そう言うと、リディアさんはチラリと竜王様を見た。
(そういう意味か! バレてしまったのかと思ったけど、日本でも問診票に妊娠の有無を答える項目があるもんね)
バクバクと鳴る心臓を抑えるように大きく息を吐くと、頭をかきながら気まずそうにしているお医者様の顔が目に入ってきた。反対に指摘された男性である竜王様は「別に隠すことはないだろう」と言っている。デリカシーという言葉を知らないのだろうか。
「いやいや、申し訳ない。しかしあなた様はここに突然現れたでしょう? あちらの世界で恋人か夫がいらっしゃって、妊娠している可能性があったら、数カ月は体調を気にしておいたほうが良いと思いまして」
「おい、そんな可能性、あるわけないだろう」
「竜王様、これは問診です」
リディアさんがピシャリと言い返すと、なぜか竜王様は不愉快そうな顔で天井を睨んでいる。腕を組み、指をトントンと動かしては、苛立ちを抑えているようだ。
(私だって彼氏くらいいましたよ! と言いたいところだけど、あんな環境でできるわけがない。むしろ私にとっての愛しい男は渋沢栄一だ。学校に入るため、夜な夜な彼の顔ばかり見ていたのだから)
しかしそんな馬鹿なことを考えているうちに、竜王様の機嫌はどんどん悪くなっていく。
「リコに恋人がいたのか? そいつはどこの――」
「竜王様、威嚇しないでくださいませ。お医者様の体にさわります」
「チッ」
その言葉にハッとしてお医者様を見ると、たしかに苦しそうに冷や汗をかいている。たぶん竜王様から竜気というものが出ていて、それで苦しんでいるのかもしれない。その様子にぼうっと見ている場合じゃないと思い直し、私は勢いよく手を上げ、話し始めた。
「はい! 私は今まで男性とお付き合いしてませんし、妊娠の可能性はこれっぽっちもありません!」
きっぱり宣言するように言うと、なぜか竜王様は「ふっ、当たり前だろう」と言ってニヤリと笑った。なぜあなたがそんなに満足気に笑っているのか……? 不思議に思って竜王様を見上げていると、お腹のほうから悲しそうな声が聞こえてきた。
『ぼくがお腹にいるのに……』
「ぐう……!」
(板挟み! 板挟みで苦しい……!)
子供の声は私にしか聞こえてないみたいだから、誰も気づいてない。しかしそのボソリと呟いた泣き出しそうな声は、私の心を確実にえぐってきた。
「身ごもっている」というワードに飛び上がりそうになるほど驚いてしまい、まともな返事ができない。もしかして「竜王の卵」のことがバレた? やっぱりこの国のお医者様なら、黙っていてもわかってしまうの?
「あ、え、えっと、妊娠は……」
私がなんと言っていいかわからず、パクパクと口を動かしていると、リディアさんがコホンと咳払いをした。
「リコ、これは健康診断でよく聞かれることですから。お医者様、リコはここに来て日が浅く、緊張しています。それに男性のいる場所ではちょっと……」
そう言うと、リディアさんはチラリと竜王様を見た。
(そういう意味か! バレてしまったのかと思ったけど、日本でも問診票に妊娠の有無を答える項目があるもんね)
バクバクと鳴る心臓を抑えるように大きく息を吐くと、頭をかきながら気まずそうにしているお医者様の顔が目に入ってきた。反対に指摘された男性である竜王様は「別に隠すことはないだろう」と言っている。デリカシーという言葉を知らないのだろうか。
「いやいや、申し訳ない。しかしあなた様はここに突然現れたでしょう? あちらの世界で恋人か夫がいらっしゃって、妊娠している可能性があったら、数カ月は体調を気にしておいたほうが良いと思いまして」
「おい、そんな可能性、あるわけないだろう」
「竜王様、これは問診です」
リディアさんがピシャリと言い返すと、なぜか竜王様は不愉快そうな顔で天井を睨んでいる。腕を組み、指をトントンと動かしては、苛立ちを抑えているようだ。
(私だって彼氏くらいいましたよ! と言いたいところだけど、あんな環境でできるわけがない。むしろ私にとっての愛しい男は渋沢栄一だ。学校に入るため、夜な夜な彼の顔ばかり見ていたのだから)
しかしそんな馬鹿なことを考えているうちに、竜王様の機嫌はどんどん悪くなっていく。
「リコに恋人がいたのか? そいつはどこの――」
「竜王様、威嚇しないでくださいませ。お医者様の体にさわります」
「チッ」
その言葉にハッとしてお医者様を見ると、たしかに苦しそうに冷や汗をかいている。たぶん竜王様から竜気というものが出ていて、それで苦しんでいるのかもしれない。その様子にぼうっと見ている場合じゃないと思い直し、私は勢いよく手を上げ、話し始めた。
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きっぱり宣言するように言うと、なぜか竜王様は「ふっ、当たり前だろう」と言ってニヤリと笑った。なぜあなたがそんなに満足気に笑っているのか……? 不思議に思って竜王様を見上げていると、お腹のほうから悲しそうな声が聞こえてきた。
『ぼくがお腹にいるのに……』
「ぐう……!」
(板挟み! 板挟みで苦しい……!)
子供の声は私にしか聞こえてないみたいだから、誰も気づいてない。しかしそのボソリと呟いた泣き出しそうな声は、私の心を確実にえぐってきた。
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