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11「竜王の卵」との話し合い②
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「りゅ、竜王の卵さん……?」
『はい! ママ!』
元気な声とともに、ポコッとお腹が膨らんだ。お腹にそえていた手にも、下から押し上げてくる感覚が伝わってきて、胸がドキッと跳ね上がる。
(声だけなら幻聴だけど、この手の感覚は現実よね……)
信じたくないけれど、これってやっぱり私が「運命の花嫁」に選ばれたってこと? 竜王様と結婚して子供を産む、ただ一人の女性。この国で女性の頂点にあたるお妃様。それが私だなんて到底思えない。
(思えないどころか、反感を買うだけだから、なっちゃダメでしょ!)
いや、その前に絶対殺されるはず。よくて拉致監禁だろう。私がパーティーを邪魔しただけで、あのギークという騎士は私のことを「卑しい平民」と罵っていたもの。徹底した身分社会のこの国で、貴族の女性たちが平民の私に頭を下げないといけないなんて、かなりの屈辱なはず。
そこまで考えると、一つの可能性が頭に浮かんだ。
(もしかしてこの子、人違いしてない?)
きっとそうだ! 私をお妃様にしたところで、誰も得しない。まだこの子は世間を知らないから、間違えたんだわ! すぐに教えて、別のちゃんとした竜人女性のお腹に入るよう教えてあげなきゃ! そう思った時だった。
『ねえ、ママ……もしかして、ママって僕のこと、嫌い?』
「えっ!」
私がずっと黙っていたからか、お腹の子はものすごく不安そうな声で聞いてきた。正直言って好きも嫌いもない。そこまで感情がついてきていないし、それに「好きだよ」なんて言ったら、この子は期待するんじゃないだろうか? そう思うと、また何も答えられなかった。
「あ……えっと……」
『やっぱり産みたくない? 僕、いらない子?』
「…………っ!」
(そ、そんな直球な質問は無しだよ~)
もともと子供が大好きな私だ。その涙声に胸の奥がきゅうっと切なくなって、私まで泣きそうになってくる。早く間違ってるって伝えてあげよう。そうすれば本当に大切にしてくれるママの元に行けるだろう。私はそっとお腹をなで、なるべく優しい声を出して話しかけた。
「そういうわけじゃなくてね、あなたがお腹の中に入る人を間違えたんじゃないかなって思ってるの。だからあなたの本当のママは別の所に――」
『間違えてないよ? だって神様と決めたから』
「か、神様?」
『そう、神様がママを指差して、あの子はどう? って聞いてきたの』
「そ、そうなの?」
日本でも不思議な話として、「空からママを見てた」と言う子をテレビで見たことはあった。しかしこの子はそのうえ、神様と一緒だったとは。でもなんで神様は異世界の私に目をつけて、しかも竜王様のお妃にしようと思ったのだろう。それにこの子もどうして……。
(もしかして、断れなかった……?)
偉い神様に勧められて、きっと嫌だとは言えなかったのかもしれない。今からでも戻れるなら、母親が自分を拒絶する良くない人だと伝えて、ママを変えてもらえないだろうか? だってこの国で私が母親だなんて、茨の道だよ。きっと平民から生まれた子だと差別されるだろう。
私はスリスリと慰めるようにお腹をなで、また竜王の卵に話しかけた。
「なんで私をママにしようと思ったの? 神様に言われて断れなかったのなら、もう一度……」
『だってママ、家族が欲しかったんでしょ?』
「えっ……」
『僕、ずっと見てたよ。さみしいって泣いてたでしょ? だから僕がママの家族になってあげようって決めたの!』
その思いもよらない言葉は、私の心に直接入ってきた。一気になんとも言えない感情があふれ出し、目の奥が熱くなってくる。
『はい! ママ!』
元気な声とともに、ポコッとお腹が膨らんだ。お腹にそえていた手にも、下から押し上げてくる感覚が伝わってきて、胸がドキッと跳ね上がる。
(声だけなら幻聴だけど、この手の感覚は現実よね……)
信じたくないけれど、これってやっぱり私が「運命の花嫁」に選ばれたってこと? 竜王様と結婚して子供を産む、ただ一人の女性。この国で女性の頂点にあたるお妃様。それが私だなんて到底思えない。
(思えないどころか、反感を買うだけだから、なっちゃダメでしょ!)
いや、その前に絶対殺されるはず。よくて拉致監禁だろう。私がパーティーを邪魔しただけで、あのギークという騎士は私のことを「卑しい平民」と罵っていたもの。徹底した身分社会のこの国で、貴族の女性たちが平民の私に頭を下げないといけないなんて、かなりの屈辱なはず。
そこまで考えると、一つの可能性が頭に浮かんだ。
(もしかしてこの子、人違いしてない?)
きっとそうだ! 私をお妃様にしたところで、誰も得しない。まだこの子は世間を知らないから、間違えたんだわ! すぐに教えて、別のちゃんとした竜人女性のお腹に入るよう教えてあげなきゃ! そう思った時だった。
『ねえ、ママ……もしかして、ママって僕のこと、嫌い?』
「えっ!」
私がずっと黙っていたからか、お腹の子はものすごく不安そうな声で聞いてきた。正直言って好きも嫌いもない。そこまで感情がついてきていないし、それに「好きだよ」なんて言ったら、この子は期待するんじゃないだろうか? そう思うと、また何も答えられなかった。
「あ……えっと……」
『やっぱり産みたくない? 僕、いらない子?』
「…………っ!」
(そ、そんな直球な質問は無しだよ~)
もともと子供が大好きな私だ。その涙声に胸の奥がきゅうっと切なくなって、私まで泣きそうになってくる。早く間違ってるって伝えてあげよう。そうすれば本当に大切にしてくれるママの元に行けるだろう。私はそっとお腹をなで、なるべく優しい声を出して話しかけた。
「そういうわけじゃなくてね、あなたがお腹の中に入る人を間違えたんじゃないかなって思ってるの。だからあなたの本当のママは別の所に――」
『間違えてないよ? だって神様と決めたから』
「か、神様?」
『そう、神様がママを指差して、あの子はどう? って聞いてきたの』
「そ、そうなの?」
日本でも不思議な話として、「空からママを見てた」と言う子をテレビで見たことはあった。しかしこの子はそのうえ、神様と一緒だったとは。でもなんで神様は異世界の私に目をつけて、しかも竜王様のお妃にしようと思ったのだろう。それにこの子もどうして……。
(もしかして、断れなかった……?)
偉い神様に勧められて、きっと嫌だとは言えなかったのかもしれない。今からでも戻れるなら、母親が自分を拒絶する良くない人だと伝えて、ママを変えてもらえないだろうか? だってこの国で私が母親だなんて、茨の道だよ。きっと平民から生まれた子だと差別されるだろう。
私はスリスリと慰めるようにお腹をなで、また竜王の卵に話しかけた。
「なんで私をママにしようと思ったの? 神様に言われて断れなかったのなら、もう一度……」
『だってママ、家族が欲しかったんでしょ?』
「えっ……」
『僕、ずっと見てたよ。さみしいって泣いてたでしょ? だから僕がママの家族になってあげようって決めたの!』
その思いもよらない言葉は、私の心に直接入ってきた。一気になんとも言えない感情があふれ出し、目の奥が熱くなってくる。
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