王国の彼是

紗華

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どうやら俺は男色らしい

3:廃太子と立太子

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イアン団長と共に陛下が待つ執務室へ向かうと、待っていたのは陛下と父フーガ、殿下の婚約者オレリア嬢の父、オーソン・ファン・デュバル公爵の3人。

「フラン・ファン・スナイデル。お呼びと聞き参じました。」

騎士礼をとって挨拶をする。

「呼び出して済まなかったな、フラン」

声を掛けてきた陛下は表立った疲れは見えないが声に威厳がない。

「フランよ、ナシェルがやらかした話しは聞いてるな?」

「はい…庭園におりましたが、話は聞きました。廃太子とは本当ですか?」

「余も耳を疑ったが、ナシェルが廃太子を申し出た。こんな事になるとは…オランドの婿入りも早まったと悔やまれるな」

「それは…」

「そんな顔をするな、解っておるよ…オランドに王位継承権がない事も、アリッサ王女の結婚が両国の友好に更なる発展を齎した事も…それに、父として余はオランドの幸せを願っておる。あの惚気は勘弁だがな…」

お前もだろう?と言われ、苦笑いで返す。


『フランよ、共に馬車に乗ってくれ。余だけではオランド惚気話を止められん…』


オランド殿下の惚気に耐えられなくなった陛下は、俺を馬から引き摺り下ろし馬車に同乗させたが、一騎士でしかない俺に、オランド殿下を止められる筈もなく…目に映るもの、耳に入るもの全てが、アリッサ王女殿下に繋がるオランド殿下との会話に最大限の注意を払いながら、陛下と支え合って乗り越えた。

どうしたら、あんな風に女性を愛せるのか…
などと現実逃避している場合ではない。
今はオランド殿下の恋愛哲学より、ナシェル殿下の廃太子の理由が知りたい。

「何故、ナシェル殿下が廃太子を申し出たのかお聞きしても?」

「愚息は臣籍降下し、オット男爵令嬢と一緒になると宣った上、オレリア嬢に婚約破棄まで言い渡したおった」

「婚約破棄ですか!?」

「学園で男爵令嬢に嫌がらせをしていたとナシェルは言っていたが、影の報告で事実無根と確認は取れている。宰相が聞いたところによると、男爵令嬢の身分では正妃になれない。だが、オレリア嬢を正妃に据え、男爵令嬢を側妃や愛妾にするのも我慢ならないと廃太子を申し出たそうだ」

俺の問いに父フーガが答える。敬称もなく、最早呼び捨て。

学園では、護衛を付けることが出来ない為、と呼ばれる部隊が、秘密裏に護衛兼、監視をしている。

影は国王直轄の部隊で、任務は護衛、監視、偵察、間諜、暗殺と多岐に渡る。首を垂れるのは王家ではなく、
影の存在は知っていても、そこに属する者は王妃や王太子も知らない。
様々な身分の者が居るとも、ある貴族の一族が担っているとも言われているが、それを知るのは国王のみ。
代替わりするまでは次代の国王となる王太子も顔を合わせる事はできない。

「オレリア嬢に非は無く、未来の王妃としての器、資質、教育も充分。それに引き替え、愚息は国ではなく“真の愛“とやらを選んだ。。ナシェルの廃太子は決定。となると残る道はフラン、王位継承権を持つお前が立太子して、オレリア嬢と婚約を結び直すしかない」

「ちょっ、ちょっと待って下さい!」

もしかしてとは思ったが、展開の早さに追いつかない。

「言いたい事は解っておる。お前が、女性を……その…で、見れないことも…騎士として、共に充実した日々を、過ごしていることもな……だが、国の為に腹を括って欲しい」

立太子については困惑もあれど、継承権を持つ者として理解はできる。だが、俺の男色疑惑を信じている陛下は理解したくない。

「陛下?あの、私は男色では――」

「フラン殿。娘は、今回の騒ぎの一端となった自身を責めています。国の未来を案じ、オット男爵令嬢をデュバル家の養女にし、ナシェル殿と婚約を結び直して欲しいと…自分は修道院に入り、国の為に祈りを捧げて生きていきたいとまで申しています……娘にはよく言い聞かせますので、機会を与えて頂けないでしょうか」

機会も何も立太子に付随する婚約は断れない。
デュバル公爵の震える拳から滲み出る悔しさが伝わって来るが、オレリア嬢に何を言い聞かせると言うのかまでは伝わって来ない…いや、伝わるって来ない様、拒否していると言った方が正しいか。

「フラン、お前の未来を閉ざし、を強いることは心苦しいが…受け入れてもらうしかない」

父よ、貴方も信じているのか。
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