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その他
守りたいだけ(後半 弟達目線)
しおりを挟む先に前半を読むことをおすすめします
前半は郁人だけでしたが後半は皆精神リョナります!
まだ投稿する可能性もありますが忘れそうなので早めに…今年も作品を読んでくださりありがとうございました、皆様良いお年を!!
ーーー
(優馬side)
兄…郁人の帰りが遅くなることが増えた。
始めは普通に居酒屋で働いているんだって分かった、タバコの臭いや揚げ物の匂い、お酒を飲む場所でつくような匂いがしたし、何より本人が楽しそうにバイトの話をしていた。
けど最近はその話すらも減って、匂いもしなくなって、でもその代わりに
「え……?」
嫌な臭いがするようになった。
(…このにおい、って)
郁人から、精液のにおいがした。
そして気付いていないのか、背中や後ろ髪に乾いた液体がついていることも増えて、
…察してはいたけど、本当は気付きたくなかった。
「あのさ……、居酒屋なんだよな?兄貴のバイト先」
郁人はそんなことしていないって、思いたくて、
「さっき……、………」
だからそれ以上聞けなかった。
「……ううん、なんでもない!あんまり無理するなよ」
「おやすみ」と言って出来るだけ明るい表情で部屋を出て、見えなくなったところですぐその表情は暗く濁った。
(大丈夫…兄貴は、人に言えないような悪い事はしてない、…大丈夫、大丈夫。)
今考えれば信じたかったんだと思う。
小さい頃から「憧れ」だった兄の存在を、
信じていたかったのかもしれない。
ーーー
「兄さん…今日も遅い」
「ふぁ……まだかな」
「こんなに遅いの珍しいな、…もう日付変わってるのに」
今日は明日が休みなこともあって皆で帰りを待っていた。
あまりに遅くてご飯は食べてしまったけど、兄の帰りを待ち続けた。
待って、深夜になって、
「………ん、」コク
「澪…、もう寝よ?大丈夫だよ、明日にはいると思うから」
眠そうな末っ子を寝かせてあげようと立ち上がった瞬間、皆の携帯が鳴った。
「…!グループ通話?」
兄弟のグループの通話のお誘いだった。
「あ…兄貴?一体何やって………」
こっちは心配しているのにと文句を言いながら応答する。
それはビデオ通話で、そこに映っていたのは
「え………?」
帰りを待っていた、兄の姿だった。
両脇には巨漢がいて、血が滲んだベッドの上に無気力で座る郁人の目は虚ろで、なんの反応も示さない。
「兄貴…?兄貴…!!」
そう呼びかけたけど向こうには届かないようにされているようだった。
「なにこれ…、…あ、澪!見ちゃだ『皆こんにちは~♡初めましてだね♡』…!」
向こうからは撮影者の声なのか粘つきのある男の声が聞こえてきた。
『単刀直入にルールを説明するね♡これはお兄さんが死なないようにするゲームです!…今君達は1人1台スマホで見てるよね?』
訳の分からないまま話は進んでいく。
混乱する澪、表情だけは冷静そうに様子を伺う海斗、今にも殴りかかりそうなのを出来るだけ堪える未来斗。
………郁人が誘拐された。そう思っていた。
『今からやる事に対して1人でも通話を切ったり目を逸らしたりしたらお仕置きとして郁人君の手足を折っていきます!1人1本だから皆切ったら手足4本だね♡』
なんて、俺達が通話を切れないようにされた。
「…見てればいいの…?」
「あ…澪、無理しなくても」
「大丈夫、見てられる」
そう言う澪はかなり怯えた目をしていて、これから何が起こるのか分かっていないようだった。
そして、
『や”ッ…、…ぅ”ぐ、ん”、んん!!!』
始まったのはやはり陵辱だった。
頭、腕、肩を押さえられて性器を口の中に押し込まれていく。
「え……」
澪が酷く怯えていた。
海斗はどうすればいいか分からないようで少し混乱した表情をしている。
「これ……拉致されたってことだよな」
拉致…もしくは、
『ッあ”、やめ』
『どうしてこんな事になったんだろうね~』
さっきの事が終わった後もベッドに無理矢理押し付けては酷い暴力を振るっていた。
『ひ……ッ』
『自分が何したかちゃんと言ったらいれないであげる』
男はそう言いながら、躊躇う度に性器を中にいれていく。
『ぁ…、………』
相当犯されていたのか、それに従った。
『ごめんなさい…ごめんなさい
援交してごめんなさい………!!!』
腕も掴まれていて涙でぐしゃぐしゃになった顔を拭くことすら出来ない。
殴られたような頬も腫れていて、髪もボサボサで服や体に精液がかけられていて、
苦しそうな叫び声がその場に響いた。
(………何もしてないって、言ったのに)
裏切られたような気持ちになった。
周りも皆、ショックを受けているような、濁った表情をしている。
「援交」なんて意味も知らなそうな澪でさえ、周りの様子を感じ取って複雑そうな顔をしていた。
(……なんで)
『よく言えたね~、ご褒美♡』
『ぇう”…ッ!?』
結局いれられて、体の上で激しく動く男の背中とたまに聞こえる過呼吸混じりの声が聞こえてくるだけ。
その後も、何度も何度も出されては体勢を変えてまた犯された。
意識が無くなれば薬や暴力で起こされて、起きた後もお仕置きと称して腹を殴られたり髪を掴まれたり、
物を乱暴に扱うような、そんな感じだった。
『………、』
そのうち、何度起こしても反応が薄くなって声も小さく、呼吸も浅くなって途切れ途切れになっていた。
そんな様子を見兼ねた男達は、カメラを郁人に近付けた。
目元や頬、口角を腫らして、虚ろな目でただこちらを見ているだけだった。
………けど、
「………無理」
「澪?」
それまで黙っていた澪が、口を開いた。
「もう無理……限界…!!」
「え…、あ、澪、」
耐えきれなくなった澪が、画面から目を逸らした。
「「「……!」」」
………目を逸らす、つまり、
『あ、逸らしちゃったね~♡お仕置きしなきゃな』
“1人目を離す事に手足を1本折る”
それを待っていたかのように男は指の骨を鳴らした。
「え……あ、」
道具なんて使わず、素手を使う。
それを見てゾッとした。
(もしこいつらが俺達を狙ってきても、敵わない………)
もしもの話ではあるけど、あっちは既に郁人のスマホを見る事が出来ている訳で、
『……うそ、…ぁ………』
二の腕と前腕を両手で掴んで、肘の方に向けて力強く曲げた。
『ぁ”ッ……………』
そこからしばらくして、聞こえてきたのは大きな悲鳴。
濁点混じりの声は言葉になっていなくて、「痛い」とか「助けて」とか、話しているはずなのに聞こえなかった。
目を見開いて絶望顔でそれを見ている澪、隣に座っていた海斗が画面からは目を逸らさずに澪の背中をさすっていたけど、その海斗ももう苦しそうで、
男達は郁人がある程度体力が限界で声が出なくなってきた後、また犯し始めた。
「あ…でも澪はもう見なくても『あ、ちなみに1回抜けたからずっと大丈夫とかではないからね♡1回逸らす事に1本折るから』」
結局澪も逃げられず、泣きながらその様子をスマホ越しに見ていた。
そして、それから少しして、一度気絶した郁人の意識が戻らなくなった。
『もう駄目かぁ、じゃあとりあえずここまでだね♡』
腕は1本、それ以上は大丈夫だったけれど、ベッドの上で反対側に向いた腕、散々に掴まれたボサボサになった髪に隠れる表情、
死んでいるかのような、そんな状態だった。
『じゃあ切るね♡おやすみ~』
男との温度差が酷く、こっちは全員無言で、誰もお互いと目を合わせようとしなかった。
唯一その中で、澪の机に雫が落ちる程泣きじゃくる声だけが聞こえた。
「あ…澪、怖かったか?大丈夫…、…大丈夫………」
海斗が宥めるように澪に優しい言葉をかけて、それに俺も未来斗もハッとして顔を上げた。
「…ごめんなさい……ッごめんなさい、」
そう泣いて謝る澪、確かに目を逸らしたのは澪だけだったけど、そもそもあんな映像を中学生に見せるのはいくら何でも酷すぎる。
動揺するのも無理は無い、俺達だって言葉も出ないくらい動揺しているのに。
「澪!とりあえず明日、兄ちゃんが帰ってきたら話しよっか、今日はもう寝よう、俺ホットミルク作るから!」
さっきまでずっと無言で画面を見続けていた未来斗が、ようやく少し笑って話し出した。
「熱くない?…良かった、それ飲んで今日は寝ような」
飲んだ後少し眠そうになっていた澪を、今度は俺が寝室まで連れていくことにした。
「俺澪の事寝かしつけてくる、お前らも先寝てていいからな」
もう立っていられないくらい眠そうな澪を背中におんぶして、2階に連れていった。
ーーー
(未来斗side)
優馬と澪が2階に行って、兄の海斗と2人になった。
「薬…入れたの?」
「うん、今回は仕方ないかなって………」
あのホットミルクには睡眠薬が入っていた。
「…なんか……、…びっくりしたな」
「う…うん、兄ちゃんが、……俺達に相談もしてくれなかったなんて」
それだけでも信頼されていないようで苦しいのに、あんなもの見せられたら余計酷くなってしまう。
「信頼されてなかった…か、…やっぱり、そういう事だよな」
「兄ちゃん……?」
見ると、兄はショックを受けたような、少し泣きそうな表情をしていた。
「……俺が郁人の事支えてなきゃいけなかったのに」
次男なのに長男の異変に気付けなかったこと、
それにショックを受けているようだった。
「あ…兄ちゃん、無理しないで、俺も悪いから、兄ちゃんは悪くない」
言葉が上手く選べなくて、どうすればいいのか分からなくて、
泣くのを必死に堪えている兄を見て、上手く言えないから自分の気持ちを正直に伝えた。
「泣いていいよ、今は俺と兄ちゃんしかいないし……俺も、同じ気持ちだから」
上手く言えたかは分からないけど、そう言うと兄の目に涙が溢れ出した。
近くに行って抱きしめて、苦しくないようにもっと吐き出すように促す。
ずっと苦しかったのか、躊躇なく涙がこぼれていった。
それを見て俺も、少しずつ涙が溢れてきた。
「…ぅ”、ッぁ”……、~っ…ひぐ、」
声を押し殺すように泣く兄、すすり泣く俺、どちらも静かではあるけど、それは止まらなかった。
ーーー
次の日になっても兄は帰ってこなかった。
「遅いな……」
「…兄さん……、まだ帰ってない…?」
澪が起きてきて、不安そうな表情でこちらを見ていた。
「あ……まだだよ、でも朝早いし、もうちょっと待ってみよう」
兄…優馬と2人でリビングで帰りを待っていたけど、澪、それから昨日遅くまで起きていた海斗が降りてきた。
「……ずっと帰ってこなかったらどうしよう」
「…澪!大丈夫、帰ってくるから………」
優馬はそう言うけど、もう10時なのに帰ってこない郁人は、正直もう帰ってこない気がした。
お昼になっても帰ってこなくて、1人多めに用意されたご飯はラップをかけて冷蔵庫に入る。
昼下がりになっても夕方になっても、あの人は帰ってこなかった。
……………そんな時、呼び鈴が鳴った。
「……!兄さん…?」
玄関の1番近いところにいた澪が、真っ先に部屋を出ていく。
(え……でも、兄ちゃんなら呼び鈴なんて)
そう思った瞬間、
「兄さん………!……
……………え………?」
誰なのか気になって廊下に出ると、澪の前に立っていたのは、
「……!」
昨日の、画面に映っていた男達だった。
改めて見るとかなり大柄で、巨漢と呼べる大きさ。
玄関をくぐるように入ってきて、1人が真っ先に澪の首を掴んだ。
「……!澪!!」
澪が危ない、そう思って飛び出した……が、
他の男達がこっちに来た。
「……!!」
俺も捕まって押し倒されて、あと2人の巨漢がリビングに入ろうとしていた。
「ッ2人共!!!早く逃げろ!!!!」
誰か1人でも逃げられれば、そう思ったのに男達の足は速くて、
勉強中だった海斗も、台所にいた優馬も簡単に捕まってしまった。
「あ……嘘……………」
こんな事になるなんて思ってなかった。
「皆上手く好み分かれて良かったな~、…あー…思ったより小さくて可愛いなぁ…君」
「……ぁ、…、……ぅ、」
恐怖で声が出ないのか、澪を助けたかったのに俺も男に壁に体を押さえつけられて身動きが取れなかった。
(なんでこいつ、こんな力が………)
俺だって力はあるはずなのに、本気で抵抗してもビクとも動かなかった。
「お名前は?…まぁ知ってるけど」
「や…、誰か、誰かたすけ「お名前は?!!」…い”ッ!!」
名前を言わない澪の頭を拳で殴った。
「…ぁ………」
そのまま怯える澪にもう一度名前を聞くと、澪は怯えたような小さな声で自分の名前を言った。
「み…お……」
「声が小さくて聞こえないなぁ、お腹から声出そっか!!」
「~~ッ!!!ぉ”…ッ」
今度は腹を殴られて澪が目を見開いて泣いていた。
「お名前は~?」
「ッ…みお、…澪……!!」
限界だったのか過呼吸気味で自分の名前を叫ぶ。
男は満足そうに「澪くんかぁ…」とニヤついた。
「っぃあ”………」
すると今度は澪に背中を向けさせて、自分の履いているものを脱ぎ始めた。
「え…?」
「やめろ、やめろってば!!」
俺が助けなきゃいけないのに
体は全く動かなくて、気が付けば男達の手は俺にも及んでいた。
「ぁ……、っ…みお、」
服の中に手を入れられて、指が肌の上で動く。
気持ち悪いけど、それより澪を助けようと見ていたら、
「こっち見ろよクソガキがッ!!!」
突然男はこちらに怒鳴りつけてきた。
「…ッ?!」
「次目逸らしたら容赦無く殴るからな…」
そう言って男は、また手を動かし始める。
「……やだ、」
「あ”?」
目は逸らさなかったけど、嫌だと言ったら殴られた。
「ひッ…」
「テメェ立場分かってんのか?ぶっ殺すぞ!!!」
自分よりかなり高い背丈、大柄な体、大きな怒声。
その威圧感に体が動かなくなった。
「さーて、じゃあ澪君もちょっと早いけど処女捨てちゃおっか♪」
そんな事している間にも、目の前で澪が組み敷かている。
「澪………ッ」
勢いよく下着ごと下を全部脱がされて、混乱した澪が小さく声を上げた。
「ぇ………」
「処女だねぇ~、はじめてがおじさんでごめんねっ」
そう言うと男は自分の指を1本ねじ込んだ。
「う”………っ」
「可愛いねぇ、おじさんは優しいからちゃぁんと慣らしてあげるね♪」
そうは言ってももう澪は声なんて耳に入らないくらい怯えている。
顔色が悪く、今にも気を失いそうだった。
「さてこんなもんかなぁ~、…おじさんのも準備万端だよっ」
無理矢理広げて指を抜いて、準備を進めていく。
「澪を離せ…!!お願いだからっ、」
自分のことそっちのけで叫んで、叫んでいたら横から声がした。
「え……」
その声は俺を捕まえた男の声で、
鼓膜が破れるような怒鳴り声だった。
「………っぁ、」
あまりに恐ろしくて、何を言っているかより耳元で聞こえる怒鳴り声がただただ恐ろしくて、
耳が痛くて、足が震えてその場に座り込んだ。
「ぁ…?あ、ぅ………っ」
「学習しねぇなぁ……また怒鳴られたいんだな!!!」
怖い
怒鳴られることが、怒られることが、
想像以上に恐ろしくて体が動かなかった。
ただ、リビングの方から
「ぐ……ッ、ん”ーーーーッ!!!!」
「海斗君はどこにいるのかなぁ♡おじさんの肉で見えないね♡」
巨漢に押し倒される…というよりかは潰される、兄の姿があった。
ここからじゃ足しか見えなくて、じたばたと暴れているにも関わらず上に乗る男は全くそれに動じない。
(兄ちゃん…あれじゃ息が)
息が出来ない
「……あ、」
兄の方を見ていたら、いつの間にか男はしゃがみこむ俺を追い詰めるように壁に手を置いて顔を近付けてきた。
そして、俺の耳を掴んだ。
「……ッ」
「どう言っても分からねぇみたいだな…分かるまで聞かせてやるよ!!」
それから、また男は怒鳴った。
何度も何度も、何度も俺に。
鼓膜が破れてあまりの恐怖に涙が頬を伝って、失禁までしていた。
「助けて…………」
頭が痛い、耳はもっと痛い。
フラフラして何も見えない、…耳から血が出ている。
段々、怒鳴っているのに声すら聞こえなくなってきた。
(……何も、聞こえない)
それが怖い
ーーー
(優馬side)
玄関の方から澪が泣いている声と、酷い怒鳴り声が聞こえてくる。
助けに行きたいのに、追い込まれて捕まって何も出来なかった。
(力で勝てない………相手の意思で体が動いてる)
完全にそんな状態だった。
「夜ご飯のスープかぁ、いいねぇ、おじさんも飲んでいい?」
「…ッ、そんなの勝手に飲めばいいだろ!!早く帰れよ!!」
台所のカウンター越しに床に押し倒されて相手の重さに窒息している兄、
未来斗と澪の様子は見えないけど、きっとこれと同じくらい酷いことをされているはずだ。
(澪が泣いてる……助けなきゃ、俺、澪の兄なのに………)
……それなのに、
「そんなつれないこと言わないでよぉ、一緒に飲もうよ」
「やめろ!!離せ、…ッ、もう帰れよ!!」
こんな大きな体に動きを封じられていれば、相手が1人でもかなりのトラウマを植え付けられる。
それがあの時は2人…3人くらいが兄を囲っていた。
そんなの、トラウマじゃすまないかもしれない。
(なんで黙ってたんだろう……助けになりたかったのに、)
自分が気付けなかったことを棚に上げていた。
そんな後悔してももう遅いのに、
「兄貴……」
あの人はもう帰ってきてくれない。
なんとなく、そう感じてしまった。
「美味しそうだねぇ、…それにしても兄弟いっぱいいるとすごい量だね」
大きな鍋に入ったスープは、やっぱり男5人分ともなるとそこそこの量にはなる。
男はそれを利用して俺を痛めつけてきた。
「え………」
「じゃあ優馬くんもいっぱい飲もうね」
男の拘束が解けたと思った次の瞬間、頭の上から出来たばかりのスープが落ちてきて体を覆った。
まだ熱く火傷しそうなくらい熱いそれは、体の左側を次々と流れていく。
頭、顔、肩、
熱湯が体にかけられた。
「ぁ…、…ッあぁあ”ああ”ぁ”ぁ!!!!」
……熱い、顔が熱い
痛い、痛いのに、
「はぁ…ッ、は…」
皮膚が焼けるような感覚で、咄嗟に水道で流そうとしたのに体を男の方に引き寄せられた。
「っ……!」
「熱いねぇ、辛いね、でもこのままヤろうねっ」
早く冷やさないと跡になる。
(やだ、顔……顔だけは)
顔に跡が残ったら、夢が叶わなくなる。
『俺…役者になりたい!』
諦めたくないのに、
「お、お願い、お願いします、ちょっとでいいから離して「駄目だよ~、…はい、じゃあ咥えてね」」
下手に出てお願いしても、泣いても離してくれなかった。
犯されているうちに、どんどん跡が目立ってきていた。
ぼんやりと霞むような視界に力の入らない手足、崩れるようにその場に倒れた。
ーーー
男達が帰っていって、何時間も経って、目が覚めたら台所は電気で薄暗かった。
(夜…………)
誰かに起こされたかと思ったら、海斗だった。
「…大丈夫?」
枯れた声で、小さく俺の体を揺さぶって、無気力そうな表情で、
「……大丈夫………」
体を起こして、気まずそうに俺を見る兄に少し違和感があった。
「何か、まずい……?」
「…あ、…えっと、……とりあえず病院に、」
兄の目線が自分の顔だった事もあって、ハッとしてリビングにあった鏡を見た。
…………すると、
「……あ、」
顔の左側に、大きな火傷跡が出来ていた。
「ぇ……あ…………うそ、」
「優馬!今すぐ病院に行こう?まだ治るかも………」
澪と未来斗も起こして、病院へ向かった。
ーーー
跡が治ることは無かった。
散々怒鳴られた未来斗の鼓膜は破れていて、症状も重かったみたいだけど治療をすれば元に戻った。
澪も海斗も、骨折した部分はあったものの日常生活が完全に送れなくなる程ではなく、身体的なものよりも精神的な方が酷かった。
あの人が帰ってこなくなってから、もう何日も時間が過ぎた。
「じゃあ、行ってきます」
初めはトラウマで外に出られなかった弟達も、最近はなんとか工夫して学校に行っている。
未来斗と海斗はクラスメイトに支えられて、澪も友達に勉強を教えてもらいながら保健室で勉強している。
あの日以来澪は玄関に行くのが怖くなって玄関を見るだけで怯えるようになった、未来斗も、大きな声には怯えてクラスでもたまに誰かが叫ぶと泣き出すようになった。
海斗は人に触られること自体が恐怖になっているのか初めは学校に行きたがらなかったし俺達の事も拒絶しかけていたけど、なんとかあそこまで回復している。
立ち直れていないのは俺だけだった。
深い傷跡になったそれは、隠そうとしてもなかなか隠せるものではなく、どうすることも出来なかった。
顔に傷跡が残った俺は夢を諦めた。
今は家で1人で家事をして過ごしているけど、外に出ることすら怖くなった俺を、あいつらはさらに苦しめてきた。
『ピンポーン』
「ッ!!」
弟達がいなくなった後、あの日俺を襲った男は家に来た。
「もう来るなって…何度も」
「来なくてもいいけど皆の写真晒すだけだからね~」
そう言ってはずかずか入ってきてあの日のように俺を犯す。
跡を見ては嘲笑していた。
毎日が辛くて、昔に戻りたくて、
この事は誰にも相談できない、
日に日に壊されていく。
ーーー
そのストレスを、弟にぶつけてしまった。
「未来斗、机の上汚い…片付けて」
「あ…ごめん、これ終わったらやる、」
言ったことをすぐにやってくれない、
「今やれって言ってんだよ!!!」
そう怒鳴りつけた、未来斗に。
「…ッ!!…あ、」
怒鳴られた未来斗はまたあの日みたいにひどく脅えては何も言わずすぐに机を片付けていた。
「……あ、ごめ「兄さん、お願いだから怒鳴らないで」……っ………」
俺だって、怒鳴りたくなんてないのに
(もうやだ………)
ーーー
1つだけ空いた席。
1人分量の減ったご飯。
あの人は話題にも出なくなった。
忘れられていくような、皆忘れたがっているような、
あの人の事を考えるとあの日の事が浮かんできて辛かった。
弟達から、笑顔は消えた。
「ごめん…優馬」
「え、なんで兄貴が謝るの………」
「家の事ずっと…いや、色々任せちゃってて、ごめん」
色々、…それは、
「…気付いてた?兄貴は」
「…うん、ごめん」
「別にいいよ、夢が無理だって分かってから、なんか逆に生き甲斐になってるんだ、あれ」
だから別にどうでもいい。
「優馬……」
「明日未来斗病院だったよな、忘れてそうだから伝えておいて」
ーーー
「じゃあ俺付き添いで行ってくる、昼までには帰ると思うから」
「いってきます」
2人を見送って、後はまだ眠っている澪含め家に2人になった。
「澪、朝だよ、起きて」
澪の部屋に行ってまだ布団にこもっている澪を少し揺さぶった。
「……ん、」
「あ、起きた?おは「……さん、」…!」
起きてまだ寝ぼけているような表情の澪は、今にも泣きそうな様子だった。
「澪…どうしたの?怖い夢でも「兄さんが、…郁人が、」……」
よっぽど怖かったのか、澪が俺に抱きついてくる。
それを受け止めて、途切れ途切れの話が終わるまで待った。
「ずっと、帰ってこなくて、探しに行ったら……あの電話の人に、」
電話越しに見た映像がトラウマになっていて、その夢をよく見るらしい。
「まだ帰ってこない……いつになったら帰ってきてくれるの」
部屋着を濡らす程大粒の涙を何滴も零してはしゃくりあげていた。
「……いつか、そのうち」
なんて言うけど、もう帰ってこないって、薄々気付いてる。
(…そろそろ行かなきゃ)
ーーー
「今日はホテルでイチャイチャかぁ~、いいねぇ、じゃあお兄さんも犯したあのホテルにしよっか♪」
外に出たくないのに、言うことを聞かなかったら写真をばらまくと脅された。
兄がレイプされた場所と同じ部屋に連れてこられた。
「ここであの日セックスしてたんだよ、懐かしいな~君のお兄さんそれまで処女だったのにね」
聞きたくないことを沢山聞かされた。
高校時代兄がアルバイトで酔った客に暴行されたこと、俺達の為に援交してお金を貯めていたこと。
どうしてそれをこの男が知っているのかは分からなかったけど、もうどうでも良かった。
結局俺も、あの人と同じ道を辿っていくだけ。
(今度は俺が、守る番だ)
弟や兄を守っていけるように尽くすだけ、
こんな地獄みたいな日々が、せめて俺で最後になるように。
ーーーーー
もう少し短めにして想像で考えてたもう少し後の話も入れたかったですが時間が無いのでこの辺で………(大分ぐだぐだになってしまいました)
りせまや生徒会が書けなかったのが心残りです、今年はメイン多めだった気がするので来年はサブや他の作品にも手を加えていきたい…(抱負)
軽くですがこのお話の5人のその後は
郁人がネカフェ 野宿などでお金もなくなっていき破滅しそうなところで澪と再会、その後優馬が自分の代わりになっていることに気付き絶望
未来斗の耳は良くなるもののトラウマは治らず性格が暗くなる、それを海斗が支えていく
というのが考えていた流れですがこの後は自由に妄想していただいて大丈夫です
基本的にうちの子が自分以外の人に見てもらえるのがとても嬉しいので二次創作や妄想は大歓迎です!(と言っても文だけなので見た目が難しいかと思いますが…)
そこは自分に画力が芽生えることを祈るばかりです
長くなってしまったのでこの辺で、今年もありがとうございました、良いお年を!
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