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双葉澪
ストックホルム症候群
しおりを挟むメンタルつよつよ澪 ゆうみおだけどみおゆう感もあります
同棲してます
ーーー
「………ッぅ”!!」
優馬が暴力を振るってくるようになった。
腹を殴って罵って、顔を叩いて無理に押さえつけて。
でも途中から「ごめんね、愛してるんだよ、本当に」とか、「こうするしか分かんなくて……お願いだから嫌わないで」とか、
そんな事言われたら、嫌いになれないのに。
お互い親から暴力を受けた身としては、依存しやすかったのかもしれない。
「ごめん………嫌いじゃないんだ、嫌いだから殴ってるわけじゃないんだよ」
自分を追い詰める優馬を見てたら、ただ怯えている事も出来なくて、
「……大丈夫だよ、優馬が僕の事好きなのは分かってるから。」
なんて、平気な顔をしていた。
腫れた頬も、服の下の青アザも、
(これは、この人が僕を愛してくれた証)
………なんて、柄にもない事を思ってた。
ーーー
『ねぇ、やっぱりおかしいよ、…だって優馬だよ?いくらでも取り繕うことが出来るんだから、』
「そんなんじゃないよ、…何となくだけど暴力を振るう時の心情って分かるから」
友人に何度説得されても変わらなかった。
「優馬は弱いんだよ、僕が守ってあげなきゃ」
暴力は必ずしも不幸を呼ぶわけじゃないって、
(僕は、きっと今のこの生活が好きなんだ)
そう信じてた。
ーーー
「澪!今日のご飯は何食べたい?」
「んー……チキン南蛮」
「じゃあシチューも作るか!」と笑って冷蔵庫を漁る優馬。
そうやって笑ったり楽しそうなところが、
「………可愛い」
「え?」
「……何でもないよ、美味しいの作ってね」
「おうっ、任せろ!」
………この人は純粋だと思う。
(純粋で、純粋で純粋で)
外の恐ろしさを知らずに生きてきたから。
(純粋で何も知らなくて、これがおかしい事だということすら理解出来ない)
僕も優馬も、これが当たり前だと思ってこれまで生きてきたんだから。
(……可哀想になってきた)
ーーー
「ねぇ……いい加減にしてよ」
でも、それは長くは続かなかった。
「……郁人?」
「なんでこんなになるまでこんな生活続けてたの……?ねぇ、これ、DVだよ?」
久しぶりに家に遊びに来た友人は、ありえないものを見るような目をしていた。
………幼稚園からの付き合いだけど、あの目を見るのは初めてだった。
「優馬が悪いんだよ?!!ほんとクズ………」
アザを見た途端郁人が怒り出して、優馬に掴みかかった。
「郁人…やめて、」
「こんなの普通じゃないってなんで分かんないかな………澪を殺す気なの?」
胸ぐらを掴まれた優馬は、少しだけ驚いてた。
「………ごめん……」
「ごめんって何?意味分かんないんだけど………」
今にも殴りかかりそうだったけど、ギリギリのところって感じだった。
「……これ以上DV続けるんだったら、2人の意思関係無しに通報するから」
………
それだけ言って、これ以上いたら本気で殴りそうだからとすぐに部屋を出ていった。
「………」
「優馬…!大丈夫?!」
いなくなってからその場にぺたんと座り込む優馬。
何も言わなかったけど、しばらくして、
「………やっぱり、駄目だよなぁ……………」
そう、小さく呟いた。
「駄目じゃない、駄目なんかじゃないよ、」
お願いだから僕から離れないで
………そう伝えたけど、俯いて何も答えてくれなかった。
ーーー
お願いだから、
…………お願いだから1人にしないで
ーーー
それからしばらくしての事。
「ぁ”……あ”ぁ……ッ、ぅ”………」
今日は首を絞められた。
「好きだよ、ねぇ……澪、」
「うん……、僕も、」
…………僕も
(好きなんかじゃ抑えきれない、愛してる、愛してる愛してる愛してる愛してる)
殺してしまいたい程に。
………そう思っていたのに、
ーーー
「……どうしたの?郁人」
その日の夜、電話がかかってきた。
『澪……、お願い、聞いて』
「…聞くよ、……何?」
優馬がお風呂で席を外している時にかかってきた電話。
『○月✕日、未来斗達にも頼んで優馬から逃げられる作戦を考えたんだ、だから、』
………
「……なんで?」
『なんでって………、…見たくないからだよ』
理解出来なかった。
「……ごめんね郁人、僕、もうこの生活を離したくないんだよ」
『え……』
僕の事は放っておいて
『ッ…じゃあ、また優馬とも一緒に暮らせるようにするから、更生させて、また2人で………』
「嘘だよね…?」
『……え、…澪、ねぇ、お願いだから』
そんなの信じたくない
「やだよ……更生なんてさせたら、優馬がいなくなっちゃう」
僕の好きな優馬がいなくなる。
『………お願い……』
「……!」
電話越しの声は少し涙ぐんでいた。
(………)
そこまで言うなら、
ーーー
話していた日にちになった。
「優馬、…今日、この前説明してた日だから。時間になったらここに逃げて」
結局僕は郁人の作戦に同意した。
………明確には、同意したふり。
きっと郁人達はこの部屋に警察を連れてくる。
そうすれば優馬は捕まって、きっと二度と会えなくなる。
だから逃げ場を用意して、そこに僕も行けばもう一度2人でいられる。
「……うん、分かった」
ーーー
時間になった。
部屋で待機して、優馬にももう一度作戦を伝える。
(絶対に失敗出来ない)
………そう、強く誓っていたのに
「………優馬?」
時間になっても優馬は部屋から出ていかなかった。
「どうしたの……早く逃げて」
早くしないと、警察が来る。
「……ごめん、澪」
………ねぇ、早く逃げて
「俺やっぱりおかしいんだ、こんな自分は好きな人と一緒になる資格はない」
なんで、どうして、
「優馬………」
「最初は嬉しかったんだ、澪がこんな俺の事受け入れてくれて、部屋から出るなって閉じ込めてくれて」
僕が部屋から出ていいって言ってるのに、
「………でもごめん。…早く、俺からは逃げて、幸せになって。」
いやだ
「………愛してくれてありがと、好きになってごめん。」
……………
………
ーーー
………離れたくなかった、離したくなかった。
だから閉じ込めたのに……………
「澪…?良かった、目が覚めた」
本当にDVをしていたのは僕の方。
「もう大丈夫だよ………、苦しい思いさせてごめん」
本当にあの人を愛していたのに。
「ゆっくり治していけばいいよ、……無事で良かった。」
………僕はどこもおかしくない。治すところなんてない。
この人は、一体何を言ってるんだろう。
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