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高山李世

友達が虐*受けてる

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「………あっ」
「……!」



たまたま前を歩いていたホテルから友達が出てきた。



「……李世…?」
「え、あっ……、と」


李世は何故かかなり動揺していて、珍しく作り笑顔すら見せない。

様子が変だと不審に思っていると、ホテルから男が出てきた。


君、今日は良かったよ~またお願い……」


恐らく李世のことを「セリ」と呼ぶ小太りの中年男。


李世の顔が青ざめていった。




「真冬……ッ、ちが、これは」
「………別に、なんでもいい」





少し驚いたけど、何故かこの人が援交をしているのは想像しやすい。
かなりは驚かなかった。



「?お友達かな??」
「あ…はい、ソウデス……」


李世は視線を僕達から逸らして、苦笑いでそう答えた。


「そうなんだ、じゃあはい、今日のお金」
「わ、あ…ありがとうございま~す……」



かなり李世の顔がひきつっていた。



万札を2枚受け取ったところをしっかり確認して、男が去ってからじっと李世を見つめる。

それが居心地が悪いのか、



「あ……じゃあまたねっ!ここで見た事は全部忘れーー……」



逃げようとした李世を止めた。




「……李世」
「っ…はい!!」



………?


止めようと名前を呼んだだけなのに、李世は大袈裟に体を跳ねさせた。




「……すこし、…話そう。」
「は……はい」






ーーー



公園のベンチに座った。


土曜日の朝。春らしい穏やかな朝。

家の近くのコンビニが工事中で、仕方なく遠いコンビニまで行っていたら李世に会った。


午前7時。



『なんで援交してるの?』


喉が疲れたからスマホのメモ帳に打ち込んだ。


李世は少し気まずそうにして、



「お金……欲しくて」





………何か欲しいものがあった?


いや、李世はそれだけでそんなことは……………




『本当に?』
「本当だよ!ていうか援交する理由なんてそれしかないし!」



………まあ、そうなのかもしれないけど。




ふと、李世を見て気が付いた。




(手首に……痕?)

煙草を押し付けられたような火傷のようなもの。
一瞬だけ袖から見えた。



『手首の火傷みたいなのは何?』



そう言うと、李世はハッとして手首を確認した。




その時の焦りようが尋常じゃなくて、





『虐待…?』







そう聞くと……………李世は、一瞬だけ苦しそうな顔をして、微笑んだ。









「あーあ、やっぱり隠し通せるものじゃないね。真冬には。」






「どれだけ隠しても真冬にはバレちゃうな」と笑って、それが正解なんだと理解した。






『別にSMプレイで誤魔化せるのに』
「それだとボクMみたいになっちゃうじゃん……やだよそんなの………」






李世はぷはっと笑って、それからまた微笑んだ。




「でもね、さっきのおじさんはいい人だよ。優しくしてくれるし、なんとなく理解してくれてる、あの人が相手で良かった。」



前を向いて、目を細めて、その表情はどこか疲れきっていて。




「あ、ちなみにあの人とだけだからね?他の人となんてしてないから!」
『そこは別になんでもいい』



まだ制服姿のままの李世。
昨日一緒に帰れなかったのはそういう理由だったんだと理解した。





「真冬、真冬はこんなボクでも友達でいてくれる?」
『当たり前』





僕は友達を選べる立場じゃない。


それにきっと、何があっても李世を離したりしない。



(むしろ僕の方がすがりつき過ぎなくらいなのに)







……………







僕なら、李世を救える。


『僕の家に泊まってけば』
「……えっ」




李世はうちの両親からもすごく好印象だし、言えばずっと住まわせてくれるだろう。

せめて、友達としてでも、助けてあげたかった。





「李世のこと……助けたいって、言ってるの。」






いざ言葉にすると少し恥ずかしかった。




人がちらほら散歩を初めて、公園にも子供が集まってくる。




長い沈黙の間、李世がぽつりと声を出した。






「うーん……ありがと、でもごめんね。」






断られた。




『また殴られたりしていいの?』

「ボクじゃないと駄目なんだよね、ごめんね?でもありがとう。」






“ボクじゃないと駄目”?






訳が分からない、そんな奴に従う義理なんてないはずなのに。





「……ッなんで!!?」



柄にもなく叫んで、手が勝手に動いて李世の腕を掴んでいた。




周りの子供が一瞬こっちを見る。





「なんで…なんで、どうして?」



ワイシャツがあると気付けない、





李世の腕は、細くなっていた。




骨を触っているような、そんな感覚。


震えが止まらなかった。






それでも李世は、優しく微笑む。











「あの人には、ボクがいないとだめなんだ。」


















ーーーーー






ごめんね、真冬。



ボクはもう普通には戻れない。




もう壊れちゃったから、






ボクも、あの人も。







ーーーーー











「真冬……痛い」
「っあ………、」




しばらく放心状態だった。



李世が苦しそうな顔で握られた腕を見ている。



急いで手を離した。






「まあ、そういうわけでさ。学校にはちゃんと行くから大丈夫!心配しないでっ!」



そう言って李世はまた笑うけど、僕は笑えない。



落ち着いて、またメモ帳を開いた。





『いつでも連絡くれていいし、助けになるから』




無邪気に笑っていた李世が大人びた笑顔を見せる。





「うん…っ!ありがと……っ!」







ーーー




「じゃあ今日はもう帰るね。ほら見て、あの人だけでこんなに稼いだんだよ~!」


そう言ってお金を扇子の形にして、口の前に持ってきて見せた。



「10万円!すごいでしょ!」
『はいはいすごいすごい』




………………10万円を、1人相手から。







『僕も帰る。ちゃんと学校来てね、夜連絡するから』
「真冬ってば過保護~!また月曜日ね」






李世に小さく手を振って、公園を出た。










(さっきあの男に貰ってたの………2万円、だったのに。)










ーーーーー





小さくなる真冬の後ろ姿をずっと同じ場所から見続けた。



(ああ、疲れた)




いつもしているはずの作り笑い、あざとい演技。


今日はひどく疲れた。







(真冬………ボクは別に、)






『助けたいって言ってる』とか、取り乱すところとか、







「………助けて欲しいなんて、言ってないよ。」











本当……………やめて欲しい。









ーーー





「ただいま………」



家に帰ると、父は酒を飲んでいた。




「お父さん……駄目だよ、こんな朝からお酒飲んで」
「あ"?うるせぇ」




あぁ、駄目だ。




お酒を飲んでるこの人は、







「………ッ!!」
「ガキが偉そうに命令してんじゃねぇッ!!」





平気でボクを殴る。





(平手打ち……じゃあ次は、)





思っていた通り、今度は腹を蹴られた。






「ぅ……かはッ、ぇう"………」
「これくらいで吐くなよヤワだな………」




吐いたら今度は、





「ふぐッ……!!」




土砂物を飲ませる。





「うぶ…ッ、んぐ……」



頭を床に押さえつけられて、無理矢理土砂物を口の中に戻される。





それが終われば今度は、






「ぅ"あ"………ッ」





髪を掴まれて上を向かされて、






「あーあ、きったねぇツラ」




髪を掴まれたまま、しばらく引きずり回す。



上手く立てなくて、体制を崩す度に頭が痛くてたまらない。




そのまま布団に物を投げるみたいに、強く投げ飛ばされる。





「ほら洗え」


台所から持ってきた水を顔にかけられて、それが窒息するほど苦しくて、





ぐったりしているところに、さらに追い打ちをかけるように父は、




「たく……、誰がてめぇの面倒見てやってると思ってんだよ………」





精神的に追い込んでくる。





「てめぇみたいな役立たず、俺がいなきゃなんにも出来ねぇだろが!!」

「ごめ……なさ、」






殴っては暴言を吐いて、それの繰り返し。





精神的にも肉体的にも追い込まれた。







そして最後には、







「っあ"、やだッ、…おとぅさ、やだ……、ッん"!!」




無理矢理犯される。





「ほらてめぇも飲むんだよ!!貧相な体しやがって、このゴミが!!!」



下から酒を飲まされて、思考が回らなくなって、





「お"とう"さ”ん………やだ……ぁ”………」





一切力が出なくなって、何も考えられなくなった。











ーーー






目が覚めて、目の前にお札が散らばっているのが見えた。



お札は何故かビリビリに破られていて、





「ぇ……なん、で」




ボクが生活が楽になればって稼いだお金。





したくもないことを何人の人ともやって、苦しくて、けど必死で貯めたお金。





お父さんに聞いたら、




「なんでてめぇが稼いだ金で生きてかなきゃならねぇんだよ」



って怒鳴られて、援交も気持ち悪いって酒瓶を投げつけれた。




(ボクが稼がないと……お父さんの稼ぎじゃ足りないのに)




お金を破られるのは初めてだった。





(昨日の稼ぎ……これがないと、足りない)






「てめぇはホントにゴミだなァ……、聞いてんのか!!?」
「ひッ……!!ごめ、ごめんなさい、ごめんなさぃ……!!」






毎日怒鳴られて殴られて、







けど、ボクのお父さんは、弱いだけだから。








ーーー






『李世……いつも暴力振ってごめんな……』
『お父さん……?ううん、ボクは平気だよ?』



お酒がない時の父は優しい。




『父さんがしっかりしていれば………母さんが亡くなって疲れてたんだ』
『それが分かったなら大丈夫だよ、やり直そ?お父さん』





ただ、父は弱い。

母が事故で亡くなってから、その弱さが大きく出てしまっただけ。






この人は弱くて、優しい人だ。







ーーー





「だからね、いつも暴力ばっかじゃないんだよ!」
『そう』




月曜日、真冬にちゃんと教えてあげた。


ずっと殴られてるわけじゃないって、ちゃんと優しい時もあるんだって。







「今日も一緒に帰れないけど……ごめんね、真冬」








ーーー






唯一ボクを愛してくれてるお父さんを、ボクも愛してあげなくちゃ。



人に愛された分それを返すのが、ボクだから。





「ん……っ、んぁ、……ッふ」





ちゃんと稼いで、








お父さんに……………愛してもらうんだ。












ーーーーー






李世の鞄に盗聴器を仕掛けた。


李世は壊れている、僕が助けないと。




翌日、内容を確認した。









「……………………………………………え………………………」











『だからね、いつも暴力ばっかじゃないんだよ!』






優しく………してくれる?






訳が分からない。








(李世………それは、違うよ……………)













李世は、愛されてなんかない。













ーーー



『………ん……おと、………さ……』




犯されたあと意識を失った李世が、たまに何か寝言を呟く時がある。



「お父さん」とか「ボクも好きだよ」とか。





けど、李世が起きている時はそんなの聞こえてこない。

泣き声と、苦しそうな悲鳴みたいな声。



それだけだった。






李世は愛されてなんかいない。






夢を見ているだけだ。










ーーーーー







「李世……本当に、僕の家に」
「どうして?ボクにはお父さんがいるよ?」





真冬はおかしい。


ボクは平気なのに、どうしてこんなに心配してくるんだろう。






(あ、また痣増えてる)







お父さんの愛し方は少し異常だ。




でも別に構わない。













こんな何の取り柄もない……ゴミクズみたいなボクを愛してくれる人がいるなら。














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