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結界と咆哮

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「ふぅ……」

「いやぁ、すげえ結界だな?」

「まあ、全魔力注いで作りましたからね……」

 ダンジョン都市南口にて。迫り来る魔物の姿が目視できるようになった頃、都市全体を覆う規模の防御結界を展開した。

 ダンジョン都市を囲む防壁の崩壊を少しでも遅らせるためである。防壁は単純な足止め以外にも足場等にして利用するので、なるべく壊されないようにしたい。

 そのため、結界が破られた後は主に壁の修復に貢献しようと考えている。まあ、結界が破られないのが1番理想的なんだけどな。

「なるほど、そのための魔力ポーションか。けど、結界一つ作るなら一本で十分だろ? なんだよその馬鹿げた数」

 俺が抱える大量の魔力ポーションをケンさんが指差し、若干引いたようにそう言った。

「はい。結界1枚作るならポーション1本で十分なので、10本使って結界10枚作ろうと思いまして」

 結界が壊されたら困る。ならば、結界の数を増やしてしまえばいい!

「お前……そこまでしてくれるのはありがたいが、ハイペースすぎないか? 魔素濃度が高まりすぎて魔物化したら元も子もねえぞ?
 お前が魔物化するのはいつものことだが、意識まで魔物になったら正直スタンピートより怖いぜ?」

「まあ、ダンジョンにずっと潜ってるおかげで許容量は広がってるんで。30本くらいはいけますよ」

「そうか……だとしても、後のことを考えて結界は5枚にしておけ」

 戦闘前から10本の魔力ポーションを飲むと言った俺を宥めるようにそう言った。

 たしかにケンさんの言う通りである。いくら長時間のダンジョン探索とポーションの飲み過ぎによって耐性ができた俺の身体であっても、魔力ポーションを飲める量には限界がある。

 無理をして俺が魔物になってしまったら元も子もないし、ダンジョンからどんな魔物が出てくる間からない以上余裕は残しておこうか。

 冒険者たちの士気を上げるための演説に向かったケンさんと別れ、10分ほどかけて結界を4枚展開した。

「よし、準備完了だ」

『結界5枚は強いなー』
『なんか、ヴァリアンがいるならSSスタンピートでも安心して見れる』
『もう結構足音聞こえてるくね? そろそろ激突?』
『頑張って! 遠くてそこまでいけないけど応援してる!』
『死ぬなよー!』

「第一結界にぶつかるぞ! 遠距離部隊1発目、発射!」

 結果の準備が終わり少しコメントを眺めていると、ケンさんの戦闘開始を告げる声が聞こえた。

「それじゃあ、俺も戦闘に加わってきます! みなさん応援よろしくお願いします!」

【毒龍】

「グアァァァァァァァァァ!!!」

 毒龍に変化する。そして、結界を破壊しようと群がる魔物たちへ挨拶がわりに1発ブレスを叩き込んだ。

 結界の強いところは、こちらの攻撃だけは一方的に通るところである。結界が破られるまでは思う存分その利点を生かしていこう。

『いけぇぇぇぇぇ!』
『今ので300くらい殺ってて草』
『SSスタンピートとはいえ、先陣はDランクとかだからね』
『まあ、先陣は今ので全滅したぽいけど』
『こりゃ冒険者側の士気爆上がりだろ!』

 順調な防衛だと思われたがそれから5分後、第一結界が破壊された。
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