上 下
36 / 111

脱毛と禁忌

しおりを挟む
 魔法契約書を持って執事が退出し、ようやく脱毛を行なっていく雰囲気になった。

 もう呪いについての心配はないはずだが、先に受けたがっている娘の気持ちを汲んだのか、まずは娘のほうから呪いをかけることになった。

「それではベットにでも横になってもらってよろしいですか?」

「べ、べっと!?」

 呪いをかけるのも簡単じゃない。長い時間になると思うし、疲れると思ったからどこかに寝転がることを提案したが、変な風に受け取られてしまったようだ。

 顔を真っ赤にして叫んだかと思うと、俯いてぶつぶつと独り言をこぼしている。

「顔もわからない男の人とベッドなんて……そもそも、私まだ未婚なのに。このことが知れたら、貰い手がいなくなってしまうわ。そ、それに、同じベッドに男女が2人だなんて、は、ハレンチだわ……」

 何を言っているのかわからないが、早いところ誤解を解いておかないとな。

「失礼いたしました。施術が長くなると思いますので、楽な体制になれる場所にと思ったのですが。ソファーでも立っていてもなんでもいいんですが、どうされますか?」

「べ、ベッドで構いません!ソファーは寝心地が悪そうですし、構いませんわ……」

 そう言って、そさくさとベッドに横になった。はぁ、やっと施術ができるな。早いところ終わらせて帰ろう。

 ちなみに、なぜ時間がかかるのかというと、体全体に呪いをかけるわけではないので、直接呪いをかける部位に触れる必要があるからだ。

 こちらも説明し、同意済みである。

「それでは、失礼します」

【毛抜きのリリィの左手】【聖熊の右手】

 左手をリリィに、右手を聖熊へと変化させた。事前に説明はしたが、やはり魔物に変化するというのは驚かれるようだ。しかし、魔力の問題もある。反応を無視してどんどんやっていこう。

 まずは腕から順に体全体を撫で、呪いをかけていく。チクチクという感覚を感じながら、手早く終わらせていく。

 たしかに、今朝剃ったと言っていたのにこれだけ生えているというのだから、男性並みの毛の成長速度と強さだな。

 女性のムダ毛問題に男は厳しかったりするし、毎日大変だろうな。

「とりあえず、腕は終わりました。いかがですか?」

 ひとまず腕が終わったので、一応確認のために声をかける。

「すごい! 撫でると毛がほろほろと抜け落ちて行って、チクチクもしないし、内部の毛が透けて見える事もないわ!」

 この調子でどんどんやってくれとのことなので、段々と呪いをかけていくが……問題発生。

 これは全身の脱毛をする流れだが、背中やお腹も際どい。さらには胸なんて触れるはずもない。相手は未婚の貴族だぞ……。












 やってしまった……。それも2人分も。毛深いことがどれほど大変なのか。その壮絶なエピソードを聞いたら可哀想でもう……。

 決して、お金に釣られたわけではない。

 証拠に、VIOだけはどれだけお金を積まれても断った。流石に不味すぎるからな。

「本当にありがとうございます!報酬は期待しておいてくださいね」

 何度目の感謝の言葉だろうか。鬱陶しいほどにお礼を言われている。

 まだ呪いの効力をしっかりと感じていないはずなのに、これで明日にでも毛が生えてきたらどうするつもりなのだろうか。俺は殺されてしまうのではないか。

 ひとまず、3日くらい経過を見てもらい、それでも生える気配がなかったら報酬を振り込んでもらうことにした。

 いろいろと触ることになってしまった罪悪感からか、足早に屋敷を去った。冒険者ギルドに依頼達成の報告に行って、さっさと家に帰って寝よう。

 

 

 


 
 

 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

俺のギフト【草】は草を食うほど強くなるようです ~クズギフトの息子はいらないと追放された先が樹海で助かった~

草乃葉オウル
ファンタジー
★お気に入り登録お願いします!★ 男性向けHOTランキングトップ10入り感謝! 王国騎士団長の父に自慢の息子として育てられた少年ウォルト。 だが、彼は14歳の時に行われる儀式で【草】という謎のギフトを授かってしまう。 周囲の人間はウォルトを嘲笑し、強力なギフトを求めていた父は大激怒。 そんな父を「顔真っ赤で草」と煽った結果、ウォルトは最果ての樹海へ追放されてしまう。 しかし、【草】には草が持つ効能を増幅する力があった。 そこらへんの薬草でも、ウォルトが食べれば伝説級の薬草と同じ効果を発揮する。 しかも樹海には高額で取引される薬草や、絶滅したはずの幻の草もそこら中に生えていた。 あらゆる草を食べまくり最強の力を手に入れたウォルトが樹海を旅立つ時、王国は思い知ることになる。 自分たちがとんでもない人間を解き放ってしまったことを。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...