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しおりを挟む「サラ、この扉を開けて」
「かしこまりました」
普段あまり使われることのない客室の扉を、侍女のサラに開けさせる。
目の前に飛び込んできた男女の淫らな光景に、サラは悲鳴を上げ、当のフェリクスも女性かと思うような悲鳴を上げ、義妹のマリーナだけが笑っていた。
マリーナはほぼ服を着ていなかったし、フェリクスの衣装も乱れていたから、何をしていたかは一目瞭然だ。
(この世界、娯楽が少なすぎてギャンブルや女遊びが盛んなのよね……)
理子は室内で何が行われているか理解していた。
そう仕向けたのは、理子だったから。
パンパンと二つほど手を叩き、執事を呼びつける。
ミュジャン伯爵家の執事は静かに現れ、客室内の二人の様子をつぶさに観察したあと、ニコルに頭を下げた。
「しかとこの目に焼き付けました。旦那様に詳細をご報告いたします」
「頼んだわ」
鷹揚に頷くニコルに、フェリクスが声をあげた。
「違う、これはマリーナにそそのかされて」
「そんなぁ、ひどいですぅ、フェリクス様ぁ」
急いでマリーナから離れようとするフェリクスを、マリーナはひしと抱きしめて離さない。
「もうほとんど済んでしまっているのでしょう? 無理に離すと拗れますわよ? そのまま離さず、愛を貫いてはいかがでしょう?」
「お、俺の話を聞いてくれニコル」
「なんでございましょう? 婚約破棄のあと、我が家からの援助が絶たれるのを恐れていらっしゃるというお話であれば、まぁ、なんというか、ご愁傷様です、と」
形勢逆転とはいかない状況にフェリクスの顔色が変わった。
ニコルは……理子は、それを見てニヤリと笑う。
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