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6.魔王様と晩酌

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部屋に戻ると、フォルティスはいそいそとワインとグラスを用意した。

「もう食べてもいいか?」

「もちろん。適当に取り分けますね」

「ありがとう」

チーズ焼きにスプーンを入れると、ふわんっと湯気が立ち、チーズが伸びた。茄子もトマトもいい感じに火が通っている。
ベーコン巻きとオムレツも取り皿に分けると、フォルティスがワインを開けた。

「軽めの赤にした」

「きっと合いますよ」

「良かった」

「どうぞ」

グラスと交換に取り皿を渡した。フォルティスは嬉しそうに受け取り、ベーコン巻きを1つ口に入れた。

「うまい! アスパラを肉で巻くとこんなに美味いのか。しゃくしゃくした食感もいいな」

俺も同じようにベーコン巻きを食べる。
確かにすごく美味しい。これは素材がいいのか。アスパラは新鮮だし、ベーコンはいいお肉と高級なチップで作りましたって味だ。ほどよい薫香に食欲が増す。
グラスに口をつける。程よく冷えていた。

「んー、このワインもいいですね。くせが無くて飲みやすい」

「詳しいのか?」

「全然。でも、これはおいしい」

コクコクと呑むと身体が熱り始めた。
空きっ腹に酒ってよくないんだっけ。

「お気に召したようで良かった。このチーズのやつも美味いな。上のカリッとしたチーズがいい。ワインにも合うな」

「陛下はワイン、詳しいんですかー?」

「全然。でも、これはおいしい?」

「俺の真似っこですか? 似てない~」

楽しくなってケラケラ笑うと、釣られるようにフォルティスも笑い出した。

「伊織、酔ってるな?」

「酔ってませんよー」

頭がふわふわして、ぼんやりする。

「酒、強くなかったのか」

「酔ってませんて~」

「そういうことにしておこう。ーー卵も美味いな。トロトロしてる」

フォルティスの率直な言葉が嬉しい。

「でしょ?」

「……伊織もとろとろしてるな」

あやしく煌めくダイヤモンドの瞳がだんだん近付いて来る。グラスを取られ、テーブルに戻された。

「美味しそうだ、とても」

火照った頬を撫でる冷たい手が気持ちいい。
でも、俺は美味しくないだろう。

「んー、俺よりこっちの方が美味しいですよ?」

あーんとチーズ焼きを掬って食べさせた。

「……うまい」

ちょっと悔しそうなフォルティスがおかしくて笑いが込み上げる。

「伊織は意外と手強いな……」

「ん~? 俺、つよい?」

「とんでもなく」

肩をすくめて見せたフォルティスはハリウッド俳優みたいに様になってる。

「陛下、かっこいいー」

「お前な……」

とさり、とソファに押し倒しされる。ベルベットのふかふかの座面が心地いい。
急に眠気が込み上げて来て、瞼が重くなる。

「伊織? 伊織? ……ずるいだろう、それは」


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