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3月◆そーちゃん
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綺麗な海。
これから、ずっと、もしかしから一生そばに居る、この海。
ザザーーン…
おいは、釣りも漁も海野町も好きだ。みんなは進学で泣く泣く離れるけど、おいはずっと居れる。おいは幸せモンだ。
…これからもずっと、みんなが海野町に居てくれたら、ほんとに幸せなんやけどなぁ。
「宗介~、飯やぞ~」
「ほ~い」
ま、しゃあないんやけどなぁ。
「タク~受験お疲れい!」
「どうやった~?」
「ま、普通」
全員の受験が終わり、あとは卒業式を残すのみだ。
とっきーも毎日学校に来るようなったし、みんななんだかんだ本音吐き出したみたいやし、改めて今、みんなの仲が深くなった気がする。
みんながバラバラになる前に、おい、何をしたいんやろ。少し考えてみた。
…みんなを泣かしてぇな!感動させてぇ!よし!
次の日の昼休み、教室の前に立ち、
「ちゅーもく!」
と叫んだ。
「どしたー?」
「今からおいから、みんなにありがたーいことを言います!」
みんなが朗らかな顔で耳を傾けた。
「急だな!」
「いえーい!」
「出席番号順に行くでー!まず大坂のとっきー!」
「俺?うい!」
とっきーがびしっと手を挙げた。
「とっきーは頭良いよね!」
「なん?その出だし」
「前にあんま良いところ無いっつってたけど、沢山あるけん俺が思いつくだけ言うわ!」
「いや、いい!そのくだり、みさから聞いた」
と、とっきーが制止すると
「あーそれ忘れて!とっきー!」
と、みさが顔を赤くして言った。…この二人、なんかあったな?まぁ、まだ今は触れないでいっか!
「んじゃそれ以外で…、おいが小6の時、階段で転んでケガしたとき、焦りながらも応急処置したり大人呼んだりしてくれたな!ありがと!おかげでおいの脚は助かった!」
「あー、どーいたしまして」
「あと、とっきーって顔カッコいいよな!うらやましいよ!」
「ありがと…」
とっきーが照れながらお礼を言った。
「はい、終わり!次、滝島さんちのみさえさん!」
「はーい!」
「みさは可愛いしオシャレだよな~!」
「ナンパかよ!」
みさがつっこむと
「おいナンパしてんじゃねーよ!」
なぜかとっきーもつっこんできた。いやぜってーなんかあるだろ!
「そんで図々しいほど自身があって、まあよく言うと自尊心高くて、でもたまに我慢してたりして…。そんな、周りん人に迷惑じゃないようなことは、声出して言ってもええんやぞ?あんときみたいに!」
「うん、ありがと!」
「ただあれはちょっと泣きすぎだったな!」
「うっせー!そーちゃんも泣いてたやん!」
「次、根岸の拓人氏ぃー!」
「ういっ」
タクが冷静な顔で返事した。
「タクは学級委員なこともあって、冷静沈着におい達をまとめてくれたな!ありがとう!」
「いや、そもそもそういう性格だし、特に学級委員的な仕事しとらんし」
タクが冷静な顔で謙遜した。
「それに、頭脳明晰で大人っぽい。でも子供らしいとこもあるってことをおいは知ってる!ついでにとっきーも知ってる!」
「俺?」
急に自分の名が出てきて驚くとっきー。
「修学旅行ん時に、部屋でトランプしてる途中に寝落ちしてたり、寝顔が天使だったり、あと、一番早く寝たくせに時間になっても起きんくて、俺が起こしたら“おはよ…母さん”って言ってきてさ~」
「え~かわい~!」
と、なっちゃんが言って、タクが何も言えん顔になった。
「とにかく大好きだよタク~!」
最後に、おいがラブコールを贈ると、
「あ~、どうも」
と、冷静にお礼を言ってきた。
「ラストは~萩本のなっちゃーん!」
「いえーーい!」
なっちゃんがこの中で一番高いテンションで返事をした。
「なっちゃんはいつも明るくて元気で、思いやるの得意で、料理得意で、子供らしいとこもあれば大人っぽいとこもあって、もう完璧ですな!」
「あざす!」
「もうぜってー幸せになってな!ぜってー料理人になってバカ儲けしろよな!」
「あざす!!」
4人に感謝の気持ちを伝え終わり、一つ呼吸をし、改めてみんなの顔を見て気付いた。
あれ!?
「泣いとらんやんけ!」
あんだけおいの気持ち伝えたのに、こいつらなんも響いとらんと!?
「え!?」
「泣い…?」
「おいの言葉嬉しくなかった?」
「いや、嬉しかったけど面白かったっていうか…」
「面白いくらい褒めるなーって感じ」
「感涙するような話ではなかったかな?」
「え~~?」
おいが落胆すると、タクが廊下を指差して
「でも一人、感涙しとる人おったよ」
と言った。みんなで廊下を見ると、山下先生がボロ泣きしてた。
「え!?いつからいたんですか!?」
「大坂のところからだよォォ」
「全部聞いてますやん!」
「先生が泣く理由ある!?」
「いや普通に感動するわ~!」
結果、山下先生しか泣かなかったけど、まあ、嬉しかったって言ってるし面白かったからいっか!
卒業まで、あと少し。
これから、ずっと、もしかしから一生そばに居る、この海。
ザザーーン…
おいは、釣りも漁も海野町も好きだ。みんなは進学で泣く泣く離れるけど、おいはずっと居れる。おいは幸せモンだ。
…これからもずっと、みんなが海野町に居てくれたら、ほんとに幸せなんやけどなぁ。
「宗介~、飯やぞ~」
「ほ~い」
ま、しゃあないんやけどなぁ。
「タク~受験お疲れい!」
「どうやった~?」
「ま、普通」
全員の受験が終わり、あとは卒業式を残すのみだ。
とっきーも毎日学校に来るようなったし、みんななんだかんだ本音吐き出したみたいやし、改めて今、みんなの仲が深くなった気がする。
みんながバラバラになる前に、おい、何をしたいんやろ。少し考えてみた。
…みんなを泣かしてぇな!感動させてぇ!よし!
次の日の昼休み、教室の前に立ち、
「ちゅーもく!」
と叫んだ。
「どしたー?」
「今からおいから、みんなにありがたーいことを言います!」
みんなが朗らかな顔で耳を傾けた。
「急だな!」
「いえーい!」
「出席番号順に行くでー!まず大坂のとっきー!」
「俺?うい!」
とっきーがびしっと手を挙げた。
「とっきーは頭良いよね!」
「なん?その出だし」
「前にあんま良いところ無いっつってたけど、沢山あるけん俺が思いつくだけ言うわ!」
「いや、いい!そのくだり、みさから聞いた」
と、とっきーが制止すると
「あーそれ忘れて!とっきー!」
と、みさが顔を赤くして言った。…この二人、なんかあったな?まぁ、まだ今は触れないでいっか!
「んじゃそれ以外で…、おいが小6の時、階段で転んでケガしたとき、焦りながらも応急処置したり大人呼んだりしてくれたな!ありがと!おかげでおいの脚は助かった!」
「あー、どーいたしまして」
「あと、とっきーって顔カッコいいよな!うらやましいよ!」
「ありがと…」
とっきーが照れながらお礼を言った。
「はい、終わり!次、滝島さんちのみさえさん!」
「はーい!」
「みさは可愛いしオシャレだよな~!」
「ナンパかよ!」
みさがつっこむと
「おいナンパしてんじゃねーよ!」
なぜかとっきーもつっこんできた。いやぜってーなんかあるだろ!
「そんで図々しいほど自身があって、まあよく言うと自尊心高くて、でもたまに我慢してたりして…。そんな、周りん人に迷惑じゃないようなことは、声出して言ってもええんやぞ?あんときみたいに!」
「うん、ありがと!」
「ただあれはちょっと泣きすぎだったな!」
「うっせー!そーちゃんも泣いてたやん!」
「次、根岸の拓人氏ぃー!」
「ういっ」
タクが冷静な顔で返事した。
「タクは学級委員なこともあって、冷静沈着におい達をまとめてくれたな!ありがとう!」
「いや、そもそもそういう性格だし、特に学級委員的な仕事しとらんし」
タクが冷静な顔で謙遜した。
「それに、頭脳明晰で大人っぽい。でも子供らしいとこもあるってことをおいは知ってる!ついでにとっきーも知ってる!」
「俺?」
急に自分の名が出てきて驚くとっきー。
「修学旅行ん時に、部屋でトランプしてる途中に寝落ちしてたり、寝顔が天使だったり、あと、一番早く寝たくせに時間になっても起きんくて、俺が起こしたら“おはよ…母さん”って言ってきてさ~」
「え~かわい~!」
と、なっちゃんが言って、タクが何も言えん顔になった。
「とにかく大好きだよタク~!」
最後に、おいがラブコールを贈ると、
「あ~、どうも」
と、冷静にお礼を言ってきた。
「ラストは~萩本のなっちゃーん!」
「いえーーい!」
なっちゃんがこの中で一番高いテンションで返事をした。
「なっちゃんはいつも明るくて元気で、思いやるの得意で、料理得意で、子供らしいとこもあれば大人っぽいとこもあって、もう完璧ですな!」
「あざす!」
「もうぜってー幸せになってな!ぜってー料理人になってバカ儲けしろよな!」
「あざす!!」
4人に感謝の気持ちを伝え終わり、一つ呼吸をし、改めてみんなの顔を見て気付いた。
あれ!?
「泣いとらんやんけ!」
あんだけおいの気持ち伝えたのに、こいつらなんも響いとらんと!?
「え!?」
「泣い…?」
「おいの言葉嬉しくなかった?」
「いや、嬉しかったけど面白かったっていうか…」
「面白いくらい褒めるなーって感じ」
「感涙するような話ではなかったかな?」
「え~~?」
おいが落胆すると、タクが廊下を指差して
「でも一人、感涙しとる人おったよ」
と言った。みんなで廊下を見ると、山下先生がボロ泣きしてた。
「え!?いつからいたんですか!?」
「大坂のところからだよォォ」
「全部聞いてますやん!」
「先生が泣く理由ある!?」
「いや普通に感動するわ~!」
結果、山下先生しか泣かなかったけど、まあ、嬉しかったって言ってるし面白かったからいっか!
卒業まで、あと少し。
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