転生したらBL漫画の男装女子でしたが、皆さん私に気にせずヨロシクやっちゃって下さい

6－8.

　
　パパとママは、どうやって3人の中から決めようか、投票制にしようかなどと言っているが、当事者の意見は一切聞かないつもりなのか。


　ママに至っては、｢もう3人と一緒に結婚しちゃえば？｣なんて言ってるし、私が彼らの実態を明かしたところで、きっと、｢変態いいじゃない最高じゃない？｣と言われるのが目に見えている。


　このままだと勝手に決められ兼ねない。


　とにかく、私が彼らの中の誰かと結婚に持ち込まれないよう、さっさと既成事実を作ってしまわなければならない。そしてその既成事実を彼らの実家に送りつけてやる。


　問題は心陽君だ。

　彼は男に身体を使ってまでうちの情報を手に入れているのだから、この先何が起きるのか分からないし、何があってもおかしくない。

　思えば心陽君と高梨先生の秘密の花園は、動画に収めておくべきだった。

　何度も撮ろう、撮ろうとは思ったものの、あんな汚い姿を自分のスマホに内臓させておくなんて、スマホが可哀想で出来なかった。

　
　とにかく私はもう一度研究室に籠り、薬の調合を続けた。


　それからしばらくして、ついに薬は完成した。うちのバアヤたちで試した結果、それは間違いなく成功だった。



　ずっと電源を切っていたスマホをONにすれば、次から次へと画面に入ってくる通知の数。


　私は早速彼ら4人と私のグループラインを作り、彼らをあるパーティーに招待した。


『ずっと連絡できなくてごめんなさい汗。実家に呼ばれていてなかなか学校に行けなくて。
それよりも明後日の夜、皆暇ですか？良ければ私の部屋で鍋パーティーしましょう☆』


　このメッセージを送った瞬間、4つの"OK"スタンプが連打されるように入って来た。魚は思った通り、簡単に釣れた。

　私に惚れたこと、後悔させてやる。

　ああそうか。私がこの漫画の悪役令嬢なのかもしれない。



　次の日、バアヤたちに別れを告げ、学校に戻って来た私。

　さすがに本気で心配させてしまっていたのか、秋人は私に会うなり、｢朱南朱南朱南｣と泣き、その日は磁石の様にピッタリとついて離れなかった。


　琉生は思った通り、今にも教室の3階の窓から飛び降りる寸前で、でも誰一人として止めようとしていなかった。

　私が｢さっさと飛び降りなよ｣と声をかければ、泣きながら、｢朱南に止めてもらうのずっと待ってた｣と床に崩れ落ちた琉生。(止めてない)


　そして秋人は右に、琉生は私の左にピッタリとついて離れなかった。

　特に話を合わせてはいないはずだが、同じ右足から一歩を踏み出し、足踏みが揃っていた。北朝鮮の軍隊か。


　蓮見先輩は、私を見るなり、すぐに抱きつこうとした。でも3人並んでいるから、どこに腕を回していいか分からなかったようで、結局抱きつくのはやめたみたいだった。

　目を潤ませながら、一瞬｢ママ···｣と呟いた先輩だったが、それを聞き逃さなかった琉生が、｢え？｣と驚いた表情をする。

　先輩はすぐに｢マンマミーア···｣と言葉を言い換えた。


　それから後ろには蓮見先輩がくっつくことになる。

　あまり先輩に後ろのポジションは取られたくなかったが、私はじっと心の中で、我慢だ我慢と耐えた。


　そして会いたかったやら、会いたくなかったやらの心陽君が現れた。

　私たちを見るなり、まずは右にストレートパンチ、左にアッパー、後ろの人にフックを決め、私に抱きついてきた心陽君。


「せんぱーいい！！！もう連絡もないまま消えちゃって、僕すっごい心配したんだからね～！！」
　

　この腹黒野郎がっ。私は少しばかりのスパイスをお見舞いしてやることにした。


「私、実家行く前、心陽君の部屋に行ったんだよ？しばらく実家帰ることを伝えようと思って。でもチャイム押しても出てこないから、そのまま実家に行っちゃったよ。ごめんね？」


　すると心陽君が、一瞬眉をひそめるも、すぐに笑顔を作った。


「え～！そうだったの？？全然気付かなかった！お風呂入ってたのかな僕。僕もごめんね？あ、明日の鍋パーティー楽しみにしてるからね♡」


　悪役対悪役の戦い。


　明日の鍋パーティーには思う存分スパイスをお見舞いしてやる。


　そう、"媚薬"という名のスパイスを。


　とびっきり刺激的な性欲増強剤を！鍋の中に投入してやんよ！！