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6-4.
しおりを挟む「俺はミレーヌと婚約することにした。」
「え?」
「今ミレーヌは王室嫁入りのため修行中の身でな、離宮で暮らしているんだ。」
元婚約者、前世からの恋人に向かって、よくも平然と言えたものだ。何で私はこんな男が好きだったのだろう。ミレーヌはその間にもいけしゃあしゃあと柔和な笑顔を保っている。
ああ爆破したい!
そこからはグレゴリー王子がゾイに事実確認を行い、私への質問などないまま終わった。
正直この状況でゾイに助けを求めるのは私の意に反する。それでも家族やレオのことを思えば背に腹は変えられない。
「ゾイ!あなたに向けて爆破したことは謝る!でも私は爆破するつもりなんて全くなかったの!自分でも知らなかった能力が発動しちゃっただけなのよ!」
「うるさいぞシシル・メレデリック、貴様に発言権などない!」
グレゴリー王子がぴしゃりと言い放つ。
「貴様は牢獄に収監され、しばらく反省した後は修道院に放り込まれる。」
「ええええ~!!!!」
修道院行きは勘弁だ!!頼むから処刑にして欲しい!!
するとゾイが、「まさに悪役令嬢のエンディングそのものだな」と呟いた。
なぜゾイは助けてくれないの?!私が修道院行きだけは嫌なことを知っているはずなのに!!
「貴様の心配よりも周りの心配をした方がいいのではないか?メレデリックの家名に傷がつけば、貿易商の家業もこの先廃れることになるのだぞ?」
「う…」
「貴様を助けた、あのレオハルト・アルヴェールも団長の肩書を剥奪されることになるのだ。」
「で、でもレオは私の無実を証明してくれるために助けてくれただけで、」
「うるさい!貴様に発言権はないと言ったはずだ!」
グレゴリー王子の大声に、私は身を強張らせた。
彼は昔から気性が荒いのは有名だったが、実際怒っている姿を見るのは初めてだ。
「…しかし、それらを回避する方法が一つだけあるのだが。」
急に口調が落ち着いて、その起伏の激しさに私は息を呑む。
「そ、その方法とは、何でしょうか…。」
グレゴリー王子が足を組み替え、気味の悪い笑顔を浮かべた。
「俺と婚約することだ。」
「なっ」
「俺なら貴様を助けてやれんこともないぞ?」
…はい??
この優美な乙女ゲームの世界で、なぜわざわざあなたと婚約しなければならないの??
「この俺なら学園爆破の件はもみ消す事も可能だし?父親の貿易商も、また王族との繋がりが出来れば安泰だろう。」
「…もしあなたと婚約したら、レオの肩書はどうなるの。」
「無論そのままだ。奴は将来この国を背負って立つ騎士として相応しいと、父上に根回ししといてやるぞ?」
「……」
これは、つまり脅されているということだろうか?
本当に、私が、この男と…?
ゲームの中でもグレゴリー王子は脇役として出てきた。実は悪役令嬢であるシシルに淡い恋心を抱いているという誰も得しない設定なのだ。
ゾイルートでは、最後の断罪イベントでシシルは修道院に行くのだが、そこでグレゴリー王子が「俺と結婚すれば修道院に行かなくて済むんだぞ?」とプロポーズをするのに、「あなたと結婚するくらいなら修道院に行く方がマシよ!」とシシルが叫んで終わるという無駄なシーンがあった。
今まさに私はその無駄なシーンを体験しているというわけだ。
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