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6-3.
しおりを挟む「シシル!!」
レオが「やめろ!」と騎士を引き剥がそうとするけれど、騎士たちが声を荒げる。
「邪魔立てするようであれば、役職どころか騎士号自体を剥奪するぞ!!」
「っ!」
その言葉でレオが離れる。
駄目だ。レオは軍部大臣の息子、私に関わっていてはレオどころかレオの家族まで巻き込んでしまう!
私はレオに言った。
「ありがとうレオ!!私は大丈夫だから!きっと納得してもらえるはず!」
どこにもそんな材料はないけれど、一方的に婚約破棄を言い渡されたのだから釈明する余地はあるはず。ゾイに話せばきっとわかってくれるだろう。
私は精一杯の笑顔をレオに向けた。
「シシル…!」
レオはやりきれない表情で返し、それでも私は満面の笑みを作った。
レオでもそんな顔をするのね。でももうこれ以上迷惑はかけられない。
修道院行きは嫌だけれど、レオの騎士号が剥奪されるよりはずっとマシだわ。レオは騎士団長になるべき人物だもの。
王都から出ると、第3騎士団の騎士たちが不思議そうに見ている。ポルト先生は、何かあったのかと近衛騎士に聞いていたが、「お前たちには関係ない」と突き放されていた。
鉄格子の牢馬車が目の前に停まると、途端に武者震いがした。自分はそこまでの罪を犯してしまったのかと。
…家業にも傷がつく。そうなれば私の家族はどうなってしまうのだろう。
牢馬車に乗せられた私は意気消沈していた。
罪人は本来騎士団本部の牢獄に収監させられるのだが、私の場合、まずは宮殿でゾイとの事実確認が執り行うとのこと。裁判のようなものだ。
宮殿は何度か足を踏み入れたことがある。門は竜が通れるかと思うほどの大きさで、丸い屋根の形が特徴的な宮殿だ。
昔からここに来ると緊張した。好きな人が住んでいる場所なのに、大きくなってからも挨拶やマナーが正しく出来るかと気を揉んでいた。
近衛騎士たちが私を取り囲みながら、応接間へと連れて行く。
「…シシル?」
「モーゼス!」
応接間の前にはモーゼスが立っていて、知っている顔を見たら少し安心した。
「なぜこんなところにいるんだ。」
「…実は、学園を爆破した罪で捕まっちゃって。」
「え?…あの件は終わったはずでは、」
モーゼスが言い終わる前に「さっさと入れ」と他の騎士に促され、部屋に入る。
ここは私がゾイとこの世界で初めて出会い、転生していることに気付いた場所だ。
赤い絨毯を緊張の面持ちで踏みしめる。
「シシル・メレデリック久しいな。」
「グレゴリー・エルヴァン王子…。」
ソファにふてぶてしく座っていたのは、この国の第2王子であるグレゴリー・エルヴァン王子、ゾイのお兄さんだ。
残念ながら彼は乙女ゲームのセオリーを無視したデブキャラ。とてもゾイと血が繋がっているとは思えない。
2人掛けのソファを1人で占領し、黄金色の肩までの髪を手で払う。
「さて、先日の学園爆破事件だが、思った以上に被害がでかくてな。学園の理事や父兄から苦情が出ている。シシル・メレデリックを処罰せよと。」
「……」
「軽傷とはいえ怪我人も出ていてね。それもこれも、ミレーヌ・ランシーのお陰だが。」
「…ミレーヌ?」
「ああ、彼女の回復魔法のお陰で場が上手く収まったんだ。」
ちょうどその時、部屋の扉が開かれ、ゾイとミレーヌが入って来た。
「ゾイ!…ミレーヌ。」
何でミレーヌがここに?
「久しぶりね、シシル。」
ミレーヌがスカートを持ち上げ、王族の挨拶をして見せた。
私が呆然としていると、隣にいたゾイがミレーヌの肩を抱いて言った。
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