上 下
20 / 41

4-2.

しおりを挟む

 騎士団長たちが話し合う中、ポルト先生が私に、サウザードとは友好国となっていて物資の貿易が盛んに行なわれていると教えてくれた。



 学園の被害を確認後、清掃をしてそれぞれ騎士団の駐屯地に帰ろうとしている時だった。

 1台の馬車が学園の裏門にやって来たのは。

 しかも王族専用の煌びやかな馬車だ。半円の形をしており、金色の装備をつけた白い馬が4頭、近衛騎士が御者になっている。

 
「やっと来たか、近衛騎士め。」


 第2騎士団長がボソリと呟いたが、馬車の中から出てきたのは、ミクラントス王国の案内役の役人とサウザード王国のカミール王子、そのお供の家来3名だった。


「皆ごめんね~!うちの可愛いレッカ・メビウスレウスが大変迷惑かけたようで申し訳ない~!」


 白いターバンに金色の羽を差した、浅黒い肌の美男子が明るい声で言った。


 いやいや、違うから。カミール王子は常に上から目線の王様キャラだから!!


「いやあまさかレッカが僕を追いかけてミクトラントスまで来ちゃうなんて驚きだよ~。やっぱり僕とレッカの愛の炎はどこまでいっても消えないのかな☆あはは!」


 目の前で頭に手を置き、「こりゃ参った☆」と困ったような笑顔を皆に向けるカミール王子。


 いやいやいや、カミール王子の第一人称は"我"だから!

 ミレーヌには「其方そなた、我の腕を治せ。」と当たり前のように命令するのだ。そう、辺境地で火竜に出くわし、片腕が不随になった攻略キャラこそがカミール王子なのだ。


 
 レオが前に出てカミール王子に話しかけた。


「カミール王子、件の火竜は現在騎士団本部に輸送中でして、本部までおいでになりますか?」

「ああ、そうさせてもらおうかな。っとその前に学園の皆に謝罪とお詫びをしないとね。」


 王子が家来たちに校舎へと向かわせた。軽い口調でもマナーはきちんとしているらしい。


「それにしても何でレッカはこの学園に降り立ったんだろうね?僕は王都で視察中だったんだけど。」

「あ、もしかしたら彼はこのストールを見つけたのかもしれませんよ?王子。」


 私は手に持っていた金のストールを王子に渡した。


「ああ!!それは僕のストールだよ!ありがとう!でもレッカは"彼"じゃなくて"彼女"なんだ。」

「それは失礼しました。」

「えへへ。僕たち恋人みたいなもんなんだ~。」


 何だろうこのやり取り。どこかで同じようなやり取りをした気がするけれど思い出せない。それにしても何でこの人こんなにキャラが崩壊しているのか。


「ところで君、よくこのストールが僕のものだって分かったね?」


 あ、しまった!当たり前のように渡しちゃったけれど、よく考えたら他国の王子の持ち物を知ってるなんておかしいよね。


「ええと、高級そうな絹のストールだったので、そうかなと。」

「へえ?なかなか見る目があるんだね君。ところで"絹"という単語は僕の国にはないんだけど、この国ではシルクを絹と呼ぶの?」


 うっわ~…適当そうにみえて意表をついてくるあたり、凄くめんどくさい!こういうタイプの男、昔の知り合いにいたよな。誰だっけな。


 確かにこの国でも"絹"という単語は聞いたことがない。もしかするとこの世界自体に"絹"という単語はないのかもしれない。



「まあいいや。君、名前は?」

「はい、第3騎士団のシシル・メレデリックと申します。」

「え?メレデリック?!もしかしてあの貿易商のメレデリック家なの?!」

「ええと、はい。そうですけど。」


 サウザード王国との貿易はうちの実家を通して行っているとのことだった。私はお父様の仕事のことには疎いから初めて知った。


「直接会ったことなかったから会えてうれしいよ!まさか娘さんが騎士をやっているなんてね!」

「ははは。少し事情がありまして。」

「どうだろう、もう少し君とは話がしたいんだけど、よければ本部まで付き添ってはもらえないだろうか?」


 それからカミール王子に「お願い!」と頼まれれば断るわけにもいかず、レオと私はカミール王子一行に付き添い、本部まで行くことになった。



 ママ馬がダルタニアンから離れようとしないため、私はレオの馬に乗せてもらい馬車の後ろからついて行く。


「どうしようレオ。私お父様の仕事の詳しい内容はよく知らないのよ。他国との貿易の話を持ち出されたらどうしたらいいのか。」

「その時は俺が助け舟を出す。これでも騎士団長だからな。
っと、手綱には触れるなよ?」


 レオが後ろから私の腰をぎゅっと抱きしめる。手綱は馬に指示を出すための大事な道具で、同乗者が触れては馬に的確な指示が伝わらなくなる。そのため私は、レオに支えられる以外に自分で支える場所がないのだ。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢

美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」  かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。  誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。  そこで彼女はある1人の人物と出会う。  彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。  ーー蜂蜜みたい。  これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。

処理中です...