19 / 41
4-1.シーク様は特撮好き
しおりを挟むママ馬をダルタニアンに会わせると、2頭は涙を流し、嬉しそうに身を寄せ合った。
「ヒヒヒ、ヒヒーン。。(ありがとう、シシル。)」
「こちらこそ、ここまで乗せて来てくれてありがとう。」
火竜が騎士たちの風の魔法により運ばれていく。
とりあえずは騎士団本部の魔獣専用の檻に留置し、この火竜がどの地域に生息しているのかを調べた後で返すらしい。竜は希少なため殺傷処分はしないのだとか。
ゲームの中でも火竜は出てきた。開拓のため、辺境地に視察に行った他国の王子(攻略対象)が火竜に出くわし攻撃を受け、片腕が不随になるのだ。そこで回復魔法を持つミレーヌに会いにやって来るというルートがある。
「なぜ近衛騎士は応援に来なかったんだ?!使い魔を飛ばせと言ったはずだろ!!」
「と、飛ばしたはずなのですが…も、申し訳ありません!」
第2騎士団の団長が騎士に怒鳴っている。でもレオがそこに割って入り、「使い魔も火竜に恐れをなし錯乱していたのかもしれない」と騎士を庇っていた。
前世は敵だったから悪いイメージしかなかったけれど、レオって実は仲間想いで優しいのかも。ステラに捕まっている時にもっと腹を割って話せていたら、メロウとも仲良くやれていたのでは?
「レオってとってもいい団長なのね。私レオのいる第3騎士団にきて良かった。」
「おやおや、ようやくレオの良さに気付いたのですか?…確かにリオの時は近寄りがたい雰囲気はありましたけど、今では皆のヒーローのような存在なんです。」
「へえ。」
ポルト先生と、他の騎士団長たちと話し合っているレオを見つめる。真剣な表情で話をする姿にドキッとした。
さっき抱きしめられた感覚がまだ残っているのを思い出し身体が熱くなる。推しなんだからドキドキするのは当たり前かと自分を納得させた。
「姉さん!!!」
校舎から走ってくるアンドリューが見えた。
「アンドリュー!!」
私が抱きしめようと大きく手を広げると、アンドリューが私に「何してるの!!」と大声を上げた。
「姉さんは保護されてる身なんでしょ?!それが何でこんなところで火竜相手にしてるんだよ!!」
「心配させてごめんねアンドリュー。私が心配になって勝手について来ただけなの。」
「じゃあ何でそんな騎士の格好なんてしてるの?!絶対おかしいよ!!!」
アンドリューが膨れた顔で私の両手をギュッと握る。
助けを求めようとポルト先生を探すと、先生は他の騎士団の女性に囲まれていた。
ここは抱きしめて誤魔化そうとアンドリューをぎゅっと抱きしめると、少し向こうの木に何かが引っかかっているのが見えた。
あれって、ストール??
私はアンドリューから離れ、その木に近付いて見上げた。どこかで見たことのある、金の絹のような大きなストールだ。どこで見たんだったか…
木に足をかけ登ろうとすると、アンドリューが「もう!話聞いてよ!」と文句を言いながらも、風の魔法でストールを取ってくれた。
「ありがとうアンドリュー。」
「あれ?これって、どこかの王子が巻いてたやつじゃなかったっけ?」
「え?」
「ほら、よくマキが、シーク系は色気が凄いとかって言ってたじゃん。」
「…え?…マキ??」
アンドリューの口から突如、私の前世の名前が出てきた。
考えたくなかった事実が目前に迫るも、アンドリューが、「あ!授業中だったんだ!」と、くしゃりと笑って校舎に駆けて行った。やっぱりアンドリューはサクなのかもしれない…。
でも今の"シーク系"で思い出した!
このストールは攻略対象であるカミール・パストラーナが首に巻いているものに似ている。
カミールはこの国の王子ではなく、ここから西南にあるサウザード王国の、確か第4王子だったはず。サウザードは砂漠地帯なので、口に砂が入らないようにストールを巻いているのだ。
「伝達です!!先程の火竜の住処がわかりました!!」
1人の騎士が、外から学園の中へと走ってきた。
私も皆の元に駆け寄ると、騎士たちが一カ所に集合する。
「先程の火竜は、サウザード王国王族の従魔《じゅうま》であることが判明したそうです!」
「は?従魔だと?!」
レオが声を上げた。
従魔とは飼育用の魔獣のこと。でもこの国で使い魔以外の従魔を持つことは禁止されている。
「もしかしてサウザードが従魔を使い攻めてきたのか?!」
「いえ、そんなはずでは。伝達によれば、現在サウザード王国のカミール・パストラーナ殿下が視察に来ているとかで、」
「視察?…どういうことだ。」
まさか、視察にペットの火竜を連れてきたってわけじゃないわよね??
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる