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2-3.
しおりを挟む「種があるなら薔薇は元に戻せるな。」
「え?」
レオ様が両手を種に向かってかざし、呪文のような言葉を唱える。
「―――アース・リゼネーション―――」
するとレオ様の手から光が放たれ、無数に転がっていた種が庭園中に飛び散った。
「な、なにっ」
焦げた灰に土が被さり、焼野原だった地面が次第に土色の姿を取り戻していく。そして、所々に緑色の小さな芽が現れた。
「す、すごい…」
そういえばレオ様は侯爵家出身で"地"の魔法が使えるのだ。
ゲームでは、ミレーヌが大切に育ててきた庭園の薔薇たちをシシルが引きちぎり、ミレーヌは1人庭園で悲しみにくれる。そこでレオ様がこっそり魔法で新芽を芽吹かせるのだ。直接与える優しさではなく、さりげない彼の優しさが私は大好きだった。
「さてシシル・メレデリック。ミクラントス王国第3騎士団長としてあんたに話がある。」
「…え?!それって死刑宣告だったりする?!」
修道院行きよりも断然死刑のがいい!
でもレオ様は、「もっと落ち着いた場所で話そう」と、学園裏門付近の木にロープで巻き結びをして待たせていた黒い馬に私を乗せ、学園を出た。
私が前に乗り、レオ様が後ろから片手で私の腰をしっかり支える。馬に乗っている途中で逃げようかとも思ったけれど、最推しに極限まで密着されてそれどころではなかった。後ろからは時々レオ様の息がかかり、全身が火照りっぱなし。
推しの力って狡い。
さっきからうちの使い魔である"満子"が私の頭の上をパタパタと飛んでいる。
使い魔は鳥で、この世界の通信手段となっている。背中にリュックを背負うような感じで小さな袋がついていて、そこに手紙を入れてやり取りをする。1家に1匹は飼っていて、満子は私が命名した。他の使い魔よりもプックリとしているので、満腹の子という意味で満子にした。
帰らない私を両親が心配しているのだろう。学園の一部を爆破してしまい、親に合わす顔などない。
「こいつはメレデリック家の使い魔か?あんたの両親には俺から手紙を書いて送っておこう。」
「え?!」
「どうせ家に帰るつもりはなかったんだろう?今日はうちに泊まればいい。」
そう言ってレオ様が満子を口笛で呼び寄せ、肩に留まらせた。
私を捕まえて騎士団本部の牢獄に入れるのではないのだろうか?
というかうちに泊まるって…私が?レオ様の家に…?
レオ様の家なんてゲーム内では見られなかった。
今私は彼の家の応接室にいる。
なんと彼は実家とは別の、彼専用の家をすでに持っていた。レンガで作られた屋敷で、屋敷自体はさほど大きくはないが使用人は約20人いるのだとか。
侍女さんが私の前に紅茶を置いてくれた。
「…それで、話というのは何なの?」
「単刀直入に言おう。あんたを騎士団で雇いたい。」
「は?」
「爆破の魔法が使える人間なんてまずうちの騎士にはいない。爆弾を使うにしたって一発爆発させるだけで大金が飛んでいくし、保管にも携帯にも危険が伴う。」
この推しは何を言っているのか、私は自分を落ち着かせるために紅茶を一口飲んだ。薔薇の香りがする。
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