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王太子の花嫁選び~側近スターリンの苦悩~

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バラスト大陸にはいくつかの国がある。

 その中でも一番の領土を持ち強国と言われているのがユダリア国。豊かな資源、強い兵力を持ち、製造など全てにおいて最先端で発展し続けている。

 そのユダリア国の王城にある、一つの執務室。

 忙しく書類に目を通してサインをしている青年が··········いる?

「·····でん······ブ·····ブライト殿下!!」

「ハッ!」

「ハッ!じゃありませんよ!また目を開けたまま寝てましたよ!いっぱい書類が溜まってるんですから早く処理してくださいよ!」

 寝ていた青年を叱咤したのは、私、スターリン・ディストニア24歳。

「·····私はいつの間に寝ていたのだ!スターリン。」

 目を開けたまま寝れるいう器用な方は、ユダリア国の第一継承者のブライト・フォリダアリオス皇太子、24歳。私がお守りし、使えている主である。

 淡いブロンド色の髪をサラリをかきあげて、チラリを流し目をしながらスターリンを見る。左目の下にある泣き黒子が、なんとも彼の色気を醸し出している。

「そんなの知りませんよ!珍しく真面目に書類の処理をしていたと思ったら····」

 全く!

 私の身分はディストニア伯爵家の嫡子。ブライト様との関係は、母がブライト様の乳母をしていた。母はこのユダリア国の王妃様であられるダイアナ様の幼なじみであり親友。その為、ブライト様とは兄弟のように育った。いつも一緒で良いことも悪いことも大いに二人でした。乳兄弟でもあり、幼なじみでもあり、親友だとも自負している。今はブライト様の側近としてお仕えしている。

 私はブライト様とは違い、ブロンドに近い茶髪を騎士らしく短髪にしている。目鼻立ちははっきりしていると思うが、そこそこモテるとでも言っておこう。

 ブライト様は御伽話に出てくるような王子様の容姿をしている。甘いマスクにサラサラの髪。彼のチャームポイントは左目の下にある黒子だ。なんとも言えないフェロモンを出している。
 かなりの美青年だ。

 しかもブライト様は、ユダリア国一番の秀才と言われている。小等部の頃から既に高等部の問題をスラスラと解いていた。だから小等部、中等部、高等部ともにずっと主席。ちなみに私はずっと次席。剣術も国一番と言っても過言ではない。実際にユダリア国で大規模で行われる二年に一回の「天下一武道会」では各国から猛者が出場しているが15歳、17歳の時にそれらを蹴散らして優勝している。
 そのあとは「つまらん!」と言って出場していない。
 何をやらしてもそつなくこなす。周りからは「神童」と呼ばれていた。

 そして極めつけは三年前にちょっとした戦があったが、持ち前の頭脳で相手国を全滅まで追い込み、国に大勝利をもたらした。

 身分は王太子、頭脳明晰、剣術武術も強い、しかも美青年!全ての物を兼ね備えている!男女ともに人気もあり、モテモテである!

 この方に神は何物も与えている!········と思ったが·······


「ふう、昨夜は眠らせて貰えなかったのだ。少しは多目に見ろ。」

「·······いつもではありませんか。」

「そんなことはないぞ!何を言っている!スターリン!」

 いえいえ、いつものことです。


「昨日はアライダ嬢と、ラカルマリ夫人の性欲が凄くてな。なかなか離してくれなかったのだ。これでもか!というくらいしっぽりと絞り取られたよ。」

「はあ、昨日はお二人のお相手ですか?」

 私は呆れ顔でブライト殿下に言った。

「そうなのだ。やはり誘われたら応えるのが男であろう?」

「そんなことはありませんよ。仕事に支障が出てますので自重してくださいと何度も言ってるでしょ!」



 仕事も出来る!貿易、税金など、国益に関わることや、国情勢などの管理をしているのはブライト様と言っても過言ではない。実際にブライト様が指示などするようになって、ますますユダリア国は潤っている。

 だが!残念なのは女好きのところだ!
 仕方がないことなのだが、女性がブライト様をほっとかないのだ。
 何とかホイホイみたいに、ブライト様に群がる。そして、その方々の相手をしないといけない!男の沽券にかかわる!と変な使命感を持って、ほぼ全ての女性のお誘いを受け入れているのだ。

 毎夜毎夜、複数の女性のお相手をしている。下手したら朝から晩まで女性のお相手をしている。ブライト様は絶倫というやつであろう。ある種凄いと思う!羨ましいとは思わないがな!

 しかも守備範囲が広い!下は15歳~50歳(本人談)までOK!胸が大きければ尚OK!

 だから大変なのだ·····私が······。
 ブライト様を巡る争いは日常茶飯事。その処理に追われるのだ。所謂、とばっちりってやつだ。

 本当に女性を宥めるのが大変······。


 私は思う。やはり神は一つは欠点を作るということを······。


 そして、私は知っている·····幼女好きロリコンということを!!
 本人の守備範囲は15歳からだと言っているが、実際は8歳からだということを!!

「お、そうだ!スターリン、今日だったかな?」

 ブライト様はソワソワしながら聞いてくる。

 分かっているくせに。

「はい。本日はノーダルトル孤児院訪問も予定しております。」

 ブライト様は私の返答で、パアァァと嬉しそうな表情をした。


「そっか!では早速·····」

 ブライト様が椅子から立ち上がろうとしたので静止した。

「ブライト殿下、お待ち下さい。こちらの書類を片付けてからでないとノーダルトル孤児院には行けませんよ。」


 私は書類の束をバンバンと叩く。


「何!?別にそんな実務などは後でよいではないか!」

「何を言っているんです!そう言っていつも逃げるから、もう3日分の書類の処理が溜まってるんですよ!まだ急ぎの書類の処理も終わってません!これが全て終わってからじゃないと行けませんよ!ノーダルトル孤児院に別に週に一回も行かなくていいんですから!」

「グッ!!」

 私の言葉にブライト様は悔しそうな顔をする。

 フフフ。ですが私も鬼ではありません。

「身から出た錆びです!ノーダルトル孤児院に行きたいならさっさと書類を済ませましょう!さあ!さあ!」

 私はブライト様の胸に、書類の束を当てて処理をするように促した。

 ブライト様はガックリと肩を落としながらでも、気を取り直して猛スピードで書類の処理を始めた。

 いつもこんな調子だ。よっぽどノーダルトル孤児院に行きたいらしく、この時だけは真面目に仕事をこなす。
 別に孤児院など、数ヶ月に一回の視察でいいのだが、週に一回行くことにしているのは、まさにブライト様に仕事をさせる為。

 私は「ふう」とため息を付き、ブライト様を監視をするのだった。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「まあ、ブライト殿下、スターリン様、ノーダルトル孤児院にようこそおいでくださいました。いつも気にかけて頂きありがとうございます。」

 今、ブライト様と私はノーダルトル孤児院へ来ていている。ユダリア国には孤児院は6つあるが、その内の3つは王都にある。そしてその3つの内の中でも一番大きいのがノーダルトル孤児院になる。
 このノーダルトル孤児院にいる子供の数は0歳児から15歳までの子で約120人程。親に捨てられたり、戦争や魔物に親を殺されて身寄りのない子がほとんどだが、経済的に厳しくて期間限定で預かっている子達もいる。

 孤児院は16歳になったら出ていかないといけない。だが、学力もない、しかも孤児というだけで迫害にあったり働き口ができなかったりするのがほとんどだった。その為盗賊になったり、犯罪を犯したり、身を堕とすしかなかった。
 ブライト様は8年前、孤児による犯罪率を減らす為、字や、計算を教える為に孤児院の予算を見直しをし、寺小屋を作った。そして孤児などを理由の雇用拒否を全面的に禁止した。それを理由に拒否をした者には処罰をかせられた。
 すると犯罪自体が激減。どの国よりも犯罪が少ない国へとなっていた。


「ブライト殿下、スターリン様、こちらへ。」

 出迎えてくれたのは、院長と孤児院を切り盛りしているシスター6名。

「では私達は仕事に戻ります。」

 院長の言葉に、6人のシスターはお辞儀をして散らばった。各持ち場に戻る時には、勿論ブライト様の美貌に当てられ顔を赤くしながら、名残惜しそうにチラチラとこちらを見ながら去って行った。

 私達は応接室で院長に孤児院の様子を聞き、本来なら院長の案内で視察をするのだが、いつもそれを断り私達だけで勝手ウロウロと視察している。
 順番的には乳児から見るのだが、そこはチラ見だけである場所に行く。

 それは7歳児から10歳児のクラスだ。今は外で遊んでいる。私達は廊下からその様子を見ていた。

 ワーワー、キャーキャーと元気いっぱいに走り回っている子供たち。

 うん。みんな良い笑顔で遊んでいる。

 私はキョロキョロと周りを見て、一人になっている子は居ないかとか、いじめとかないかとか確認していた。

 そして横を向いた時にふとブライト様の顔が見えた。

「··········。」

 またか········。

 ブライト様は幼女達が集まっている所に目を向けていた。
 そして、だらしなく鼻の下は伸びており、今にもヨダレを出しそうに口は半開き。目尻はおもいっきり下がっている。

 もう、キラキラ王子様とは言えない、ただの変態のお兄さんにしか見えない。
 誰にも見せれない顔をしている。いや!見せてはいけない顔をしている。

「ブライト殿下、鼻の下が伸びてますよ。」

「ハッ!」

 ブライト様はすぐにキラキラ王子様の笑顔を作る。

 それを見たそのクラス担当のシスターがまた頬を赤く染めた。

 ······どうやら先ほどのだらしない顔は見られてないようだな。

 私はホッとした。

 私はチラリとブライト様の下半身を見る。

 うん!少し盛り上がってるね!早く帰らないと!

「·····ああ、可愛い。愛でたい·····。」

 危ない言葉を発し始めたので早々とおいとますることにした。
 ブライト様に散々、タダこねられて文句も言われたが。

 貴方を犯罪者にする訳にはいきませんから!

 視察に行ったが、ほぼ視察ではない、いつも通りで終わった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ブライト様は幼女好きロリコンだが、実際に性的にてを出すことはない。
 なぜそれが分かるかって?
 一度、試したことがあるからだ。まあ、その辺は割愛させてもらう。
 一言でいうなら「胸」だ。「胸」の膨らみがないと性行為までは出来ないようだ。

 だから15歳からお相手がOKなのだ。

 ブライト様は守備範囲が広いが好みはかなり狭い。

 幼女の顔で胸は大きい。ついでにクリクリした猫目が好みだ。

 王太子なのに·····モテモテなのにそんなことだから24歳で婚約者が居ないのだ。

 父である国王にはことあるごとに、婚約のお話がくるのだが全て断っている。国王なんだから強行しようよ!と思っても、実質この国の運営をしているのはブライト様。下手に機嫌を損ねたら大変な事になるので国王と言えど強行できないのだ。

「スターリン、頼むからブライトにお目がねにかかる婚約者を見つけてくれ!」

 と、国王に懇願されたが、

「貴方の息子は幼女好きロリコンで、好みの範囲は狭いんですよ!」
 などとは言えない。

 はあ·······どっかに幼女顔した胸が大きい猫目な子がどこかに居ないだろうか······。

 ブライト様は私が禿げそうなくらい悩んでいることなど知らない·····。

 禿げて、嫁の来てがなかったらブライト様の所偽だ!!

 そうなったら、恨んでやるぅぅ!

 私の禿げそうな苦悩の日々は続く。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ある日のこと、国王様夫妻が業を煮やし、各国から身分は伯爵家以上の身分のご令嬢を集めて舞踏会を開くことになった。

 当初はブライト様も嫌がっていたが、ほぼ半日缶詰め状態で、国王夫妻からコンコンと説得されて、まあ、ブライト様が根負けをしたって感じで決まった舞踏会だった。

 今回の舞踏会でとりあえず嫁を決める。あとは愛人を作ろうがどうにでもしてもいいってこと。でも必ず世継ぎはその正妃と成す事。
 ユダリア国では一夫一妻だ。王様と言えど側妃を持つことは許されていないが、正妃に子が成されない場合は特別に許される。

 ブライト様はそれにもうひとつ条件を付けた。
 それは······

「私がどんな娘を選ぼうと文句を言わないこと。」

 だ。

 それはどんな身分でも、どんなに不細工でも、自分が選んだ女性と結婚させること。

 国王様夫妻は、ブライト様がやっと前向きに結婚を考えていると思い喜んで承諾した。

 本当は幼女好きロリコンなんですよ!ヤバいんです!
 と言いたいが言えない。

 だが、国王様も条件を出してきた。それはこの舞踏会で自分で花嫁を見つけられなかった場合は、国王様が言う王女様と婚約し結婚すること。

 ·······さてどうなることやら。


 各国に招待状を送ったりして、てんやわんやしながら、国王様との約束から1ヶ月後に舞踏会が開催された。

 舞踏会会場には王城で一番広い、200人くらいを招集できる二階建てのフロアを使っている。二階は一階フロア全体が見渡せるようになっており、王族専用になっている。

 今回の招待者のご令嬢は100人強。ご両親などを入れると250人位が集まっている。だがフロアはそんな人数では動くのも大変なので、両親は別室をご用意している。
 大陸全体の風習では、舞踏会や夜会では、ご令嬢にはメイド、ご子息には側近を一人伴うことが普通だ。年齢も15歳以上ではないと同行が出来ないことになっている。

 国王の開催宣言の後、国王夫妻は二階から一階へ移動し各国からの王女様から挨拶を受けている。
 本日のメインであるブライト様はというと······二階で不機嫌そうに一階を見ていた。

「あーあ、面倒くさい。」

 かなりブーたれている。

「ブライト殿下、何を言っております。貴方様の大好きな女性が色々な国からお越しくださっておりますよ。選び放題ですよ!」

 私の言葉にブライト様は、眉間にシワを寄せて言った。

「スターリン、確かに私は女性が好きだ。だがそれはあくまでも遊びならだ。花嫁選びとなったら別だ!」

 拳を握りしめて力説をする。

 この人、遊びとはっきり言っちゃってるよ。いつもは「全て本気な恋だ!」とか言ってるくせに。

「こうなったら···孤児院にいるフェアリーちゃん達を·····」

 この人、今めっちゃ不吉なことを言ってるし!しかも孤児院の幼女達をフェアリーちゃんとか呼んでるし!!ブライト様!いつも鼻の下を伸ばして、頭の中で幼女達(7歳から10歳の子限定)をフェアリーちゃんと呼んでいたのですね!
 しかも「達」とか言ってるし!花嫁はお一人ですよ!ブライト様!しかも花嫁になんてなれない歳ですよ!

 私は急いでブライト様変態の気をご令嬢達に戻す為に言った。

「ブライト殿下!ご令嬢達がブライト様に熱い眼差しを送ってきてますよ!ほら!お返しをしないと!」

 ブライト様はその熱い視線にすぐさま、ニッコリと笑い、こちらを見ているご令嬢達に手を振った。

 ブライト様のキラキラ笑顔にやられたご令嬢達は「キャー!」と頬を染めて歓喜をあげ、倒れるご令嬢まで出た。

 ああ、とりあえずブライト様には、好みの豊乳で少し幼い顔した(居るのか?)適齢期の年齢の方を選んでもらわねば!でないと幼女好きロリコンだと世間に知られたら·······ますます結婚なんて無理だ!いくら国王様が言えども!幼女好きロリコンとわかって誰がそんな男のところに嫁ぎたいと思うものか!
 そうすれば、私も結婚なんてとても無理だ·····何とも考えただけで恐ろしい!!

 そう·····ブライト様が結婚しなければ私も結婚できないのだ····。

 私には元々14歳の時に年齢が一つ下のとある公爵令嬢の婚約者がいた。本来なら18歳でその婚約者と婚礼を挙げるはずだった·····。その頃からブライト様の結婚話は度々出ていた。だが、本人にはそんな意志はなく女性の影(遊び)はあっても、恋人、もしくは婚約者の「こ」文字もなかった。

 私が18歳の時に、相手にせっつかれたのもあるが、結婚する旨をブライト様に言ったら······

「お前は私よりも早く結婚する気なのか?」
「私は一緒にお前達と二組で結婚式を挙げたい」

 と、ふざけたことを凍るような笑顔で言われ·····、相手の公爵令嬢は「待てない」と言われて破談に。違う公爵家の嫡子に嫁いでいった。

 そして二人目の婚約者が出来た。その方は4つ年下の公爵令嬢。
 その方が18歳になってもブライト様に結婚の「け」文字もない為、結婚がいつになるかわからないからと、やはり破談に。

 これだけでも結構な被害にあっている気がする。

 私だって早く結婚して、幸せな家庭を作りたいのだ!ブライト様の所偽でこのまま年老いて結婚できなかったから、恨んでも恨みきれない!!

 と、思っていたが、先月三人目の婚約者が決まった。

 ブライト様に未だに婚約者が居ないことと、二度の破談。両親は心を痛めてブライト様が30歳になるまでには結婚するだろうと思い願望、12歳年下の伯爵令嬢が婚約者と決まったばかりだ。

 うん?12歳年下?
 ハッ!ということは私の婚約者は12歳!
 これはまずい!ブライト様のことは言えない!

 執務と、ブライト様のお世話(色んな後始末)に追われて、新しい婚約者とは会ったことがない。
 半分諦めモードだったので、両親に言われるまま「はいはい」と言って、話は右から左へと聞き流していた。

 ·····ブライト様には婚約者したことはまだ内緒にしておこう····。

 そんなことを考えていると、ガタッ!とブライト様がいきやり椅子から立ち上がった。

 私は椅子の音に驚いてブライト様を見ると、驚いた顔して大きく瞳を開いていた。
 そして右手を額に当ててふらふらと椅子にまた座った。

「な、なんと言うことだ·····」

 ブライト様はそう呟くと、額に当てている腕をふるふると震えさせた。

 私は何があったのか、体調でも悪くなったのかと思いすぐさまブライト様の前に膝をつき聞いた。

「ブライト殿下!いかがなさいました。体調を崩されましたか!?」

 ブライト様は左右に頭を振り

「いや·····そうではない。」

 ボソッと言った。そして次に出た言葉に驚いた。

「私が理想とする者がいた······」

「!!!」

 何ですと!!

「り、理想ですか?」

 私が聞くと、ブライト様は目をキラキラさせて言った。

「そうだ!幼女のような顔、そして胸もそこそこある!背も低い!あっ、これ必須ね。」

 え?背も好みがあったのですか!?

 そんなことはいい!世の中にブライト様に目にかかる、そんな子がいるとは!!

「どこにその方はいるのです?」

 私は身を乗り出して見渡す!

 ·····人数多すぎて、私には豆粒にしか見えませんが·····。

 だがブライト様にははっきり見えるようで·····

「左の食卓テーブルに、青いドレスを着たご令嬢がいるであろう!」

 左の食卓テーブル?

 私は目を凝らしてそちら見る。
 確かに青いドレスのご令嬢がいるが·····顔はここからではよく分からない。胸は確かに出っ張っているが·····。背も低いという印象はない。

「はあ、確かに青いドレスを着ておられる方はいらっしゃいますが······。」

「その隣いるメイドを見ろ!私の好みにドンピシャだ!」

 いつの間にか私の横にきて一緒に身を乗り出しているブライト様。歓喜のあまりか興奮しているようだ。

 というかメイド!?

 私はもう一度目を凝らして先ほどの青いドレスを着ているご令嬢の隣を見た。
 先ほどは気付かなかったが、確かに背の低い子がいる。うん!確かにメイド服を着ているね!

 だけど、顔までははっきり見えない。

 ブライト様にはやはりはっきり見えているらしく、興奮した声で「可愛い可愛い可愛い」と連呼している。

 あの豆粒のようにか見えないのに、顔まではっきり見えているブライト様は化け物だ。一体どんな視力をしているのだ?

 私の気持ちを察したのか、ブライト様は双眼鏡を私に手渡してきた。

「·······」

 私は双眼鏡で確かめると·····確かに顔はどう見ても8歳、9歳くらいしか見えない。目もクリッとして大きい。背もご令嬢の肩よりちょっと頭が出ているくらいだ。近くまで行かないと分からないが、身長は多分130~140センチくらいか。胸は確かに出ている。豊乳ではないが普通くらい?
 思わず自分を手を見た。私の手にすっぽり入るくら······

 バジッ!

 ブライト様に頭を叩かれてしまった。
 どうやら手で胸を想像していたのがバレたらしい。

 だが······


「ブライト様、さすがにメイドを花嫁に選ぶのは無理ではないでしょうか?」

 いくらなんでも、未来の国母にメイドを選ぶのは·····と、思ったが。

「スターリン、何を言っている!だから条件を出したのはないか!」

 私はハッとした。

「やっと長年待ち望んでいた理想の子を見つけたのだ!あの者を私の花嫁にするぞ!」

 ブライト様は襟足を正し、気合いを入れて階段を降りていく。
 私も急いで後を追った。

 国王様がどう判断するから分からないが、多分あの者に花嫁は決まるであろう。

 いや、決まって欲しい!

 私の為に!!

 あの者には悪いが犠牲になってもらおう。

 私はブライト様のフォローをすべく、ブライト様の元へと向かった。

 その者が16歳だったので内心ホッとしたが、実はメイド兼護衛でめっちゃ強いとか、ブライト様よりうちのご令嬢の方が大事と言って、結婚までにこじつけるのか大変だったとか、スターリンの苦悩が暫く続いたのは····いや、続くのかはまた別のお話。



             完


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