上 下
53 / 65

49話 攻防戦....それにより側妃達とますます険悪になりました。

しおりを挟む
屋敷に私の悲鳴が響き渡った。
ルイス殿下はニコニコと笑顔になって、私の隣にしれっと座った。

「ネネ、私にも紅茶を。」

ネネは呆然としていたが、ハッと我に返り「只今」と言って急いでカップなどを用意するために退室した。

私もそれで我に返りルイス殿下に問いかけた。

「いきなりどうしたのですか?」

「うん。今日は国王夫妻と、国の重鎮達が集まって会議があったんだよ。その会議はアリアのことだったんだ。」

「私のことですか?」

何だろう?

その時にドアをノックする音が聞こえ、ネネがお辞儀して入ってきた。
ネネは「失礼いたします。」と言い、静かにルイス殿下の前にカップを置き、紅茶を注いだ。

ルイス殿下は紅茶を一口飲むと、ネネに退室するように指示をした。
ネネはまたお辞儀をして部屋から退室した。
それを見届けてからルイス殿下は、先ほどの続きを話始めた。

「アリア、私達が婚礼を挙げてから三年半が経った。早いものだな。」

「·····そうですね。早いものですね。」

私にとってはそうでもないけど!

「それで一つ問題があるのだ。」

「問題····ですか?」

ルイス殿下は頷いた。

「そうだ。それは私とアリアとの間に子供が居ないことだ。」

やっっー!きたーー!
とうとう問題になっちゃった!?もう少し先だと思ってたのにー!

心の中で叫んだけど、顔には出さないようにできた。

ここからは演技が必要ね!頑張れ私!

私は伏せ目をし、なるべく傷ついたような顔をした。

「·····そうですわね。確かにルイス殿下との子が出来ておりませんね。」

ルイス殿下は私の様子を伺いながら話を続けた。

「そうだ。だから私は思った。アリアの優しさに甘えてしまい側妃達との交流を増やしたことによって、アリアと共に過ごす時間が少なすぎたのではないかと。」

いや!全然大丈夫です!もっと側妃達の元へ行って欲しいくらいです!
私と過ごす時間が少ないって····ほぼ毎日朝夕二人で食事をして、暇さえあれは私の元にやってきてはイタズラをしてるのに!?
十分ですが!!

「アリアは知っているであろう?正妃は五年以内に子が出来ないと皇太子妃という身分は剥奪され、離縁になるということを。」

勿論知ってますわ!私はそれを狙ってます!ふふふ。

とは言えないので、少し言葉を濁す

「はい·····少しですが聞いておりました。本当なのですね。」

「そうだ。代々の正妃は何事もなく子ができたので、ちゃんとした説明はなかったかもしれないな。この国では子供を産んで正式に皇太子妃と認められるのだ。」

「·····過去には子が出来なかった方はいらっしゃらないのですか?」

「いや、200年前に一人いたらしい。」

「その方は?」

「本人の希望により臣下に下賜かしされたはずだ。」

へぇ。修道院には行かなかったのね。

「離縁したら、自分で、臣下の元へ嫁ぐか、修道院に行くかのどちらかが選べる。」

「故郷へは帰れないのですか?」

私の問いにルイス殿下は頭を振りはっきりと言った。

「帰れない。実際に帰っても笑い者にされるだけであろうし、子供が産めないとなると嫁ぎ先もないだろうからな。この国なら臣下へ下賜かしされて降家になろうが、待遇は正妻になるからある程度は保障される。」

「では、故郷でそれでも良いと言ってくれる方がいらっしゃったら帰っても大丈夫なのですか?」

「·······そうだな····何分前例がないから分からないが。基本的には皇太子妃の意志に添うようになる。」

そうなんだ。
う~ん。でもやっぱり出戻りは無理だろうな······。


「私はアリアと離縁したくないし、離れたくない!だから子供がてきるまで毎日夜は一緒に過ごそうと思う!」

いやいや、それは勘弁してください!避妊薬がある限り妊娠なんてするわけないですから!

私には強~い味方がいるんです!!

「私は自然に出来るのがいいと思います。出来なかった時はその時はその時で覚悟を決めますわ。」

「それではダメなのだ!私はアリアと離れたくない!」

そこからはお互いに攻防戦が始まった。
それは夜中まで続いたのだった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


チュンチュン

小鳥のさえずりで目が覚めた。
隣には満足気にスヤスヤと眠るルイス殿下がいる。

ああ····また気絶したのね。
相変わらずの絶倫ぶり。毎回毎回、なけなしの体力を搾り取られている。
前は週に一回だから良かったけれど、新婚当初を思い出す。いや、あの頃よりパワーアップをしている気がする。

窓の方を見ると、カーテンから光が漏れていた。だが明るさはないので夜明けくらいの時刻なのだろうと察した。

私の妊娠問題が取り上げられたあの日は夜中まで、押し問答が続いたけれど、何とか週5日で収まった。本当はもっと減らしたかったのけれど私が根負けした····というかもう眠くて仕方がなかったので早く終わらしたかったというのもある。

こんなことしたら絶対に側妃達が黙ってないだろうと思っていたが、案の定後宮の方では、ちょっとした騒ぎになっているらしい。(ネネ情報)

残りの週2回はナディアの所とナマミル国から嫁いできたマジュリナ所に通っているみたいで、他の側妃達はそっち退けにしているらしい。

もう少し考えて通えばいいのにと思ってしまう。

ルイス殿下が週2回は後宮に足を運んでいるのは、他の側妃達も分かっている。たが、残りは後宮に来た様子がない·····ということは私の元へ通っていると判断されていると思う。実際にそうなんだけどね。

だからか、ますます私と側妃達(一部は除く)との溝が出来てしまった。

ナタリアなんて、

「アリア様の元へはルイス殿下は通ってないみたいですわね。既にルイス殿下に飽きられているのでなくて?」

などと失礼なことを会うたびに言われていた。(私はスルーしてたけど)その上、私を見る目が付き鋭いこと!

気にはしてないけどね。今は風当たりは強くなった気がする。
ナディアは相変わらず、私を慕ってくれている。私が居なくなったらナディアが····と思ったけど、頭が少しお花畑だから厳しいかもね。

今日は週に一回の側妃達との交流会。
嫌だわー。

「アリア様!ひよこちゃんは、ひよこちゃんなんですよ!」
「·····。」

ナディアは最近、文鳥を飼い始めたのだ。まだ卵から孵ったばかりの雛を育てている。まあ、世話をしているのは侍女だろうけど。その雛に「ひよこ」と名付け(センスなし)可愛がっている。

そして今、いかにその雛が可愛いかを語っている。そしてよく分からない·····。
17歳とは思えない話だわ。でもバカ·····いや、出来の悪い·····いや、素直で可愛いのだ。
どうやら蝶よ花よで育てられたらしく、人を疑ったり、人の好き嫌いをしない子だ。ちょっとした意地悪されても気づかない。
だからか、誰にでも話しかける。ナタリアとかはナディアを苦手としているみたいだった。

とても羨ましくもあり、このままで純粋で居てくれたと思う。

ナディアはひよこの話で盛り上がっているが、他の側妃達はピリピリした雰囲気をかもし出している。それぞれに好きなお菓子やお茶などを嗜んでいた。

ナタリアはナディアのひよこの話が終わる気配がないため、鬱陶しくなったのか、いきなり私に話かけてきた。

「アリア様!」

いきなり大きな声で話かけてきたので、ナディアはビクッと身体を揺らした。

「ナタリア、何かしら?」

「最近、ルイス殿下が夜に後宮に足を運びになっていないようですがアリア様の元へ行かれてるのでしょうか?」

ナタリアは直球で聞いてきた。他の側妃達も気になっていたらしく、固唾を飲んでこちらを見ている。

「そうよ。」

私の返答にマリーベルとアナラーナは顔を歪ませた。他の側妃達は無表情。特にモッコロ帝国から嫁いできたユーフナリは冷たい表情でこちらを見ている。
ナタリアなんかは、悔しそうにギリっと歯ぎしりをした。
ナタリアさん、歯ぎしり聞こえましたよ。
ナディアを見たらキョトンとした顔をしている。ナディアを顔を見ると脱力感が······。

「ずっとでしょうか?」

マリーベルが聞いてきたので素直に答えた。

「そうね。週に5回は来て下さってるわ。」

私が行ってる、のではなくルイス殿下がいつも私の離宮にきて自分の宮へ連れ去ると言った方が正解ね。

「なぜいきなりそんなに·····」

心の声が言葉になってますよ、ナタリア。ナタリアはかなりショックだったのか少しの間、呆然としていたがすぐさま私を睨んできた。
それに私もちょっとムッとした。

「ナタリア、私はルイス殿下に飽きられてはいないようよ。」

私は、いつもナタリアには飽きられているとか言われているので意趣返しに嫌みを言った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ナタリアとの決戦!?から1ヶ月が経ったある日。

その日はルイス殿下は他の側妃、ナディアかマジュリナの所へ行っていて、一人で安眠を貪っていた。
夜は隣の部屋で待機しているのはレイナだ。ネネは子供がいる為に日中のみの仕事としていた。

夜中に視線を感じて息苦しくなった。

喉も乾いたかも。
そう思い、隣の部屋で待機しているレイナを呼ぼうとし目を開けたら、私を覗き込んでいるような黒い影が見えた。

「きゃっ!」

私はびっくりして思わず声を出したが、すぐに口を手で覆われた。
どういうこと!?どうやって部屋に入ってきたの!?
っていうか、ドアの前にいる警備兵はどうたのよ!!

そんなことを考えているとその影····賊は私に話かけてきた。

「騒ぐな。確認するがお前はアリア皇太子妃で間違いないか?」

私はその質問には答えなかった。
賊はそれを肯定と認識したようだった。

「悪いが死んでもらう。」

賊はそう言うなり、口を覆っていた手に力を入れ、もう片方の手をゆっくりと私の首にかけたのだった。





       後書き

今回はお盆休みで書けましたので更新します!
連休っていいですね!
ですが仕事が始まりますので、また亀の早歩きくらいに戻ると思いますが、これからも宜しくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

会うたびに、貴方が嫌いになる

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。 アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

処理中です...