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44話 ルイス殿下は陰謀を気づいてました。

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絶体絶命!!

バターン!!

勢いよくドアが開ける音がした。

もうダメ!私は捕まる!

そう思い目を瞑り相手の出方を待っていたが······何も起こらない。
私は恐る恐る目を開けた。

あれ?ドアが開いてない······。

そう、目の前のドアは開いてないのだ。

でもさっきドアが開いた音がしたはず。


「おいっ!お前!何をしている!」

「きゃっ!申し訳ございません!廊下の掃除をしていましてバケツを蹴ってしまいました。」

メイドらしき人が一生懸命に謝っている声が聞こえる。

······もしかしてドアが開いたのは廊下側の方?·····良かった······。

見つかったのではないと思ったら安心して少し涙が出た。

偶然だけれど、廊下を掃除していたメイドさんがバケツを蹴る音と、私が机の脚を蹴る音が重なったね。あっちの方が派手な音がしたに違いない。

ガイル王子がメイドに怒っている声が聞こえる。

腰を抜かしている場合じゃない!万が一こちらの部屋に来られても困る!私はヨロヨロしながら音を立てないようにグラスケースの物陰に隠れた。

その後しばらくはまた話し声が聞こえたが、内容は分からなかった。

三人が部屋を出て行く足音が聞こえ、ドアが閉まる音も確認できた。

私は念のため、もう少し潜んでいることにした。
私は潜んでいる間にどうやってルイス殿下に説明しようとか考えていた。

少し日が傾きかけた頃。

そろそろ大丈夫ね!

私はそろっとドアを開けて周りに誰も居ないか確かめてから部屋から出た。

来た道のりを走って戻りたいけれど、私は他国の皇太子妃!そこをぐっと我慢をしてかなりの速さで歩いた。
多分凄い顔で歩いていたのか、すれ違ったメイド達には驚いた顔をされちゃった。

もう少しでピューマのいる庭園に着く所まで戻ってきたときに、青い顔をしたランディが私を見つけて駆け寄ってきた。

「アリア様!ご無事で!トイレからいつまで待っても帰ってこないので心配しました!レイナ殿に確認してもらいに行ってもらったらアリア様が居ないと聞き、背筋が凍りましたよ!」

「ランディごめんなさい。」

私は素直に謝る。
あれ?どこでランディは待機をしていたのかしら?

「取り敢えずアリア様はご無事に見つかったとルイス殿下に報告しないと!」

「え?ルイス殿下に?」

驚く私にランディは説明をした。

「当たり前ではないですか!アリア様が行方不明になったのですよ!報告したに決まっているではありませんか!」

「·····そうね·····」

なんてこと!ヤバいわ!何をされるか分かったもんではないわ!

私は徐々に後退りをすると、背中にトンと行く手を阻むものがあった。
何だろうの振り向くと行く手を阻んでたのは、一番会いたくて、今は一番会いたくない人、ルイス殿下本人だった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ルイス殿下の背中に冷たいものを感じながら、部屋に皆に集まるように言った。

部屋には信頼できそうな人に集まってもらった。

ルイス殿下、イーサ、ランディ、レイナ、プリン。

「さて、行方不明になった理由と、話したい事があると皆を集めた理由を聞こうかアリア。」

ルイス殿下、笑顔だけど話す声は若干ドスが効いてます·····こわっ!

そんことより早く説明をしないとね!
私は背筋を伸ばし説明を始めた。

「ではこれから説明するわ!」

私は部屋で聞いたことを報告した。
ビートン王子が私を好きになり軟禁しようとしたが失敗したこと。私を亡きものにする予定だったこと。そしてモコッロ帝国と手を組んでリンカーヌ王国に戦争を仕掛けようと考えていること。友好の証として私を誘拐し、贈呈しようとしていること。
全部を話した。


「·····何と·····ママイヤ国が裏切りを目論んでいるとは·····」

ランディは信じられない顔をしている。

「本当に·····ララベル様はルイス殿下の御子を身籠ったばかりですのに·····」

プリンも青い顔をしている。レイナは、はてなマークの顔をしながらお菓子を一人で食べている。レイナは頭が弱いのかな····。

そんな三人を余所にルイス殿下とイーサの反応は違った。


「ルイス様、やはりモコッロ帝国は和解協定を結ぶつもりなどはなかったようですね。」

「そうだな。ママイヤ国もしっぽを出し始めたか」

「はい。」

「どうせ、アリアが居なくなったら私の第一子を産むララベルが正妃になれるとでも安易に考えていたのだろう。」

「ですね。しきりにアリア様と結婚する前にララベル様が身籠っていたらとか言ってましたし。」

こらこら、二人だけで納得せずに私達に説明して欲しいわ。

「ルイス「ところでアリア」」

私が問おうとして名前を読んだときに割り込んでくるルイス殿下。

「······。」

「さっきの説明で気になる所がある。」

「どの辺ですの?私を誘拐してモコッロ帝国に贈呈····」
「それよりもっと前」

「?。ママイヤ国とモコッロ帝国が戦争を仕掛ける····」

「もっと前」

「私を亡きも····」

「もっと前だ!」

何よ!もう!

「ビートン王子君が私を好きになり····」

「そこだ!やはりビートン殿はアリアに気があるんだな!許せん!」

え?そこ??
普通は気にしないといけないところは違うんじゃないの?

ルイス殿下は「絶対に許さない!」とか言って怒っている。

ランディもイーサも冷ややかな目でルイス殿下を見ていた。
因みにレイナはまだ一人でボリボリとクッキーを頬張っていた。

「ルイス様は置いてといて」

「おい!イーサどういう意味だ?」

「一応ここにいる人には言って置きましょう····だが、これから先は政治も絡む話しだから侍女殿は席を外して欲しい。」

イーサがプリンとレイナに向かって言う。プリンは頷きすぐに立ち上がったが、レイナは離れがたそうにお菓子を見つめていた。

私はふうとため息をついた。
「レイナ、そこにあるお菓子は持って行って食べていいわよ。」

私がそういうと目を輝かせ

「ありがとうございます!」

とお礼を言ってお菓子の篭を大事そうに持って部屋からさっさと出て行った。プリンは呆気に取られ呆然としていたがすぐに我に返りレイナの後を追うように部屋から出ていった。

イーサは二人が出て行ったのを確認してから話しを始めた。

「実は4ヶ月くらい前からモコッロ帝国がキナ臭い動きをしていると情報が入りました。」

「キナ臭い動き?」

「はい。近隣国に密書を送っていると。」

あっ、ガイル王子が言っていた!

「各国に偵察をさせている者からの情報です。」

そんな情報を仕入れるなんてかなり内部に入り込んでいる者なのね·····。

「ルイス様の側妃たちの国 マターナルヤ国、 ドゴランド王国、ザンビア国、ママイヤ国に密書を送っているのが確認されています。そして小国のサマヌーン国、リビア国、ナマミル国にも確認されています。」

「え?サマヌーン国にも!?」

びっくりだわ!

「はい。サマヌーン国とドゴランド国、リビア国、ナマミル国はすぐに断りの返事をしているのも確認ができております。」

「そうなの。」

サマヌーン国が断りの返事をしているのを聞いて安心したわ。

「小国は争いをしてもそこまでの利点はありません。モコッロ帝国に吸収されるのが分かっているのでしょう。リビア国とナマミル国は断ったので何かあったら助けて欲しいと親書がきた。サマヌーン国はランクス殿からそのことの知らせと、アリア様がリンカーヌ王国にいる限りはサマヌーン国は裏切らないとの親書が届いたのです。」

ランクス······。

「側妃達の祖国で信頼に値するのはドゴランド国のみです。他の国は返事を保留にしていると報告を受けております。」

「······ということは····」

ランディはゴクリと喉を鳴らしイーサに聞く。
だが応えたのはルイス殿下だった。

「 マターナルヤ国、ザンビア国、そしてこの国ママイヤ国はリンカーヌ王国を裏切る可能性があるということだ。」

「「·····」」
私とランディはその事実に言葉が出ない。
三つの国にうち、ママイヤ国は裏切ると言っていた。

「今回の訪問は御披露目の旅でもあるが、国の動向を探る意味もあった。」

そうだったの·····

「マターナルヤ国、ザンビア国は今のところ気になる動向がなかったが、ママイヤ国は裏切るのがアリアの言葉ではっきりした。イーサ、諜報部員を増やして内部をもっと固めろ。」

「御意。」

イーサは右手を胸に当て、座ったままでお辞儀をした。

「リンカーヌ国に帰ったら、ララベルは軟禁だな。」

「え?何で?ララベルは関係ないではないですか!」

「ララベルの祖国が裏切るのだ、その王族の血を引いているララベルは密通している可能性がある。問題を起こす前に軟禁する。お腹の子の堕胎も考えなければならない。」

「そ、そんな!」

堕胎だなんて!せっかく出来た赤ちゃんなのに!

「アリア、ママイヤ国が本当に裏切ればの話しだ。リンカーヌ王国を裏切れば堕胎、もくは産まれていても極刑にはなるであろう。」

そんなの酷すぎる!大人の勝手な行動なのに。
「子供には関係ないのに·····」

「アリア、それが王族に産まれた定めだ。ザビアス国王も言っていたんだろ?」

「·····。」

「取り敢えず帰ってから対処しなければな。ザビアス国王はアリアを誘拐しようとしている。ランディ、護衛の強化を頼む。」

「御意!」

「アリア、ここにいる間は護衛を増やす。いいね。」

ルイス殿下は有無を言わせない威圧感を出している。

仕事·····皇太子モードのルイス殿下ってこんな感じなんだ。
いつもうざいし、絶倫だし、私を追いかけ回すし、下半身はだらしないし、あまり良いところ見たことないけれど、今のルイス殿下は皇太子としての判断や指示、そして残酷な面もあったが、それを見て私は初めて格好いいと思ってしまった。



滞在予定は五日間だったが、ルイス殿下が国から至急戻ってくるようにと手紙が届いたと言って一日減らし四日間になった。本当の手紙の内容はレイラン王妃よりママイヤ国のお土産のことについての事だった。
残り二日間は警戒して私の護衛には五人体制になっていたので、ビートン王子が近づいてきてもランディ達がガードしてくれて無事に誘拐されず過ごすことができ、ザビアス国王やガイル王子、ビートン王子に見送られながらママイヤ国を出発した。

馬車が動きだし、後ろの小窓から覗くとビートン王子の涙組む目と、ザビアス国王、ガイル王子の悔しそうな顔が見えた。

ざまあみやがれですわ!

問題は山積みだけれど、それはルイス殿下達に任せればいいし!
私は気分が良いまま帰路についた。


          ~~余談~~

「そう言えばランディは、私がトイレに行っていたときには付いてきていわよね?」

「はい。少し離れた場所でアリア様をお待ちしていたのですが、ママイヤ国のメイド達に捕まって色々と聞かれてまして····なかなか離してくれなくてアリア様のことを気付くのが遅くなりました。申し訳ございません!」

ランディは頭を下げてた。

「何を聞かれたの?」
「······。」
私の問いにランディは顔をしかめて何も応えない。

私はもう一度聞いた。

「ランディ、何を聞かれたの?」

ランディは言いにくそうに応えた。

「よ、夜のお誘いとかです。」

「······。」

絶句。ランディは美青年だからリンカーヌ王国でもモテるけどね。メイドが勤務中に夜のお誘いをし口説いてくるとは·····。
て、言うか真面目に答えた過ぎよ!ランディ!

私の反応を見て、ランディはヤバいと思ったのか焦ったように言い訳をした。

「勿論断りましたよ!四人で楽しみませんかとか良かったら恋人にしてくださいとか言ってきたので、とんでもないと!」

「よ、四人!?」

閨を四人で共にする!?

私は信じられない顔でランディを見つめた。
そしてママイヤ国の女性の積極さに開いた口が塞がらなかった。
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