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五章、眠れる火竜と獅子王の剣
91、殿下、オークション会場にいらっしゃいましたね
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オークション会場から出た所で、ネコ族のワゥランとその従者たちが挨拶をしてきた。
「人間の王国のご一行様ですね。もしよければ、噂の王兄殿下にご挨拶申し上げたいのですが、面会の御申入れは可能でしょうか?」
ワゥランはネイフェンによく似ていて、僕はそれだけで無条件に好きになってしまいそうだった。
「殿下にお話ししてみます」
「ありがとうございます、できるだけ早めにお会いしたいとお伝えください」
声も似てるし、ちょっとおっとりした喋り方も人が好さそうだ。
ところで王兄殿下のどんな噂をきいているんだろう――そこはちょっと気になったのだけれど。
「おかえり。都市はどうだった? ……元気がないな、嫌な出来事でもあったか」
宿に帰ると、「外出なんてしていないが何か?」といった顔のノウファムとモイセスがいた。
「オークションで金がなくてさあ~!」
ロザニイルが僕を抱きしめて「辛かったよなー!」と嘆いている。辛かったよ! 僕は悔しさを溢れさせてふるふると頷いた。
「坊ちゃん、お土産を渡すのでは?」
ネイフェンが荷物を渡してくれるので、僕は気を取り直して胃薬と睡眠導入剤を贈った。
「なんと胃を心配してくださるとは!?」
モイセスは感動した様子で胃薬を受け取り、早速飲んでいる。ノウファムはというと、睡眠導入剤をしげしげと見つめて包み紙をひっぱったりしている。なんだそのリアクションは。
「贈り物は嬉しいが、お前を抱っこして寝るほうがいい」
「そ、そうですか」
僕はふぁーっと赤くなった。
……真面目な顔で言われると、照れるではないか!
「あと、お茶の葉っぱもサービスしてもらったんだった……あったかくて気持ちの落ち着くお茶と、元気が出るお茶だそうです」
お茶をセットで渡して、忘れないうちにワゥランからのお願いを伝えると、ノウファムはとてもあっさりと了承した。
「ありがとうエーテル。では、俺は今から会いにいってこよう」
「殿下!?」
モイセスが早速胃を押さえている。
「できるだけ早めに、なのだろう? 軽く挨拶して戻る」
「さ、さっき戻ったばかりですのに――、あっ……、と」
言いかけたモイセスがハッとした様子で自分の口を塞いでいる。
「殿下、オークション会場にいらっしゃいましたね」
僕が半眼で「知ってますよ」と言ってやると、モイセスは決まり悪そうな顔をした。
ノウファムはそんなモイセスと僕を順に見比べて、肩をすくめた。
「珍しい品物が見られるというからちょっと見学しただけだ」
翻す外套の端をつまむと、ノウファムは片眉をあげた。
「僕もワゥラン殿へのご挨拶にお供したいです、殿下?」
おねだりするように言えば、ノウファムは青い隻眼を瞬かせて少し考え込むような顔をした。
「敬語は譲るとして……お兄様、だ」
「オニイサマーア!」
「ロザニイルには求めてない」
「知ってる!」
ロザニイルは僕を引っ張り寄せて、「オレはこのあと対抗薬の調合を試すから、気を付けて行って来いよ!」と囁いた。
「うん。行ってくるね」
「あんまり遅かったら先に温泉楽しんじゃうからな~!」
「先に楽しんでも大丈夫だよ」
ノウファムを見れば、手を差し出してくれる。
「僕も一緒に参ります、お兄様!」
一緒に連れて行ってくれるのだ――僕はニコニコと笑って、大きな手に自分の手を重ねたのだった。
「人間の王国のご一行様ですね。もしよければ、噂の王兄殿下にご挨拶申し上げたいのですが、面会の御申入れは可能でしょうか?」
ワゥランはネイフェンによく似ていて、僕はそれだけで無条件に好きになってしまいそうだった。
「殿下にお話ししてみます」
「ありがとうございます、できるだけ早めにお会いしたいとお伝えください」
声も似てるし、ちょっとおっとりした喋り方も人が好さそうだ。
ところで王兄殿下のどんな噂をきいているんだろう――そこはちょっと気になったのだけれど。
「おかえり。都市はどうだった? ……元気がないな、嫌な出来事でもあったか」
宿に帰ると、「外出なんてしていないが何か?」といった顔のノウファムとモイセスがいた。
「オークションで金がなくてさあ~!」
ロザニイルが僕を抱きしめて「辛かったよなー!」と嘆いている。辛かったよ! 僕は悔しさを溢れさせてふるふると頷いた。
「坊ちゃん、お土産を渡すのでは?」
ネイフェンが荷物を渡してくれるので、僕は気を取り直して胃薬と睡眠導入剤を贈った。
「なんと胃を心配してくださるとは!?」
モイセスは感動した様子で胃薬を受け取り、早速飲んでいる。ノウファムはというと、睡眠導入剤をしげしげと見つめて包み紙をひっぱったりしている。なんだそのリアクションは。
「贈り物は嬉しいが、お前を抱っこして寝るほうがいい」
「そ、そうですか」
僕はふぁーっと赤くなった。
……真面目な顔で言われると、照れるではないか!
「あと、お茶の葉っぱもサービスしてもらったんだった……あったかくて気持ちの落ち着くお茶と、元気が出るお茶だそうです」
お茶をセットで渡して、忘れないうちにワゥランからのお願いを伝えると、ノウファムはとてもあっさりと了承した。
「ありがとうエーテル。では、俺は今から会いにいってこよう」
「殿下!?」
モイセスが早速胃を押さえている。
「できるだけ早めに、なのだろう? 軽く挨拶して戻る」
「さ、さっき戻ったばかりですのに――、あっ……、と」
言いかけたモイセスがハッとした様子で自分の口を塞いでいる。
「殿下、オークション会場にいらっしゃいましたね」
僕が半眼で「知ってますよ」と言ってやると、モイセスは決まり悪そうな顔をした。
ノウファムはそんなモイセスと僕を順に見比べて、肩をすくめた。
「珍しい品物が見られるというからちょっと見学しただけだ」
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「知ってる!」
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「先に楽しんでも大丈夫だよ」
ノウファムを見れば、手を差し出してくれる。
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