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第二話 卑劣の剣 前田孝伊知郎

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 道なき道を進むのは旅装束をした侍と村人と思われるふたり連れであった
 男の名は日影兵衛、女の名はりんといった。りんの姿は桃色の小袖の裾を細紐でたくし上げ、足袋に草履、管笠すげがさをかぶり、杖をついている、普通の旅装束である。振り分け荷物と風呂敷も背負っている。少し様子がおかしいと思えるのは男が背負った背負子しょいこの中身である。十数本の刀のつかが頭を出していたのだ。
 その男が先に歩き、女は後をついていく。ふたりの間には会話が無かったと言うよりは、りんが日影兵衛に話しかけようとしても、無視するように日影兵衛は先に進んでしまうのである。
 しかし思いもよらない事に、日影兵衛はさり気なくか、りんの歩調に合わせる様に歩いていた。普段は決して他人を構わない男なのにだ。
 そのふたりが歩みを進めると、とうとう道が無くなってしまった。
 もう少し行けば平塚宿である。
 日影兵衛はまた手頃な石を見つけると、座り込んで煙管きせるをふかし始めた。何事か考えているようである。
 りんは荷物から風呂敷でこさえた袋を取り出していた。
 「これを背負子の刀にかふせては如何いかがでしようか」と言うと、日影兵衛ににらまれた。
 「出過ぎた事を申し上げてすみません」とりんが慌てて謝ると、意外な事に「休むたびに何やらしていたのはそれを作るためか。ならばそれを背負子に被せろ」と指図さしずする。夜は火でも起こさなければ真っ暗闇であるので、休みを取るたびにつくろっていたのだ。
 そしてりんの格好を見ると「ここを出て平塚宿に寄る。二、三日は止まるつもりだ」と伝えた。
 りんの姿は薄汚れていた。旅をするなら当たり前だが、獣道のような場所を歩いてきたのでかなり汚れている。
 しかし他人を気遣う様な事などしない日影兵衛である。何を考えているのか、りんにはわからなかった。
 
 ふたりは東海道に出て平塚宿へと向かう。りんの作った風呂敷包みのお陰で日影兵衛の怪しさはそれほど目立たなくなっていた。まあ、侍と村女の二人旅ということ自体変だと思えば変なのだが。
 平塚宿に入ると、多くの留女とめおんな飯盛女めしもりおんなが客引きをしており、日影兵衛の方へも集まってくる。
 日影兵衛はそれらを無視して辺りを見回すと、一軒の旅籠はたごに目をやりそこへと入っていった。慌てて後を追うりん。日影兵衛は何やら旅籠の店主らしき男と交渉すると、草鞋と足袋を抜き足を洗う。りんもそれを真似したが、このような宿場町に来るのも初めてなので日影兵衛の真似をするしかない。
 ふたりは二階の部屋に連れられて行くと、ようやく旅装束を解いた。りんは思わず「あたた」と言ってしまう。旅慣れていない上にこんなに歩いたのも初めてであったので、あちこちが痛くてしょうがないのであろう。
 先に楽な格好をした日影兵衛がりんに声をかけた。
 「おい女、巾着きんちゃくの様な物を持っているか」
 いきなりそう言われて慌ててりんは荷物をあさり、「これでよろしいでしょうか」と、小さめの巾着を日影兵衛に渡した。日影兵衛はそれを受け取ると、自分の巾着から金を無造作にりんの巾着にいれて返した。
 「あの、このお金は」と問いかけるりんに「いちいち金を渡すのは面倒くさい。それと女に必要なものはそれで買え」と、面倒くさそうに答えた。
 「あの、よろしいので」とりんが問いかけても何も言わない。
 りんが旅装束を取り去ると、今度は一枚の札を放り投げてきた。慌てて拾うりん。それは宿でもらえる湯屋の割引券である。
 「これで湯屋にでもいけ」
 何故日影兵衛がりんの面倒を見るのか、りんにはさっぱり分からない。兵衛兵衛はそこまで言うと、部屋の窓から外を眺め始めた。
 りんは自分の身体の匂いを嗅ぎ、慌てるように部屋を出て行く。
 りんが湯屋から戻ると、日影兵衛はまだ窓から外を眺めていた。
 「日影様は湯屋に行かれないのですか」りんがそう言うと「後でな」という簡潔な答えを返してきた。
 夕飯時になると、食事が出て来た。因みに大抵の旅籠は台所で食べるらしい。この旅籠も他と同じように朝食と夕飯が出る。出て来た料理はご飯、汁、香の物の他に、皿に煮魚、平椀に野菜類の煮物でであった。りんはそれを見て驚いた。りんはそんな豪華な食事をしたことが無かった。しかも白米など口にした事もない。
 「なんだ。食べないのか」と日影兵衛に言われて慌てて「いただきます」と言い、ひとつひとつ味わって食べた。
 食事が終わって部屋に戻ると「けしてひとりで出歩くな」と日影兵衛に念を押された。言われなくても知らない町をひとりで出歩くのは少し怖かったのでうんうんと頷く。
 「俺は湯屋に行ってくる」と言うと何故か刀の大小を腰に刺し出かけて行った。
 りんはま窓の外を眺めたり、日影兵衛の擦り切れた旅装束を作ろったりして時間をつぶす。
 そうこうするうちに日影兵衛が帰ってきた。
 「布団をしけ。今日はもう寝る」と言われるとりんはその準備をした。しかしある事に気が付いてしまった。男性と同じ部屋で寝ることか初めてだったのである。一緒に寝たのは弟の日吉丸くらいであった。
 日影兵衛はそんな事も気にせずにさっさと寝てしまった。りんは一晩中どきどきして眠る事ができなかった。
 翌朝、そんなりんの顔を見て日影兵衛は不思議そうな顔をしながら「朝飯の時間だ」と言って台所に向かう。出て来た料理はご飯、刻み大根の汁物、かれいの焼き物、角大根というものだった。朝からこんなに贅沢なものを食べた事がない。日影兵衛に怪訝けげんな顔をされると慌てるように箸をつけた。
 ふたりはそんなにやることもなく午前中はまったりと過ごしていた。りんは夜眠れなかったのでうとうとしている。昼近くになると、そんなりんの腹の虫が盛大に鳴った。
 今まで旅中てろくな食事をしていなかったせいかもしれない。それともりんにとっては豪勢な朝飯が食欲を刺激したのかもしれない。窓の外を見ていた日影兵衛は振り替えった。そしてまたりんの腹がなる。
 「ここまで聞こえたぞ。これからは朝飯夕飯の二食になる。少しは我慢しろ」と言われたところでまた腹の虫がなる。りんは真っ赤になってしまった。
 「うるさくてかなわん。出るぞ」と言われるままに、ふたりは外へ出ていった。はまた日影兵衛は腰に大小の刀をぶら下げていた。
 茶屋につくと「甘い団子と饅頭まんじゅうを一人前頼む」と勝手に注文する。食事が出てくると、店のものに支払いを済ませた。自分はお茶をすすり、煙管きせるをふかしている。りんはそんなに甘いものを食べた事がないので、その味を忘れないようにゆっくり味わって食べている。
 そこでいきなり日影兵衛が立ち上がると「食べ終えたら直ぐに旅籠に帰れ。一歩も外に出るな」と言って歩いて行ってしまった。
 日影兵衛は辺りを気にすることもなく、少しさびれた寺の境内に入っていく。そして境内の片側に立った。
 そのあとにかなり背がく幾らか肥えた男がついてきて、日影兵衛の反対側に立つ。
 「日影兵衛だな。わし神藤しんとう一刀流の前田主水まえだもんどという。一手、勝負を願いたい」と低い声で行った。
 しかし日影兵衛は「俺が東海道に出てから、平塚までついてきたのは知っている。だが俺はやる気はない。お前の刀は俺には長すぎる」と答える。
 「刀だと。そんなものは関係ない。儂は貴様を倒して神藤一刀流を世間に鳴り響かさせ、その後を継ぐつもりなのだ」前田主水はそう言うとすらりと刀を抜く。
 「俺は誰も彼も無差別に切るような事はせん」
 「お前が江戸から立ち去ったと聞いて慌てて追って来たが、まだこんなところでうろうろしているとは。天は儂を味方してくれたようだ」と言って前田主水は剣をかまえる。ふたりの会話はまるで噛み合ってあいない。
 しかし、日影兵衛は何故江戸から出てきたのか。
 「仕方がない」そう言うと、今までとは違って刀の柄に手をやる。前田主水は自分の間合いに日影兵衛が入ると、気合一閃、日影兵衛に襲いかかった。
 しかし日影兵衛は身を低くしながら斬撃を避けると、前田主水の鳩尾みぞおちに刀のつかを叩き込み、そのまま走り抜けて振り替えった。前田主水は倒れながらうめき声を上げている。前田主水ごときにあの技を使うまでもないと思ったのか、殺す必要がないと考えたのか。
 強烈な一撃を食らって前田主水はその場に四つん這いになり、動けなくなっていた。
 日影兵衛はそれには目をやらずに、境内に続く階段の方を見た。そこに日影兵衛と同じ様な背格好をした男が現れる。
 「そこのお前もやる気か。俺はもう飽き飽きだ」
 そう言うと、相手はもう一人を引きずり出した。なんとりんを後ろ手に縛り、猿ぐつわを噛まして連れていたのだ。
 「これで少しはやる気になったか。俺は前田孝伊知郎まえだこういちろう、神藤一刀流の免許皆伝である。そこのたわけと一緒にしては困る」その男は遥かに自分の方が格上であるかの様に言い放った。
 「お前はこいつの身内か」と日影兵衛は前田主水を指して訪ねた。
 「そいつは俺の甥だ。同じ田中と名乗られて困っものだ。俺の名前を取れば強くなった気でもするのだろう。実力も無いのに馬鹿な事をする奴だ」そう言って前田主水の方へつばを吐く。
 「目的はそいつと同じか。この下衆げすが。女を人質に取らんと戦えぬのか。俺とその女は何の関係もない。人質に取ろうが殺そうが無意味だ」と、日影兵衛は言い放った。そして両腕をだらりと下げる。日影兵衛のその言葉を聞いてりんは青ざめていた。前に言われたとおり、役立たずならば斬り捨てると言われたのを思い出したのだ。
 日影兵衛のやる気のなさそうなその姿を見て「この糞女くそおんなが」といい、前田孝伊知郎はいきなりりんを突き飛ばすと刀を抜きながら「へあっ」と気合をいれて日影兵衛に斬りかかった。
 しかし前田孝伊知郎の斬撃が日影兵衛に届く前に胴を薙ぎ払われて真っ二つになると、その場に崩れ落ちた。またも日影兵衛が動いた形跡も見られなかった。いつ刀を鞘ばしらせたのかも目に映らなかったのに、左手に刀の抜き身を下げている。彼は自分の刀を持ち上げ「まだ使えそうだ」と言い、懐から懐紙かいしを取り出すと、刀を綺麗に拭い、鞘におさめた。
 そしていつもの様に前田孝伊知郎の刀を拾い上げ、見定めると鞘を奪って手にする。
 日影兵衛はりんに近づくと猿ぐつわと縄を解いてやった。りんは酷く動揺して顔が青を通り越して、蒼白になっていた。目の前で人が切り殺されて、しかも真っ二つになりはらわたをこぼれだしているのだ。村里では野盗に襲われて殺された者や、片腕を失った者の手当てなどは出来ていたのだが。りんは皆に止められて、裏山の惨劇を目にしていなかった。りんは思わず口を手で覆ってしまう。
 「吐きそうか。無理をするな」日影兵衛がそう言うとりんは口を抑えながら首を振った。
 「旅籠まで見送るべきだったな。おりん、怪我はないか」と日影兵衛は彼なりに心配する。
 りんは初めて名前を呼ばれた上に心配して貰えたので、やや顔色が戻り、頷いた。
 日影兵衛は他人に手を貸したり、心配する様な男では無かったはずであったのに。
 そこへいつの間にか立ち上がっていた前田主水が「日影兵衛殿、儂を弟子にして下さらんか。その剣技、実に素晴らしい」などと言い始める。
 日影兵衛はそれを無視してりんに手を貸し起きあがさせると、さっさと境内を降りる階段に向かって行った。手を握られたりんは死体を見た時のとは違う何かに心を揺さぶられている。
 「あれはいいのか。俺が斬ったのだぞ」
 「あんなろくでなしは知らん」と言って前田主水はてふたりについていく。
 残されたのは、胴を真っ二つに切り裂かれた前田孝伊知郎だけであった。
 旅籠に着き、部屋に戻ると「おりん、巻き込んで迷惑をかけたな」と彼は一言つぶいた。日影兵衛は幾らか心配そうな顔をしていた。とても信じられない事である。
 りんはとうとう顔を赤くして「そ、そんなことはありません」となんとか言葉を返した。
 「おりん、少し横になって休むがいい」などと言って今度はりんの事を見ながら黙ってしまった。
 りんはそう言われてもゆっくり休むことができないでいた。胸がどきどきしている。
 その晩、りんはまたまんじりともせずに朝まで寝付けなかった。一度に色々な事が起きすぎたのだ。無理もない。
 翌朝、日影兵衛が起き上がりりんの方を向くと「女、また眠れなかったのか。目の下にくまができているぞ」といつの間にか元の日影兵衛に戻って「女」と呼ぶ。りんははあれは夢であったのか、聞き間違えかとがっくりとした。前日の夕飯と今朝の食事は何を食べたかも思い出せなくなってしまっていた。
 その日、日影兵衛は窓の外を見ることもなく煙管を吹かしていた。そして緊張が解けたらしく眠りこけてしまったりんをそれとなく眺めている。日影兵衛とりんはそんな一日を過ごしていた。
 翌日の早朝、ふたりは旅装束をして旅籠を出ると前田主水が待ち構えていた。日影兵衛はそれを無視して平塚の宿場町を出ていこうとする。りんは日影兵衛と前田主水をかわるがわるに視線をやりながら日影兵衛の後をついていく。
 宿場町を出ても五月蝿うるさ懇願こんがんし続ける前田主水を無視して、彼は歩み続けた。りんも前田主水を見やるのをやめて彼の後を追う。しかし前田主水はまだ頼み込みながら、騒がしく付きまとって離れない。
 日影兵衛はとうとう我慢できなくなり、振り向くと「うるさい。黙れ」と言い放った。その顔はいつもの様に何の表情を見せていなかった。
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