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【23】先生の家を出る理由
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「ん……ふっ」
自分で思っていたより大分淫らな声が出た。先生は気にする様子もなく次は舌を鎖骨に滑らせた。
「あん、あっ」
先生が触れる場所が全部性感帯になったようだ。抑えたいのに声が出てしまう。
「本当にいいの? このまま続けても……。勢いでこんなおっさんとセックスする気?」
先生は私の耳元でそう囁きながら、首筋をべろりと舐め上げた。
そんなこと言われたって――。
だって、直くんは私じゃない誰かと一緒にいることを選んでるんだもの。
直くんしか見えていなかった自分が、やっとほかに目を向けられるようになったのは先生のおかげなのに……。
「まだ彼のこと好きでしょ。最後でいいから行ってあげて。それでもだめならここにおいで。僕はいつでも、君の望むようにしてあげるから。最初は好きな人としたほうがいいよ。絶対に」
「でも……直くんは彼女いるし……」
「そんなのわからないだろ。はっきり聞いてみなきゃ。わからないのに逃げてどうするんだ」
「でも……」
先生は私の煮え切らない態度を見て脱力した。
「君の表情を見たら、どう思っているのかすぐわかる」
今にも泣きだしそうな私の顔を先生は微笑みながら見つめていた。
服を着て帰り支度をした。
壁一面の本棚を見上げていたら、先生が隣に立った。
「本ばっかりですね。難しそうな……」
「これが僕の仕事になのでね。読みやすいのもありますよ。僕現代文学の方が好きなんですよね」
「古典の先生なのに?」
「他の学年では現国も教えてますよ」
そうなんだ。知らなかった。思えば私は先生のことを何も知らないのだ。
気が付けば先生はおすすめの本をいくつかピックアップしてくれていて、読みどころなども聞かせてくれていた。
しかし、先生の好きなものを熱弁する姿はとても可愛らしくていつまでも見ていたい気分にさせられた。
「…………っくしゅんっ」
さっきまでずっと下着姿でいて冷えたのかくしゃみが出た。
「大丈夫ですか?」
「はい――」
先生の顔が近づいてきて唇がちゅっと当たる。驚いて目を開けていたら先生は笑っていた。
「もうっ、私と一緒にいてくれないのにキスなんてしないで下さい……」
「違うよ。我慢して送り出してるのに。僕だって好きでもない人とはこんなことできないので」
先生の言葉がいちいちずるくて、胸のざわめきがずっとおさまらない。
「また来たくなったらおいで。でもその時はもう君を逃がすつもりないから。覚悟が決まったら、来て」
私が玄関でドアノブを開ける瞬間、先生はそう言った。
自分で思っていたより大分淫らな声が出た。先生は気にする様子もなく次は舌を鎖骨に滑らせた。
「あん、あっ」
先生が触れる場所が全部性感帯になったようだ。抑えたいのに声が出てしまう。
「本当にいいの? このまま続けても……。勢いでこんなおっさんとセックスする気?」
先生は私の耳元でそう囁きながら、首筋をべろりと舐め上げた。
そんなこと言われたって――。
だって、直くんは私じゃない誰かと一緒にいることを選んでるんだもの。
直くんしか見えていなかった自分が、やっとほかに目を向けられるようになったのは先生のおかげなのに……。
「まだ彼のこと好きでしょ。最後でいいから行ってあげて。それでもだめならここにおいで。僕はいつでも、君の望むようにしてあげるから。最初は好きな人としたほうがいいよ。絶対に」
「でも……直くんは彼女いるし……」
「そんなのわからないだろ。はっきり聞いてみなきゃ。わからないのに逃げてどうするんだ」
「でも……」
先生は私の煮え切らない態度を見て脱力した。
「君の表情を見たら、どう思っているのかすぐわかる」
今にも泣きだしそうな私の顔を先生は微笑みながら見つめていた。
服を着て帰り支度をした。
壁一面の本棚を見上げていたら、先生が隣に立った。
「本ばっかりですね。難しそうな……」
「これが僕の仕事になのでね。読みやすいのもありますよ。僕現代文学の方が好きなんですよね」
「古典の先生なのに?」
「他の学年では現国も教えてますよ」
そうなんだ。知らなかった。思えば私は先生のことを何も知らないのだ。
気が付けば先生はおすすめの本をいくつかピックアップしてくれていて、読みどころなども聞かせてくれていた。
しかし、先生の好きなものを熱弁する姿はとても可愛らしくていつまでも見ていたい気分にさせられた。
「…………っくしゅんっ」
さっきまでずっと下着姿でいて冷えたのかくしゃみが出た。
「大丈夫ですか?」
「はい――」
先生の顔が近づいてきて唇がちゅっと当たる。驚いて目を開けていたら先生は笑っていた。
「もうっ、私と一緒にいてくれないのにキスなんてしないで下さい……」
「違うよ。我慢して送り出してるのに。僕だって好きでもない人とはこんなことできないので」
先生の言葉がいちいちずるくて、胸のざわめきがずっとおさまらない。
「また来たくなったらおいで。でもその時はもう君を逃がすつもりないから。覚悟が決まったら、来て」
私が玄関でドアノブを開ける瞬間、先生はそう言った。
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