【R18】溺愛ハッピーエンド

【12】我慢できない

近くの公園に立ち寄り、藤原先生と並んでベンチに腰掛けた。
日が暮れてきて、もう遊んでいる子供たちもいない。

「はい。クリーニング代」
「すみません……ありがとうございます……」

結局先生に押し切られて千円札と五百円玉を手のひらに置かれた。
そして結局、コンビニで買ってもらったコーラを先生の前で飲んでいた。

こんな場所に藤原先生と二人でいるなんてすごくおかしい気がするけど、コーラの炭酸が弾けてほろ甘くておいしい。
外で見る先生は学校での印象と変わる。知らない人みたい。

「早く帰らないとね。もう結構暗い」

先生が腰を摩りながら立ち上がって言った。

「今家に母はいませんよ。今日は遅くまで仕事なので。父は単身赴任です」
「…………そうかぁ。それでも、家には帰らないと」

家の人がいないって、困らせるつもりで言ったんじゃないのにな。先生が返事に困っている気がする。
先生が立ち上がっていて私だけが座っている。
早くしなきゃとひたすらコーラを飲んでいると、先生はまた私の隣に座った。

「焦らせてごめんね。ゆっくり飲んで」

あ、やっぱりいつもの藤原先生。
それからはゆっくり会話が始まった。

「鈴木さんは、お母さんのお仕事もあって、寝不足だったの？」
「あ、それは……」
「考えてみれば、みんながみんな同じ生活しているわけではないし、君たちの年代だと寝不足の原因が不可抗力だったりもするよね」

それは――……。
恥ずかしさで顔が赤くなる。でも辺りが暗くて先生から見えはしないだろう。
私が寝不足なのは、直くんといけないことしてるだけで……。でもそんなの今言えない。

「いろんな理由があるはずなのに。安易に説教してしまってごめんね」

私に向き合って謝る先生の顔も、学校で見るほどはっきりとは見えない。
月明りと街灯とわずかに残る夕暮れの色の中で、私は飲み干したペットボトルを握りしめながら先生に抱き着いた。