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制作ノート

設定解説(という名の言い訳)

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SF小説を書くのは実は初めてではありません。ここアルファポリスで松本ダリアの他に、星名雪子という名前で純文学とエッセイを中心に色々なジャンルの執筆活動を行っていますが、そちらで「星になった犬」というSF小説を書いたことがあります。しかし、それは「生物史上初めて宇宙飛行を成し遂げたロシアの犬」を描いた作品。つまり事実に基づいた小説です。現実のお話なので世界観を考える必要が殆どなかったのです。

この「アンドロイドの歪な恋」シリーズは一から設定を考える必要があり、私にとってはかなりの挑戦でした。書き終えて感じたのは「勢いでこんなエピソード書いちゃったけど、根拠は?!どうやって説明する?!」ということが多すぎたことです・笑 もっと入念な準備が必要でした。読んでくださった方の中にもそのように感じた方がかなりいらっしゃるかもしれません。

なので、今更ですが各エピソードや語句などの解説……というか言い訳(笑)を書いていきたいと思います。


【イオが金髪&青い目なのはコアの影響だが、他アンドロイドのコアは日本人なのにどうして髪や目の色が独特なのか】
登場人物紹介で少し触れましたが、アンドロイドの見た目は開発者が自由にカスタマイズできます。ハレーの髪がオレンジ色なのは彗、ベネラの髪が赤いのは暁子、北翔の髪が白いのは明彦の好みということです。

【人間である志希がハレーとベネラに似てるのは何故?】
全てコアの所為です(笑)コアというのは人間の生殖機能以外の全ての役割を果たします。(説明しにくいこともコアの所為にしとけばとりあえず話は繋がる的な小説を書く身としてはあまりやってはいけない手法な感じですが・笑)

コアは時が経つにつれ人工知能や外見データと呼応し、そのアンドロイドに馴染んでいきます。つまりそのアンドロイドの個体データでコア提供者の情報が上書きされていく感じです。(提供者のデータは完全には消えません)そして、やがてコアの中で、人間でいうとDNA的なものが生成されます。それが生殖機能に繋がって、赤ちゃんに受け継がれるという感じです。なので、コアの利用の仕方次第ではイオと雄飛の子供アンドロイドも将来的には二人に似た個体を作ることができるかもしれません。

【シリウスはコアだけが成長するのか?外見は?他のコアやアンドロイドは年を取らないのか?】
成長に伴って外見を作り変える必要があります。他のコアやアンドロイドは今のところ年を取りませんが、研究が進めば将来的には年を取ることも可能になるでしょう。イオは雄飛と共に、ベネラとハレーは志希と共に、北翔は彗と共に、成長していけるはずです。

【彗と北翔の子供は人間?】
本編では出産まで描けませんでしたが、二人の子供は人間です。水端教授がさぞかし喜んでいることでしょう……

【北翔が幽体離脱したのは何故?】
偶然です(笑)彗を救う為には意味があったことなのでしょう。

【北翔の記憶を人工的に蘇らせる方法はなかったのか?】
ありません。少なくとも現段階では。プロジェクトのアンドロイドは研究と開発を同時に行っているため、不明な点がまだまだ沢山あります。研究が進めば方法が見つかるかもしれませんが、北翔の記憶を意図的に蘇らせることは不可能です。北翔が自力で思い出すのを待つしかなかったのです。

【北翔は身売りをしていたが、妊娠しなかったのか?】
親切な女の子に避妊の大切さを教わったので気をつけていました。北翔自身はもちろん燦と同様に、北翔の体内に生殖機能が備わっているということをその子は知りませんでした。が、あまりにも人間らしい北翔のために万が一のことがあってはいけないと思い、教えてあげたという訳です。(妊娠だけではなく病気を防ぐためでもあった)

因みに……彗にカミングアウトした時に北翔が「女の子ともやった」と言っていましたが、避妊の大切さを教えたのはその女の子です。彼女は性自認は女の子ですが、性の対象もまた女の子でした。燦と同様に北翔に惹かれ、数日間行動を共にしました。北翔はその特殊な見た目と人間らしさによって、人々の目だけではなく心も惹きつけたのです。機会があれば北翔を主人公に身売りした時の話を書いてみようかなとも思っています。

【そもそも、何故勢いだけでストーリーを書いてしまうのか?】
設定の話からは少し逸れますが、漫画や小説の作家さんが「登場人物が勝手に動く」という話をすることがあります。プロの作家さんと同じように考えるのは申し訳なくてちょっと気が引けるのですが、小説を書いている身として証言すると、それは本当の話です。もちろんストーリーは考えて書いていますが、時には人物が勝手に動き回って全く予期していなかった話になることもあります。

今作でもその現象は結構ありました。特にハレー×ベネラ、彗(黒)×北翔の二組は勝手に話が進んでいってしまい当初考えていたものとは微妙に違う展開になっているところも……。だから、立ち止まって設定云々などと考える時間がなく、後で困り果てるということになる訳です(汗)中には無理矢理、起動修正した話もあったりなかったり。北翔はもっと冷静な子だと思っていたのですが、意外とワガママで思ったことをはっきり言う子でした。特に彗には……。

どうして人物が勝手に動き出すのか、書いている私自身にもよく分からないのですが、それはきっと彼らが物語の中で生きているということなんだろうなと思います。逆に書いている自分自身が全く魅力に感じない人物や物語は勝手に動いてくれないので、話を進めるのにかなり苦労します。そういう時はどんなに沢山書いていたとしても、思い切ってストーリーを削ったり書き直したり、人物を大幅に変えたりします。

だから、自分が書いている物語の中で登場人物が勝手に動いたならそれは、自分自身がその登場人物達に魅力を感じ、好意を持っているという証拠なんだろうなと思っています。自分がどれだけ登場人物に愛着を持てるかというのは良質な作品を書くことができるかどうかということにも繋がり、最も大切なことだと思います。その他に「書く」という行動に対するモチベーションを常に上げ、保っていくことにも繋がるのだと、今作を書き終えて気付きました。モチベーションを保つことは作品が長ければ長い程、重要なことだと思います。プロの方が書く作品も自分が好きなキャラがいたら愛着が湧き、最後まで読もうと思いますが、それと同じことなのかなと。

話の良し悪しはともかく、私は今作の登場人物全員が大好きです。三部それぞれ書いている最中、全員に愛着を持って書いていました。もちろん悪役もです。

これからも登場人物に愛着を持ちつつ、沢山の方に喜んで頂ける作品を書けるよう励んでいきたいと思います。
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