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プロローグ
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カツカツと、ハイヒールの音が鳴り響く、夕暮れの裏通り。俺は愛しい優希を待って、路地裏に立っていた。俺たちはこれから友人知人だけを集めて、婚約披露パーティーをする。長く病に苦しめられていた優希と、長く孤独だった俺がようやくパートナーとして認められる日が来た。
俺はともかく、重大な問題を抱えた優希のために、幸せになれる日を盛大に祝いたいと思い、大学の後輩である市木葵に相談した。葵はカフェバーの店長をしている。そこで身内だけのパーティーをさせてくれないかと頼んだところ、二つ返事でOKしてくれた。
「了が幸せになるのなら、なんだって協力するよ」
ハイスペック男子のイケメンから笑顔でそう言われ、着々と準備を進めてきてようやく迎えた日を、俺は何故か路地裏に血だらけで倒れて迎えている。
「彼を失うわけにはいかないのよ!」
そう言って走り去っていった女を、俺は知らない。どこの誰なのかも分からない。どこで恨みを買ったのか、それすらもわからなかった。
おそらく一度も聴いたことのない声の持ち主は、なぜか躊躇いも無く俺に襲いかかってきた。ドスっと一突きだ。見事に右脇腹を刺した刃物を、力ずくで引き抜いて去っていった。全く運が悪い。せめてその刃物をそのままにしてくれていたらよかったのに。
ドクドクと流れ出る血液は、俺の周りを一面血の海にしていく。このまま数分見つからなかったら……そう弱気になりかけた。
「ゆ……き……」
さっきまで一緒にいた、俺の愛しい人を呼ぶ。
「パートナーとして紹介するから、隠れて待ってて! 五分経ったら入ってきてね」そう言われて、ここで待っていた。時間が来たので店の方へと歩き始めた。そして、ちょうど角を曲がろうとしたタイミングだったんだが、まさか刺されるとはなあ……。
「ゆう……き」
もしこのまま俺が死んでしまったとしたら、お披露目は永遠に叶わなくなる。優希はどれほど悲しむのだろうかと思っていると、今度は俺にも耳馴染みのある女の声で悲鳴が聞こえてきた。
「きゃー! え、え、サトルさん? サトルさん! どうしたんですか? なに、なにこれ……血? ちょっと、大丈夫ですか?」
ああ、あの子を怖がらせてしまったのかもしれない。必ず生きて帰らなくては……大変な運命に抗いながら生きているあの子を少しでも安心させてあげなくてはならない。そう心に決めた瞬間、俺は意識を失った。
俺はともかく、重大な問題を抱えた優希のために、幸せになれる日を盛大に祝いたいと思い、大学の後輩である市木葵に相談した。葵はカフェバーの店長をしている。そこで身内だけのパーティーをさせてくれないかと頼んだところ、二つ返事でOKしてくれた。
「了が幸せになるのなら、なんだって協力するよ」
ハイスペック男子のイケメンから笑顔でそう言われ、着々と準備を進めてきてようやく迎えた日を、俺は何故か路地裏に血だらけで倒れて迎えている。
「彼を失うわけにはいかないのよ!」
そう言って走り去っていった女を、俺は知らない。どこの誰なのかも分からない。どこで恨みを買ったのか、それすらもわからなかった。
おそらく一度も聴いたことのない声の持ち主は、なぜか躊躇いも無く俺に襲いかかってきた。ドスっと一突きだ。見事に右脇腹を刺した刃物を、力ずくで引き抜いて去っていった。全く運が悪い。せめてその刃物をそのままにしてくれていたらよかったのに。
ドクドクと流れ出る血液は、俺の周りを一面血の海にしていく。このまま数分見つからなかったら……そう弱気になりかけた。
「ゆ……き……」
さっきまで一緒にいた、俺の愛しい人を呼ぶ。
「パートナーとして紹介するから、隠れて待ってて! 五分経ったら入ってきてね」そう言われて、ここで待っていた。時間が来たので店の方へと歩き始めた。そして、ちょうど角を曲がろうとしたタイミングだったんだが、まさか刺されるとはなあ……。
「ゆう……き」
もしこのまま俺が死んでしまったとしたら、お披露目は永遠に叶わなくなる。優希はどれほど悲しむのだろうかと思っていると、今度は俺にも耳馴染みのある女の声で悲鳴が聞こえてきた。
「きゃー! え、え、サトルさん? サトルさん! どうしたんですか? なに、なにこれ……血? ちょっと、大丈夫ですか?」
ああ、あの子を怖がらせてしまったのかもしれない。必ず生きて帰らなくては……大変な運命に抗いながら生きているあの子を少しでも安心させてあげなくてはならない。そう心に決めた瞬間、俺は意識を失った。
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