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出来る事を1

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その後はヨハンとアルフレッドによって涼ちゃんへ郵便局員オリエンテーションを簡易的に行い、それが終わったらしい。終了と同時に彼女は配達員用の鞄を肩から下げていた。
これから俺と一緒にグリーンヴァルド内に手紙の配達をするのだ。まだ彼女は風魔法を会得していないため、ボードに俺と二人乗りとなってしまった。何とかなるだろう…と局長が判断してしまったのでその通りに。全くこう言ったことは大雑把すぎるんだ。お世話になりまくっているのでそんな事は口が裂けても言えないけれども。

「よしっ、涼ちゃんちゃんと荷物は積んだ?」
「だ、大丈夫!!貰ったリストの物はちゃんと積んであるよ!」
「あ、荷物は良いけどさ…これ忘れてるよ。ヘルメット。」
「…だってお兄ちゃん達付けてないじゃん。私だけ過剰防具だよ。」

荷物は言う通り全て積んでくれているが、倉庫の端に装備すべきヘルメットが寂しそうに鎮座していた。それを見てため息一つ吐き出し、手に取ってそのまま義妹の頭にポスッと被せたのだった。

「皆心配してるんだよ。今回問題なかったら、ダイナー局長に必要ないって伝えてみるから。今回だけは付けてくれると嬉しいんだけどな。」
「ーーっ、分かった。」
「うん、良い子だね。」

「本当に血の繋がりは無いんだよね?」
「俺も今疑っちまったわ。」
「「え?」」
「本人達は自覚ないって、奏多と涼がいた世界はこれが普通な訳?」
「どうだかな。」

どういう訳か同行してくれる二人は先程からずっと、妙な眼差しで俺たちを見てくるのだが…ハッキリ言ってくれないと分からないよ。



俺達が務めているグリーンヴァルド郵便局は辺境の中でもより一層の辺境の場所にある。簡単に言えば崖の上に建っている。よく皆さんから場所変えた方がいいんじゃないか?と苦情まがいな事を呟かれる程だ。だが局長としては、この崖の上は風を呼びやすい立地であるらしく、今の所引っ越す予定は無いらしい。
その吹き込む風も配達員にとっては風魔法をサポートするのに案外重要だったりするからだろう。あくまでも従業員ファースト精神でいてくれるあたり本当に頼もしい。

「涼ちゃん、大丈夫?!」
「うん!!えーっとね…次はフェリシアさん?って人みたい。荷物は…降ろしてみないと分かんないや。」
「りょーかい!!スピードあげるから捕まっててね。」
「はぁい!」

ボードに今回も大量に繋がれている荷物。それを積んだ上に何時もよりも搭乗数が多いからか、普段の倍の魔力を消費しなければならない…のだが。今回ばかりは涼ちゃんの魔力を俺に流してもらう事で、俺が風魔法を発動させ、更に俺の聖女パワーで涼ちゃんの魔力の底上げをしている為ほぼほぼ二人とも無傷でことを済ますことが出来ている。そのおかげか、ボードのふらつきもなく問題ない。
いつも通りに空を駆け抜けることが出来ていた。
涼ちゃんは配達リストと地図担当をしてくれ、道をナビゲートしてくれている。ヨハンとアルフレッドは少し後ろを飛んでおり時折、先に違う人を配達した方が良い等アドバイスをくれていた。

「お兄ちゃん、あの木の屋根のお家がそうみたい。」
「分かった。ヨハーーン!!」
「ここは樹木も多くて枝も伸び放題だ、荷物に傷が出ないように防護魔法をかけろ。」
「分かった!!」
「それじゃぁ、私がやるね。……シールド!!」

ボードをその場に停め、宙に浮いた状態のままにする。俺を掴む手を離し、祈る様に彼女は手を組んだ。
すると、眩い光が手のひらから発し対象とする荷物全体に細かい光の粒子が降り注ぐのだった。

「よし、防護魔法完了だよ。ゆっくり下がろう。」
「ご苦労さま、そうしようか。」
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