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若草色の君と1

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「あ!帰ってきたんだね!!」
「あぁ。お茶会はまだ続いてるんだな。」
「うん、夕方まではどこもやってるんだよ。」

あの後どういう訳なのかランドルフが行動不能となってしまった為、予定よりも早くお茶会に戻る事に。凡そ一時間程度で再入場となった。
門のところにある日陰にてミリアが待っていてくれたらしく、華のような笑顔で出迎えてくれた。

「室内で待っていたら良かったのに……。」
「えへへ、使用人たちにも言われちゃったんだけどね。折角だからここでみんなを待ちたくて。」
「……遅くなってごめんな。」

そう言って胸ポケットに入れて置いたハンカチで彼女の額の汗をそっと拭った。俺が二人に会えて楽しかったあいだ、まだ暑い季節に日陰とはいえ、長い時間待たせてしまった。謝罪も込めて彼女に触れたのだった。

「あーあー、何だか私も汗が凄いわぁ。」
「僕もだなー。」
「わ、私も汗ダラダラー。」
「お前らなぁ……。」

いつの間にか三人がぎゅうぎゅうとくっいてきており、自分達の額を俺の身体に押し付けてきている。これじゃぁ余計に暑いだろうが。
あぁもう、仕方の無い奴らだ。



まだまだ美しい庭園には貴族の皆さんがわらわらとおり、花に目もくれずに情報収集なり自分を売り込むなりして過ごしている。一時間以上過ぎているにも関わらず、用意されている軽食が減っていないのがその証拠だ。勿体ない精神は彼等にはないのだろう。

「ほら、お母様が用意したもの全部美味しいから食べてみて。」
「ありがとう。」

ご令嬢達から少し離れた場所に俺達は移動し、用意してもらってある軽食を頂くことにした。どれもこれも普段生活していたら口にする事は出来なさそうな代物ばかりである。上等な果物や、それを使用した焼き菓子類。香り高い様々な紅茶。
四人に勧められるまま口にしてみる。

「うんまぁ……。あ。お、美味しゅうございます。」
「ふふっ、ど、どうせここからじゃ他の人の声は聞こえない。アーサーでいて大丈夫。」
「そう、か?」

ならばお言葉通りいただこう。まだまだ残ってるし、少しでも無駄にならないように。

「それでね、アレンスさんとはちょっとだけお話が出来たよ。」
「ほぉ、すごいな。僕達と話していた時には妙に苛立っていたのに、あの後多少は残っていたのか。」
「ふふん、まぁね。こう見えても一応は令嬢だから!それに、アレンスさんはまだ残ってるみたいだよ。」

ミリアさんの指し示す視線の先を辿ってみれば……本当にまだ居た。

「………アレンスさん。」

他のご令嬢様とは格式が段違いな風貌。燦々とした日向の元に彼女はいた。日陰にいたとしても若干汗ばんでおり、気負けしそうだと言うのに。あの人はそんな素振りを一切漏らさずに振舞っている。こうしてみていると、ご令嬢というよりも、絵本の中のお姫様みたいだ。
………ランドルフのお嫁さんになっても問題なさそうだ。

「おほん。それで、話した内容だけど。んー……頭から不満そうではあったんだけどね。一応他のご令嬢達がいる手前無下にもできなかったみたいね。」
「どんなこと話したのよ。」
「……どうやら皆と話していた所を見られていたらしくて。なんというかその……貴女もなの?って。勘違いされちゃったみたいなのよね。」
「貴女もって……?」
「あはは……ランドルフ王子殿下に好意があるのかってこと。それ以外にもちまちま言われたけど、どうやら一番あの人が気にしてるのはそこみたいね。」
「バロック家について特に言われなかったのか?」
「あぁ……いつもの事だよ。お茶会には私も嫌だけど最低限には出席してるし。その度に【昔はお世話になりました】って言われてるよ。慣れっこだけどね。」

又聞きで彼女の家とアレンス家の関係性については頭に入れている。それについてはまだミリアさんは知らない。そして、彼女にはアレンスさんがランドルフの婚約者候補だということも伝えていない。
だからこそ、この人は何故そのような言いがかりを言われるのか知らないのだ。

「……。」

どうするべきか。
伝えてしまえば、きっと荷を背負わせてしまう。

「あと、クラス替えについて聞かれたわ。」
「ク、クラス替え?なんでまた。」
「よく分からないんだけど、良ければクラスBに上がらないかって。」
「え?」
「……アーサーの事妙に褒めてたよ?」
「え゛?!?!」
「話を聞いてると、どうやら私とアーサーをくっ付けたいみたいな……。」
「まってくれ、それってミリア嬢の妄想とかじゃないよな?!!?」
「な!!失礼ね!!あの人から聞いたことをそのまま言ってるのよ!!」
「じゃぁ何で私達にはそんな話してくれないのかしら!!あの人から助力を受けるのは癪だけど有難いわ!!!」
「わ、私もそう思う!!!」
「それはもうクラス内で関係性が分かってるからでしょ!!」
「「「うっ……。」」」
「待ってくれ、みんな待ってくれ。違う方向に話が進んでるから。」

それだけアレンスさんは俺からランドルフを遠ざけたいのは分かったが……。
ちょっと雑になってきてないか?

だとしてもだ。
まだだ。
まだ直接彼女の口から俺を排除したいという言葉を聞き出せていない。

「どうしたら、聞き出せるんだか。」
「まぁまだお茶会は時間あるし、嫌がられようとも多少は聞き出せるだろう。」
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