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お茶会2

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「ごきげんよう皆さん。御三方もいらっしゃっていたのね。」
「えぇ、ごきげんようアレンスさん。学校ぶりね。今日も素敵なドレスだわ。」
「ご、ごきげんようアレンスさん。」
「ごきげんようアレンス嬢、元気そうでなによりだ。」

ニコラスに事前に教えこまれた通りに、皆が挨拶をしている間は何も言わず軽い会釈を一つするだけで、後は何もせずに状況を眺めていることに徹した。

「新しい執事を雇ったのかしら?随分と若いのね?……………あらぁ?王宮の服?どうして?」

目敏い。流石である。

カツカツと俺からしたら高めのヒールを軽快に鳴らせながら、此方に近付いてきた。いくら眼鏡をかけ、ご立派な執事服に身を包んだとしても隅々まで見られてしまえばバレるに違いない。こんな所にこんな格好で彼女の嫌う平凡の庶民が紛れ込んでいるだなんて、嫌悪しかないだろう。夏休み明けが地獄決定となってしまう。どうしたら…。

「此奴は数日前からランドルフ殿下の元に配属になったばかりの新人使用人だ。殿下のご好意で、今日のお茶会の作法を学んでこいと仰せつかったらしい。」
「まぁ…!なんて優しいのかしら。普通ならば新人如きがこんな素敵なお茶会場に足を踏み入れる事だなんて烏滸がましいにも程があるけれど…殿下のご好意、ですものね。」

下から上までまさに舐めまわすように、どこかしら変な部分が無いか重箱の隅をつつく事を目的とした品定めがジワジワと行われていた。嫌な汗が背中を伝うのを感じる。

「ならば、私もお手伝いいたしますわ!」
「それは結構よ。」
「…どうしてかしら?」

クラーラが俺とアレンスさんの間にグッと無理矢理入り込んできた。女性に守られている状態が些か恥ずかしいのだが、現時点で自分から何か行動を起こす方が…多分こう言った場では問題なのだろう。

「大変申し訳ないけれども、この中で一番お茶会に参加している回数は私が一番だと思いましてよ?」
「お言葉、ですが…へ、殿下に頼まれたのは私達。アレンスさんじゃ、無い。」
「…っ!!!それはそれは、失礼しましたわ!!!余計な気遣いでごめんあそばせ!!!どうぞお茶会をおたのしみくださいな!!!」

アレンスさんが勢いよく俺達とは正反対側へ振り向いたせいなのか、それとも彼女の魔力が溢れたせいなのか…分からないけれど。近くにあった花瓶の数個が音を立てて割れてしまったのだった。


ガシャン!!!!

「もう!!!何なの!?!?…失礼しますわ!!!」
「っ!!?」

三人が一斉に俺に心配の声を掛けてくれた。それもそうだ、全方向へ花瓶の破片が飛び地っていたのだから。三人は魔法でそれらを跳ね除けていたが、俺にはそんな芸当ができないので怪我をしないように努力する他ない。

「アレックス、平気か?」
「え?…は、はい。」

そういえばそうだった、この場において俺の名前は【アレックス】である。完全に忘れかけていた。定期的には呼ばれないと定着しない気がする。
それはそうと。

「俺、バレてないか?」
「それは無いな。」
「な、なんで言い切れるんだ?」
「こ、この眼鏡のおかげ。」
「これか?」
「そーよ。」




「この眼鏡は自分をぼかす魔法がかけてあるんだ。俺たちはその魔法が掛からないように除外魔法のお守りをバルリング先生から預かっている。」
「因みにこの眼鏡を作ったのも先生よ。」
「す、凄いよね。」
「すごいなー。」
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