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作戦会議3
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外は昨日ほどではないが、それなりに日が出ておりカラッとした空気であった。
若干の曇り空の下でも王宮というのは輝かしいのだなぁと思う。
まぁ、それは置いといて。
壁奥から複数の男性の話声が聞こえてきた。
「案外駐屯場内で訓練してる人が多いもんなんだなぁ。」
「ここにいる者は達は国内で何かしらのトラブルがあった場合の為に、待機してる者たちです。ただ待機しているだけでは身体が鈍ってしまいますからね、何も無い場合はこうして訓練をして過ごしているようです。」
「こうしてく、訓練しているって言うのはある意味平和で素敵な事。そうでしょ?」
「その通りです。バタバタしてる方が恐ろしい事ですね。」
「それも、そうか。」
あの後ディアナとランドルフに腕を引かれたまま騎士団員の皆様が在中している駐屯場へと向かう事になった。
全体的に煉瓦造りとなっており、研究所とはまた違い頑丈な建物であった。王宮内自体凄く敷地が広いだけあって、駐屯場その者がとても大きかった。
ランドルフ御家族からの期待値もそれだけ大きいのだろう。そりゃそうか、家族や皆の命を彼等が護ってくれているのだから。
「それで、正直に聞くのか?」
「初めは素直に聞きます。何やら不穏な空気を捉えた場合はそれなりに行動に移ろうと思いますけど。今日に至ってはそこまで踏み込む気はありません。クラーラさんの言う通りあくまでも水面下で動くべきだと思いますので、慎重にいたします。」
「そ、その方が懸命。流れはランドルフ様に任せる。尋問も任せる。アただしーサーは任せて。」
「ずるくないですか?」
「ずるくない、適材適所。」
「くっ!!!!!」
心底悔しそうに煉瓦の壁をランドルフは殴っていた。こんな彼を見るの初めてだ。それを手軽に引き出すディアナを心から尊敬してしまう。
「ったく、仕方ないですね。何かあった場合はディアナ嬢にも頼みますから、そこはよろしくお願いしますよ。」
「ま、任せて。」
「何かあった時?」
「話の辻褄が合わない時とか、騎士団員が不穏な動きをした場合のアーサーを避難させるとか、ですかね。」
「わぁ……なんだかディアナは俺専属の騎士様だなぁ。」
「それ、いいね。任せて。」
「僕もそのポジションになりますからね。」
「ランドルフが騎士様かぁ。すごく似合いそうだな。ちょっと見てみたいかもな。」
「後ほど手配してみましょうか。」
そんな事を話しながら駐屯場へとお邪魔することに。受付であろう場所には当然ながら甲冑を身に付けていない、最低限の装備をした兵士さん数名が迎えてくれた。ランドルフ曰く事務方の方々らしい。
「殿下!本日は何用で。」
「以前にここの者に渡した、この者達の書類がどう処理されたのか気になりまして。流石にまだ残ってますよね?」
「……ぁ、あ。えぇ。ございますよ。以前受けとった者が保管しておりますので。ご覧になりますか?」
「えぇ、もちろん。」
明らかに動揺している事務員が戸棚から一冊のファイルを手に取った。ファイルを掴む手が震えている。ページを繰り、一枚の書類を机の上に置いた。
【王宮来賓申請】と記載されているそれ。何時に誰が王宮内に訪れるかとランドルフの文字できちんと明記されている。右上には何名かのサインが記入されているのが伺えた。枠が複数あり全てが埋まっている。つまりは、見るべき人がちゃんと見ている証拠である。
「事務員さんは昨日の出来事はご存知で?」
「あー…この方達が門の前で数時間待機していた件ですか?」
「そうです。」
「……存じております。」
「この様に少なくとも数名はこの書状を見ているのにも関わらず、昨日のような一件が起きてしまいました。貴方はどう思いますか?一意見として聞きたいだけですので、気軽にお答えください。」
とは言っても、下手なこと言えるわけねぇだろ!!と心の声が聞こえてきた気がする。俺も彼の立場であれば同じ事を考えただろう。
問われた彼の顔が一気に青白くなった気がした。
「わ、私共はあくまでも書類の保管整理を行っているだけですので、その件に関してはお伝えする事は何もございません。」
「周りに回ってきた書類を保管し、整理したのみ、ということなのですね?」
「その通りです。」
「なるほど。書類が回る順序などはあったりするのですか?」
「いや、そこに関してはなんとも。」
「わかりました。色々とありがとうごさいます。」
「い、いえ。こちらこそ何もお伝えすることが出来ず……。」
書類に関しては一部印刷した物を頂いて、事務部署を後にし一旦外に出た。
ランドルフの表情が芳しくない。
「ランドルフ?」
「……きっと、自分達が完全に彼らに任せてしまったのが悪かったのだと思います。」
「?」
「僕たちが関与する余地が無くなってしまっている現状が、こんなにもマイナスになるとは……。」
「ら、ランドルフ?」
「アーサー。す、少しだけ待っていよう?」
「ディアナ……わかった。」
何処か切なそうな眼差しを彼に向けているディアナ。それにどんな意味が込められているのか、今の俺には分からなかった。
若干の曇り空の下でも王宮というのは輝かしいのだなぁと思う。
まぁ、それは置いといて。
壁奥から複数の男性の話声が聞こえてきた。
「案外駐屯場内で訓練してる人が多いもんなんだなぁ。」
「ここにいる者は達は国内で何かしらのトラブルがあった場合の為に、待機してる者たちです。ただ待機しているだけでは身体が鈍ってしまいますからね、何も無い場合はこうして訓練をして過ごしているようです。」
「こうしてく、訓練しているって言うのはある意味平和で素敵な事。そうでしょ?」
「その通りです。バタバタしてる方が恐ろしい事ですね。」
「それも、そうか。」
あの後ディアナとランドルフに腕を引かれたまま騎士団員の皆様が在中している駐屯場へと向かう事になった。
全体的に煉瓦造りとなっており、研究所とはまた違い頑丈な建物であった。王宮内自体凄く敷地が広いだけあって、駐屯場その者がとても大きかった。
ランドルフ御家族からの期待値もそれだけ大きいのだろう。そりゃそうか、家族や皆の命を彼等が護ってくれているのだから。
「それで、正直に聞くのか?」
「初めは素直に聞きます。何やら不穏な空気を捉えた場合はそれなりに行動に移ろうと思いますけど。今日に至ってはそこまで踏み込む気はありません。クラーラさんの言う通りあくまでも水面下で動くべきだと思いますので、慎重にいたします。」
「そ、その方が懸命。流れはランドルフ様に任せる。尋問も任せる。アただしーサーは任せて。」
「ずるくないですか?」
「ずるくない、適材適所。」
「くっ!!!!!」
心底悔しそうに煉瓦の壁をランドルフは殴っていた。こんな彼を見るの初めてだ。それを手軽に引き出すディアナを心から尊敬してしまう。
「ったく、仕方ないですね。何かあった場合はディアナ嬢にも頼みますから、そこはよろしくお願いしますよ。」
「ま、任せて。」
「何かあった時?」
「話の辻褄が合わない時とか、騎士団員が不穏な動きをした場合のアーサーを避難させるとか、ですかね。」
「わぁ……なんだかディアナは俺専属の騎士様だなぁ。」
「それ、いいね。任せて。」
「僕もそのポジションになりますからね。」
「ランドルフが騎士様かぁ。すごく似合いそうだな。ちょっと見てみたいかもな。」
「後ほど手配してみましょうか。」
そんな事を話しながら駐屯場へとお邪魔することに。受付であろう場所には当然ながら甲冑を身に付けていない、最低限の装備をした兵士さん数名が迎えてくれた。ランドルフ曰く事務方の方々らしい。
「殿下!本日は何用で。」
「以前にここの者に渡した、この者達の書類がどう処理されたのか気になりまして。流石にまだ残ってますよね?」
「……ぁ、あ。えぇ。ございますよ。以前受けとった者が保管しておりますので。ご覧になりますか?」
「えぇ、もちろん。」
明らかに動揺している事務員が戸棚から一冊のファイルを手に取った。ファイルを掴む手が震えている。ページを繰り、一枚の書類を机の上に置いた。
【王宮来賓申請】と記載されているそれ。何時に誰が王宮内に訪れるかとランドルフの文字できちんと明記されている。右上には何名かのサインが記入されているのが伺えた。枠が複数あり全てが埋まっている。つまりは、見るべき人がちゃんと見ている証拠である。
「事務員さんは昨日の出来事はご存知で?」
「あー…この方達が門の前で数時間待機していた件ですか?」
「そうです。」
「……存じております。」
「この様に少なくとも数名はこの書状を見ているのにも関わらず、昨日のような一件が起きてしまいました。貴方はどう思いますか?一意見として聞きたいだけですので、気軽にお答えください。」
とは言っても、下手なこと言えるわけねぇだろ!!と心の声が聞こえてきた気がする。俺も彼の立場であれば同じ事を考えただろう。
問われた彼の顔が一気に青白くなった気がした。
「わ、私共はあくまでも書類の保管整理を行っているだけですので、その件に関してはお伝えする事は何もございません。」
「周りに回ってきた書類を保管し、整理したのみ、ということなのですね?」
「その通りです。」
「なるほど。書類が回る順序などはあったりするのですか?」
「いや、そこに関してはなんとも。」
「わかりました。色々とありがとうごさいます。」
「い、いえ。こちらこそ何もお伝えすることが出来ず……。」
書類に関しては一部印刷した物を頂いて、事務部署を後にし一旦外に出た。
ランドルフの表情が芳しくない。
「ランドルフ?」
「……きっと、自分達が完全に彼らに任せてしまったのが悪かったのだと思います。」
「?」
「僕たちが関与する余地が無くなってしまっている現状が、こんなにもマイナスになるとは……。」
「ら、ランドルフ?」
「アーサー。す、少しだけ待っていよう?」
「ディアナ……わかった。」
何処か切なそうな眼差しを彼に向けているディアナ。それにどんな意味が込められているのか、今の俺には分からなかった。
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