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きらきら
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「お待たせしましたー!ライムビーでーす。」
曲を一曲やった後、ボーカルのその男は気だるげな声でそう挨拶した。
真ん中で分けられた耳より下まで伸びた髪は脱色されていて少しオレンジ掛かっており、その前髪の隙間から目尻の垂れた細い目がチラチラと見え隠れしている。
観客が暗い客席で腕を振り上げる中で、その人だけがライトを浴び、きらきらとした汗で自分を装飾していた。
「きれーな人。」
思わずそう口走る。
「え、そう?どっちかと言うとかわいい系じゃない?」
綾瀬さんは少し訝しげに僕の発言を拾った。
「あ、いやそういうことじゃ…。」
浅瀬さんの反応に慌ててその場を取り繕う。普通の男が他の男にどんな感情を持つのか自分にはわからなかった。
誤魔化すようにステージに目を戻すと彼らはまだMCの途中らしい。テレビにこそ出演などはしていないが案外人気な部類のバンドらしく観客はメンバーがなにかしゃべる度にキャーキャーとはしゃいでいる様子だった。
「そういえば女の子のファンが多いね。」
「みたいだね。チケットくれた私の友達も女子だし。なんかアイドルみたいな売り方してるんだって」
「へぇー、そうなん。」
腕を組み、いかにも興味なさげという仏頂面を作りながらそのボーカルを盗み見る。
その印象的な、溶けてしまいそうなたれ目は元カレのものとそっくりだった。
彼が汗だくになりながらマイクをなめるように歌う様子は少し前のあいつとの日常の記憶を無理矢理引き出した。
目がチカチカしてくる。顔が熱くなって鼻の奥から鉄のような匂いがする。それから、胃の中のものが全てぶちまけられそうな…。
「牧野くん!?」
気がついたら外のトイレに向かって走り出していた。
頭がくらくらする。喉が急激に渇く。
それから下半身が急激に熱と質量を帯びていた。
うそだろ、なんで、こんなところで。
トイレに駆け込み、個室に飛び込んで鍵を掛ける。
最悪。
ジーパンの中緩くたちあがったそれは硬い生地に圧迫されて痛みを伴っていた。
「くそっ…。」
少し迷ったがここで出すのも気が引けるので収まるまでここで休むことにする。
スマホをみると綾瀬さんから四回の不在着信と沢山のメッセージが届いていた。
少し迷ったが体調が悪いから先に帰るということと謝罪の言葉で返信をする。
送った瞬間に既読がついて、すぐに電話が掛かってきたが音量をゼロにして携帯をそのままポケットに差し込んだ。
落ち着こうと目をつぶる度にあの顔がちらちらと脳裏を掠める。その度に身体中の血液が沸騰するように熱くなる。
それと同時に元彼の、蒼太との記憶がオーバーラップする。
「まじで最悪…」
鎮まりそうにない下腹部の重みを感じながら個室の角に寄りかかり、無心で呼吸を整えることしか出来なかった。
曲を一曲やった後、ボーカルのその男は気だるげな声でそう挨拶した。
真ん中で分けられた耳より下まで伸びた髪は脱色されていて少しオレンジ掛かっており、その前髪の隙間から目尻の垂れた細い目がチラチラと見え隠れしている。
観客が暗い客席で腕を振り上げる中で、その人だけがライトを浴び、きらきらとした汗で自分を装飾していた。
「きれーな人。」
思わずそう口走る。
「え、そう?どっちかと言うとかわいい系じゃない?」
綾瀬さんは少し訝しげに僕の発言を拾った。
「あ、いやそういうことじゃ…。」
浅瀬さんの反応に慌ててその場を取り繕う。普通の男が他の男にどんな感情を持つのか自分にはわからなかった。
誤魔化すようにステージに目を戻すと彼らはまだMCの途中らしい。テレビにこそ出演などはしていないが案外人気な部類のバンドらしく観客はメンバーがなにかしゃべる度にキャーキャーとはしゃいでいる様子だった。
「そういえば女の子のファンが多いね。」
「みたいだね。チケットくれた私の友達も女子だし。なんかアイドルみたいな売り方してるんだって」
「へぇー、そうなん。」
腕を組み、いかにも興味なさげという仏頂面を作りながらそのボーカルを盗み見る。
その印象的な、溶けてしまいそうなたれ目は元カレのものとそっくりだった。
彼が汗だくになりながらマイクをなめるように歌う様子は少し前のあいつとの日常の記憶を無理矢理引き出した。
目がチカチカしてくる。顔が熱くなって鼻の奥から鉄のような匂いがする。それから、胃の中のものが全てぶちまけられそうな…。
「牧野くん!?」
気がついたら外のトイレに向かって走り出していた。
頭がくらくらする。喉が急激に渇く。
それから下半身が急激に熱と質量を帯びていた。
うそだろ、なんで、こんなところで。
トイレに駆け込み、個室に飛び込んで鍵を掛ける。
最悪。
ジーパンの中緩くたちあがったそれは硬い生地に圧迫されて痛みを伴っていた。
「くそっ…。」
少し迷ったがここで出すのも気が引けるので収まるまでここで休むことにする。
スマホをみると綾瀬さんから四回の不在着信と沢山のメッセージが届いていた。
少し迷ったが体調が悪いから先に帰るということと謝罪の言葉で返信をする。
送った瞬間に既読がついて、すぐに電話が掛かってきたが音量をゼロにして携帯をそのままポケットに差し込んだ。
落ち着こうと目をつぶる度にあの顔がちらちらと脳裏を掠める。その度に身体中の血液が沸騰するように熱くなる。
それと同時に元彼の、蒼太との記憶がオーバーラップする。
「まじで最悪…」
鎮まりそうにない下腹部の重みを感じながら個室の角に寄りかかり、無心で呼吸を整えることしか出来なかった。
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