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10.天気雨

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さっきまでの天気が嘘のように夕日が眩しかった。
腕をぐっと伸ばして体をほぐす。さっきまでずっとかがんでたからパキパキという音がした。
長かったなあ。我ながら頑張ったな、と思う。
俺に向けられたあいつの感情に気づいたのは高1の冬だった。あいつの肩に置いた俺の手を振り払うあいつの表情が、今までの俺に対する態度の違和感の謎をいとも容易く解いていった。
何考えてるかわかんない、なんて言われてるあいつが俺のことを好きだなんて知った時は気持ち悪いってよりもむしろ興奮した。
お前らにはあいつの感情なんか読み取れないだろうけど、俺には手に取るように分かる。そんな優越感にも似たような思いはあいつとの付き合いが長くなるにつれ、醜く萎れていった。
あいつは、漫画みたいに分かりやすい反応をしときながらも一切こちらに好意を伝えてこようとはしなかった。
それが無性にイラついて、気持ち悪くて、うざくて、怖くて。
だから進路が分かれてしまう前に少し強引な手を使ってでもあいつの口から俺への好意を引き出したかった。
あいつだけに特別な接し方をしたり、スキンシップを多めにしたり、あいつが中学の頃好きだとか言っていたアイドルと似たような女と付き合ったりしたが、得られたのは「あっそ。」というすこしふてくされ気味の仏頂面だけ。
もっと俺の行動にショックを受けてほしいのに。なにか手がかりはないかと適当にあいつの身辺調査をしたら、おっさんに身売りをしているのがすぐに分かった。
だからおっさんを買収して動画を隠し撮りさせた。
まさかこんなにうまくいくとは。思わず笑みがこぼれる。
あいつは今何を考えているんだろう。動画のこと?進路のこと?それとも、俺に抱かれたこと?
どちらにしてもあいつが今考えているであろうことの根源が俺であるという事実は、俺を酷く高揚させる。

「次はなにしよっかなー。」

達也の軽快な声は澄んだ夕日に溶け込んでいった。
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