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SP(息抜きサブストーリー集)
SP2 その狼は、ただ愛を欲しがる。(3)
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若い狼が見る魔女は、いつでも忙しそうだ。
多くの時間は編み物。時には備蓄の為の、ドライフルーツやジャム作り。時には染色仕事。
ぱたぱたと、くるくると、彼女は巣穴の中を歩き回る。
「なあ魔女、今日は何するんだ?」
「そうね、今日はね……」
時間も手間も掛かるものばかりなのに、いつでも彼女は楽しそうだ。
そして、その足下には幼い仔らがいる。
「へえ、これいい色だね」
「あら、ありがと」
彼女は淡い色に染まった毛糸を手に笑っていた。
(なんだよ、その顔)
若い狼は今日もまた、勝手に彼女が所有物のつもりで、ムッとする。彼女の可愛らしい笑顔が、彼でなく仔狼らに向けられているから嫉妬しているのだ。
魔女は腰をかがめ、仔狼らに今回はとても良く染まったのだと、話している。
「これは機織りに頼まれたのよ。これから渡しに行くところ」
「へえー。じゃあボクがお使いに行こうか?」
「あら、いいの? お手伝い助かるわ。じゃあリュック用意しましょうか」
「わーい、お使いだぁ」
仔ども達はころころと転がり、働く彼女の足下ではしゃいで回る。
甘え掛かる仔狼を彼女は叱らない。そこもまた、彼の怒りのポイントだ。
(俺は構わないくせに、そいつらばっかり構って)
だから今日もまた、若い狼は苦言を呈す。
「甘やかすのやめろって言ってるだろ」
さっと歩み寄って俺を構えと身体を押しつけるも、なぜかふいと魔女は距離を取っては、彼の言葉を「はいはい」 と聞き流す。
だから、彼の口から出るのは彼女を貶すような事ばかりになるのだ。
「何度言わせるんだ。群れの序列に関わるんだから手を出すな」
「な……?」
若い狼の本気の怒りに、彼女は顔色をなくした。ぐるると唸って、怯える彼女に更に続けて。
「群れのリーダーに囲われてるからって、群れの序列を乱すなら容赦しないぞ」
歯を剥きだし怒れば、彼女はどんどんと距離を取り。
「……気をつけるわ」
仔狼らの中心で困惑と怯えの混じった複雑な顔をする。
その顔には笑顔はない。若い狼が欲しい、あの暖かな目をした優しい表情は、なくて。
「ごめんなさい。群れのリーダーのパートナーに相応しくないから、怒っているのよね」
(違う、本当は)
そんな顔を見たい訳ではない。けれどこんな時すら仔狼ばかり可愛がるから、彼の喉はぐるると不機嫌な音を立てる。
「いつも、貴方を怒らせてばかりね。本当に申し訳ないわ」
(くそっ……)
謝らせたい訳じゃない。悲しげな表情で曇らせたい訳でもない。
(そうじゃないっ)
だが、欲しいものが与えられず苛立ちばかりが募る彼の喉から出るのは威嚇の唸り声だ。
「私は狼ではないし、ひ弱で獲物も狩れないから、不満なのよね、それは分かっているのだけれど……」
肩を落とし、暗い顔をする彼女を見ていられない。
(俺にも笑えよ、莫迦)
若い狼は己のもたらした結果をまた見ぬふりと、ぷいと横を向いて「そうかよ」 そうふてくされて呟いた。
多くの時間は編み物。時には備蓄の為の、ドライフルーツやジャム作り。時には染色仕事。
ぱたぱたと、くるくると、彼女は巣穴の中を歩き回る。
「なあ魔女、今日は何するんだ?」
「そうね、今日はね……」
時間も手間も掛かるものばかりなのに、いつでも彼女は楽しそうだ。
そして、その足下には幼い仔らがいる。
「へえ、これいい色だね」
「あら、ありがと」
彼女は淡い色に染まった毛糸を手に笑っていた。
(なんだよ、その顔)
若い狼は今日もまた、勝手に彼女が所有物のつもりで、ムッとする。彼女の可愛らしい笑顔が、彼でなく仔狼らに向けられているから嫉妬しているのだ。
魔女は腰をかがめ、仔狼らに今回はとても良く染まったのだと、話している。
「これは機織りに頼まれたのよ。これから渡しに行くところ」
「へえー。じゃあボクがお使いに行こうか?」
「あら、いいの? お手伝い助かるわ。じゃあリュック用意しましょうか」
「わーい、お使いだぁ」
仔ども達はころころと転がり、働く彼女の足下ではしゃいで回る。
甘え掛かる仔狼を彼女は叱らない。そこもまた、彼の怒りのポイントだ。
(俺は構わないくせに、そいつらばっかり構って)
だから今日もまた、若い狼は苦言を呈す。
「甘やかすのやめろって言ってるだろ」
さっと歩み寄って俺を構えと身体を押しつけるも、なぜかふいと魔女は距離を取っては、彼の言葉を「はいはい」 と聞き流す。
だから、彼の口から出るのは彼女を貶すような事ばかりになるのだ。
「何度言わせるんだ。群れの序列に関わるんだから手を出すな」
「な……?」
若い狼の本気の怒りに、彼女は顔色をなくした。ぐるると唸って、怯える彼女に更に続けて。
「群れのリーダーに囲われてるからって、群れの序列を乱すなら容赦しないぞ」
歯を剥きだし怒れば、彼女はどんどんと距離を取り。
「……気をつけるわ」
仔狼らの中心で困惑と怯えの混じった複雑な顔をする。
その顔には笑顔はない。若い狼が欲しい、あの暖かな目をした優しい表情は、なくて。
「ごめんなさい。群れのリーダーのパートナーに相応しくないから、怒っているのよね」
(違う、本当は)
そんな顔を見たい訳ではない。けれどこんな時すら仔狼ばかり可愛がるから、彼の喉はぐるると不機嫌な音を立てる。
「いつも、貴方を怒らせてばかりね。本当に申し訳ないわ」
(くそっ……)
謝らせたい訳じゃない。悲しげな表情で曇らせたい訳でもない。
(そうじゃないっ)
だが、欲しいものが与えられず苛立ちばかりが募る彼の喉から出るのは威嚇の唸り声だ。
「私は狼ではないし、ひ弱で獲物も狩れないから、不満なのよね、それは分かっているのだけれど……」
肩を落とし、暗い顔をする彼女を見ていられない。
(俺にも笑えよ、莫迦)
若い狼は己のもたらした結果をまた見ぬふりと、ぷいと横を向いて「そうかよ」 そうふてくされて呟いた。
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