167 / 220
SP(息抜きサブストーリー集)
SP2 その狼は、ただ愛を欲しがる。(2)
しおりを挟む
だが、権利の主張をすれば兄が怒るのは見えている。
ジルバーは群れの長として寛大で、餌も等分に分けるし、元の群れで新しいリーダーに殺されかけた時は逃がしてもくれた。恩のある存在で、これからも支えたいとも思う。
だが、女が絡むとなると別の話。
(俺が見つけたんだ、俺のだ)
そう、強く主張したい。
そして、彼は魔女を睨みつけながら、思春期特有の我が儘さと理不尽さにて強く思う。
(俺が最初にマーキングしたのに、ジルバーに腹を見せる魔女が悪い)
兄に直接言えないのは、単純に怖いからである。
前にマーキングの真似事をしたら、急所を噛まれて巣を放り出されて大変な目に遭った。
だが。
(番の相手は女が選べるんだから、魔女が俺を選べばいいだけじゃないか)
最初に見つけたのだし、最初に助けたのだから。俺は権利があるというのが、彼の言い分である。
だが、これもなかなかにおかしな主張である。
彼は今まで、魔女に対し求婚らしい事をした試しがない。むしろ嫌がらせのみ。
ジルバーに警戒されていて、彼のマーキングがされている魔女に本能的に手を出しづらいという点もあるが、それでも若い狼が単純に女性に嫌われる事しかしていないのは事実だ。
それでいて、若い狼は魔女が彼を好意よりは嫌い成分が勝る心の配分であることを、理解していない。
むしろ魔女は若い狼に対し、好き百パーセントだと、勝手に自惚れている。
自意識過剰で自尊心が無駄に高い、思春期あるあるではあるが、この狼、なかなかの空回りぶりだ。
「うう、またあの子睨んでるわ……怖いなあ。嫌いなら嫌いで、放っておいて欲しいのだけれど」
彼の理不尽さに、伊都はほとほと手を焼いていて、自然と距離を置かれている事にも気づいていない。
今だって、いきなりうなり声を上げに睨んでくるものだから、魔女が怯えているのだけれど、彼はその事に気づこうとすらしない。
こうして意地悪男子は、気弱な女子にどんどんと嫌がられ、好きの成分は目減りしていく。
でも、そんな事を知らず。
(俺のものなのに、俺に尻尾を振らない魔女が悪い)
自分は悪くない、魔女が悪いと。
そう、若い狼は理不尽にも思いこんでいた。
ジルバーは群れの長として寛大で、餌も等分に分けるし、元の群れで新しいリーダーに殺されかけた時は逃がしてもくれた。恩のある存在で、これからも支えたいとも思う。
だが、女が絡むとなると別の話。
(俺が見つけたんだ、俺のだ)
そう、強く主張したい。
そして、彼は魔女を睨みつけながら、思春期特有の我が儘さと理不尽さにて強く思う。
(俺が最初にマーキングしたのに、ジルバーに腹を見せる魔女が悪い)
兄に直接言えないのは、単純に怖いからである。
前にマーキングの真似事をしたら、急所を噛まれて巣を放り出されて大変な目に遭った。
だが。
(番の相手は女が選べるんだから、魔女が俺を選べばいいだけじゃないか)
最初に見つけたのだし、最初に助けたのだから。俺は権利があるというのが、彼の言い分である。
だが、これもなかなかにおかしな主張である。
彼は今まで、魔女に対し求婚らしい事をした試しがない。むしろ嫌がらせのみ。
ジルバーに警戒されていて、彼のマーキングがされている魔女に本能的に手を出しづらいという点もあるが、それでも若い狼が単純に女性に嫌われる事しかしていないのは事実だ。
それでいて、若い狼は魔女が彼を好意よりは嫌い成分が勝る心の配分であることを、理解していない。
むしろ魔女は若い狼に対し、好き百パーセントだと、勝手に自惚れている。
自意識過剰で自尊心が無駄に高い、思春期あるあるではあるが、この狼、なかなかの空回りぶりだ。
「うう、またあの子睨んでるわ……怖いなあ。嫌いなら嫌いで、放っておいて欲しいのだけれど」
彼の理不尽さに、伊都はほとほと手を焼いていて、自然と距離を置かれている事にも気づいていない。
今だって、いきなりうなり声を上げに睨んでくるものだから、魔女が怯えているのだけれど、彼はその事に気づこうとすらしない。
こうして意地悪男子は、気弱な女子にどんどんと嫌がられ、好きの成分は目減りしていく。
でも、そんな事を知らず。
(俺のものなのに、俺に尻尾を振らない魔女が悪い)
自分は悪くない、魔女が悪いと。
そう、若い狼は理不尽にも思いこんでいた。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
妻と夫と元妻と
キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では?
わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。
数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。
しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。
そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。
まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。
なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。
そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて………
相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不治の誤字脱字病患者の作品です。
作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。
性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。
小説家になろうさんでも投稿します。
夫に離縁が切り出せません
えんどう
恋愛
初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。
妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる