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SP(息抜きサブストーリー集)
SP1 仔狼だって、押し倒したい。(4)
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そんな数の少ない彼女らであっても、いや、だからこそか。魔女らは独自のコミュニティができあがっている。その間で、互いに協力し合い物を出し合って暮らしているうちに、それなりの量の古材というものは出てくる。
「最低限と思ってても、女性というものはどうしたって新しい服とか仕立てたくなるからね。気分転換もあるけれど、身ぎれいにしておくっていうのは愛する人にいつも綺麗だと思って欲しいいじらしさも含んでいるのよ」
魔女って意外とかわいいでしょう? と、楽しげに友人らの話をする伊都。
それらを有効活用するのだと言う、彼女の顔には苦労を苦労と思わぬ、明るい笑みがある。
「おいらは、それが出来る魔女の方がすげえと思うけどなっ」
「あらあら、おだてても、もう干し肉は分けませんからね」
「むう……」
(おだてた訳じゃねぇのに)
魔女は素直にすごいと思うのだ。
その柔らかな白い手で器用に色々なものを作り、この灰色一色で冷たかった空間を暖かいもので埋めてくれた。
それだけでなく……。
柔らかな太股の上に顎を乗せる。
「こーら。ハサミを使ってるんだから危ないわよ……って、こら」
じりじりと距離を取ろうとする魔女の脇に鼻面を突っ込んで、その柔らかさと匂いを堪能していたら、鼻面を捕らえられた。
「もう。何で君達は狭い所が好きなのかしらねぇ。手元が狂ったら危ないでしょ」
そこを掴まれると、どうしようもなく。
ギャンはキュンキュンと鼻を鳴らしてごめんなさいをするしかない。
「そうね、やっぱりハサミは危ないわ。となると……」
今度はどさっと、くたびれ感のあるニットを持ってきた。
「それは何するんだ?」
今度こそ大人しく隣で眺めているギャンが聞くと、魔女は答える。
「これもね、いちど解いて糸玉にして、また別のものを編むの。再利用ね」
くったりしたり、フェルト化してきたものも味があっていいのだけれどねと、笑いながらニットを解く魔女は、本当に働き者だ。
(いいなぁ)
魔女の体温が届くくらいの近くで、ギャンは魔女を物欲しげな顔で見る。
(何でこんな、甘い匂いで暖かいのが、おいらのじゃないのかな)
ふと、思う。
もっと大きくて。
もっと強くて。
……人型の。
(ジルバーみたいな、立派な雄なら、魔女をおいらのモノに出来るのかなぁ……)
どこからか、突き上げるような欲が迸る。
ギャンは、ニットを解く魔女へ向かい、全力で肩口を押した。その柔らかな身体は、分厚いラグの上に倒れる。
「……ギャン君? ちょっと、どうしたの」
魔女は目を見開いて、きょとんとこちらを見ている。
押し倒されたのだという意識はないようで、その顔には純粋な驚きがある。
だが、ギャンは本気だった。
甘い匂い、甘い身体。それをどうしたらいいのかは、幼い頃に離れてしまった彼にはよくわからない。
いや、深夜に寝床で睦みあう男女ならば、見た事がある。
ずうっと身近で、何度も。
男の大きな体に隠れるように抱きすくめられた彼女なら、見た事があるのだ。
だからギャンは本気だった。
(おいらの、モノに)
ぎらぎらとした目で彼は、魔女を見つめた。
「最低限と思ってても、女性というものはどうしたって新しい服とか仕立てたくなるからね。気分転換もあるけれど、身ぎれいにしておくっていうのは愛する人にいつも綺麗だと思って欲しいいじらしさも含んでいるのよ」
魔女って意外とかわいいでしょう? と、楽しげに友人らの話をする伊都。
それらを有効活用するのだと言う、彼女の顔には苦労を苦労と思わぬ、明るい笑みがある。
「おいらは、それが出来る魔女の方がすげえと思うけどなっ」
「あらあら、おだてても、もう干し肉は分けませんからね」
「むう……」
(おだてた訳じゃねぇのに)
魔女は素直にすごいと思うのだ。
その柔らかな白い手で器用に色々なものを作り、この灰色一色で冷たかった空間を暖かいもので埋めてくれた。
それだけでなく……。
柔らかな太股の上に顎を乗せる。
「こーら。ハサミを使ってるんだから危ないわよ……って、こら」
じりじりと距離を取ろうとする魔女の脇に鼻面を突っ込んで、その柔らかさと匂いを堪能していたら、鼻面を捕らえられた。
「もう。何で君達は狭い所が好きなのかしらねぇ。手元が狂ったら危ないでしょ」
そこを掴まれると、どうしようもなく。
ギャンはキュンキュンと鼻を鳴らしてごめんなさいをするしかない。
「そうね、やっぱりハサミは危ないわ。となると……」
今度はどさっと、くたびれ感のあるニットを持ってきた。
「それは何するんだ?」
今度こそ大人しく隣で眺めているギャンが聞くと、魔女は答える。
「これもね、いちど解いて糸玉にして、また別のものを編むの。再利用ね」
くったりしたり、フェルト化してきたものも味があっていいのだけれどねと、笑いながらニットを解く魔女は、本当に働き者だ。
(いいなぁ)
魔女の体温が届くくらいの近くで、ギャンは魔女を物欲しげな顔で見る。
(何でこんな、甘い匂いで暖かいのが、おいらのじゃないのかな)
ふと、思う。
もっと大きくて。
もっと強くて。
……人型の。
(ジルバーみたいな、立派な雄なら、魔女をおいらのモノに出来るのかなぁ……)
どこからか、突き上げるような欲が迸る。
ギャンは、ニットを解く魔女へ向かい、全力で肩口を押した。その柔らかな身体は、分厚いラグの上に倒れる。
「……ギャン君? ちょっと、どうしたの」
魔女は目を見開いて、きょとんとこちらを見ている。
押し倒されたのだという意識はないようで、その顔には純粋な驚きがある。
だが、ギャンは本気だった。
甘い匂い、甘い身体。それをどうしたらいいのかは、幼い頃に離れてしまった彼にはよくわからない。
いや、深夜に寝床で睦みあう男女ならば、見た事がある。
ずうっと身近で、何度も。
男の大きな体に隠れるように抱きすくめられた彼女なら、見た事があるのだ。
だからギャンは本気だった。
(おいらの、モノに)
ぎらぎらとした目で彼は、魔女を見つめた。
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