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七章 間章 目を覚ませば、そこは見慣れた。
7ーex.間章 銀狼は奔走す(8)
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春の日差しもうららかな快晴の中、イベントの初日が動き始めたのを見ながら、遠く離れた関係者用駐車場から車を出してマンションへ帰る。
軽くシャワーを浴び、雑用を済ませると、今度は伊都を迎えに病院へと向かった。
伊都の母も勤めるこの緊急指定の総合病院は、近隣で最も大きな規模である。
とはいえ、ただ寝ているだけの人間でベッドを埋めておける程に余裕がある訳ではない……との事で。
近年取り沙汰される病院の空きベッド問題に、こうして直面すると足りないのは本当なのだな、と実感する。
白銀が約束の昼にベッドへ向かえば、やはり眠ったままの伊都が彼を出迎えた。
「織部さん、お迎えですよ、織部さん、起きて下さい……」
看護師が、優しく肩口へと手を添えて耳元に声を掛けるも、ベッドの上の伊都は穏やかな呼吸で目を閉じている。
「……このように、まだ眠ったままなんです。ただ、脈拍も正常ですし、傷も打撲のみで、痛がっている様子はありません。夜半には寝言も言っていたし寝返りも打って、どう見ても眠りも正常なのですが……」
ただ、起きないのだと言って、若い看護師は困った顔を彼に向ける。
「織部師長は、娘はよく寝ているだけだから連れて行っていい、と仰っていて……」
むしろ、身内で自分で看れるからこそ早く退院させろ、と。
娘に対しての随分な冷たい扱いに、看護師が困惑するのはよく分かる。通り魔に遭って今も目覚めない不遇な娘が可愛くないのか、と。
師長の態度が身内であろうが常にフラットなことに喜んでいいのか、悲しんでいいのか……と、部下の彼女らも伊都をどう扱うべきか悩んでいるようだ。
「そう、ですか……」
彼に判断しろと言われても困るのだが、看護師側としても困るのも分かる。
彼女らには、空きベッドを作る為に引き払って下さいなどいう病院の都合を強制出来ないのだから。
さて困った。
彼は伊都の夢の中の様子を知っているので、ただ単に眠っているだけだという事は分かっている。だが、そんな事を現実に言えるかと言えばまた別だ。
(まあ、そのうち自然に起きてくるのだろうが……)
おろおろとしている看護師の様子が見ていられなくて、寝汗を掻いているだろう伊都の着替えのみを看護師に頼んで、連れ帰る事にした。
軽くシャワーを浴び、雑用を済ませると、今度は伊都を迎えに病院へと向かった。
伊都の母も勤めるこの緊急指定の総合病院は、近隣で最も大きな規模である。
とはいえ、ただ寝ているだけの人間でベッドを埋めておける程に余裕がある訳ではない……との事で。
近年取り沙汰される病院の空きベッド問題に、こうして直面すると足りないのは本当なのだな、と実感する。
白銀が約束の昼にベッドへ向かえば、やはり眠ったままの伊都が彼を出迎えた。
「織部さん、お迎えですよ、織部さん、起きて下さい……」
看護師が、優しく肩口へと手を添えて耳元に声を掛けるも、ベッドの上の伊都は穏やかな呼吸で目を閉じている。
「……このように、まだ眠ったままなんです。ただ、脈拍も正常ですし、傷も打撲のみで、痛がっている様子はありません。夜半には寝言も言っていたし寝返りも打って、どう見ても眠りも正常なのですが……」
ただ、起きないのだと言って、若い看護師は困った顔を彼に向ける。
「織部師長は、娘はよく寝ているだけだから連れて行っていい、と仰っていて……」
むしろ、身内で自分で看れるからこそ早く退院させろ、と。
娘に対しての随分な冷たい扱いに、看護師が困惑するのはよく分かる。通り魔に遭って今も目覚めない不遇な娘が可愛くないのか、と。
師長の態度が身内であろうが常にフラットなことに喜んでいいのか、悲しんでいいのか……と、部下の彼女らも伊都をどう扱うべきか悩んでいるようだ。
「そう、ですか……」
彼に判断しろと言われても困るのだが、看護師側としても困るのも分かる。
彼女らには、空きベッドを作る為に引き払って下さいなどいう病院の都合を強制出来ないのだから。
さて困った。
彼は伊都の夢の中の様子を知っているので、ただ単に眠っているだけだという事は分かっている。だが、そんな事を現実に言えるかと言えばまた別だ。
(まあ、そのうち自然に起きてくるのだろうが……)
おろおろとしている看護師の様子が見ていられなくて、寝汗を掻いているだろう伊都の着替えのみを看護師に頼んで、連れ帰る事にした。
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