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七章 間章 目を覚ませば、そこは見慣れた。

十話 間章 お散歩は続くよ。

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 結局、仔狼らのお気に入りポイントを巡りながらお散歩する事になった。

 快晴の空から降りてくる日差しは木の葉の庇によって遮られ、木漏れ日がレースのような模様を伊都らに投げかけている。

「うーんっ。気持ちいいわね」
 思いっきり伸びをして深呼吸すれば、森の木々の放つ青い匂いに包まれる。
(そういえば、森林浴なんていつ振りでしょうね?)
 そう考えてみるものの、なかなか思い出せない。
 全くない、という事はない筈なのだけれど、と思うのだが、これがなかなか思いつかず。
「……あっ」
 やっとの事思い出したが、それは随分と遠い、昔の話で……。
 元々がインドア派で、さらには引き籠もり歴のある伊都である。
 それこそ子供の頃の遠足や、学生の頃の宿泊学習ぐらいではないかとようやく思い出し。
(大人になってからは……わざわざ緑の多いところに出かけたこと、全然ないかも)
 その事実は、なかなかにショックだった。

(これは……現実に戻ったら、どこか緑の多い所に行かなくてはいけないわね。いくら何でも引きこもり過ぎだわ)
 などと、生活態度の改善を誓っていると。

「なぁ、姉ちゃん立ち止まって何してるんだっ? 腹でも空いたかっ」
「あ、ああ違うのよ? 森の空気が気持ちいいから、深呼吸していたの」
「ふーん? なら、さっさと行こうぜ」
 きょとんとした顔で仔狼に見上げられ、伊都は慌てて笑顔を浮かべ、そそくさと歩き出した。


 いざ散歩となると、仔狼らの好奇心いっぱいの行動に振り回されることになる。
「あー、あっちに何かあるぜ」
「えーっ? こっちの方が楽しそうだよー」
「あっ、ちょうちょ!」
 仔らはちょこちょことあちらこちらに移動してしまうので、若い狼はその度に彼らの首後ろを口に咥えて列に連れ戻す事となり、それはそれは大変そうだ。
 伊都も忙しなく動く仔狼の短い脚と脚の間に手を突っ込み、もちもちお腹を抱えてうんしょと運び再び列に戻すのを手伝うが、一匹を連れ戻すと別の一匹がどこかへちょこちょこと向かっていたりして、ただまっすぐ進むだけ、これがとても困難なのである。

(まあ、ほほえましくもあるのだけれど……)
 伊都の体力だと、追いかけるのも一苦労だ。

 春の森は、仔狼らの興味を引くようなさまざまな生命に満ちている。
 地を走るあれはノネズミか。梢には小鳥のさえずり、地表には愛らしい花々などが見られ、森を歩く伊都を飽きさせない。


 ……だが。
「はあっ、はあっ……」
 夢中で仔狼らを追いかける余り、体力配分を間違えた。
(ちょ、ちょっと……どこかで休憩したいわ)
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