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森で出会った女の子
第27話 魔術師の色分け系統
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「……君、魔術師でしょ?」
「えっ!?何で分かったの!?」
「魔力を感じ取れば分かる」
「魔力を感じ取るって……君も魔術師なの?」
コトミンはレノの言葉に頷き、彼女も魔力感知の技術を扱えるらしく、人間でありながら尋常ではない魔力を持つレノを魔術師だと見抜いた。
「赤毛熊から助けてくれてありがとう。でも、この森は本来は人間が入ることを禁止している。だから体調が戻ったら悪いけど出ていってほしい」
「赤毛熊?あの化物熊か……あいつ、何なんだ?」
「ここ最近、山や森の動物が数を減らしてる。きっとあの魔獣のせい……早いうちに始末しないと周辺一帯の動物が食いつくされる」
「あいつ、そんなにやばい奴だったのか……」
たった一匹の魔物のせいで生態系が狂わされており、そんな化物を相手にしていたと知ってレノはぞっとした。今回は運よく生き残れたが、もしも次に遭遇したら勝てる気がしない。
(何とか不意打ちで傷を与えることはできたけど、俺の技術が全部通用しなかった……くそっ、強くなったと思ったのに)
赤毛熊を相手にした時、レノの「魔盾」は呆気なく敗れた。もしも硬魔で防いでいなかったら確実に死んでおり、改めて魔物の恐ろしさを思い知らされる。
「助けてくれてありがとう。そういえばあのボアは?」
「あの子は私の家族、卵の時から育てたから人は襲わないから安心して」
「えっ!?ボアは卵生なの!?」
「基本的に魔物は卵から生まれる」
全ての魔物は卵から生まれることをレノは初めて知り、魔獣ボアも外見は猪と似ているが卵から生まれる。どうやらコトミンがボアの飼い主だったらしく、ボアがこの森にレノを連れてきたのも彼女に会わせるためだと判明した。
「あの子の背中の傷を治してくれたのは君でしょ?ここへ来た時に背中に治療した跡が残ってた」
「そうだけど……本当にあのボアを飼ってるの?」
「飼ってるんじゃない、あの子は私の家族同然。妹みたいなもの」
「妹!?あいつ雌だったのか……そういえば牙が小さかったな」
ボアの牙は槍の刃先のように独特な形をしているが、以前にレノが倒したボアは雄だったので牙も大きかった。しかし、コトミンが育てているボアは雌のために牙が雄よりも小さくてあまり目立っていない。
魔獣ではあるがコトミンが育てたボアは野生のボアと違って性格は穏やかであり、人間を襲うことはない。だからレノを襲うこともせずに彼を主人の元にまで連れてきてくれた。
「あの子は雑食だから何でも食べるけど、肉はあんまり好きじゃない。いつも植物ばかり食べているから安心して」
「なるほど、だけど俺と会った時は怪我をしてたけど、やっぱりあの怪我は……」
「……きっと赤毛熊にやられた。あの化物熊が現れる前はボア子を襲う動物なんていなかったのに」
「ボ、ボア子?」
「あの子の名前、可愛いでしょ?」
ボアの名前が「ボア子」だと判明し、コトミンのネーミングセンスにレノは何とも言えない表情を浮かべる。
「あのボア……いや、ボア子はどうして襲われたの?」
「赤毛熊に餌として狙われている。もう何度も襲われたけど、その度に私が治療してた。でも、最近は帰って来なかったら心配してた。ボア子を助けてくれてありがとう」
コトミンはボア子のことを大切に想っているらしく、彼女を助けてくれたレノにお礼を言う。ここまで魔物を大切にする人間(エルフだが)と出会ったのは初めてであり、レノは不思議な気分を抱く。
(今まで魔物は危険な奴ばかりだと思ってたけど、人間に懐く魔物もいるんだな。それにしても赤毛熊か……このまま放っておくとこの子とボア子が危険な目に遭いそうだ)
赤毛熊がいる限りはこの地域の森や山に暮らす生き物たちが危険に晒され、今回はレノがいたから助かったが、コトミンもボア子も危うく襲われるところだった。それを考えるとレノはこのまま去る気はなかった。
「あの化物……赤毛熊と言ったっけ?あいつを放っておくとどうなる?」
「……あなたのお陰でしばらくは大人しくしていると思う。でも、住処を知られた以上はまたここにやって来るかもしれない」
「またここに来るのか……よし、それなら俺に任せてよ」
「え?」
レノの言葉にコトミンは呆気に取られるが、そんな彼女にレノは微笑む。
「助けてくれたお礼に俺があの化物を倒すよ」
「倒すって……どうやって?」
「まあ、まだ方法は思いつかないけど……でも、何とかしてみせる」
撃退には成功したがレノは赤毛熊のせいで死にかけたため、今の時点では赤毛熊に勝てない。だが、自分を助けてくれた女の子が困っているのに放っておくことなどできなかった――
――翌日の朝、レノはコトミンが作ってくれた薬草のスープを飲む。味はお世辞にも美味しいとは言えないが、折角作ってくれたので我慢して飲み込む。
「うげぇっ……苦い」
「頑張って全部飲んで……魔力暴走で消耗した体力を回復させるのはこれが一番」
「あれ?言われてみれば確かに身体が楽になったような……」
薬草のスープを全部飲むと、昨日の夜までは碌に動かせなかった身体も自由に動けるようになった。これならば魔操術も使えそうであり、試しにレノは両手を握りしめて硬魔を発動させる。
「うん、魔力も問題なく扱えるや」
「……そういえば気になっていたけど、レノは何色の魔術師?」
「え?何色って……」
コトミンの質問にレノは首を傾げ、彼女の言葉の意味が分からなかった。だが、少し前に吸血鬼がタケルのことを「無色の魔術師」と呼んでいたことを思い出す。タケルは異世界人なので彼の元々の魔力は「透明」だった。
「その色ってどういう意味?」
「……知らないの?魔術師は色で魔術系統を分けている」
「系統?」
レノの言葉にコトミンは驚き、彼女は魔術師が扱う魔法の系統によって「色分け」が行われていることを話す。
「例えば私のようなエルフは風属性の魔法の適性があるから自然と魔力の色は緑色になる。だから私は「緑色の魔術師」になる」
「緑色?他にも色があるの?」
「ある。火属性の魔法を得意とする魔術師は「赤色の魔術師」水属性の魔術師は「青色の魔術師」と呼ばれる。レノはどんな魔法が使えるの?」
「いや、俺は……」
コトミンの言葉にレノは自分が魔法を教わっていないことを思い出す。タケルは魔操術を極めてはいたが異世界人である彼には「魔法」は使えなかった。
(あのゴウカとかいう奴と戦っていた時に使っていた爺ちゃんの技も魔法じゃなかった……)
ゴウカとの戦いではタケルは自身の魔力のみで「八つ首の竜」を構成し、炎の巨人と化したゴウカを打ち破った。今のレノでは到底真似はできないが、何時の日かタケルのように「魔法」を使わずに戦える魔術師になりたいと考えた。
子供の頃のレノは魔術師に憧れてタケルに弟子入りした。しかし、今のレノにとって最高の魔術師とはタケルただ一人で有り、彼のような魔術師を目指すのならば「魔法」を覚える必要もない。
「俺は……無色の魔術師を目指してるよ」
「……無色?」
「まあ、魔法は使えないってことなんだけどね」
レノの言葉にコトミンは不思議そうな表情を浮かべるが、そんな彼女に苦笑いを浮かべながらレノは手帳を開いた。タケルが最後に残してくれた手帳を確認し、赤毛熊を倒せる技がないのかを探す。
「えっ!?何で分かったの!?」
「魔力を感じ取れば分かる」
「魔力を感じ取るって……君も魔術師なの?」
コトミンはレノの言葉に頷き、彼女も魔力感知の技術を扱えるらしく、人間でありながら尋常ではない魔力を持つレノを魔術師だと見抜いた。
「赤毛熊から助けてくれてありがとう。でも、この森は本来は人間が入ることを禁止している。だから体調が戻ったら悪いけど出ていってほしい」
「赤毛熊?あの化物熊か……あいつ、何なんだ?」
「ここ最近、山や森の動物が数を減らしてる。きっとあの魔獣のせい……早いうちに始末しないと周辺一帯の動物が食いつくされる」
「あいつ、そんなにやばい奴だったのか……」
たった一匹の魔物のせいで生態系が狂わされており、そんな化物を相手にしていたと知ってレノはぞっとした。今回は運よく生き残れたが、もしも次に遭遇したら勝てる気がしない。
(何とか不意打ちで傷を与えることはできたけど、俺の技術が全部通用しなかった……くそっ、強くなったと思ったのに)
赤毛熊を相手にした時、レノの「魔盾」は呆気なく敗れた。もしも硬魔で防いでいなかったら確実に死んでおり、改めて魔物の恐ろしさを思い知らされる。
「助けてくれてありがとう。そういえばあのボアは?」
「あの子は私の家族、卵の時から育てたから人は襲わないから安心して」
「えっ!?ボアは卵生なの!?」
「基本的に魔物は卵から生まれる」
全ての魔物は卵から生まれることをレノは初めて知り、魔獣ボアも外見は猪と似ているが卵から生まれる。どうやらコトミンがボアの飼い主だったらしく、ボアがこの森にレノを連れてきたのも彼女に会わせるためだと判明した。
「あの子の背中の傷を治してくれたのは君でしょ?ここへ来た時に背中に治療した跡が残ってた」
「そうだけど……本当にあのボアを飼ってるの?」
「飼ってるんじゃない、あの子は私の家族同然。妹みたいなもの」
「妹!?あいつ雌だったのか……そういえば牙が小さかったな」
ボアの牙は槍の刃先のように独特な形をしているが、以前にレノが倒したボアは雄だったので牙も大きかった。しかし、コトミンが育てているボアは雌のために牙が雄よりも小さくてあまり目立っていない。
魔獣ではあるがコトミンが育てたボアは野生のボアと違って性格は穏やかであり、人間を襲うことはない。だからレノを襲うこともせずに彼を主人の元にまで連れてきてくれた。
「あの子は雑食だから何でも食べるけど、肉はあんまり好きじゃない。いつも植物ばかり食べているから安心して」
「なるほど、だけど俺と会った時は怪我をしてたけど、やっぱりあの怪我は……」
「……きっと赤毛熊にやられた。あの化物熊が現れる前はボア子を襲う動物なんていなかったのに」
「ボ、ボア子?」
「あの子の名前、可愛いでしょ?」
ボアの名前が「ボア子」だと判明し、コトミンのネーミングセンスにレノは何とも言えない表情を浮かべる。
「あのボア……いや、ボア子はどうして襲われたの?」
「赤毛熊に餌として狙われている。もう何度も襲われたけど、その度に私が治療してた。でも、最近は帰って来なかったら心配してた。ボア子を助けてくれてありがとう」
コトミンはボア子のことを大切に想っているらしく、彼女を助けてくれたレノにお礼を言う。ここまで魔物を大切にする人間(エルフだが)と出会ったのは初めてであり、レノは不思議な気分を抱く。
(今まで魔物は危険な奴ばかりだと思ってたけど、人間に懐く魔物もいるんだな。それにしても赤毛熊か……このまま放っておくとこの子とボア子が危険な目に遭いそうだ)
赤毛熊がいる限りはこの地域の森や山に暮らす生き物たちが危険に晒され、今回はレノがいたから助かったが、コトミンもボア子も危うく襲われるところだった。それを考えるとレノはこのまま去る気はなかった。
「あの化物……赤毛熊と言ったっけ?あいつを放っておくとどうなる?」
「……あなたのお陰でしばらくは大人しくしていると思う。でも、住処を知られた以上はまたここにやって来るかもしれない」
「またここに来るのか……よし、それなら俺に任せてよ」
「え?」
レノの言葉にコトミンは呆気に取られるが、そんな彼女にレノは微笑む。
「助けてくれたお礼に俺があの化物を倒すよ」
「倒すって……どうやって?」
「まあ、まだ方法は思いつかないけど……でも、何とかしてみせる」
撃退には成功したがレノは赤毛熊のせいで死にかけたため、今の時点では赤毛熊に勝てない。だが、自分を助けてくれた女の子が困っているのに放っておくことなどできなかった――
――翌日の朝、レノはコトミンが作ってくれた薬草のスープを飲む。味はお世辞にも美味しいとは言えないが、折角作ってくれたので我慢して飲み込む。
「うげぇっ……苦い」
「頑張って全部飲んで……魔力暴走で消耗した体力を回復させるのはこれが一番」
「あれ?言われてみれば確かに身体が楽になったような……」
薬草のスープを全部飲むと、昨日の夜までは碌に動かせなかった身体も自由に動けるようになった。これならば魔操術も使えそうであり、試しにレノは両手を握りしめて硬魔を発動させる。
「うん、魔力も問題なく扱えるや」
「……そういえば気になっていたけど、レノは何色の魔術師?」
「え?何色って……」
コトミンの質問にレノは首を傾げ、彼女の言葉の意味が分からなかった。だが、少し前に吸血鬼がタケルのことを「無色の魔術師」と呼んでいたことを思い出す。タケルは異世界人なので彼の元々の魔力は「透明」だった。
「その色ってどういう意味?」
「……知らないの?魔術師は色で魔術系統を分けている」
「系統?」
レノの言葉にコトミンは驚き、彼女は魔術師が扱う魔法の系統によって「色分け」が行われていることを話す。
「例えば私のようなエルフは風属性の魔法の適性があるから自然と魔力の色は緑色になる。だから私は「緑色の魔術師」になる」
「緑色?他にも色があるの?」
「ある。火属性の魔法を得意とする魔術師は「赤色の魔術師」水属性の魔術師は「青色の魔術師」と呼ばれる。レノはどんな魔法が使えるの?」
「いや、俺は……」
コトミンの言葉にレノは自分が魔法を教わっていないことを思い出す。タケルは魔操術を極めてはいたが異世界人である彼には「魔法」は使えなかった。
(あのゴウカとかいう奴と戦っていた時に使っていた爺ちゃんの技も魔法じゃなかった……)
ゴウカとの戦いではタケルは自身の魔力のみで「八つ首の竜」を構成し、炎の巨人と化したゴウカを打ち破った。今のレノでは到底真似はできないが、何時の日かタケルのように「魔法」を使わずに戦える魔術師になりたいと考えた。
子供の頃のレノは魔術師に憧れてタケルに弟子入りした。しかし、今のレノにとって最高の魔術師とはタケルただ一人で有り、彼のような魔術師を目指すのならば「魔法」を覚える必要もない。
「俺は……無色の魔術師を目指してるよ」
「……無色?」
「まあ、魔法は使えないってことなんだけどね」
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