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外の世界へ
第63話 狼車の改善
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「……これ作ったの、もしかしておじさん?」
「うおっ!?な、なんだ急に!?」
「これ、名前が彫ってある」
ミズネがブーメランに刻まれた名前を指さし、ナオ達も確認すると「カジン」と刻まれていた。それを見てカジンはバツが悪そうな表情を浮かべた。
「ちっ、まだ売れ残ってやがったのか……どいつもこいつも見る目がねえな」
「この魔道具を作ったのはカジンさ……いや、お爺さんなんですか?」
「誰がお爺さんだ!!生意気なガキだな!?」
「だって、名前を読んじゃ駄目って言うから……」
「ちっ、仕方ねえな。俺の事はカジンさんと呼べよ」
自分の制作したブーメランが売れ残っている事にカジンは気に入らない表情を浮かべ、その一方でミズネは魔道具を制作したというカジンに関心を抱く。
「魔道具を制作するには一流の鍛冶師でも難しいと言われてる。そんな物を作れるぐらいだからこのお爺さんの腕前は凄い」
「へっ、ガキに褒められても嬉しかねえよ」
「そんなお爺さんだからこそ作ってほしい物がある。ナオ、お願いして」
「あ、うん……あの、カジンさんは馬車を作ってくれますか?」
「はあっ!?俺は鍛冶師だぞ!!なんでそんなもんを……待て、もしかして店の前に停まっている白狼種はお前さんが飼ってるのか!?」
「飼ってるのはあたしだよ!!」
「まあまあ、話がややこしくなるので抑えるっす」
カジンはドルトンの店の前で待機している白狼種がナオ達が率いている事に驚き、子供でありながら白狼種を懐かせて率いているナオに興味を抱く。
「前の街で馬車を購入したんですけど、ウル君の走行に耐えられそうにないんです。このまま旅を続けるといつ壊れるか分からないし、だから魔獣専用の馬車が欲しいんです」
「なるほど、それで街一番の鍛冶師の俺に設計を依頼したいというところか?まあ、どうしてもというなら作れなくもないが、金は払えるのか?」
「とりあえずこれぐらいなら……」
ナオはドルトンから受け取った魔石の買取金を差し出すと、中身を確認してカジンは鼻を鳴らす。もしかして足りなかったのかとナオは不安を抱くが、カジンは小袋を懐にしまう。
「……少しばかし足りないが、白狼種の引く車の制作なら良い暇つぶしにはなりそうだ。俺が設計してやるよ」
「本当ですか!?」
「但し、足りない分はお前らもしっかり手伝ってもらうぞ。白狼種がどれほど早く動けるのか確かめない限りは車の制作もできないからな」
「というと?」
「要するに俺に白狼種の引く車に乗せろという事だ」
「何だ、そんな事か。いいぞ、あたしのウルの速さを思い知らせてやる!!おっちゃん、付いてこい!!」
「ちっ、生意気な小娘だな!!」
口では怒っているがネココの性格は気に入ったのか彼女の後にカジンは続き、慌ててナオ達も後を追いかけようとしたが、ナオはドルトンにお礼を告げた。
「ドルトンさん!!カジンさんを紹介してくれてありがとうございます!!俺の分のお礼はこれで結構です!!」
「この矢筒とネココちゃんの鉤爪は貰っていいですかね!?」
「ついでに私も魔石が欲しい」
「え、ええ、すぐに用意させましょう」
ナオ以外の物は店の商品を一つずつ受け取り、ドルトンも快く承諾してくれた。人数分の商品を受け取るとナオ達は急いでカジンとネココの後を追う――
――カジンの提案で白狼種の最高速度を図るため、せっかく街に入れたというのにナオ達は再び外へ出ることになった。カジンを乗せた状態で馬車は走り出し、ネココの運転でウルは全速力で駆け抜けた。
「どうだ!!これがウルの速さだ!!振り落とされても知らないからな!!」
「ウォオンッ!!」
「た、確かに中々の速さだが……この揺れのひどさは何とかならねえのか!?」
走行中は車体が激しく揺れ動き、買ったばかりの車なのにあちこちがきしみ始めていた。やはり馬用の車では白狼種の移動速度には耐えきれず、近いうちに壊れるのは目に見えていた。
狼車が停車するとカジンは顔色を悪くしながらも車から降り立ち、ふらついた足取りで様子をうかがっていたナオ達の元へ戻る。彼は気分が悪そうにしながらも意地でも自分が弱っている姿を見せないように振る舞う。
「うぷっ……な、中々面白い体験させてもらったぜ」
「だ、大丈夫ですか?」
「水飲む?」
「あんまり無理しない方がいいっすよ」
「ええいっ、俺を年寄り扱いするんじゃねえっ!!そんな事よりも問題点を報告させろ!!」
カジンは気合で持ち直すと現在のナオ達が乗り込んでいる車の問題点を示す。まず第一に「耐久性」であり、このまま旅を続けるのは危険すぎる。白狼種の移動速度にも耐えられるほどの頑丈な車を用意しなければ旅は続けられない。
二つ目の問題点は走行中の揺れの激しさであり、あまりに揺れ動くと乗員に負担が掛かり、荷物の類も無事では済まない。この揺れを改善するためには耐震性も考慮しなければならず、特殊な構造の馬車を作らなければならない。
「うおっ!?な、なんだ急に!?」
「これ、名前が彫ってある」
ミズネがブーメランに刻まれた名前を指さし、ナオ達も確認すると「カジン」と刻まれていた。それを見てカジンはバツが悪そうな表情を浮かべた。
「ちっ、まだ売れ残ってやがったのか……どいつもこいつも見る目がねえな」
「この魔道具を作ったのはカジンさ……いや、お爺さんなんですか?」
「誰がお爺さんだ!!生意気なガキだな!?」
「だって、名前を読んじゃ駄目って言うから……」
「ちっ、仕方ねえな。俺の事はカジンさんと呼べよ」
自分の制作したブーメランが売れ残っている事にカジンは気に入らない表情を浮かべ、その一方でミズネは魔道具を制作したというカジンに関心を抱く。
「魔道具を制作するには一流の鍛冶師でも難しいと言われてる。そんな物を作れるぐらいだからこのお爺さんの腕前は凄い」
「へっ、ガキに褒められても嬉しかねえよ」
「そんなお爺さんだからこそ作ってほしい物がある。ナオ、お願いして」
「あ、うん……あの、カジンさんは馬車を作ってくれますか?」
「はあっ!?俺は鍛冶師だぞ!!なんでそんなもんを……待て、もしかして店の前に停まっている白狼種はお前さんが飼ってるのか!?」
「飼ってるのはあたしだよ!!」
「まあまあ、話がややこしくなるので抑えるっす」
カジンはドルトンの店の前で待機している白狼種がナオ達が率いている事に驚き、子供でありながら白狼種を懐かせて率いているナオに興味を抱く。
「前の街で馬車を購入したんですけど、ウル君の走行に耐えられそうにないんです。このまま旅を続けるといつ壊れるか分からないし、だから魔獣専用の馬車が欲しいんです」
「なるほど、それで街一番の鍛冶師の俺に設計を依頼したいというところか?まあ、どうしてもというなら作れなくもないが、金は払えるのか?」
「とりあえずこれぐらいなら……」
ナオはドルトンから受け取った魔石の買取金を差し出すと、中身を確認してカジンは鼻を鳴らす。もしかして足りなかったのかとナオは不安を抱くが、カジンは小袋を懐にしまう。
「……少しばかし足りないが、白狼種の引く車の制作なら良い暇つぶしにはなりそうだ。俺が設計してやるよ」
「本当ですか!?」
「但し、足りない分はお前らもしっかり手伝ってもらうぞ。白狼種がどれほど早く動けるのか確かめない限りは車の制作もできないからな」
「というと?」
「要するに俺に白狼種の引く車に乗せろという事だ」
「何だ、そんな事か。いいぞ、あたしのウルの速さを思い知らせてやる!!おっちゃん、付いてこい!!」
「ちっ、生意気な小娘だな!!」
口では怒っているがネココの性格は気に入ったのか彼女の後にカジンは続き、慌ててナオ達も後を追いかけようとしたが、ナオはドルトンにお礼を告げた。
「ドルトンさん!!カジンさんを紹介してくれてありがとうございます!!俺の分のお礼はこれで結構です!!」
「この矢筒とネココちゃんの鉤爪は貰っていいですかね!?」
「ついでに私も魔石が欲しい」
「え、ええ、すぐに用意させましょう」
ナオ以外の物は店の商品を一つずつ受け取り、ドルトンも快く承諾してくれた。人数分の商品を受け取るとナオ達は急いでカジンとネココの後を追う――
――カジンの提案で白狼種の最高速度を図るため、せっかく街に入れたというのにナオ達は再び外へ出ることになった。カジンを乗せた状態で馬車は走り出し、ネココの運転でウルは全速力で駆け抜けた。
「どうだ!!これがウルの速さだ!!振り落とされても知らないからな!!」
「ウォオンッ!!」
「た、確かに中々の速さだが……この揺れのひどさは何とかならねえのか!?」
走行中は車体が激しく揺れ動き、買ったばかりの車なのにあちこちがきしみ始めていた。やはり馬用の車では白狼種の移動速度には耐えきれず、近いうちに壊れるのは目に見えていた。
狼車が停車するとカジンは顔色を悪くしながらも車から降り立ち、ふらついた足取りで様子をうかがっていたナオ達の元へ戻る。彼は気分が悪そうにしながらも意地でも自分が弱っている姿を見せないように振る舞う。
「うぷっ……な、中々面白い体験させてもらったぜ」
「だ、大丈夫ですか?」
「水飲む?」
「あんまり無理しない方がいいっすよ」
「ええいっ、俺を年寄り扱いするんじゃねえっ!!そんな事よりも問題点を報告させろ!!」
カジンは気合で持ち直すと現在のナオ達が乗り込んでいる車の問題点を示す。まず第一に「耐久性」であり、このまま旅を続けるのは危険すぎる。白狼種の移動速度にも耐えられるほどの頑丈な車を用意しなければ旅は続けられない。
二つ目の問題点は走行中の揺れの激しさであり、あまりに揺れ動くと乗員に負担が掛かり、荷物の類も無事では済まない。この揺れを改善するためには耐震性も考慮しなければならず、特殊な構造の馬車を作らなければならない。
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