66 / 87
廃墟編
シルフィアの作戦
しおりを挟む
「これで一応は敵の情報は分かったけど、これからどうする?」
「そうですね……当初の予定では街に要塞を作り出し、魔物の軍隊を迎撃する予定でした。しかし、魔王軍の魔将という存在が私の予想を超える力を持っていた以上、考え方を改めましょう」
「考え方を改める?」
シルフィアは何事か考え込むように腕を組み、そして意を決したように二人に提案を行う。
「マカセの話ではアルディラは数日後にこの都市を到着する予定です。ですが、正面から迎え撃つのではなく、敵が街に入り込んだ所を始末しましょう」
「え、どういう意味?ここで要塞を作って籠城するんじゃないの?」
「発想を変えましょう。調査の結果、この街には私達以外に住民は存在しません。街の周辺を探索しましたが、残念ながら生存者は確認されませんでした。しかし、逆にそれが幸いだったかもしれません」
「……どういう事?」
生存者が確認されなかった事が幸運だったという発言にレアとイリスは疑問を抱き、シルフィアは自分の考えた新たな作戦を説明する。
「まずはこの街を――」
――数時間後、レア達はセカンの街を離れ、帝都から追放されたときに送り込まれたファストの街へと到着した。そしてこの街を支配するゴブリンの群れをシルフィアと機械人形達が殲滅を開始する。
「A~Cの部隊はマスターの護衛を行いなさい!!D~Jの部隊は街の外側を包囲!!残りの部隊は私に続きなさい!!」
『ゴロロロロッ!!』
『ギィイイイッ!?』
街中に無数の機械人形が侵入し、シルフィアは上空から彼等に指示を与え、街に生息しているゴブリンの排除を行う。1匹も逃さないように街の外にも機械人形を配置し、次々と街の中に存在するゴブリンを打ち倒す。
「うわぁっ……なんか、凄い光景」
「まさかこの街に戻ってくることになるとは思いませんでしたよ……」
安全な場所で機械人形に護衛されながらレアとイリスは街の様子を眺め、数日前までレアは1人で必死に戦っていたゴブリン達が圧倒的な力を持つシルフィアと機械人形に駆逐される光景に何とも言えない気持ちを抱く。一時は命を狙われ続けて恨めしく思った存在だが、今では立場が逆転してしまい、逃げ惑うゴブリン達に憐れみさえ抱く。
「グギィイイイッ!!」
「あ、ホブゴブリンですよ!!まだ居たんですね……」
「でも……」
『ゴロォッ!!』
通常種よりも体格の大きいゴブリンが出現するが、完全武装状態のゴレムが前に出ると、二人を守るように立ちふさがる。ゴレムに対してホブゴブリンは右手に握りしめていた棍棒を叩きつける。
「ギィアッ!!」
『ゴロン?』
「ギィイッ!!ギギィッ……グギャアッ!?」
だが、何度棍棒を叩きつけようとゴレムの装甲には傷一つも与えられず、逆にホブゴブリンの棍棒が叩き折れてしまう。自分の攻撃を全く寄せ付けないゴレムにホブゴブリンは戸惑うが、そんな相手にゴレムは容赦なく殴りつけて吹き飛ばす。
『ゴロロロッ!!』
「グヘェッ!?」
ゴレムの一撃を受けたホブゴブリンは頭部を歪な形に凹み、そのまま地面に倒れこんで動かなくなる。いくら普通のゴブリンよりも強い力を持つとはいえ、機械人形のゴレムの相手にもならない。
「フォトン・レイン!!」
遂には上空を浮かぶシルフィアの身体が発行し、彼女の胸元に存在する万能金属の十字架が光り輝き、無数の光の塊を放つ。まるで雨の様に降り注ぐ光の弾丸は確実にゴブリンだけを撃ち抜き、決してレアやイリスや機械人形には的中しない。
『グギャアアアアアアアアアッ!?』
街中から無数のゴブリンの悲鳴が響き渡り、全てのゴブリンを排除した事を生体レーダーで確認したシルフィアは攻撃を中止させ、武装を解除してレア達の元に降り立つ。
「お待たせしました。予定よりも時間は掛かりましたが、これでこの街のゴブリンを一掃しました」
「そ、そう……流石はシルフィア」
「お褒めの言葉、ありがとうございます!!」
「ひええっ……本当に何でもありですねこの人」
レアが引きつった笑顔を浮かべて褒めると、彼女は主人に褒められた子犬のように喜ぶが、結果として街中に大量のゴブリンの死骸が誕生する。これしか方法が無かったとはいえ、あまりにも無惨な光景にレアとイリスは内心同情してしまう。
「それでは次の段階に移行します。まずはゴブリンの死骸を焼却後、御二人が住むための建物の建設を行います。それと機械人形の大半は警備に回します」
「ドローンで十分じゃないの?」
「確かにそうですが、ビゾンの件もあります。用心のために街の周囲にも警備を行いたいのです」
「分かった。それなら任せるよ……それにしても今回の作戦、上手くいくかな」
「今のところは順調です。問題は別行動中のマカセ次第ですが……」
シルフィアの計画した作戦の要は「マカセ」であり、彼が失敗した場合は取り返しのつかない事態に陥る。しかし、作戦が成功すればアルディラと魔物の軍勢を一度に殲滅する事が可能のため、ここは彼に任せるしかなかった。
「そうですね……当初の予定では街に要塞を作り出し、魔物の軍隊を迎撃する予定でした。しかし、魔王軍の魔将という存在が私の予想を超える力を持っていた以上、考え方を改めましょう」
「考え方を改める?」
シルフィアは何事か考え込むように腕を組み、そして意を決したように二人に提案を行う。
「マカセの話ではアルディラは数日後にこの都市を到着する予定です。ですが、正面から迎え撃つのではなく、敵が街に入り込んだ所を始末しましょう」
「え、どういう意味?ここで要塞を作って籠城するんじゃないの?」
「発想を変えましょう。調査の結果、この街には私達以外に住民は存在しません。街の周辺を探索しましたが、残念ながら生存者は確認されませんでした。しかし、逆にそれが幸いだったかもしれません」
「……どういう事?」
生存者が確認されなかった事が幸運だったという発言にレアとイリスは疑問を抱き、シルフィアは自分の考えた新たな作戦を説明する。
「まずはこの街を――」
――数時間後、レア達はセカンの街を離れ、帝都から追放されたときに送り込まれたファストの街へと到着した。そしてこの街を支配するゴブリンの群れをシルフィアと機械人形達が殲滅を開始する。
「A~Cの部隊はマスターの護衛を行いなさい!!D~Jの部隊は街の外側を包囲!!残りの部隊は私に続きなさい!!」
『ゴロロロロッ!!』
『ギィイイイッ!?』
街中に無数の機械人形が侵入し、シルフィアは上空から彼等に指示を与え、街に生息しているゴブリンの排除を行う。1匹も逃さないように街の外にも機械人形を配置し、次々と街の中に存在するゴブリンを打ち倒す。
「うわぁっ……なんか、凄い光景」
「まさかこの街に戻ってくることになるとは思いませんでしたよ……」
安全な場所で機械人形に護衛されながらレアとイリスは街の様子を眺め、数日前までレアは1人で必死に戦っていたゴブリン達が圧倒的な力を持つシルフィアと機械人形に駆逐される光景に何とも言えない気持ちを抱く。一時は命を狙われ続けて恨めしく思った存在だが、今では立場が逆転してしまい、逃げ惑うゴブリン達に憐れみさえ抱く。
「グギィイイイッ!!」
「あ、ホブゴブリンですよ!!まだ居たんですね……」
「でも……」
『ゴロォッ!!』
通常種よりも体格の大きいゴブリンが出現するが、完全武装状態のゴレムが前に出ると、二人を守るように立ちふさがる。ゴレムに対してホブゴブリンは右手に握りしめていた棍棒を叩きつける。
「ギィアッ!!」
『ゴロン?』
「ギィイッ!!ギギィッ……グギャアッ!?」
だが、何度棍棒を叩きつけようとゴレムの装甲には傷一つも与えられず、逆にホブゴブリンの棍棒が叩き折れてしまう。自分の攻撃を全く寄せ付けないゴレムにホブゴブリンは戸惑うが、そんな相手にゴレムは容赦なく殴りつけて吹き飛ばす。
『ゴロロロッ!!』
「グヘェッ!?」
ゴレムの一撃を受けたホブゴブリンは頭部を歪な形に凹み、そのまま地面に倒れこんで動かなくなる。いくら普通のゴブリンよりも強い力を持つとはいえ、機械人形のゴレムの相手にもならない。
「フォトン・レイン!!」
遂には上空を浮かぶシルフィアの身体が発行し、彼女の胸元に存在する万能金属の十字架が光り輝き、無数の光の塊を放つ。まるで雨の様に降り注ぐ光の弾丸は確実にゴブリンだけを撃ち抜き、決してレアやイリスや機械人形には的中しない。
『グギャアアアアアアアアアッ!?』
街中から無数のゴブリンの悲鳴が響き渡り、全てのゴブリンを排除した事を生体レーダーで確認したシルフィアは攻撃を中止させ、武装を解除してレア達の元に降り立つ。
「お待たせしました。予定よりも時間は掛かりましたが、これでこの街のゴブリンを一掃しました」
「そ、そう……流石はシルフィア」
「お褒めの言葉、ありがとうございます!!」
「ひええっ……本当に何でもありですねこの人」
レアが引きつった笑顔を浮かべて褒めると、彼女は主人に褒められた子犬のように喜ぶが、結果として街中に大量のゴブリンの死骸が誕生する。これしか方法が無かったとはいえ、あまりにも無惨な光景にレアとイリスは内心同情してしまう。
「それでは次の段階に移行します。まずはゴブリンの死骸を焼却後、御二人が住むための建物の建設を行います。それと機械人形の大半は警備に回します」
「ドローンで十分じゃないの?」
「確かにそうですが、ビゾンの件もあります。用心のために街の周囲にも警備を行いたいのです」
「分かった。それなら任せるよ……それにしても今回の作戦、上手くいくかな」
「今のところは順調です。問題は別行動中のマカセ次第ですが……」
シルフィアの計画した作戦の要は「マカセ」であり、彼が失敗した場合は取り返しのつかない事態に陥る。しかし、作戦が成功すればアルディラと魔物の軍勢を一度に殲滅する事が可能のため、ここは彼に任せるしかなかった。
0
お気に入りに追加
1,663
あなたにおすすめの小説
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる