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廃墟編

霧魔将襲来

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『イリス!!急いでそこから離れて!!その霧を吸い込むと毒に侵されるみたい!!』
『えええっ!?ちょ、そんな……無理ですよ!!』
『イリス様、レア様、腕輪を顔に近づけて下さい!!』


イリスは迫りくる白霧の正体が毒と知り、慌てて駆け抜ける。しかし、既に街全体に広がりつつある霧から逃れる事は出来ず、シルフィアが即座に指示を出す。


『遠隔操作で私が御二人の万能金属とナノマシンを操作して防毒マスクを作り出します!!マカセ、この白霧は肌に触れても問題はないのですか?』
『毒はあくまで吸い上げた人間にしか効果はないと言っていたが……』
『分かりました。二人ともすぐに腕輪を顔に近づけて下さい!!』
『こ、こうですか?』
『これでいいの?』


何時の間にかレアが滞在しているログハウスの中にも窓から白霧が入り込んでおり、慌ててレアと画面上のイリスは腕輪を顔に近づける。するとシルフィアが目を閉じて何かを念じるように頭を抑え、二人に埋め込んだナノマシンが反応する。


『うわっ!?』
『きゃあっ!?』
『……これで一応は大丈夫なはずです。どうですか?』


レアとイリスが取り付けた腕輪が一瞬にして変化を果たし、顔全体を覆い隠すマスクへと変化を果たす。そのお陰なのか白霧が二人の身体を包み込んでも特に異変は起きず、普通に呼吸も行える。防毒マスクの機能が無事に発動したらしく、レアは安心して椅子に座り込む。


『助かった……あれ、これ無線も出来るの?』
『はい。可能です』 
『ちょ、なんか顔に変なのが張り付いたんですけど……大丈夫なんですか?』
『主人!!無事ですか?』
『ああ、平気平気……といっても、この状況は不味いよな』


室内にも関わらずに白霧が流れ込んだ事で家の中の様子を確認する事も難しく、1メートル先も見えない。視界が悪い中、レアは用心のために身に付けていた拳銃を引き抜く。


『マカセ、この霧は本当にビゾンという奴が生み出した霧なのか?』
『間違いありません!!この霧は奴の能力で作り出した物、現に鳥たちが苦しんで死んでいます』
『……確かに小鳥が死んでいます』


レアの視界に新たな映像が表示され、そこには屋根の上で倒れている無数の小鳥の姿があり、口から泡を噴いて倒れていた。もしもルノとイリスもマスクを装着していなければ小鳥達と同じ運命を辿っていたかも知れず、冷や汗を流す。


『霧の成分の解析が終了しました。霧の中に微弱ですが確かに毒が検出されました。小動物ならば数分と持たずに気絶し、やがては死に至る毒です。人間の場合だと10分も持たずに死亡するでしょう』
『うえっ……』
『ちょっ、それって不味くないですか?こんな場所、すぐに離れましょうよ!!』
『安心してください。御二人の身体にはナノマシンを注入しています。仮に毒に侵されたとしても体内のナノマシンが即座に抗体を作り出し、毒を中和します』
『えっ……それならマスクはいらなかったじゃない?』
『そうとは言い切れません。抗体が作り出される間に御二人の身体が毒に侵されて気絶していた可能性はありました』
『というか、普通に喋ってるけどシルフィアは平気なの?』
『私には大量のナノマシンを体内に保有していますし、それに人間と神人では肉体の構造自体が大きく異なります。どのような毒も私には効果はありません』


人類の守護者として作り出された神人は外見は人間と酷似しているが、彼女達は「超人」と呼ばれる存在のため、あらゆる毒や病気を無効化する肉体を持っている。だからこそシルフィアは白霧の中でも平然としており、マカセに問い質す。


『マカセ、この霧を生成しているビゾンの情報を洗いざらい教えなさい。言っておきますがマスターの命を危険に晒した相手です。かつての仲間という理由で庇い立てするつもりなら容赦しません』
『わ、分かっている……今の我は主人の下僕、逆らう気はない』
『下僕にまでした覚えはないんだけど……』
『そんな事よりも私はどうしたらいいんですか?魔王軍の幹部がいる街になんてさっさと抜け出したいんですけど……』
『この霧を止めるには霧魔将ビゾンを探さねばならん。奴がいる限り、霧は解除されんぞ』
『シルフィアの生体レーダーに反応はないの?』


レアはシルフィアに内蔵されている生物を感知するレーダーならばビゾンの居場所を分かるのではないかと考えたが、シルフィアは申し訳なさそうに首を振る。


『それが……何故か妨害ジャミングを受けているかのようにレーダーが上手く発動しないのです。恐らく、この霧のせいでしょう』
『え、そうなの?』
『この世界の魔法という物は原理は不明ですが、恐らくは魔素と似通ってインす。恐らくは生命エネルギーを利用して生み出す現象なのでしょう。つまり、私の生体レーダーはこの霧その物を生物として捉えてしまうようです』
『じゃあ、どうしたらいいんですか?』
『御二人はそこで待機してください。すぐに私が救援に向かいます』
『それならイリスから先に助けてよ。転移装置を使えばすぐに移動できるんでしょ?』
『可能ですが……実はロボ・ゴーレムを移動させるために転移装置を何度か利用してしまい、ナノマシンに負荷が蓄積されています。なのであと一度でも使用すればしばらくは転移装置は発動出来ません』
『それでもいいよ。俺はここに残っているからすぐに迎えに行って』
『分かりました。ではゴレムを護衛のために先にログハウスに向かわせます』
『お願いしますよぉっ』


シルフィアをイリスの救援に向かわせ、シルフィアは転移装置を発動させ、彼女の元に向かう。






※当初の予定は今日まで連日投稿でしたが、やはり3月の間は毎日投稿します。
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