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廃墟編
アルディナ
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「そのアルディナという人をマカセはここに連れ出せないの?そうすれば何とかなると思うけど……」
「申し訳ありません。俺も彼女の居場所は知らないので呼び出す事は出来ないのです」
「あ、そうか、さっきもそう言ってたよね。ごめんね変なことを聞いて」
「主が謝る理由などありません!!私が悪いのです!!」
「……何かレアさんに対してだけ態度違いすぎません?」
先程までの態度とは一変して従順な態度で接するマカセにイリスは眉を顰めるが、マカセを利用してアルディナを呼び出し、彼の様に従わせる事は難しい。他の方法があるとすれば本隊がこの街に到着した時にどうにかアルディナだけを連れ出す方法だが、規模が分からないゴブリンの軍勢をどのように対応するのかが問題である。
「シルフィアはゴブリンの軍勢でも勝てるかな?」
「相手の規模が分からなければ何とも言えませんが、この街に潜伏していた個体程度ならばどうという事はありません。ですが、遠距離からの広域射撃は連続では行えません。魔素はともかく、ナノマシンがオーバーヒートを迎えます」
「そうなのか……一応聞いてみるけど、さっきの射撃ならどれくらいの敵を撃ち抜ける?」
「遮蔽物がなければ1万程度なら問題ありません。ですが、射撃の後は接近戦用の武器しか使用できません」
「1万って……本当に何者なんですかシルフィアさんって」
何事も無いように答えるシルフィアにイリスは冷や汗を流すが、その言葉を聞いたレアは考え込み、今後の行動を考える。とりあえずは魔王軍の本隊と放置するわけにはいかず、存在を知ってしまった以上は対応しなければならない。シルフィアの能力ならば万の規模のゴブリンだろうと殲滅出来る戦力は存在するため、まずは作戦を考える必要があった。
「よし、魔王軍と戦おう」
「えっ!?本気ですかっ!?相手は軍勢ですよ!?」
「でも、ここで放っておいたら他の街も危険なんでしょ?」
「それは間違いありません。彼女はファストとセカンを拠点に周辺の村や町を襲撃する予定です」
「このまま我々が何もしなければ大勢の民間人が危険に晒されるという事ですか……マスター」
「放っておけないんでしょ?」
「……はい」
シルフィアの返答を予想していたレアは頭を掻き、まずはゴブリンの軍勢の対抗策を考える。相手の規模が分からない事が不気味であり、仮にシルフィアでも対応できない数のゴブリンが現れた場合、レア達も戦わなければならない。最も一般人のイリスをこれ以上に巻き込むわけにはいかず、彼女は安全な場所で待機させる必要がある。
「シルフィア、イリスを別の街に運んでよ。出来れば遠い方に避難させて」
「えっ!?ちょっと待ってくださいよ!!私だけ戻るなんて……」
「でも、残った方が危険だよ?」
「うっ……そ、それもそうですね」
「申し訳ありませんがその指示には従えません」
「え、何で!?」
今まではレナの指示を素直に聞いていたシルフィアだが、イリスを安全な場所に運ぶことを拒否する。まさか断われるとは思わなかったのでレアは驚くが、シルフィアはすぐに理由を答える。
「イリス様の安全を確保する事も重要だとは理解していますが、私はあくまでもマスターに仕える神人です。自分の主人よりも他人の命を優先する事は出来ません」
「いや、でも……」
「私がイリス様を運ぶ際にもしもマスターの身が危険に晒される危険性がある以上、彼女も傍に置くことを勧めます。私が傍に居る間は何者であろうとマスターとイリス様の御命は守ります」
「おい、女。俺の命は?」
「……始末されたいのですか?」
当たり前のように話に加わってきたマカセにシルフィアは冷たい笑顔を見せつけ、そんな彼女にマカセは慌てて顔を反らす。その一方で彼女の言葉を聞いたレアは説得は難しいと判断し、仕方なくイリスはもうしばらく行動を共にさせる事を決めた。
「しょうがないな……悪いけどイリス、もうしばらくだけ一緒に居てくれる」
「いえいえ、別に構いませんよ。というか、正直に言ってレアさん達と一緒に居る方が安全なような気がしてきました。でも、ここに残るとしてもどうするんですか?これだけの人数じゃ籠城も出来ませんよ」
既にセカンの街は崩壊しており、街の建物の損傷も激しい。それでも探せば人が住める場所は残っているだろうが、問題なのは守備に関してであり、軍勢が押し寄せてきたら街への侵入は対応できない。
「人員が少ない以上、この街に立て籠もるのは難しいでしょう。それならばここは私が捜索を行い、そのアルディラという人物を探し出すのはどうでしょうか?」
「え?でも、さっき俺の傍から離れたくないって……」
「大丈夫です。捜索と言ってもこの子達を使います」
「あ、そうか。ドローンで探索するのか」
街の上空には無数のドローンが浮かんでおり、シルフィアはドローンを利用して街の調査を行っている。このドローンを利用し、周辺地域の操作も行える。
「申し訳ありません。俺も彼女の居場所は知らないので呼び出す事は出来ないのです」
「あ、そうか、さっきもそう言ってたよね。ごめんね変なことを聞いて」
「主が謝る理由などありません!!私が悪いのです!!」
「……何かレアさんに対してだけ態度違いすぎません?」
先程までの態度とは一変して従順な態度で接するマカセにイリスは眉を顰めるが、マカセを利用してアルディナを呼び出し、彼の様に従わせる事は難しい。他の方法があるとすれば本隊がこの街に到着した時にどうにかアルディナだけを連れ出す方法だが、規模が分からないゴブリンの軍勢をどのように対応するのかが問題である。
「シルフィアはゴブリンの軍勢でも勝てるかな?」
「相手の規模が分からなければ何とも言えませんが、この街に潜伏していた個体程度ならばどうという事はありません。ですが、遠距離からの広域射撃は連続では行えません。魔素はともかく、ナノマシンがオーバーヒートを迎えます」
「そうなのか……一応聞いてみるけど、さっきの射撃ならどれくらいの敵を撃ち抜ける?」
「遮蔽物がなければ1万程度なら問題ありません。ですが、射撃の後は接近戦用の武器しか使用できません」
「1万って……本当に何者なんですかシルフィアさんって」
何事も無いように答えるシルフィアにイリスは冷や汗を流すが、その言葉を聞いたレアは考え込み、今後の行動を考える。とりあえずは魔王軍の本隊と放置するわけにはいかず、存在を知ってしまった以上は対応しなければならない。シルフィアの能力ならば万の規模のゴブリンだろうと殲滅出来る戦力は存在するため、まずは作戦を考える必要があった。
「よし、魔王軍と戦おう」
「えっ!?本気ですかっ!?相手は軍勢ですよ!?」
「でも、ここで放っておいたら他の街も危険なんでしょ?」
「それは間違いありません。彼女はファストとセカンを拠点に周辺の村や町を襲撃する予定です」
「このまま我々が何もしなければ大勢の民間人が危険に晒されるという事ですか……マスター」
「放っておけないんでしょ?」
「……はい」
シルフィアの返答を予想していたレアは頭を掻き、まずはゴブリンの軍勢の対抗策を考える。相手の規模が分からない事が不気味であり、仮にシルフィアでも対応できない数のゴブリンが現れた場合、レア達も戦わなければならない。最も一般人のイリスをこれ以上に巻き込むわけにはいかず、彼女は安全な場所で待機させる必要がある。
「シルフィア、イリスを別の街に運んでよ。出来れば遠い方に避難させて」
「えっ!?ちょっと待ってくださいよ!!私だけ戻るなんて……」
「でも、残った方が危険だよ?」
「うっ……そ、それもそうですね」
「申し訳ありませんがその指示には従えません」
「え、何で!?」
今まではレナの指示を素直に聞いていたシルフィアだが、イリスを安全な場所に運ぶことを拒否する。まさか断われるとは思わなかったのでレアは驚くが、シルフィアはすぐに理由を答える。
「イリス様の安全を確保する事も重要だとは理解していますが、私はあくまでもマスターに仕える神人です。自分の主人よりも他人の命を優先する事は出来ません」
「いや、でも……」
「私がイリス様を運ぶ際にもしもマスターの身が危険に晒される危険性がある以上、彼女も傍に置くことを勧めます。私が傍に居る間は何者であろうとマスターとイリス様の御命は守ります」
「おい、女。俺の命は?」
「……始末されたいのですか?」
当たり前のように話に加わってきたマカセにシルフィアは冷たい笑顔を見せつけ、そんな彼女にマカセは慌てて顔を反らす。その一方で彼女の言葉を聞いたレアは説得は難しいと判断し、仕方なくイリスはもうしばらく行動を共にさせる事を決めた。
「しょうがないな……悪いけどイリス、もうしばらくだけ一緒に居てくれる」
「いえいえ、別に構いませんよ。というか、正直に言ってレアさん達と一緒に居る方が安全なような気がしてきました。でも、ここに残るとしてもどうするんですか?これだけの人数じゃ籠城も出来ませんよ」
既にセカンの街は崩壊しており、街の建物の損傷も激しい。それでも探せば人が住める場所は残っているだろうが、問題なのは守備に関してであり、軍勢が押し寄せてきたら街への侵入は対応できない。
「人員が少ない以上、この街に立て籠もるのは難しいでしょう。それならばここは私が捜索を行い、そのアルディラという人物を探し出すのはどうでしょうか?」
「え?でも、さっき俺の傍から離れたくないって……」
「大丈夫です。捜索と言ってもこの子達を使います」
「あ、そうか。ドローンで探索するのか」
街の上空には無数のドローンが浮かんでおり、シルフィアはドローンを利用して街の調査を行っている。このドローンを利用し、周辺地域の操作も行える。
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